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第8章 熱闘・魔法武闘会
第52話 対ゴーレム戦と怪しい昼食会
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さて、本日は第4回戦、いわゆる準決勝だ。
礼をして俺はいつもよりやや端寄りの位置へ。相手も同様の場所に陣取る。
『3、2、1、試合開始!』
予想通り相手のオッタ―ビオさんは大量のゴーレムを召喚しはじめた。いかにも高性能な感じの青い金属製ゴーレムが出現しはじめる。
囲ませないのが一番いい。だから俺は最初から10倍速モードを起動して走り出す。
あ、まずい。いきなり詰んだ。3秒後にオッタービオさんのゴーレムが試合場の右側から左側まで一列埋め尽くすのが見えた。思った以上に早い召喚速度だ。
向こう側に抜けるのは間に合わない。ジャンプしたら魔法で狙い撃ちされる。仕方なく俺は一度戻って最初の位置へ。
最悪の場合はすり抜けを使わざるを得ない。しかしその前に他の手段が無いか模索してみよう。
なお一般的な攻撃魔法はどうせ通じないから使わない。俺が使える程度の魔法で撃破出来るなら今までの相手が撃破している筈だから。
幸いな事にゴーレムの移動速度は遅く人がゆっくり歩く程度。だからいくつかの手段を試す事は出来るだろう。
『土属性魔法、岩石落とし、起動!』
まずは定番のゴーレム対策、進路上に障害物を設置する方法だ。とりあえず俺の正面である試合場中央付近に巨大な岩山を落とす。
駄目か、オッタービオさんに抵抗《レジスト》されてしまった。そういえばオッタービオさんも普通に魔法を使えるのだな。
『金属性魔法、ゴーレム召喚、抵抗《レジスト》!』
抵抗《レジスト》をかけてみる。予想通り効かない。やはり使用しているのは通常のゴーレム魔法では無い模様だ。
それにしてもこんなに大量のゴーレムをどうやって操っているのだろう。
古代遺跡から希に出土するらしい自律型ゴーレムなら起動して簡単な指示を与えるだけで自動的に動いてくれる。ただそんな貴重品、せいぜい国に一体あるかどうかという代物。個人がこんなに大量に揃えることは不可能だ。
通常のゴーレムなら基本的に術者が操っている筈。だから操作できてせいぜい2~3体程度。それも農作業とか単純作業に使用する場合で、戦闘に使用するような場合は2体操作できるかどうかってところだ。
ちなみに現在召喚されているゴーレムは30体ちょうど。どう考えても操作できる数じゃない。
さて、考えているうちに敵ゴーレムが中央よりこちらまで進出してきた。ダメ元で色々やってみるか。最後はまあ、禁断のすり抜けをやるとして。
『空間操作、ベクトル変換、敵中央のゴーレム10体、実行』
消したり他の場所に移動させると怪しい魔法を使っているとばれてしまう。だから今回の空間操作魔法は前後入れ替えだ。
指定したゴーレムが一歩踏み出したと同時に方向を180度入れ替えるだけ。子供だましのようだが2~3秒の時間は稼げるだろう。
さて、次の手はどうしようか。そう思って俺は気づいた。転回させたゴーレムが再転回してこっちを向かない。向こう側へ向けてそのまま歩いている。
なら同じ事を他のゴーレムにもやってみよう。
『空間操作、ベクトル変換、敵中央の10体以外のゴーレム、実行』
よし、向こうを向いた。しかも奴らこっちを向こうとはしない。
いや、1体だけこっちを向いた。しかし1体だけなら怖くはない。俺はその気になれば10倍速で動ける。1体で追い詰める事は不可能だ。
向こう側は面白い状況になっている。オッタービオさんがゴーレムに迫られつつあるのだ。
無論オッタービオさんは俺と違いゴーレムを召喚した立場。だから抵抗《レジスト》で召喚を取り消す事が出来る。しかし、だ。
『風魔法、大風、実行! 水魔法、水撃、実行! 熱魔法、爆裂、実行! ……』
タイミングをあわせヴィンセントさん以上の高速で攻撃魔法を打ち込んでやる。しかしオッタービオさん、こっちを向いている1体のゴーレムで魔法を防いできた。
正面からでは駄目か。しかもこのゴーレム、思ったより俊敏。今も俺とオッタ―ビオさんの間に人が走る速度で移動してきた。
俺は全速力で走る。俺に向かっているゴーレムの速度は人が走るのと同程度。ゴーレムとしては驚異的な速さだ。しかし10倍速モードの俺なら余裕で逃げる事が出来る。
オッタ―ビオさんはもう六角形の底辺部分へ追いやられている。抵抗《レジスト》で中心のものからゴーレムを消去している状態だ。
どうやら召喚より抵抗《レジスト》の方が手間がかかる模様。余裕はほとんどないと見た。
『風魔法、大風、実行! 水魔法、水撃、実行! 熱魔法、爆裂、実行! ……』
3番目の爆裂魔法への抵抗《レジスト》が間に合わなかった。オッタービオさんは場外へと吹き飛ぶ。
『勝負あり。勝者、チャールズ・フォート・ジョウント選手』
何とかヤバ目の技を出さずにすんだな。俺は一安心しつつ礼をして会場を後にする。
「今のあのゴーレム、突然反対側を向いたのはチャールズさんの魔法でしょうか」
ナディアさんの台詞に俺は頷く。
「まあそうです」
「あのゴーレムの制御を乗っ取ったのでしょうか」
確かにそう考えるのが普通だよな。しかし残念ながら違う。
「俺がやったのはゴーレムを向こう側に向けただけ。あとは勝手にゴーレムがオッタービオさんに向かっていったんです」
「何故そうなったのでしょうか」
その辺は今はもう俺にも察しがついている。
「多分あのゴーレム、中央にいた1体以外は単純な命令を実行するだけなんだと思います。
● 正面に向かって歩く
● 前に人間がいたら通さないように動く
● 接近した場合は攻撃する
きっとその程度の簡単な命令だけを決めてそれに従っているだけなんです。まあ実際の制御はもう少し複雑な魔法で組み立てているのでしょうけれど。
そんな感じで動きは事前に決めた内容しか出来ない。だから急に反転されても動きを修正する事が出来なかったんだと思います」
「よくそれに気づきましたね」
「実は偶然です。ああそういう事かと試合が終わってから理解した状態ですね」
そんな事を話しながら控室へ。
今日は昼食を持参してきた。午後の試合を見るつもりだからだ。
でもその前に、俺は周りを見回す。やはり空間が歪み始めた。来たな。
「まさかゴーレムに裏切らせるとは酷いよな。ゴーレム使いにとって一番いやな負け方だろ、あれは」
もちろん陛下だ。今日は何故か自在袋をぶら下げている。
「裏切らせるというか、単なるオッタービオさんの設定ミスですよ」
「観衆はそうは見ないだろう。謎の魔法でゴーレムの制御を奪ったと思うんじゃないかな。ところで今日は第2試合も見ていくんだろ」
未来視で見やがったかな。しかし否定する事も無いだろう。
「ええ、ちょっと気になりましたから」
「なら時間はあるって事だよな」
陛下は持ってきた自在袋の中身をテーブルに展開。中から日本で言うところの重箱みたいなものがドン、ドン、ドンと出現。更には取り皿とかカップまで。
「ついでだから一緒に食事しようと思ってさ」
うーむ、豪華だ。Tボーンステーキだのバーニャカウダ用野菜とソースだの各種ハムやチーズだのコロッケっぽいのだのその他揚げ物各種だの色々と入っている。ついでだから俺達の弁当であるサンドイッチも加えて並べるのを手伝う。
ちらりとナディアさんの方を見てみたら何やら固まっていた。この状況についていけていない模様だ。まあ国王陛下なんて立場の人間が自分から料理を抱えてお気楽にやってくるなんて事、普通は無い。
「ナディアさん、深く考えない方がいいです。此処にいるのは陛下では無く単なる友人、その程度に認識してください」
「そうそう、それで頼む」
「……わかりました」
ちなみに陛下が持ってきた食事も3人用として用意されている。つまりナディアさんの分も用意してある訳だ。料理の質の異常な高さや高級ワインを持ち込むところはやっぱり陛下というか超高級貴族って感じだけれど。
なお龍2匹は家の警備を兼ねて置いてきているので問題ない。
「それじゃ食べるとしようか」
「そうですね」
まずは瓜をハムで巻いたものから頂こう。日本で言う処の生ハムメロンという奴だ。
うん、この塩気と瓜の味がなかなかいい感じ。これは甘いメロンよりこういったボケた味の瓜でやるのが正解だよな。
「君達が残っているのはやはりレジーナ選手の偵察かな」
「ええ。実際にこの目で確認したいと思いまして」
でもそう言えば陛下は昨日の試合を見た筈だよな。
「陛下はどう感じました。号外紙では攻撃をすり抜けたとありますが」
「ああ、あれは間違いなく当たる筈の攻撃だった」
なるほど。
「ならやはりあの魔法ですか」
「その可能性が高いとは思うのだけれど、ちょっと違うような気もするんだ」
「どんな風にかわかりますか」
「何というのかな。あの魔法にしては動きが単調というか、複雑さが足りないという気がしたんだ。うまく言い表せないけれどね。
ただここ以外の軸を使っていたのは間違いないと思う。すり抜けるにも、舞台を闇で包んだのもそれは感じた」
「つまりあの魔法以外で空間《あれ》をある程度操作できる魔法ですか」
「そんな感じだね。いずれにせよ一般には知られていない魔法だ」
うーむ。
「ただ僕はやはりアシュノール君より理解が足りないようだ。あのゴーレムを転回させた魔法、僕ではあそこまであっさり出来ないな。だからアシュノール君が午後の試合を見たら僕とは違う感想を持つかもしれない。
ただ午後の相手、バーガティ選手はソニア程の腕は無い。タイプとしては似ているのだけれどね。だから昨日のように技を見る事が出来るか少し不安だ」
空間操作以外で空間を操作できる攻撃魔法か。俺の知識にそんな魔法は無い。無論物の取り寄せ魔法とかは空間操作を伴うが、攻撃魔法に転用するには魔力効率が悪すぎて使えない筈。
うん、わからない事は考えても仕方ない。それより今はこの豪勢な食事を楽しもう。でもその前に一つ進言というか忠告だ。
「ナディアさん、せっかくですから思い切り食べないともったいないですよ。ここにいるのは陛下では無くあくまで友人のジョーダンさんだと思って」
「そうそう。せっかくうちの厨房の連中に特注して来たんだ。食べてくれないとさ」
でもそう簡単に陛下を単なる友人と見るのは難しいのかもしれない。俺もロッサーナ殿下相手なら少しは遠慮するだろうし。
礼をして俺はいつもよりやや端寄りの位置へ。相手も同様の場所に陣取る。
『3、2、1、試合開始!』
予想通り相手のオッタ―ビオさんは大量のゴーレムを召喚しはじめた。いかにも高性能な感じの青い金属製ゴーレムが出現しはじめる。
囲ませないのが一番いい。だから俺は最初から10倍速モードを起動して走り出す。
あ、まずい。いきなり詰んだ。3秒後にオッタービオさんのゴーレムが試合場の右側から左側まで一列埋め尽くすのが見えた。思った以上に早い召喚速度だ。
向こう側に抜けるのは間に合わない。ジャンプしたら魔法で狙い撃ちされる。仕方なく俺は一度戻って最初の位置へ。
最悪の場合はすり抜けを使わざるを得ない。しかしその前に他の手段が無いか模索してみよう。
なお一般的な攻撃魔法はどうせ通じないから使わない。俺が使える程度の魔法で撃破出来るなら今までの相手が撃破している筈だから。
幸いな事にゴーレムの移動速度は遅く人がゆっくり歩く程度。だからいくつかの手段を試す事は出来るだろう。
『土属性魔法、岩石落とし、起動!』
まずは定番のゴーレム対策、進路上に障害物を設置する方法だ。とりあえず俺の正面である試合場中央付近に巨大な岩山を落とす。
駄目か、オッタービオさんに抵抗《レジスト》されてしまった。そういえばオッタービオさんも普通に魔法を使えるのだな。
『金属性魔法、ゴーレム召喚、抵抗《レジスト》!』
抵抗《レジスト》をかけてみる。予想通り効かない。やはり使用しているのは通常のゴーレム魔法では無い模様だ。
それにしてもこんなに大量のゴーレムをどうやって操っているのだろう。
古代遺跡から希に出土するらしい自律型ゴーレムなら起動して簡単な指示を与えるだけで自動的に動いてくれる。ただそんな貴重品、せいぜい国に一体あるかどうかという代物。個人がこんなに大量に揃えることは不可能だ。
通常のゴーレムなら基本的に術者が操っている筈。だから操作できてせいぜい2~3体程度。それも農作業とか単純作業に使用する場合で、戦闘に使用するような場合は2体操作できるかどうかってところだ。
ちなみに現在召喚されているゴーレムは30体ちょうど。どう考えても操作できる数じゃない。
さて、考えているうちに敵ゴーレムが中央よりこちらまで進出してきた。ダメ元で色々やってみるか。最後はまあ、禁断のすり抜けをやるとして。
『空間操作、ベクトル変換、敵中央のゴーレム10体、実行』
消したり他の場所に移動させると怪しい魔法を使っているとばれてしまう。だから今回の空間操作魔法は前後入れ替えだ。
指定したゴーレムが一歩踏み出したと同時に方向を180度入れ替えるだけ。子供だましのようだが2~3秒の時間は稼げるだろう。
さて、次の手はどうしようか。そう思って俺は気づいた。転回させたゴーレムが再転回してこっちを向かない。向こう側へ向けてそのまま歩いている。
なら同じ事を他のゴーレムにもやってみよう。
『空間操作、ベクトル変換、敵中央の10体以外のゴーレム、実行』
よし、向こうを向いた。しかも奴らこっちを向こうとはしない。
いや、1体だけこっちを向いた。しかし1体だけなら怖くはない。俺はその気になれば10倍速で動ける。1体で追い詰める事は不可能だ。
向こう側は面白い状況になっている。オッタービオさんがゴーレムに迫られつつあるのだ。
無論オッタービオさんは俺と違いゴーレムを召喚した立場。だから抵抗《レジスト》で召喚を取り消す事が出来る。しかし、だ。
『風魔法、大風、実行! 水魔法、水撃、実行! 熱魔法、爆裂、実行! ……』
タイミングをあわせヴィンセントさん以上の高速で攻撃魔法を打ち込んでやる。しかしオッタービオさん、こっちを向いている1体のゴーレムで魔法を防いできた。
正面からでは駄目か。しかもこのゴーレム、思ったより俊敏。今も俺とオッタ―ビオさんの間に人が走る速度で移動してきた。
俺は全速力で走る。俺に向かっているゴーレムの速度は人が走るのと同程度。ゴーレムとしては驚異的な速さだ。しかし10倍速モードの俺なら余裕で逃げる事が出来る。
オッタ―ビオさんはもう六角形の底辺部分へ追いやられている。抵抗《レジスト》で中心のものからゴーレムを消去している状態だ。
どうやら召喚より抵抗《レジスト》の方が手間がかかる模様。余裕はほとんどないと見た。
『風魔法、大風、実行! 水魔法、水撃、実行! 熱魔法、爆裂、実行! ……』
3番目の爆裂魔法への抵抗《レジスト》が間に合わなかった。オッタービオさんは場外へと吹き飛ぶ。
『勝負あり。勝者、チャールズ・フォート・ジョウント選手』
何とかヤバ目の技を出さずにすんだな。俺は一安心しつつ礼をして会場を後にする。
「今のあのゴーレム、突然反対側を向いたのはチャールズさんの魔法でしょうか」
ナディアさんの台詞に俺は頷く。
「まあそうです」
「あのゴーレムの制御を乗っ取ったのでしょうか」
確かにそう考えるのが普通だよな。しかし残念ながら違う。
「俺がやったのはゴーレムを向こう側に向けただけ。あとは勝手にゴーレムがオッタービオさんに向かっていったんです」
「何故そうなったのでしょうか」
その辺は今はもう俺にも察しがついている。
「多分あのゴーレム、中央にいた1体以外は単純な命令を実行するだけなんだと思います。
● 正面に向かって歩く
● 前に人間がいたら通さないように動く
● 接近した場合は攻撃する
きっとその程度の簡単な命令だけを決めてそれに従っているだけなんです。まあ実際の制御はもう少し複雑な魔法で組み立てているのでしょうけれど。
そんな感じで動きは事前に決めた内容しか出来ない。だから急に反転されても動きを修正する事が出来なかったんだと思います」
「よくそれに気づきましたね」
「実は偶然です。ああそういう事かと試合が終わってから理解した状態ですね」
そんな事を話しながら控室へ。
今日は昼食を持参してきた。午後の試合を見るつもりだからだ。
でもその前に、俺は周りを見回す。やはり空間が歪み始めた。来たな。
「まさかゴーレムに裏切らせるとは酷いよな。ゴーレム使いにとって一番いやな負け方だろ、あれは」
もちろん陛下だ。今日は何故か自在袋をぶら下げている。
「裏切らせるというか、単なるオッタービオさんの設定ミスですよ」
「観衆はそうは見ないだろう。謎の魔法でゴーレムの制御を奪ったと思うんじゃないかな。ところで今日は第2試合も見ていくんだろ」
未来視で見やがったかな。しかし否定する事も無いだろう。
「ええ、ちょっと気になりましたから」
「なら時間はあるって事だよな」
陛下は持ってきた自在袋の中身をテーブルに展開。中から日本で言うところの重箱みたいなものがドン、ドン、ドンと出現。更には取り皿とかカップまで。
「ついでだから一緒に食事しようと思ってさ」
うーむ、豪華だ。Tボーンステーキだのバーニャカウダ用野菜とソースだの各種ハムやチーズだのコロッケっぽいのだのその他揚げ物各種だの色々と入っている。ついでだから俺達の弁当であるサンドイッチも加えて並べるのを手伝う。
ちらりとナディアさんの方を見てみたら何やら固まっていた。この状況についていけていない模様だ。まあ国王陛下なんて立場の人間が自分から料理を抱えてお気楽にやってくるなんて事、普通は無い。
「ナディアさん、深く考えない方がいいです。此処にいるのは陛下では無く単なる友人、その程度に認識してください」
「そうそう、それで頼む」
「……わかりました」
ちなみに陛下が持ってきた食事も3人用として用意されている。つまりナディアさんの分も用意してある訳だ。料理の質の異常な高さや高級ワインを持ち込むところはやっぱり陛下というか超高級貴族って感じだけれど。
なお龍2匹は家の警備を兼ねて置いてきているので問題ない。
「それじゃ食べるとしようか」
「そうですね」
まずは瓜をハムで巻いたものから頂こう。日本で言う処の生ハムメロンという奴だ。
うん、この塩気と瓜の味がなかなかいい感じ。これは甘いメロンよりこういったボケた味の瓜でやるのが正解だよな。
「君達が残っているのはやはりレジーナ選手の偵察かな」
「ええ。実際にこの目で確認したいと思いまして」
でもそう言えば陛下は昨日の試合を見た筈だよな。
「陛下はどう感じました。号外紙では攻撃をすり抜けたとありますが」
「ああ、あれは間違いなく当たる筈の攻撃だった」
なるほど。
「ならやはりあの魔法ですか」
「その可能性が高いとは思うのだけれど、ちょっと違うような気もするんだ」
「どんな風にかわかりますか」
「何というのかな。あの魔法にしては動きが単調というか、複雑さが足りないという気がしたんだ。うまく言い表せないけれどね。
ただここ以外の軸を使っていたのは間違いないと思う。すり抜けるにも、舞台を闇で包んだのもそれは感じた」
「つまりあの魔法以外で空間《あれ》をある程度操作できる魔法ですか」
「そんな感じだね。いずれにせよ一般には知られていない魔法だ」
うーむ。
「ただ僕はやはりアシュノール君より理解が足りないようだ。あのゴーレムを転回させた魔法、僕ではあそこまであっさり出来ないな。だからアシュノール君が午後の試合を見たら僕とは違う感想を持つかもしれない。
ただ午後の相手、バーガティ選手はソニア程の腕は無い。タイプとしては似ているのだけれどね。だから昨日のように技を見る事が出来るか少し不安だ」
空間操作以外で空間を操作できる攻撃魔法か。俺の知識にそんな魔法は無い。無論物の取り寄せ魔法とかは空間操作を伴うが、攻撃魔法に転用するには魔力効率が悪すぎて使えない筈。
うん、わからない事は考えても仕方ない。それより今はこの豪勢な食事を楽しもう。でもその前に一つ進言というか忠告だ。
「ナディアさん、せっかくですから思い切り食べないともったいないですよ。ここにいるのは陛下では無くあくまで友人のジョーダンさんだと思って」
「そうそう。せっかくうちの厨房の連中に特注して来たんだ。食べてくれないとさ」
でもそう簡単に陛下を単なる友人と見るのは難しいのかもしれない。俺もロッサーナ殿下相手なら少しは遠慮するだろうし。
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