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第4章 秘密と秘密と
第24話 疑惑はまずは置いておいて
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客席前に置かれた大きな黒い鉄板。ソースの焦げた香り。器に入っている具材と水溶き小麦粉。
これは間違いない。お好み焼き屋だ。しかも見る限り広島バージョンと関西バージョンが共存していやがる。
世界が違っても同じように発明というか考案されるものなのだろうか。それにしてもおかしい気がする。広島風と関西風が共存している時点で既に何か作為的なものを感じるのだ。
「アシュ、どうかしました?」
「いや、何でもない」
店員さんに案内されて席につく。
「ここは材料を貰って自分で焼いて食べる方式の店なんだ。まずは2種類のベースと中に入れる具材を決めて、材料を持ってきてもらう。あとはここに書いてある手引きを読みながら自分で作る形式だ」
作成部分は完全にセルフサービスか。
「初めての私達でも大丈夫でしょうか」
「簡単な方と難しい方があるって聞いている。簡単な方はただ混ぜて焼くだけらしい。まあ本気になれば簡単な方も色々テクニックはあるらしいけれどさ」
「どれどれ」
メニューを見てみる。
ベースは2種類。大きな坂風と広い島風。
そして俺は気付いた。この店のこれがお好み焼き風なのは偶然の進化じゃない。間違いなく日本のお好み焼きを知っている人が背後にいるという事に。
ベースの名前はそれぞれきっと、大阪風と広島風と言いたいのだろう。店名の好きな物焼き亭だってそうだ。きっとあれは、お好み焼き屋というのを無理やりスティヴァレ語に直しただけ。
いったい誰だ、そいつは。俺と同じように日本の記憶があるのだろうか。
もしそうならきっと広島人でも大阪人でもない奴だ。このメニューが並立している処からして。
俺の思いと関係なく3人はメニューとにらめっこしながら注文を考えている。
「この大きな坂風が初心者用メニューみたいだね」
「だね。じゃこれがベースでいいかな」
「あとは具材だな。わからない場合はセットがいいとあるな」
「なら皆で違うセットを選んで食べ比べましょう」
「だね。じゃあ僕は大きな坂風ベースに海鮮セットで」
「私は同じでブタタマセットですわ」
「なら私は同じくジャガチーズセットで行くか。アシュはどうするんだ?」
そうか。俺も頼むんだよな。
「なら広い島風ベース、具材はカキをトリプルと天かすとネギ、豚肉、卵2個」
「随分妙な注文だけれどそれでいいのか?」
ミランダが疑問形で尋ねる。
「ああ、これでいい」
俺の前世での父方の田舎が岡山県の東側海沿いの田舎だった。どうせならそこの御当地スペシャルな実家風お好み焼きを作らせて貰おう。うろ覚えだけれど。
なお豚肉は焼きそば用だ。広島風ベースでこれを作ると焼きそばが余るから。
来るまでにメニューや店内の掲示等をじっくり見て確認する。必死に探す程でもなかった。店と料理の由来紹介ページがメニューの最後尾にある。
『この料理はかつて王宮で料理人を務めていた店主が、現国王陛下が皇太子殿下時代、書き起こしたレシピをもとにして調理した異国料理です。陛下は異国の書物からこの料理を発見して、是非作って欲しいと厨房へと書き起こしたレシピを持ち込みました。その書き起こしをヒントに何度も試作をして、ようやく完成させたのがこの好きな物焼きになります。陛下が好まれたこの味をどうぞお楽しみください』
つまり異世界の知識を持っていたのは国王陛下という訳か。
しかし見た限り材料はともかく再現が微妙な部分もある。少なくとも広島では店主が焼いてくれるのが普通だ。
確認したところソースもちょい味が違う。店の雰囲気もちょい高級店風で大分感じが違う。
でもまあ、あとは食べてみてからだ。
一応焼き方の説明もメニューに書いてある。しかし俺はあえて無視するつもりだ。
俺がこれから焼くのは広島風でも大阪風でもない。父の実家風のカキオコだ。
「お待たせしました」
具材やベースがボールに入ってやってくる。
それではやるか、お好み焼き。
「どれくらいの温度まで鉄板を熱くするのでしょうか」
ここのお好み焼き屋は客が自分の魔法で鉄板を熱する方式。熱の魔素は豊富だからこの店中の客が同じ魔法を使っても全然問題ない。
そんな事を思っていたらだ。
「赤熱させればいいんじゃないか」
おい待ったそこのミランダ何を考えている。
「赤熱させたらあっという間に焼けこげるだろ。こんな感じだ」
鉄板を200℃位に魔法で温める。
この世界に摂氏の温度で言っても伝わらないので代わりにちょうどよく熱した鉄板の上にちょっとだけ水を垂らす。水は半分程度が球になってはじけて飛び、残り半分はちょっと広がった後じゅわっとその場で蒸発した。
「このくらいの温度がちょうどいい。水を垂らして確認するんだ」
「よく知っているな」
「多分何処かに書いてあるだろ」
「うーん、どこだろ」
しまった書いていなかったか。でもまあ細かい事は無視だ。
「本当は最初もう少し熱めにした後ちょい魔法を止めてやる感じだ。あと油をひかないと焦げるぞ」
別にお好み焼き奉行をやる気は無い。しかし俺の中にある元日本人の魂が叫ぶのだ。
「あとは広げて焼けば大丈夫なはずだ。あんまり大きく作るなよ。厚み1指位でサイズは手のひらを広げた位がちょうどいい。それ以上だとひっくり返すのが難しくなる。
あと、俺の方はちょい特殊な作り方だから参考にするなよ」
ここまで指示しておけばあとは大阪風なんて誰でも焼けるだろう。なんて言うと大阪人に怒られるかもしれないけれど。
それでは俺は実家風カキオコを作るとするか。
実家風はキャベツと生地を混ぜたものを最初に乗せる。ただ後に生地だけを使うので生地をすくえる程度だけキャベツを入れ、キャベツと生地だけ状態を鉄板の上へ。ちょいネギと天かすものせ、その上に牡蠣ものせてまたネギのせて生地をかけて。
牡蠣はたっぷりのせるのがお約束とやったら、見事に牡蠣がなくなった。仕方ない。あと1回は広島風のを作るとするか。
でもまずは実家風カキオコが先だ。ここで俺の実家流は卵を割って鉄板の上に置いてささっとかき混ぜる。卵が完全に固まらないうちに、カキオコをひっくり返して上にドン!
あとは何回かひっくり返して焼けば完成だ。両面はしっかり焼くが牡蠣は焼き過ぎないよう、5回くらいひっくり返すのもポイントだったりする。
これで表面いい感じ、中ふわふわ、牡蠣ぷりぷりのカキオコが完成だ。
これは間違いない。お好み焼き屋だ。しかも見る限り広島バージョンと関西バージョンが共存していやがる。
世界が違っても同じように発明というか考案されるものなのだろうか。それにしてもおかしい気がする。広島風と関西風が共存している時点で既に何か作為的なものを感じるのだ。
「アシュ、どうかしました?」
「いや、何でもない」
店員さんに案内されて席につく。
「ここは材料を貰って自分で焼いて食べる方式の店なんだ。まずは2種類のベースと中に入れる具材を決めて、材料を持ってきてもらう。あとはここに書いてある手引きを読みながら自分で作る形式だ」
作成部分は完全にセルフサービスか。
「初めての私達でも大丈夫でしょうか」
「簡単な方と難しい方があるって聞いている。簡単な方はただ混ぜて焼くだけらしい。まあ本気になれば簡単な方も色々テクニックはあるらしいけれどさ」
「どれどれ」
メニューを見てみる。
ベースは2種類。大きな坂風と広い島風。
そして俺は気付いた。この店のこれがお好み焼き風なのは偶然の進化じゃない。間違いなく日本のお好み焼きを知っている人が背後にいるという事に。
ベースの名前はそれぞれきっと、大阪風と広島風と言いたいのだろう。店名の好きな物焼き亭だってそうだ。きっとあれは、お好み焼き屋というのを無理やりスティヴァレ語に直しただけ。
いったい誰だ、そいつは。俺と同じように日本の記憶があるのだろうか。
もしそうならきっと広島人でも大阪人でもない奴だ。このメニューが並立している処からして。
俺の思いと関係なく3人はメニューとにらめっこしながら注文を考えている。
「この大きな坂風が初心者用メニューみたいだね」
「だね。じゃこれがベースでいいかな」
「あとは具材だな。わからない場合はセットがいいとあるな」
「なら皆で違うセットを選んで食べ比べましょう」
「だね。じゃあ僕は大きな坂風ベースに海鮮セットで」
「私は同じでブタタマセットですわ」
「なら私は同じくジャガチーズセットで行くか。アシュはどうするんだ?」
そうか。俺も頼むんだよな。
「なら広い島風ベース、具材はカキをトリプルと天かすとネギ、豚肉、卵2個」
「随分妙な注文だけれどそれでいいのか?」
ミランダが疑問形で尋ねる。
「ああ、これでいい」
俺の前世での父方の田舎が岡山県の東側海沿いの田舎だった。どうせならそこの御当地スペシャルな実家風お好み焼きを作らせて貰おう。うろ覚えだけれど。
なお豚肉は焼きそば用だ。広島風ベースでこれを作ると焼きそばが余るから。
来るまでにメニューや店内の掲示等をじっくり見て確認する。必死に探す程でもなかった。店と料理の由来紹介ページがメニューの最後尾にある。
『この料理はかつて王宮で料理人を務めていた店主が、現国王陛下が皇太子殿下時代、書き起こしたレシピをもとにして調理した異国料理です。陛下は異国の書物からこの料理を発見して、是非作って欲しいと厨房へと書き起こしたレシピを持ち込みました。その書き起こしをヒントに何度も試作をして、ようやく完成させたのがこの好きな物焼きになります。陛下が好まれたこの味をどうぞお楽しみください』
つまり異世界の知識を持っていたのは国王陛下という訳か。
しかし見た限り材料はともかく再現が微妙な部分もある。少なくとも広島では店主が焼いてくれるのが普通だ。
確認したところソースもちょい味が違う。店の雰囲気もちょい高級店風で大分感じが違う。
でもまあ、あとは食べてみてからだ。
一応焼き方の説明もメニューに書いてある。しかし俺はあえて無視するつもりだ。
俺がこれから焼くのは広島風でも大阪風でもない。父の実家風のカキオコだ。
「お待たせしました」
具材やベースがボールに入ってやってくる。
それではやるか、お好み焼き。
「どれくらいの温度まで鉄板を熱くするのでしょうか」
ここのお好み焼き屋は客が自分の魔法で鉄板を熱する方式。熱の魔素は豊富だからこの店中の客が同じ魔法を使っても全然問題ない。
そんな事を思っていたらだ。
「赤熱させればいいんじゃないか」
おい待ったそこのミランダ何を考えている。
「赤熱させたらあっという間に焼けこげるだろ。こんな感じだ」
鉄板を200℃位に魔法で温める。
この世界に摂氏の温度で言っても伝わらないので代わりにちょうどよく熱した鉄板の上にちょっとだけ水を垂らす。水は半分程度が球になってはじけて飛び、残り半分はちょっと広がった後じゅわっとその場で蒸発した。
「このくらいの温度がちょうどいい。水を垂らして確認するんだ」
「よく知っているな」
「多分何処かに書いてあるだろ」
「うーん、どこだろ」
しまった書いていなかったか。でもまあ細かい事は無視だ。
「本当は最初もう少し熱めにした後ちょい魔法を止めてやる感じだ。あと油をひかないと焦げるぞ」
別にお好み焼き奉行をやる気は無い。しかし俺の中にある元日本人の魂が叫ぶのだ。
「あとは広げて焼けば大丈夫なはずだ。あんまり大きく作るなよ。厚み1指位でサイズは手のひらを広げた位がちょうどいい。それ以上だとひっくり返すのが難しくなる。
あと、俺の方はちょい特殊な作り方だから参考にするなよ」
ここまで指示しておけばあとは大阪風なんて誰でも焼けるだろう。なんて言うと大阪人に怒られるかもしれないけれど。
それでは俺は実家風カキオコを作るとするか。
実家風はキャベツと生地を混ぜたものを最初に乗せる。ただ後に生地だけを使うので生地をすくえる程度だけキャベツを入れ、キャベツと生地だけ状態を鉄板の上へ。ちょいネギと天かすものせ、その上に牡蠣ものせてまたネギのせて生地をかけて。
牡蠣はたっぷりのせるのがお約束とやったら、見事に牡蠣がなくなった。仕方ない。あと1回は広島風のを作るとするか。
でもまずは実家風カキオコが先だ。ここで俺の実家流は卵を割って鉄板の上に置いてささっとかき混ぜる。卵が完全に固まらないうちに、カキオコをひっくり返して上にドン!
あとは何回かひっくり返して焼けば完成だ。両面はしっかり焼くが牡蠣は焼き過ぎないよう、5回くらいひっくり返すのもポイントだったりする。
これで表面いい感じ、中ふわふわ、牡蠣ぷりぷりのカキオコが完成だ。
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