異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第9章 冬休みはリゾートへ

第62話 冬のリゾートの食事案

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 テルメ館から戻ったところでフィオナは図面を描き始めた。
 一方俺とサラはキッチンへ。冬のリゾートにふさわしい夕食を試作する為だ。

 リゾート中の夕食に関しては旅行前にサラと俺で何度か打ち合わせを実施した。

「メインはポトフでいいと思うんだ。提供はこの鉄鍋で、この卓上コンロに載せてこの小さな木炭で熱して貰う形で。あとはこの鉄板が載った皿にビーフステーキを載せて、これも鉄板を熱して。あとこのステーキは熱いうちにこのソースをかける。そうするとじゅわっとソースが沸騰して広がって、いかにも熱いですと言う雰囲気が出るからさ」

「面白い工夫ですね。でも鉄板というとあの好きな物焼きヴァストリベントはどうでしょうか。あれなどイベント性がありますし間違いなくあたたかくなれます」

 あ、なるほど。

「確かにそれは楽しいし暖かくなるよな」

「でも毎日同じメニューだと飽きますよね。ですから、好きな物焼きヴァストリベント以外も試しましょう」

 そんな訳で1日目は好きな物焼きヴァストリベントだ。あくまでも将来ここで出す料理の試作という事で、誰でも説明を見ながら作れるような難易度にする。
 具体的には
  ① 生地を混ぜて全部鉄板へ
  ③ 上に肉類を載せて、固まったらひっくり返す
  ③ 下が固まったら、さっと魔法で全体に熱を通す
  ④ 好みでソースを塗って焼いたり、そのまま皿に取ってソースを塗ったりして完成
という形だ。

 他にオプションとして焼きそば等も用意する。これは鉄板で炒めてソースをかけるだけだ。あくまで宿の夕食だから難しくならないように。

 ソースは何種類か用意する。この辺は本場とは違うがスティヴァレ風という事で。お好み焼きソースとメルカソースマヨネーズがベースのものとサルサ風の赤くて甘辛いソースとゴマダレ風。
 お好み焼きとしては邪道だ。でもこれくらいイベント性があった方が宿としては正しいだろう。

 俺はまずは召喚魔法で我が家にある鉄板付きテーブルを召喚。更にお好み焼きソースの壺も召喚だ。
 このお好み焼きソース、無くなる前に継ぎ足して熟成させてを繰り返しているので、今ではかなり深いコクを含んだ上々な味になっている。魔法で殺菌出来るから問題も無い。
 その辺は日本よりスティヴァレの便利な点だな。まあ日本なら美味しい出来合いのソースを売っているのだけれど。

 鉄板をなじませたりトッピングやソースを用意するのは俺の作業。一方サラはキャベツを刻み始めた。
 調理に類することは全ての面で俺よりサラが上。だからその辺は全てサラにお任せだ。

 ただサラが高級学校へ行ったらまた俺が夕食当番だよな。
 サラに休日に大量におかずを作ってもらってストックしておこうか。でもそれもサラに申し訳ない気がするな。仕事量の調整をミランダにお願いしておこう。

 そんな事を考えながら油をなじませる作業をやる。一度ガンガンに熱して、油を引いて少し煙がでたところで温度を下げ、また引いてやれば完成だ。
 サラの方もほぼ作業は終わった模様。

「そろそろ準備完了かな」

 今回はキッチンや食堂がリビングと隣接している。だから皆さんからも準備の様子がわかる。
 そんなわけで俺が頼む前に自主的に皆さん手伝いにやってきた。それぞれ皿を運び、カトラリーを運び、種入りのお椀やトッピング等を運んで。あっという間にセッティングも完了だ。

「それじゃ食べようか。食べ方は魔法武闘会終了祝いの時と同じでいいんだろ」

「ええ。でも今回は各自皆さんが自分で焼く形です。ですので簡単に説明します」

 サラから説明が入る。
 
「まず、この基本のお椀の中に、食べたいと思う他の材料を入れます。ただし生のお肉はこの段階で入れないでください。ここではコーン、チーズ、油かす、ハム等を入れます。入れたら空気がふんわり入るように底からかきまぜて、鉄板へこうやって入れます。大きさはこのお椀の径よりちょっと大きめがいいでしょう」

 鉄板からいい感じの音がする。

「こうやって形を整えたらお肉です。こんな感じに平べったく伸ばして上に敷きます。もちろんお肉がいらない人はそのままでも大丈夫です。これで下が完全に固まって軽く焦げる程度まで置いておきます」

 サラは今度はもう一つのお椀を出す。こっちには焼きそばが入っている。

「その間に焼きそばの焼き方です。まずはお肉を炒めて、色が変わったら野菜を投入します。野菜がしんなりしたらこのそばをほぐして入れて、ソースをかけて一気にソバを広げます。こんな感じです。更に鉄板にソースをこんな感じでかけて広げて、匂いが広がったら一気に混ぜてまとめて、これで完成です」

 美味しそうな焼きそばができあがった。

「そろそろこっちの好きな物焼きヴァストリベントもいい感じなので、さっと魔法で中に熱を通します。熱の通し加減は水を含んだ小麦粉が固まるギリギリ程度です。あとはひっくり返して、ソースを塗って、下がさっきと同じ程度まで固まったらひっくり返してこっちもソースを塗ってはいどうぞ、完成です。
 ただこれはあくまで基本なので、実際にはいろいろ試してみてください」

 この焼き方はお好み焼きの焼き方の本を参考に魔法を使って時短したものだ。サラがかなりこだわって時間とか焼き具合とかを確かめたので完成度が高くなっている。
 その辺は俺がやっていたいい加減なのとは大分違う。無論味もかなり上だ。

「これ、サラが焼いてくれた焼きそば、美味しいぞ」

「この好きな物焼きヴァストリベントも中がふんわり、外が香ばしくていい感じですわ」

「それじゃ自分用も焼かないとね」

 好きな物焼きヴァストリベントパーティが始まった。

「ソースもいろいろあるけれど、やっぱり最初からあるこの黒っぽいソースが一番美味しいよね」

「そうですね。甘みと辛みがちょうどいい感じです」

「あえてこうやって薄く焼いて、チーズとハムのせて熱魔法で焼いた後、サルサソースも悪くないぞ」

「それってほとんどピザだよね」

「ああそうか」

 なかなか楽しいし美味しい。
 俺としては牡蠣たっぷりのカキオコが欲しいが、ここは山間部だし贅沢というものだろう。せめてもの抵抗で広島風を片面ソバ&タマゴで作ってみる。

「美味しそうだな、アシュの作っている奴」

「それって確か正統派の広い島ラタインスーラ風っていっていた奴だよね。半分ちょうだい!」

 めざといな、特にミランダとフィオナ。まあその辺を見越して大きめに作ったし、割って食べればいいよな。
 
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