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プロローグ
第3話 取寄魔法失敗
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「そんなに緊張しなくても大丈夫。ここまでは親衛隊も先生方も入ってこない。秘話魔法展開中だから外からここの会話も聞こえないしさ」
赤髪の彼女が言うが緊張は解けない。
何せ彼女いない歴=年齢、何なら更に前世の享年をプラスしてもいい。だから女子しかいないこの空間はぶっちゃけ敵地だ。
ああ早くホームグラウンドの図書室隅へ逃れたい……
「それじゃテディ、アシュノール君から話を聞こうか」
「ちょっと待ってくださいな。せっかくのお客様ですし飲み物くらいは出さないと失礼ですから」
テディ? そう思って気付く。テオドーラだからテディという訳か。
それにしても彼女、侯爵令嬢と随分気軽な感じで話しているなと思う。多分生徒自治会の副会長か何かなんだろうけれど、俺は興味の無い事は無視するタイプなので彼女については何も知らない。
髪の色もあって目立つし結構綺麗だしそれなりに学内では有名人なのかもしれないけれど。
「それではどうぞ」
炭酸入りレモン水が俺、赤髪の彼女、あと2人分テーブルに置かれる。ひとつはテオドーラさんの分だろうけれどもう1つは?
俺の視線の意味に気づいたのだろう。
「生徒自治会はあと1人、書記のフィオナがいるんだ。ただちょっと気まぐれだからいつ来るかはわからないけれどさ」
「生徒自治会と言っても仕事はそれほどありません。ですから普段はここで3人でのんびりしているんです。フィオナに限ってはあちこち飛び回っている事も多いですけれども」
「この部屋の実情はテディの避難所って感じだけれどさ」
「ここが一番落ち着けますから。ミランダもフィオナも私を特別扱いしませんし」
なるほど。恵まれているなりの苦労が色々ある訳か。
ほんの少しだけテオドーラさんに親近感を持つ。
「さて、そろそろ本題に入ろうか」
「そうですね」
テオドーラさんは頷いて、そして俺の方を見る。
「アシュノールさんが作品展に出された『フィリカリス』、読ませていただきましたわ。最初は作品展の評価の為に飛ばし読みをする程度のつもりだったのですが、今までにないお話で、思い切り引き込まれてしまいました。結局一気に全部読んでしまって、それでも名残惜しくて。実は今、筆写をしている最中だったりします。
そこでお伺いです。確か『フィリカリス』は翻訳とお聞きしていますけれど、あれと同じようなお話は他にもあるのでしょうか。もしあるのなら翻訳前でも結構ですから教えて頂けないでしょうか」
あれを気に入ってくれたのは非常に嬉しい。翻訳作業は結構苦労したし俺独自の訳もあちこちにあるから。
ただあの本についてはどう説明すればいいだろう。ちょっと考えたけれどうまい言い訳が思いつかない。こういう時に下手な嘘をつくとドツボにはまる。
考えがまとまりそうにないので方針を変更。どうせ俺の人生なんて何かをうまくやる必要なんてない。
そんな訳で正直に話すことにした。
「あれは図書館で偶然に見つけた本なんです。だから同じような本があるかは残念ながらわかりません」
「図書館なら同じような本は整理されて並んでいる筈だけどな」
普通ならそうだがあの本に関してはちょい違う。
「並んでいたのは単独で、コーナーは『古書、奇書、その他』コーナーの『その他・分類不能』ですけれど」
「何だそりゃ」
「言語不明な本として置いてあったんです。何故か俺には理解できたので、持ち帰って夏休みの半分かけて翻訳した訳で」
うーんと2人は考え込む。
「なるほどな。それじゃこれと同種の本が他にあるかわからないよな」
赤髪の少女、ミランダさんはそう言って頷く。一方テオドーラさんはまだまだ未練たっぷりな感じだ。
「でもそれならせめてその本の現物だけでも見てみたいですわ。申し訳ありませんが見せて頂けますでしょうか」
「それは大丈夫ですよ」
特定の場所にあるよく知っている物なら取寄魔法で手元へ取り寄せることが出来る。
無論商店とか図書館とか会社等には取寄魔法阻止の魔法陣なんかがはってあるし他人の金銭等に対して使うとすぐ衛視庁に見つかって捕縛される。
だが寮の自室には貴重品庫以外にはそんな魔法陣は無い。それに自分の私物を取り寄せるのは合法だ。貴重品なのだが話を早く切り上げるには実物を見せるのが一番だろう。
そんな訳で取寄魔法を一発。あの本が出現する。
「この本です」
「手に取って宜しいでしょうか」
「どうぞ」
テオドーラさんは本を手に取って色々観察する。
「見たことが無い綴じ方の本ですわね。紙の質もかなり上質なようです。それにこれが文字でしょうか。どう読むのかも想像つきません。表紙のデザインから見て普通の本と反対側から開くのだと思いますが、文字が縦に並んでいるようです」
この国の本と反対が表紙と気づくとはなかなか鋭いな。
「表紙が反対側というのはあっています。その通りで右から左に向けて、縦方向に文字を追っていく形で読む本です」
「でもそれ以上はわからないですわ。というより何故これをアシュノールさんは読めるのでしょうか」
……返答に困る。
「ところでこの本が読めるという事は、この本について実はもっと色々知っているんじゃないのかな。あ、アシュノール君は答えなくていい。私がこれから言うのは単なる提案だ。
もしアシュノール君がこの本及びこの本の言語やこの本が本来存在する場所についてある程度知っているならだ。本を取寄魔法で取り寄せる事が出来るんじゃないか?」
えっ!? 思ってもみない事をミランダさんに言われて一瞬戸惑う。
しかし言われてみれば確かに出来るかもしれない。少なくともやってみる価値はあるだろう。
本屋にある売り物や誰かの私物を持ってきてしまうと申し訳ないからそこだけ気をつけることにして。
「ちょっとやってみます。上手く行くかどうかはわかりませんけれど」
「お願いしますわ」
取寄魔法は一般的な空間系魔法の一種だ。そんな訳で俺は魔法を起動してみる。
「取寄魔法、内容は日本語で書かれた著者●●●●の書籍1冊ただし目の前の本と同種同内容を除く。場所は指定せず。起動!」
うわああっ。この全てを奪われるような吸い取られるような感覚。まずい!
『中断!』
俺は慌てて魔法を中断する。
赤髪の彼女が言うが緊張は解けない。
何せ彼女いない歴=年齢、何なら更に前世の享年をプラスしてもいい。だから女子しかいないこの空間はぶっちゃけ敵地だ。
ああ早くホームグラウンドの図書室隅へ逃れたい……
「それじゃテディ、アシュノール君から話を聞こうか」
「ちょっと待ってくださいな。せっかくのお客様ですし飲み物くらいは出さないと失礼ですから」
テディ? そう思って気付く。テオドーラだからテディという訳か。
それにしても彼女、侯爵令嬢と随分気軽な感じで話しているなと思う。多分生徒自治会の副会長か何かなんだろうけれど、俺は興味の無い事は無視するタイプなので彼女については何も知らない。
髪の色もあって目立つし結構綺麗だしそれなりに学内では有名人なのかもしれないけれど。
「それではどうぞ」
炭酸入りレモン水が俺、赤髪の彼女、あと2人分テーブルに置かれる。ひとつはテオドーラさんの分だろうけれどもう1つは?
俺の視線の意味に気づいたのだろう。
「生徒自治会はあと1人、書記のフィオナがいるんだ。ただちょっと気まぐれだからいつ来るかはわからないけれどさ」
「生徒自治会と言っても仕事はそれほどありません。ですから普段はここで3人でのんびりしているんです。フィオナに限ってはあちこち飛び回っている事も多いですけれども」
「この部屋の実情はテディの避難所って感じだけれどさ」
「ここが一番落ち着けますから。ミランダもフィオナも私を特別扱いしませんし」
なるほど。恵まれているなりの苦労が色々ある訳か。
ほんの少しだけテオドーラさんに親近感を持つ。
「さて、そろそろ本題に入ろうか」
「そうですね」
テオドーラさんは頷いて、そして俺の方を見る。
「アシュノールさんが作品展に出された『フィリカリス』、読ませていただきましたわ。最初は作品展の評価の為に飛ばし読みをする程度のつもりだったのですが、今までにないお話で、思い切り引き込まれてしまいました。結局一気に全部読んでしまって、それでも名残惜しくて。実は今、筆写をしている最中だったりします。
そこでお伺いです。確か『フィリカリス』は翻訳とお聞きしていますけれど、あれと同じようなお話は他にもあるのでしょうか。もしあるのなら翻訳前でも結構ですから教えて頂けないでしょうか」
あれを気に入ってくれたのは非常に嬉しい。翻訳作業は結構苦労したし俺独自の訳もあちこちにあるから。
ただあの本についてはどう説明すればいいだろう。ちょっと考えたけれどうまい言い訳が思いつかない。こういう時に下手な嘘をつくとドツボにはまる。
考えがまとまりそうにないので方針を変更。どうせ俺の人生なんて何かをうまくやる必要なんてない。
そんな訳で正直に話すことにした。
「あれは図書館で偶然に見つけた本なんです。だから同じような本があるかは残念ながらわかりません」
「図書館なら同じような本は整理されて並んでいる筈だけどな」
普通ならそうだがあの本に関してはちょい違う。
「並んでいたのは単独で、コーナーは『古書、奇書、その他』コーナーの『その他・分類不能』ですけれど」
「何だそりゃ」
「言語不明な本として置いてあったんです。何故か俺には理解できたので、持ち帰って夏休みの半分かけて翻訳した訳で」
うーんと2人は考え込む。
「なるほどな。それじゃこれと同種の本が他にあるかわからないよな」
赤髪の少女、ミランダさんはそう言って頷く。一方テオドーラさんはまだまだ未練たっぷりな感じだ。
「でもそれならせめてその本の現物だけでも見てみたいですわ。申し訳ありませんが見せて頂けますでしょうか」
「それは大丈夫ですよ」
特定の場所にあるよく知っている物なら取寄魔法で手元へ取り寄せることが出来る。
無論商店とか図書館とか会社等には取寄魔法阻止の魔法陣なんかがはってあるし他人の金銭等に対して使うとすぐ衛視庁に見つかって捕縛される。
だが寮の自室には貴重品庫以外にはそんな魔法陣は無い。それに自分の私物を取り寄せるのは合法だ。貴重品なのだが話を早く切り上げるには実物を見せるのが一番だろう。
そんな訳で取寄魔法を一発。あの本が出現する。
「この本です」
「手に取って宜しいでしょうか」
「どうぞ」
テオドーラさんは本を手に取って色々観察する。
「見たことが無い綴じ方の本ですわね。紙の質もかなり上質なようです。それにこれが文字でしょうか。どう読むのかも想像つきません。表紙のデザインから見て普通の本と反対側から開くのだと思いますが、文字が縦に並んでいるようです」
この国の本と反対が表紙と気づくとはなかなか鋭いな。
「表紙が反対側というのはあっています。その通りで右から左に向けて、縦方向に文字を追っていく形で読む本です」
「でもそれ以上はわからないですわ。というより何故これをアシュノールさんは読めるのでしょうか」
……返答に困る。
「ところでこの本が読めるという事は、この本について実はもっと色々知っているんじゃないのかな。あ、アシュノール君は答えなくていい。私がこれから言うのは単なる提案だ。
もしアシュノール君がこの本及びこの本の言語やこの本が本来存在する場所についてある程度知っているならだ。本を取寄魔法で取り寄せる事が出来るんじゃないか?」
えっ!? 思ってもみない事をミランダさんに言われて一瞬戸惑う。
しかし言われてみれば確かに出来るかもしれない。少なくともやってみる価値はあるだろう。
本屋にある売り物や誰かの私物を持ってきてしまうと申し訳ないからそこだけ気をつけることにして。
「ちょっとやってみます。上手く行くかどうかはわかりませんけれど」
「お願いしますわ」
取寄魔法は一般的な空間系魔法の一種だ。そんな訳で俺は魔法を起動してみる。
「取寄魔法、内容は日本語で書かれた著者●●●●の書籍1冊ただし目の前の本と同種同内容を除く。場所は指定せず。起動!」
うわああっ。この全てを奪われるような吸い取られるような感覚。まずい!
『中断!』
俺は慌てて魔法を中断する。
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