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第9章 冬休みはリゾートへ
第56話 冬のリゾート計画
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魔法武闘会騒動があったにも関わらず、仕事そのものにはかなり余裕がある。俺が武闘会に備えてあらかじめある程度仕事をやっておいたというのも理由のひとつ。
でもどちらかというとミランダが仕事量を調整してくれているおかげだ。夏頃の酷い状態に懲りたおかげだろうか。
花の名前シリーズはついに第15冊目、『フィリカリスⅢ』まで俺の担当する訳は終了した。あとはテディの仕事だがこちらも順調。予定通り最終巻が来年3月までには無事刊行となりそうだ。
またフィオナ担当の医学書追補版も需要が多そうな難病系統はほぼ終わった。今後は医療現場等からの依頼に応じて少しずつ増やしていく予定になっている。次に出版を希望する症状とか部位とかの要望は既に多数来てはいるのだけれども。
あと児童書が1冊まもなく仕上がる。定番『エルマーのぼうけん』を訳したものだが、これはなんとナディアさんが校正から仕上げまで担当だ。
試しにやってもらおうという事でお願いしたのだが、俺が見た限りではなかなかいい感じ。
「そういえば元文学少女だって陛下が言っていましたね」
「自分で本を作る側になるとは思いませんでしたが、なかなか面白いですね」
テディの負担も減ったしいいことずくめだ。
サラの試験勉強も順調。
「既に基本が完全ですから教えるのも楽ですわ」
「中等学校3年の時の僕より出来がいいかな」
なんてテディやフィオナが言っている位だし。
なおサラの第一志望はゼノアにあるリビエール領立の中央高級学校だそうだ。
「ここから通いやすいですし、校風も一番あっていそうです」
確かにそれはいいかもしれない。この家から領立中央高級学校までは300腕程度と近いし。学校のランクも国立ゼノア校と並ぶ名門だ。
そんなある日の夕食時。
「さて、この冬こそ優雅なリゾートを楽しみたいと思うが、皆どうかな?」
ミランダからそんな提案があった。
「いいね、それ」
「賛成ですわ」
フィオナとテディはすぐにそう反応。
「勿論ナディアさんとサラも一緒だからな。念のため言っておくと」
「いいのですか」
「当然ですわ」
サラの疑問はあっさりテディに肯定される。
「どのような事をするのでしょうか?」
「前回は海沿いの別荘を借りて、2泊3日で泳いだり貝をとったりしたよ。でも今回はどんな予定なのかな」
基本的にこういった事の采配は全てミランダの担当だ。他にこういった事に使える伝手を持っている者がいないから仕方ない。前回は海辺の豪華別荘だったけれど今回は何処だろう。
「その前に一つ確認するけれどさ。アシュの魔法でここの全員を移動させる事は出来るよな」
「6人程度なら大丈夫だと思う。試した事は無いけれど」
今までの感じと魔力消費から見て問題ないだろう。
「なら場所を発表する前に試してみよう。全員起立、っと」
ミランダの号令で全員立ったところで俺は呪文を唱える。
「空間操作! 遠隔移動、対象この部屋内の全員、場所スタリエーノの丘。起動!」
おなじみ足元の感覚が消えて落下するような感覚。特に問題なく魔法は起動した。一瞬後足裏に枯葉のざくっとした感触、夜空に光る月と星。
「凄いです。こんな魔法があるんですね」
「確かに凄いけれどちょい寒いよな。戻ろうか」
はいはい。再び魔法を起動して食堂へ。再びミランダのターンとなる。
「この魔法を使えば移動の時間と経費は無視できる訳だ。そして寒い時期はやっぱり暖かい処に行きたい。でもどうせなら雪のように冬ならではのものも味わいたい。そう思わないか?」
「確かに思うけれどさ。それって矛盾していないかな?」
「ふふふふふ、矛盾しているかは別として、今の私の意見に反対な人は挙手!」
誰もいない。しかしだ。
「そろそろ種明かしをして欲しいですわ」
テディの意見にミランダ以外の全員がうんうんと頷く。
「実はさ。ロンバルドから夏は北へ馬車で1日。冬は途中で馬車からソリに乗り換えて同じく1日の距離にバルマンという場所があってさ。夏涼しくて温泉も出るというのでリゾート地を造ったそうなんだ。でも夏だけじゃ利益が少ないという事でさ。冬でもリゾートとして楽しめる何かがないかと相談を受けたんだ」
何か怪しい気配がしてきたぞ。
「参考までに依頼してきたのはどなたですの」
「クレモナ商会の会頭からの依頼というかお願いだ。クレモナ商会は傘下にアワコダ社がある関係で結構世話になっていてさ。考える代わりに冬になって営業休止中のテルメ館と、直結する大型宿泊棟を好きに使っていいそうだ。交通費として往復の馬車貸切代相当の小金貨4枚と食費やその他経費として小金貨5枚を補助、更に出て来たアイディア次第で追加報酬をつけてくれる約束だ」
「テルメ館を自由に使えるのは面白いけれど、雪山の中ではあまり面白い事は出来ないよね」
「だよな。でもテルメ館を自由に使えるだけでも面白いかなと思って」
いや待てフィオナとミランダ。それはそれなりに面白い事が出来るかもしれない。でもそれには色々準備が必要になる。
それにだ。
「地形を少しいじったりするのは大丈夫か?」
「あの辺の地権は全てクレモナ商会がおさえているそうだ。だから山を削ったり木を切ったりも自由だな。何か思いついたか、アシュ?」
「出来るかどうかはわからないけれどさ。あと現地の地形図とかはあるか?」
「あるぞ。建物配置も入った現地周辺の詳細な地図も受け取って来た」
準備がいい奴だ。最初から俺の知識を酷使するつもりだったな。
でも雪遊びはちょっとやってみたい気がする。温泉なんてのも楽しみだ。だからここは話に乗ってやろう。
「色々と道具を作っていく必要があるかな。地形次第だけれどさ」
「現地はなだらかな斜面の谷間。建物は一番下から尾根側ちょい上ったところにある。あと馬車道、冬はそり道だけれどしっかりまで現地にあるそうだ。あと近くの高い山まで歩道を整備して夏のリゾートでは観光できるようにしているって言っていたな。冬は雪が積もっているから歩けないだろうけれど」
よし、なら色々出来る可能性が高いな。
幸い急ぎの仕事は何もない。ならしっかりと準備をしておいてやろう。
でもどちらかというとミランダが仕事量を調整してくれているおかげだ。夏頃の酷い状態に懲りたおかげだろうか。
花の名前シリーズはついに第15冊目、『フィリカリスⅢ』まで俺の担当する訳は終了した。あとはテディの仕事だがこちらも順調。予定通り最終巻が来年3月までには無事刊行となりそうだ。
またフィオナ担当の医学書追補版も需要が多そうな難病系統はほぼ終わった。今後は医療現場等からの依頼に応じて少しずつ増やしていく予定になっている。次に出版を希望する症状とか部位とかの要望は既に多数来てはいるのだけれども。
あと児童書が1冊まもなく仕上がる。定番『エルマーのぼうけん』を訳したものだが、これはなんとナディアさんが校正から仕上げまで担当だ。
試しにやってもらおうという事でお願いしたのだが、俺が見た限りではなかなかいい感じ。
「そういえば元文学少女だって陛下が言っていましたね」
「自分で本を作る側になるとは思いませんでしたが、なかなか面白いですね」
テディの負担も減ったしいいことずくめだ。
サラの試験勉強も順調。
「既に基本が完全ですから教えるのも楽ですわ」
「中等学校3年の時の僕より出来がいいかな」
なんてテディやフィオナが言っている位だし。
なおサラの第一志望はゼノアにあるリビエール領立の中央高級学校だそうだ。
「ここから通いやすいですし、校風も一番あっていそうです」
確かにそれはいいかもしれない。この家から領立中央高級学校までは300腕程度と近いし。学校のランクも国立ゼノア校と並ぶ名門だ。
そんなある日の夕食時。
「さて、この冬こそ優雅なリゾートを楽しみたいと思うが、皆どうかな?」
ミランダからそんな提案があった。
「いいね、それ」
「賛成ですわ」
フィオナとテディはすぐにそう反応。
「勿論ナディアさんとサラも一緒だからな。念のため言っておくと」
「いいのですか」
「当然ですわ」
サラの疑問はあっさりテディに肯定される。
「どのような事をするのでしょうか?」
「前回は海沿いの別荘を借りて、2泊3日で泳いだり貝をとったりしたよ。でも今回はどんな予定なのかな」
基本的にこういった事の采配は全てミランダの担当だ。他にこういった事に使える伝手を持っている者がいないから仕方ない。前回は海辺の豪華別荘だったけれど今回は何処だろう。
「その前に一つ確認するけれどさ。アシュの魔法でここの全員を移動させる事は出来るよな」
「6人程度なら大丈夫だと思う。試した事は無いけれど」
今までの感じと魔力消費から見て問題ないだろう。
「なら場所を発表する前に試してみよう。全員起立、っと」
ミランダの号令で全員立ったところで俺は呪文を唱える。
「空間操作! 遠隔移動、対象この部屋内の全員、場所スタリエーノの丘。起動!」
おなじみ足元の感覚が消えて落下するような感覚。特に問題なく魔法は起動した。一瞬後足裏に枯葉のざくっとした感触、夜空に光る月と星。
「凄いです。こんな魔法があるんですね」
「確かに凄いけれどちょい寒いよな。戻ろうか」
はいはい。再び魔法を起動して食堂へ。再びミランダのターンとなる。
「この魔法を使えば移動の時間と経費は無視できる訳だ。そして寒い時期はやっぱり暖かい処に行きたい。でもどうせなら雪のように冬ならではのものも味わいたい。そう思わないか?」
「確かに思うけれどさ。それって矛盾していないかな?」
「ふふふふふ、矛盾しているかは別として、今の私の意見に反対な人は挙手!」
誰もいない。しかしだ。
「そろそろ種明かしをして欲しいですわ」
テディの意見にミランダ以外の全員がうんうんと頷く。
「実はさ。ロンバルドから夏は北へ馬車で1日。冬は途中で馬車からソリに乗り換えて同じく1日の距離にバルマンという場所があってさ。夏涼しくて温泉も出るというのでリゾート地を造ったそうなんだ。でも夏だけじゃ利益が少ないという事でさ。冬でもリゾートとして楽しめる何かがないかと相談を受けたんだ」
何か怪しい気配がしてきたぞ。
「参考までに依頼してきたのはどなたですの」
「クレモナ商会の会頭からの依頼というかお願いだ。クレモナ商会は傘下にアワコダ社がある関係で結構世話になっていてさ。考える代わりに冬になって営業休止中のテルメ館と、直結する大型宿泊棟を好きに使っていいそうだ。交通費として往復の馬車貸切代相当の小金貨4枚と食費やその他経費として小金貨5枚を補助、更に出て来たアイディア次第で追加報酬をつけてくれる約束だ」
「テルメ館を自由に使えるのは面白いけれど、雪山の中ではあまり面白い事は出来ないよね」
「だよな。でもテルメ館を自由に使えるだけでも面白いかなと思って」
いや待てフィオナとミランダ。それはそれなりに面白い事が出来るかもしれない。でもそれには色々準備が必要になる。
それにだ。
「地形を少しいじったりするのは大丈夫か?」
「あの辺の地権は全てクレモナ商会がおさえているそうだ。だから山を削ったり木を切ったりも自由だな。何か思いついたか、アシュ?」
「出来るかどうかはわからないけれどさ。あと現地の地形図とかはあるか?」
「あるぞ。建物配置も入った現地周辺の詳細な地図も受け取って来た」
準備がいい奴だ。最初から俺の知識を酷使するつもりだったな。
でも雪遊びはちょっとやってみたい気がする。温泉なんてのも楽しみだ。だからここは話に乗ってやろう。
「色々と道具を作っていく必要があるかな。地形次第だけれどさ」
「現地はなだらかな斜面の谷間。建物は一番下から尾根側ちょい上ったところにある。あと馬車道、冬はそり道だけれどしっかりまで現地にあるそうだ。あと近くの高い山まで歩道を整備して夏のリゾートでは観光できるようにしているって言っていたな。冬は雪が積もっているから歩けないだろうけれど」
よし、なら色々出来る可能性が高いな。
幸い急ぎの仕事は何もない。ならしっかりと準備をしておいてやろう。
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