異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第9章 冬休みはリゾートへ

第61話 温泉施設の改善案

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 着替える前に風呂の方を確認。
 扉を開けると朝とは比べ物にならない程の熱気。巨大な浴槽はお湯があふれ掛け流し状態だ。

「これなら大丈夫だね」

「だな」

 ミランダは頷いて、そしていきなり服を脱ぎ始める。

「おい待てミランダ何やっているんだ」

「いや、よく考えたら他に客はいないだろ。なら別に水着を着る必要も無いよな」

 確かに、っていやいや待て!

「俺もいるしサラもいるだろ」

「いいじゃんそれくらい」

「駄目ですわ」

「そうですね」

「だね」

「……わかったよ」

 思いとどまってくれたみたいだ。

「じゃあ俺は着替えてくるから」

 男子用のロッカールームらしい場所へ逃げさせてもらう。
 着替えた後念のため5分程度待って、それから浴槽の方へ。ミランダを含め水着を着用していたので一安心。
 さて、それでは温泉施設を一通り確認と行くか。

 テニスコート1面よりちょっと広い室内の中に大きい浴槽が4つ。誰も入っていない手前側の浴槽はひざ下位の深さでややぬるめ。これは子供用かな。広さは2番目に狭い。

 次はテディとサラがのんびりしている場所。温度がぬるめで中で座れば大体肩くらいまでの深さ。これがメインの浴槽らしく全体の半分くらいを占めている。

「これくらいの温度が長く入れて疲れもとれる気がしますわ」

「体を思い切りのばせて快適です」

「アシュもどう?」

 確かに一番正しい気もするな。でも最初だから他も見てみよう。

「取り敢えず全部廻ってみるよ」

「わかりました」

 という事で俺は次の浴槽へ。

 こっちはフィオナとナディアさんが入っている浴槽だ。広さはテディ達のいる浴槽の半分よりちょっと広い程度。深さはテディ達のところと同じくらい。

 違いは湯温、こっちは明らかに熱め。ゆっくり入らないと熱くて飛び出しそうだ。なお小型サイズの龍2匹もここでバチャバチャやっている。

「よくこんな熱いの入っているなあ」

「そうかな。気持ちいいよ」

「これでギリギリまで温まってシャワーを浴びると気持ちいいと思います」

 なるほど。
 最後の一番狭い浴槽は手をつけてみてそれで理解。水風呂だった。そんな予感がしたから手で確認したのだけれど正解だった。

 あとはサウナだ。そう思ったところでミランダがサウナから飛び出て来た。

「いや熱い熱い」

 そのままシャワーを浴び、弛緩した表情になる。

「どうだった」

「熱いけれどこれ、気持ちいいぞ」

 なら試してみるか。よいしょと扉を引いて入る。

 中はログハウス風で両側の壁に椅子がついている。奥に温風が出てくる口があってそれで空気が熱せられている感じだ。

 温度そのものはサウナとしては低め。湿度も高めでどちらかというとミストサウナ等に近い感じだ。
 さっと魔法で構造を確認してみる。源泉からの熱湯を銅パイプに通して空気を暖め、更に源泉からの蒸気等を加えて室内に送り込んでいるようだ。

 うん、サウナとしては温度が低いのだけれど湿度があるからすぐ暑くなる。100数えた段階で外へ脱出。先程のミランダと同じくシャワーを浴びる。
 ここのシャワーはお湯というよりぬるま湯という感じ。サウナから出て来た人専用なのだろう。

 取り敢えず一番長居できて快適そうな、テディ達がいたぬるい大きな浴槽へ。

「やっぱりここがいいかな」

「私もここが一番お勧めですわ。疲れが取れそうですしのんびりできますし」

 テディ達から少しだけ離れた処に入り、のんびり肩までつかって身体を伸ばす。うん、極楽極楽。
 家の風呂も家用としてはかなり大きめだから1人なら身体を伸ばすことが出来る。でも周りが広々としている訳ではないし、温泉の湯の方が疲労回復効果がありそうな気になる。ここのお湯は透明なタイプなので見た目は風呂のお湯とかわらないけれど。

「これだけでも悪くはないよな」

「そうですね」

「でもあの本に載っていたよう外の冷たい空気と温泉というの、気持ち良さそうですよね」

 サラも俺もうんうんと頷く。

「あの料理を食べながら温泉というのはこういう場所だと今ひとつだと思います。中に匂いがこもりそうですし。外に自然を模した感じのお風呂を作って、そこでという感じの方がいいのではないでしょうか」

「そうですよね。あと浴室の中の暖かい空気だけでなく、たまには外の冷たい空気も感じてみたいかなと」

 確かにそうだな。そう思ったところで横から別の意見が入る。

「あと室内というかこの中に、腰まで浸かって歩くお湯とか寝湯とかも欲しいよね。ここで何分間、ここで何分間とやっていけば疲れが取れたり健康になったりするって奴。参考にアシュが訳していたけれどさ」

「ですね。あと打たせ湯も湯量に余裕があれば欲しいです」

 フィオナとナディアさんも合流だ。

「吹雪で外で遊べない日もあるでしょうから、そういう日でも温泉内で色々出来る施設があるといいですよね。ただ温泉に浸かるだけでなく何か能動的に楽しめるような施設が。歩くお湯とかもそうですし」

 なるほど、吹雪の日の事も考える訳か。その辺に気づくのは流石ナディアさん、山岳地方出身だ。

 そう言えばミランダはどうしているだろう。見ると今度は水風呂だった。
 どうやらサウナとシャワー、水風呂を行ったり来たりしているようだ。あれはあれで正しい方法論なのだろう。
 あと龍2匹は熱い湯の浴槽が気に入っている模様。浮かんだりバチャバチャ泳いだりして楽しそうだ。

「取り敢えず露天風呂を作って、あと歩行湯と寝湯かな、出来るのは。寝湯以外にごろ寝したりして休憩できる場所も欲しいよね」

「健康増進とかダイエットとか疲労回復等の目的にあわせて推奨コースなんて作ってもいいと思いますわ。木札か何かに順番を書いて、サウナの次はシャワー、次は水風呂、次は歩行湯というような感じで」

「それなら自動砂時計を各所にセットするといいかもしれないです。砂時計がひっくり返ったら次の場所へ移動という感じに」

「確かにそれいいよね。そうすれば人も結構入れ替わるし」

「ただゆったり出来る屋外のお風呂はやはり欲しいですわ。出来ればあの本のように自然を感じられるような作りで」

 次々に案が出てくる。まあ案というか自分が欲しい理想の温泉という感じだけれど。

「ただ外に浴槽を作っても、寒すぎて入れないという事はないかな」

「その辺は試してみる必要がありますわね」

 えっ。試す?

「どうやって試すんだ?」

「何か浴槽の代わりになる箱があればいいのですわ。そうすれば中にお湯を入れて実際に試す事が出来ます」

 そこまでやるのか。テディは本気っぽいけれど。

「試すだけなら本格的な浴槽にしなくても大丈夫だよね。枠に防水の帆布でも被せればある程度は代用になると思うよ」

 フィオナもそれっぽい案を出してきた。

「ならその辺に穴でも掘って、帆布を被せてお湯を入れてみればいいのですわ。雪なら熱魔法をうまく使えば溶けますし」

「でも雪の上に帆布じゃ接した面が冷たいし雪が溶けそうだよね。お湯の温度は魔法で保つとしてもさ。だからある程度板とか必要じゃないかな。雪を溶かして横と下に板を敷いて、その上に防水の帆布をかける形がいいと思うよ」

「やりましょう!」

 おいおい本気かよテディ。

「なら部屋に戻ったら早速図面に落とすね。明日一番で買い出しに行けば午後には作れると思うよ。あ、でもあのコースをもう一度滑らなければならないんだよね」

「買い出しは私が行きますわ」

 テディ、何としても露天風呂を試したいようだ。

「後で図面と一緒に木材屋の地図も書いておくよ。その場で色々加工してくれる便利なお店だからさ。帆布屋も近くにあるしね」

「お願いしますわ。是非早いうちにためしてみませんと」

 テディと同時に俺の予定も決定のようだ。
 まあ楽しければそれでいいか。俺は深く考えない事にした。
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