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第8章 熱闘・魔法武闘会
第55話おまけ 信じる者は救われる?
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昨晩は誤解をとくのが大変だったのだが、それはまあおいておいて。事務所でいつも通り翻訳をしながらふと思う。
「それにしても魔法っていったい何なんだろうな」
俺の口から漏れたつぶやきが聞こえてしまったようだ。
「それってどういう意味かな」
フィオナが尋ねてくる。
「いやさ。俺の魔法でわかる通り、本を読んで得られた知識で新しい魔法を覚える事が出来るだろ。でもその知識ってよく考えれば今までの魔法の知識とは違うところから出ている筈なんだ。魔法の元になる火水土風の元素があって、更に同じような魔素があってという考え方とは。でも結果的にはどっちでも魔法が使える。それってつじつまがあわないんじゃないかと思ってさ」
例えばレジーナさんは闇魔法として空間操作を限定的にだけれども使える。彼女は闇魔法の正体が限定軸使用の空間操作だと知らないが、結果的に近い事が出来るわけだ。
正しくない考えでも正しい考えでも同じ魔法を起動できる。そのあたりが気になったのだ。
「確かにそうだね。火の元素があると考えても、神々から火の力を与えられたと考えても、アシュの知識のように運動が熱になるという考えでもどれでも火の魔法を起動できる。
実は昔からその疑問はあったんだよ。それに対して既にこうではないかって考えもあるんだ。魔法を教えるのに支障が起きるから公にされていないだけで。
厳密な証明は出来ないけれどね。状況証拠から魔法研究者の間では暗黙の了解とされていたりするんだよ」
おっと、既に答えがある疑問だったのか。
「それはどういう考えなのでしょうか」
テディも気になったらしい。
「これを明らかにすると個々の魔法の力が落ちてしまう可能性がある。だから基本的にはこの結論に辿りついた人にしか教えないという事になっているんだけれどね。実際には僕が知っている位だからまあ、知っている人は知っているんだろうと思う。
この考え方は最初に唱えた人の名前をとって『マルシリオ予想』と呼ばれている。その内容は略して言えば『信じる処に魔法は生じる』、それだけだよ」
そんなに略されると具体的にわかりにくい。その事はフィオナもわかっているようだ。一呼吸おいて説明は続く。
「もっと丁寧に言うとね、『内容がどうであれ、それが真実だと術者が信じていればその信じる力によって魔法は生じる』という感じかな。
だから、
〇 熱は運動から生じていると考えても
〇 熱の素となる元素から生じると思っても
〇 魔法が神からの恩寵だと信じても
術を唱える本人がそれを信じている限り魔法は起動できるんだよ。マルシリオ予想によればね」
おいおい待ってくれ。それはおかしいんじゃないかと本当は言いたい。
でもその理論で説明すれば確かに納得は出来る。いや確かにそうだけれど……
「今ひとつ納得がいかないですわ」
テディの台詞に俺も頷く。
「だよね。昔は僕もそう思っていたんだ。それじゃ魔法というものが存在する世界というのは理論や理屈が成り立たない、いい加減な世界だという事にもなりかねない。世界はもっと納得の行くような仕組みで出来ているんじゃ無いかってさ。
でもそのうち僕も少し考え方が変わったんだ。実は世界というのはそんな確かなものじゃないのかもしれないって。
ひとつ命題を出すよ。『森の中でだれにも観察されずに木は倒れた。その時倒れた音は存在したのだろうか』。皆はどう思う?」
何やら前世でも同じ命題があったような気がする。
「それはきっと音はしたと思いますわ。木が倒れたのですから」
「本当かな。誰も観察していないんだよ」
この辺はぐちぐちやると面倒くさいからぶった切らせて貰おう。
「この世界、俺たちが物質等を知覚して存在しているとする世界は、神か何者かが俺たちに与えた観念でしか無い。つまり世界とは観念でしかなく実態のあるものとしては存在しない。そんなところか」
イデアリスムなお約束だ。フィオナは頷く。
「アシュの知っている世界にも同じような議論があったんだね。そんな話だよ。
もっと具体的に言うとね。例えば僕がこの机を見て、こうやってたたいて見て堅くて丈夫な机だなと観察したとするよね。でも見たという事は視覚で感じたという事だし、叩いて感じたという事は触覚だ。つまり僕はこの机について、結局のところそういった感覚でしかわからない訳だ。世界というのはそういった感覚で成り立っているものに過ぎない。ものの実体そのものじゃなくてね。
突き詰めるとそういう考えだよ」
「でも私はフィオナの感覚と関係なく私として実在していますわ」
テディ、わかっているのかわかっていないのか更にお約束な命題を投げてきた。
「うん。だから確実なものとして『それを認識している自分』からスタートしなければならない訳だ。これ以上の説明は面倒だし実際的じゃないから省くよ。でもこれで自分が信じる、認識するという事の重大さがなんとなくわかるよね。そういった事が魔法の根源に関わっているのでは無いか。つまりはそういう事だよ」
我思う故に我ありか。なにやら非常に話が面倒くさくなった。だから俺は元の場所に話を戻してやる事にする。
「つまりは本人が信じている限り魔法は発動するという事だな。
たとえそれが、
○ 邪神モッコスや邪神セイバーの御力と信じても
○ 魔法こそがこの世界の原始的な力でありそれが全ての実態であると信じても
○ 世界を成り立つ真の法則なりを仮に知ってその元に起動させたとしても
それを術者が本気で信じている限り魔法は発動すると」
「そういう事だね。ただこの考えが浸透すると『私の考えは正しくないかもしれないから魔法が使えないかもしれない』なんて不安で魔法を使えなくなる人がたまにいるからね。その辺他言無用だよ」
なるほど。
「納得はしないですけれど理解はしましたわ」
「まあ僕も実際はそういう感じだけれどね」
なるほど。俺も同意という意味で頷いた。
「それにしても魔法っていったい何なんだろうな」
俺の口から漏れたつぶやきが聞こえてしまったようだ。
「それってどういう意味かな」
フィオナが尋ねてくる。
「いやさ。俺の魔法でわかる通り、本を読んで得られた知識で新しい魔法を覚える事が出来るだろ。でもその知識ってよく考えれば今までの魔法の知識とは違うところから出ている筈なんだ。魔法の元になる火水土風の元素があって、更に同じような魔素があってという考え方とは。でも結果的にはどっちでも魔法が使える。それってつじつまがあわないんじゃないかと思ってさ」
例えばレジーナさんは闇魔法として空間操作を限定的にだけれども使える。彼女は闇魔法の正体が限定軸使用の空間操作だと知らないが、結果的に近い事が出来るわけだ。
正しくない考えでも正しい考えでも同じ魔法を起動できる。そのあたりが気になったのだ。
「確かにそうだね。火の元素があると考えても、神々から火の力を与えられたと考えても、アシュの知識のように運動が熱になるという考えでもどれでも火の魔法を起動できる。
実は昔からその疑問はあったんだよ。それに対して既にこうではないかって考えもあるんだ。魔法を教えるのに支障が起きるから公にされていないだけで。
厳密な証明は出来ないけれどね。状況証拠から魔法研究者の間では暗黙の了解とされていたりするんだよ」
おっと、既に答えがある疑問だったのか。
「それはどういう考えなのでしょうか」
テディも気になったらしい。
「これを明らかにすると個々の魔法の力が落ちてしまう可能性がある。だから基本的にはこの結論に辿りついた人にしか教えないという事になっているんだけれどね。実際には僕が知っている位だからまあ、知っている人は知っているんだろうと思う。
この考え方は最初に唱えた人の名前をとって『マルシリオ予想』と呼ばれている。その内容は略して言えば『信じる処に魔法は生じる』、それだけだよ」
そんなに略されると具体的にわかりにくい。その事はフィオナもわかっているようだ。一呼吸おいて説明は続く。
「もっと丁寧に言うとね、『内容がどうであれ、それが真実だと術者が信じていればその信じる力によって魔法は生じる』という感じかな。
だから、
〇 熱は運動から生じていると考えても
〇 熱の素となる元素から生じると思っても
〇 魔法が神からの恩寵だと信じても
術を唱える本人がそれを信じている限り魔法は起動できるんだよ。マルシリオ予想によればね」
おいおい待ってくれ。それはおかしいんじゃないかと本当は言いたい。
でもその理論で説明すれば確かに納得は出来る。いや確かにそうだけれど……
「今ひとつ納得がいかないですわ」
テディの台詞に俺も頷く。
「だよね。昔は僕もそう思っていたんだ。それじゃ魔法というものが存在する世界というのは理論や理屈が成り立たない、いい加減な世界だという事にもなりかねない。世界はもっと納得の行くような仕組みで出来ているんじゃ無いかってさ。
でもそのうち僕も少し考え方が変わったんだ。実は世界というのはそんな確かなものじゃないのかもしれないって。
ひとつ命題を出すよ。『森の中でだれにも観察されずに木は倒れた。その時倒れた音は存在したのだろうか』。皆はどう思う?」
何やら前世でも同じ命題があったような気がする。
「それはきっと音はしたと思いますわ。木が倒れたのですから」
「本当かな。誰も観察していないんだよ」
この辺はぐちぐちやると面倒くさいからぶった切らせて貰おう。
「この世界、俺たちが物質等を知覚して存在しているとする世界は、神か何者かが俺たちに与えた観念でしか無い。つまり世界とは観念でしかなく実態のあるものとしては存在しない。そんなところか」
イデアリスムなお約束だ。フィオナは頷く。
「アシュの知っている世界にも同じような議論があったんだね。そんな話だよ。
もっと具体的に言うとね。例えば僕がこの机を見て、こうやってたたいて見て堅くて丈夫な机だなと観察したとするよね。でも見たという事は視覚で感じたという事だし、叩いて感じたという事は触覚だ。つまり僕はこの机について、結局のところそういった感覚でしかわからない訳だ。世界というのはそういった感覚で成り立っているものに過ぎない。ものの実体そのものじゃなくてね。
突き詰めるとそういう考えだよ」
「でも私はフィオナの感覚と関係なく私として実在していますわ」
テディ、わかっているのかわかっていないのか更にお約束な命題を投げてきた。
「うん。だから確実なものとして『それを認識している自分』からスタートしなければならない訳だ。これ以上の説明は面倒だし実際的じゃないから省くよ。でもこれで自分が信じる、認識するという事の重大さがなんとなくわかるよね。そういった事が魔法の根源に関わっているのでは無いか。つまりはそういう事だよ」
我思う故に我ありか。なにやら非常に話が面倒くさくなった。だから俺は元の場所に話を戻してやる事にする。
「つまりは本人が信じている限り魔法は発動するという事だな。
たとえそれが、
○ 邪神モッコスや邪神セイバーの御力と信じても
○ 魔法こそがこの世界の原始的な力でありそれが全ての実態であると信じても
○ 世界を成り立つ真の法則なりを仮に知ってその元に起動させたとしても
それを術者が本気で信じている限り魔法は発動すると」
「そういう事だね。ただこの考えが浸透すると『私の考えは正しくないかもしれないから魔法が使えないかもしれない』なんて不安で魔法を使えなくなる人がたまにいるからね。その辺他言無用だよ」
なるほど。
「納得はしないですけれど理解はしましたわ」
「まあ僕も実際はそういう感じだけれどね」
なるほど。俺も同意という意味で頷いた。
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