異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

文字の大きさ
83 / 176
第11章 お仕事な日々

おまけ 第78話手前の間違った分岐 間違った俺の間違った選択

しおりを挟む
 ■■■ このお話限定の注意事項 ■■■
 本編に続かないお話です。セルフパロディだと思っていただければ。
 なお今回の話は、『クトゥルー神話』をある程度知らないと理解出来ません。
 ■■■ 注意事項 終わり ■■■

 ふっと意識を取り戻す。どうやら疲れすぎて机に向かったまま落ちていたらしい。

 酷い夢を見た。
 ① 『ドクター・モロー』を訳して渡してしまって以来、テディに白い目で見られ続けている中
 ② 『果てしなき流れの果てに』をどうにかスティヴァレでもわかるように訳して燃え尽きたところで
 ③ ペリーローダンとグインサーガを全部訳せとミランダにせっつかれつつ、
 ④ 訳した『スキズマトリックス』がわけわらないと出版社担当に怒られている 
という夢だ。
 こんな夢を見るのも働き過ぎで疲れているからだろう。

 魔法武闘会でも使った10倍速モードを使って翻訳時間を時短しまくりつつ働いていたのだがそろそろ限界だ。何せ時短モード、1時間で10時間分働ける代わりにとんでもなく消耗する。通常の状態で10時間ぶっ通し勤務をするよりも。
 まるで仕事用の精神と時の部屋だよな、まったく。

 人間疲れると思考がおかしくなる。今の俺がまさにそうだ。
 だからだろう。ふと思ってしまったのだ。俺の召喚魔法であの伝説の本も取り寄せできるのではないかなんて。

 疲れで暴走した俺の思考は理性の制御を受け付けない。だからつい実行してしまう。

 魔法陣を描いて魔法式を描く。日本語書物召喚や特殊日本語書物召喚とほぼ同じ魔法陣と魔法式だ。ただ今回は日本語限定はつけない。多分日本語訳はないだろうから。
 また今回の本は召喚出来たら大変に価値がある本の筈だ。だから代償となる金額も正金貨1枚100万円とはずんでやる。

「我此処に強く望む。空間系の魔素よ我が元へ集いたれ。我此処に強く望む、我が魔力と魔素によって……」

 書物召喚の魔法の構築ももう慣れたものだ。

「……以上これら我が祈願を『特定書物召喚』と命名する。特定書物召喚! 魔導書ネクロノミコン、起動!」

 ぐっと魔力を吸い取られる。だが手ごたえは感じた。失敗して魔力が吸い取られるのとは確実に違う感覚だ。だが魔力の消費が激しすぎる。失敗か。

 そう思った時、ふと負担が軽くなった。まるで誰かが手助けしてくれているかのようだ。
 テディかミランダか。いや違う。俺の知らない黒くて重い魔力だ。

 ふっと魔力の負荷が止まる。正金貨が消え、1冊の本が現れた。茶色の妙にひび割れた独特の革で表装された重厚な本だ。
 本そのものが巨大な黒いオーラを纏っているように感じる。このヤバそうな雰囲気は本物だろう。成功だ!
 
 召喚された本を手に取ってみる。おっと、表紙が右開きになっている。
 この文字は確かアラビア語だよな。勿論俺はアラビア語なんて読めない。その筈だったが……

 ふっと何かの気配を感じた。同時に静電気のような軽いショック。
 何だ、今のは。周りを見るが何もない。何だろうと思いつつもう一度召喚された本を見てみる。

 何だ、読める! 読めるぞ! アラビア語なんて知らないのに何故か読める。

 本の扉部分に記されていたタイトルは『アル・アジフ』。おいおいこれってネクロノミコンのアラビア語版原題じゃないか。狂える詩人アブドル・アルハズラットが書いたと言われている。
 まさか失われた筈の原本じゃないよな。ひょっとして俺が召喚してしまったから失われたのではって、そんな訳はないよな、きっと。

 どっちにしろ貴重な本だ。スティヴァレの魔法研究が更に進む可能性がある。しかし危険な本であるのは間違いない。

 それなりの準備をしてから読む方がいいのだろう。そう思ったのだが何故か俺の手は勝手に本をめくる。
 おいおい何故だ俺にはその気は無いのに手が止まらないぞ! そう思ったところで突然手の動きは止まった。

 開かれた本のある行に俺の視線が吸い付けられる。まて見るな読むな! 危険だ! そう思うのだが止まらない!

「イア、イア、クトゥルフ、フタグン! フングルイ、ムグルウナフ……」

 俺の口が勝手に開いて呪文を読み始める。まさか俺は邪神に介入されて手助けをさせられているのか。これから何が起きるというのだ。まさか邪神の召喚というか顕現か。

 誰か、誰か止めてくれ! そう思うのだが何故か誰も俺に気づかない。妙な呪文を唱えているのだから普通はこっちを見たりする筈なのに。

 助けを求めて辺りを見ようとするが視線が呪文部分から離れない。視界の隅にかろうじて事務所の窓が入っている。
 そしてそこにはいつの間にか……
 ああ! 窓に! 窓に!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...