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第5章 微妙に休まらないバカンス
第26話 乗合馬車は新型に
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翌日。俺達はまず、買い出しに出かける。
「向こうはただ建物だけの別荘で飯とかは自前だからさ。まずは市場で3日分の飯を買い込んでからだな」
「どうせなら外食でいいんじゃないですか」
自炊だと結局俺が作る羽目になりそうだ。最近はテディやフィオナもある程度出来るようになったけれど。
「ボリアスコの街は保養地だから外食がちょい高くてさ。外食はゼノアで食べた方が同じ値段で美味しいものが食える。だから自炊な」
なるほど。なら俺が出来るだけ楽できるようなメニューにさせてもらおう。取り敢えず朝と昼はスパゲティとピザ、お好みサンドイッチあたりだな。
でもピザパーティなら夜でも対応できるか。お好みサンドイッチもお好み素材を多めに用意すれば大丈夫だな。
しかし時間があるならやっぱり海鮮も外せない。酢飯で海鮮丼なんて食べてみたいが米はあるか。あったとしても今の俺は炊くことが出来るか。
そんな事を考えながら市場を回る。
ここゼノアはスティヴァレでも1,2を誇る貿易港だ。更に漁港もあったりなんてする。だから市場はスティヴァレでも最大級の品物の豊富さを誇っている訳だ。
本気になって探すとあるわあるわ。
米をまず2重買い込む。ビネガーや味醂なんて調味料も勿論購入。醤油代わりに魚醤《コラトゥーラ》も購入。そのままでは匂いはきついが加熱してハーブを加えればあまり気にならなくなる。
パンはミランダがいつもの軽食屋から美味しいパンを調達してくれた。だからあとは野菜と肉、魚、チーズだ。
ついに俺やフィオナも収納袋を購入したから重さを気にせずどんどん買える。だからいい調子で購入したところでちょうどいい時間になった。
「それじゃ乗合馬車のところまで行くぞ」
ボリアスコ行きの乗合馬車は11時半に市場近くのターミナルから出る。11時の鐘を聞いてから歩いて行けばちょうどいい筈だ。
のんびり歩いてターミナルへ。あちこちへ行く乗合馬車がそれぞれ発車を待っている。基本的に日のあるうちに着くようになっているから、この時間に出るものは基本的に中距離以下の路線が主だ。
「何か新しい馬車が多いね」
フィオナの言う通り、どう見ても新しい感じの馬車がほとんどだ。色を塗り直しても木部の傷や全体の形で新旧はわかる。俺自身この辺にあまり来ることがないからこれが普通かはよくわからないけれど。
「どうもうちの親父、大分儲けたようだな」
「どういう事でしょうか?」
「よく見てみろよテディ。どれも方向舵がついていてバネ式の振動軽減装置もついている」
「これってちょっと前にアシュが翻訳した奴だよね」
フィオナは気付いていたようだ。俺も途中で気付いたけれど。
「こんな事ならもっと親父から搾り取っておくべきだった」
「でもこれならきっと乗り心地も悪くないですわね」
「だね」
なんて話しながらボリアスコ行きを探す。
「お、あったあった」
待っていたのは20人乗り馬2頭の大型馬車だった。馬車が大型なのに馬が2頭なのは近距離路線だからだろうか。同じ大型馬車でも中距離路線のロンバルド行きは馬が4頭ついている。
「どうも、予約していたカンタータです」
「4人で小銀貨8枚だよ。席は空いているところで好きなところを選びな」
「なら前に座ろうぜ。景色が見える方がいい」
そんな訳で1列目の4人掛けにならんで陣取る。
ちなみにこの馬車の客席は4人掛けの前向きシートが5列という構造。屋根上に荷物も置けるが今回は各自が収納袋を使っているのでそこまで使う必要は無い。
「おじさんこの馬車新型だね。早くも導入したのかい」
早速ミランダが情報収集を始めた。
「ああ、乗り心地が全然違うし速度も速いしな。もうこの馬車じゃなきゃ仕事にならねえ。だから今はボリアスコ行きなんて短距離路線もみんなこの馬車だよ。何でもラツィオの方の商会が設計図を出してあちこちの工房で大々的に作っているらしいな」
「やっぱり速いんだ」
「ああ。同じ調子で扱っても平地なら倍近い速度で走るしな。乗り心地も段違いにいいぞ。今まで腰痛に悩んでいたのが嘘のようだ。その癖小回りも利くからな。2頭立てなら路地だって普通に入っていける」
なかなか好評のようだ。
ほぼ定員いっぱいに詰め込んで馬車は発車。確かに走り方が軽快に感じる。加速がスムーズだし振動も気にならない。
「馬車は船より乗り心地悪いって聞いたけれど、これなら馬車の方がいいよね」
ゼノアに来る際船酔いで苦しんだフィオナがそんな事を言う。
「いやちょっと前までの馬車はこんなんじゃなかったぞ。喋ると舌を噛みそうな感じだったからな。魔法をかけても眠れなかった位だ」
「そうですわ。実家の馬車は振動こそ革紐で直接響かないようにしていましたけれど、そのかわり左右の揺れが激しくて船どころじゃない気持ち悪さでした」
なら良かったよな。確かに鉄輪・サスペンション無しから空気入りゴムタイヤ・サスペンション有りなら確かに大分変わるだろう。なかなかいいものが広がって良かった。
俺は外の風景を眺める。
馬車は街中を抜けて海沿いの道へと入った。そのまま海の見える道を軽快に進んでいく。
「向こうはただ建物だけの別荘で飯とかは自前だからさ。まずは市場で3日分の飯を買い込んでからだな」
「どうせなら外食でいいんじゃないですか」
自炊だと結局俺が作る羽目になりそうだ。最近はテディやフィオナもある程度出来るようになったけれど。
「ボリアスコの街は保養地だから外食がちょい高くてさ。外食はゼノアで食べた方が同じ値段で美味しいものが食える。だから自炊な」
なるほど。なら俺が出来るだけ楽できるようなメニューにさせてもらおう。取り敢えず朝と昼はスパゲティとピザ、お好みサンドイッチあたりだな。
でもピザパーティなら夜でも対応できるか。お好みサンドイッチもお好み素材を多めに用意すれば大丈夫だな。
しかし時間があるならやっぱり海鮮も外せない。酢飯で海鮮丼なんて食べてみたいが米はあるか。あったとしても今の俺は炊くことが出来るか。
そんな事を考えながら市場を回る。
ここゼノアはスティヴァレでも1,2を誇る貿易港だ。更に漁港もあったりなんてする。だから市場はスティヴァレでも最大級の品物の豊富さを誇っている訳だ。
本気になって探すとあるわあるわ。
米をまず2重買い込む。ビネガーや味醂なんて調味料も勿論購入。醤油代わりに魚醤《コラトゥーラ》も購入。そのままでは匂いはきついが加熱してハーブを加えればあまり気にならなくなる。
パンはミランダがいつもの軽食屋から美味しいパンを調達してくれた。だからあとは野菜と肉、魚、チーズだ。
ついに俺やフィオナも収納袋を購入したから重さを気にせずどんどん買える。だからいい調子で購入したところでちょうどいい時間になった。
「それじゃ乗合馬車のところまで行くぞ」
ボリアスコ行きの乗合馬車は11時半に市場近くのターミナルから出る。11時の鐘を聞いてから歩いて行けばちょうどいい筈だ。
のんびり歩いてターミナルへ。あちこちへ行く乗合馬車がそれぞれ発車を待っている。基本的に日のあるうちに着くようになっているから、この時間に出るものは基本的に中距離以下の路線が主だ。
「何か新しい馬車が多いね」
フィオナの言う通り、どう見ても新しい感じの馬車がほとんどだ。色を塗り直しても木部の傷や全体の形で新旧はわかる。俺自身この辺にあまり来ることがないからこれが普通かはよくわからないけれど。
「どうもうちの親父、大分儲けたようだな」
「どういう事でしょうか?」
「よく見てみろよテディ。どれも方向舵がついていてバネ式の振動軽減装置もついている」
「これってちょっと前にアシュが翻訳した奴だよね」
フィオナは気付いていたようだ。俺も途中で気付いたけれど。
「こんな事ならもっと親父から搾り取っておくべきだった」
「でもこれならきっと乗り心地も悪くないですわね」
「だね」
なんて話しながらボリアスコ行きを探す。
「お、あったあった」
待っていたのは20人乗り馬2頭の大型馬車だった。馬車が大型なのに馬が2頭なのは近距離路線だからだろうか。同じ大型馬車でも中距離路線のロンバルド行きは馬が4頭ついている。
「どうも、予約していたカンタータです」
「4人で小銀貨8枚だよ。席は空いているところで好きなところを選びな」
「なら前に座ろうぜ。景色が見える方がいい」
そんな訳で1列目の4人掛けにならんで陣取る。
ちなみにこの馬車の客席は4人掛けの前向きシートが5列という構造。屋根上に荷物も置けるが今回は各自が収納袋を使っているのでそこまで使う必要は無い。
「おじさんこの馬車新型だね。早くも導入したのかい」
早速ミランダが情報収集を始めた。
「ああ、乗り心地が全然違うし速度も速いしな。もうこの馬車じゃなきゃ仕事にならねえ。だから今はボリアスコ行きなんて短距離路線もみんなこの馬車だよ。何でもラツィオの方の商会が設計図を出してあちこちの工房で大々的に作っているらしいな」
「やっぱり速いんだ」
「ああ。同じ調子で扱っても平地なら倍近い速度で走るしな。乗り心地も段違いにいいぞ。今まで腰痛に悩んでいたのが嘘のようだ。その癖小回りも利くからな。2頭立てなら路地だって普通に入っていける」
なかなか好評のようだ。
ほぼ定員いっぱいに詰め込んで馬車は発車。確かに走り方が軽快に感じる。加速がスムーズだし振動も気にならない。
「馬車は船より乗り心地悪いって聞いたけれど、これなら馬車の方がいいよね」
ゼノアに来る際船酔いで苦しんだフィオナがそんな事を言う。
「いやちょっと前までの馬車はこんなんじゃなかったぞ。喋ると舌を噛みそうな感じだったからな。魔法をかけても眠れなかった位だ」
「そうですわ。実家の馬車は振動こそ革紐で直接響かないようにしていましたけれど、そのかわり左右の揺れが激しくて船どころじゃない気持ち悪さでした」
なら良かったよな。確かに鉄輪・サスペンション無しから空気入りゴムタイヤ・サスペンション有りなら確かに大分変わるだろう。なかなかいいものが広がって良かった。
俺は外の風景を眺める。
馬車は街中を抜けて海沿いの道へと入った。そのまま海の見える道を軽快に進んでいく。
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