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第11章 お仕事な日々
第79話 夜当番1名追加
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合格お祝いパーティは結構盛り上がった。
陛下、主役を差し置いて色々暴れまくり。国家行事の祝賀会で演奏される『英雄賛歌』を独唱したりしょうもない一発芸をしたり。
自前で持ってきた高いワインも1人で1本以上空けていた。おかげで最後の方はナディアさんもサラも少しは陛下に慣れたようだけれども。
陛下と殿下が帰った後、全員でささっと片付け。ゴミの始末や皿洗いは魔法で出来るから案外簡単だ。
それでもパーティ自体が盛り上がって長引いたので時間は結構遅い。昼食会だったのにもう夕方だ。
ただパーティで食べまくったのでお腹は空いていない。
「今日はこれでお開きにしましょうか」
「だね。お腹が減ったら自在袋に残りが入っているから食べればいいし」
「本当にありがとうございました」
「いいのいいの。僕らも楽しかったしね」
という感じで解散。
自室に戻って取り敢えずテーブル前の椅子に腰掛ける。中途半端な時間だけれどどうしようか。ちょっと考えて読書の時間にする。
最近SF、ファンタジー、恋愛系ばかり読んでいる。だからちょっと違うのを読もう。少し考えて思いつく。
「日本語書物召喚、きみとぼくの壊れた世界※、起動!」
俺はベッドで本を読むのも好きだ。だから召喚した本を持ってベッドへ……
◇◇◇
『僕は、騙されない』からの下りで思う。うん、やっぱり病院坂黒猫、萌え!
個人的には西尾維新の本でこれが一番好きだ。クビシメロマンチストや化物語も好きではあるけれど。
これは訳せるかな、難しいかな。好きな物語ほど思い入れが強くなって訳しにくくなる。
そんな事を思いつつ起き上がってテーブルに本を置いたところで。
トントントン。扉がノックされた。
「はいはい」
「お邪魔します」
入って来たのはミランダとナディアさんだ。ミニ龍2頭は連れてきていない。
「どうかしましたか、ナディアさん」
「いや、今日は私の番だからさ」
そう言えば確かに今日はミランダの日だったと思う。でもそれで何故にナディアさんが?
「今日から仲間に入れて貰おうと思いまして。よろしくお願いします」
えっ!? ちょっと待てナディアさん! 何の仲間だ!
まさかとはおもうけれど早まるんじゃない!
「ちなみにテディもフィオナも了解済みだ。問題は無い」
いつの間に! って、いやそういう問題じゃないでしょうミランダ。
「それとも私の事が嫌いですか?」
いやそんな事じゃなくてさ。
「ナディアさんだったらもっといい人がいますよね。仮にも現役の男爵で定期収入もありますし。騎士団にもいたんじゃないですか」
「いたら出てきませんでしたね」
一転して暗い声。まずい、何か嫌な予感がする。
「近衛魔法騎士団だからでしょうかね。隊員は貴族のボンボンか上昇志向の強い方ばかりでこれはという方はほとんどいなかったですね。話も幾つかあったのですけれどニアとマイアが家の箔付けに欲しいだけの、本人はいまいちなボンボンばかりで。尊敬できる人も何人かはいましたけれど妻帯者か同性ばかりでした」
ナディアさんの周囲にどよどよとしたオーラが広がっていく。
「大体において私の異性運はズタボロなんです。田舎にいた頃は家第一主義のマザコン40代や老親介護と畑仕事用奴隷探しの30代とかに言い寄られたりしました。それを断ると待ち伏せして実力行使されそうになったり。あの頃はニアやマイアに追い払ってもらいましたけれどね、何度となく」
何度もかよ! なかなか悲惨だ。
ナディアさんの台詞はまだまだ続く。
「騎士団でも似たようなものでした。とにかく女の子と変な奴に好かれてしまうんです。嫌がっている事務担当の女の子に執拗に言い寄っている伯爵家三男を実力行使で指導したら、次の日その女の子と三男坊当人の両方からラブレターが来たりして。
大体において私に言い寄ってくるのはお姉さまと慕う同性か、男なら能無しマザコンかニアとマイア狙いか。あと愛人募集の自称高級貴族なんてのもいましたね。実際は貧乏な男爵家の次男坊でしたけれど。あまりにしつこいので軽くご指導したら、もっともっとご指導お願いしますだなんて……身震いがします」
何だそりゃ真正マゾかよ!
ナディアさんの周囲のオーラ、更に暗く広がる。
「此処へ来てやっとあの環境から離れられてほっとしたのもつかの間。市場で商会幹部を自称するおっさんに愛人どうだと絡まれたり、自称貴族の長男に第二夫人はどうだと連れ去られそうになったり。どちらも実力行使で辞退しましたけれどしつこくて。ここでアシュノールさんに受け入れられなければきっと、そういう人生が今後も続いていくんですね……」
おい待った、待ってくれ!
どうもかなりの闇を抱えているようだ。
なおミランダは横で苦笑している。どうやらナディアさんが話した内容、既に聞いてご存知の模様だ。
仕方ない。
「でもいいんですか。俺なんて子爵家の五男でしかも勘当済み。学校時代の成績だって冴えなかったし取り柄も特に無し。元々体力は並程度なのに最近外に出ないから今はもう駄目駄目状態。
仕事だって今だって皆のおかげで何とかなっている状態。その癖実質奥さんが3人もいる。我ながら条件悪いと思いますけれど」
「その辺は私としては異議があるな」
おっと、ミランダが横から参戦してきたぞ。
「この場所はアシュを中心に成り立っているんだ。アシュがいなければ私は今頃南部でつまんない商会の店番をつまらない男としていただろうしさ。テディも心ならずも悪役令嬢まっしぐらだっただろ。フィオナなんて絶対ニートやっているぞ今頃は。サラだって高級学校へ行こうなんて思ってもみなかっただろうしさ。
それに何度も言っているけれどここの商会はアシュの力でやっていけているんだ。アシュが本を取り寄せて最初の翻訳をしてくれなければ全てが終わりさ。
この商会の実質収益は一般的な中規模商会以上で領地持ちの男爵並み。それをたった7人で分け合っているんだ。その中核でなおかつ昨年のスティヴァレ魔法武闘会実質優勝者。これで条件悪いと言ったらスティヴァレの男で条件いい奴はいないぞ」
「そんなに言い訳するという事は、私の事が嫌いですか」
おい待ってくれナディアさん。
「そんな事は無いです。ナディアさんは素敵な女性です。それは間違いない」
「本当ですか」
あ、まずい。この流れは間違いなく……
☆☆☆
翌朝以降。俺当番が1名追加され4名となった。週あたり1人当番が4日と全員一緒が1日。そしてスティヴァレの1週間は6日間である。
つまり俺が独りでゆっくり眠れる夜は、ついに週に1晩だけとなってしまったのだった。
嫌かといえば決してそんな事は無い。でも本当にこれでいいのだろうか。疑問は残りまくりだ。
※ 『きみとぼくの壊れた世界』西尾維新
なお病院坂黒猫はこのお話のヒロイン
陛下、主役を差し置いて色々暴れまくり。国家行事の祝賀会で演奏される『英雄賛歌』を独唱したりしょうもない一発芸をしたり。
自前で持ってきた高いワインも1人で1本以上空けていた。おかげで最後の方はナディアさんもサラも少しは陛下に慣れたようだけれども。
陛下と殿下が帰った後、全員でささっと片付け。ゴミの始末や皿洗いは魔法で出来るから案外簡単だ。
それでもパーティ自体が盛り上がって長引いたので時間は結構遅い。昼食会だったのにもう夕方だ。
ただパーティで食べまくったのでお腹は空いていない。
「今日はこれでお開きにしましょうか」
「だね。お腹が減ったら自在袋に残りが入っているから食べればいいし」
「本当にありがとうございました」
「いいのいいの。僕らも楽しかったしね」
という感じで解散。
自室に戻って取り敢えずテーブル前の椅子に腰掛ける。中途半端な時間だけれどどうしようか。ちょっと考えて読書の時間にする。
最近SF、ファンタジー、恋愛系ばかり読んでいる。だからちょっと違うのを読もう。少し考えて思いつく。
「日本語書物召喚、きみとぼくの壊れた世界※、起動!」
俺はベッドで本を読むのも好きだ。だから召喚した本を持ってベッドへ……
◇◇◇
『僕は、騙されない』からの下りで思う。うん、やっぱり病院坂黒猫、萌え!
個人的には西尾維新の本でこれが一番好きだ。クビシメロマンチストや化物語も好きではあるけれど。
これは訳せるかな、難しいかな。好きな物語ほど思い入れが強くなって訳しにくくなる。
そんな事を思いつつ起き上がってテーブルに本を置いたところで。
トントントン。扉がノックされた。
「はいはい」
「お邪魔します」
入って来たのはミランダとナディアさんだ。ミニ龍2頭は連れてきていない。
「どうかしましたか、ナディアさん」
「いや、今日は私の番だからさ」
そう言えば確かに今日はミランダの日だったと思う。でもそれで何故にナディアさんが?
「今日から仲間に入れて貰おうと思いまして。よろしくお願いします」
えっ!? ちょっと待てナディアさん! 何の仲間だ!
まさかとはおもうけれど早まるんじゃない!
「ちなみにテディもフィオナも了解済みだ。問題は無い」
いつの間に! って、いやそういう問題じゃないでしょうミランダ。
「それとも私の事が嫌いですか?」
いやそんな事じゃなくてさ。
「ナディアさんだったらもっといい人がいますよね。仮にも現役の男爵で定期収入もありますし。騎士団にもいたんじゃないですか」
「いたら出てきませんでしたね」
一転して暗い声。まずい、何か嫌な予感がする。
「近衛魔法騎士団だからでしょうかね。隊員は貴族のボンボンか上昇志向の強い方ばかりでこれはという方はほとんどいなかったですね。話も幾つかあったのですけれどニアとマイアが家の箔付けに欲しいだけの、本人はいまいちなボンボンばかりで。尊敬できる人も何人かはいましたけれど妻帯者か同性ばかりでした」
ナディアさんの周囲にどよどよとしたオーラが広がっていく。
「大体において私の異性運はズタボロなんです。田舎にいた頃は家第一主義のマザコン40代や老親介護と畑仕事用奴隷探しの30代とかに言い寄られたりしました。それを断ると待ち伏せして実力行使されそうになったり。あの頃はニアやマイアに追い払ってもらいましたけれどね、何度となく」
何度もかよ! なかなか悲惨だ。
ナディアさんの台詞はまだまだ続く。
「騎士団でも似たようなものでした。とにかく女の子と変な奴に好かれてしまうんです。嫌がっている事務担当の女の子に執拗に言い寄っている伯爵家三男を実力行使で指導したら、次の日その女の子と三男坊当人の両方からラブレターが来たりして。
大体において私に言い寄ってくるのはお姉さまと慕う同性か、男なら能無しマザコンかニアとマイア狙いか。あと愛人募集の自称高級貴族なんてのもいましたね。実際は貧乏な男爵家の次男坊でしたけれど。あまりにしつこいので軽くご指導したら、もっともっとご指導お願いしますだなんて……身震いがします」
何だそりゃ真正マゾかよ!
ナディアさんの周囲のオーラ、更に暗く広がる。
「此処へ来てやっとあの環境から離れられてほっとしたのもつかの間。市場で商会幹部を自称するおっさんに愛人どうだと絡まれたり、自称貴族の長男に第二夫人はどうだと連れ去られそうになったり。どちらも実力行使で辞退しましたけれどしつこくて。ここでアシュノールさんに受け入れられなければきっと、そういう人生が今後も続いていくんですね……」
おい待った、待ってくれ!
どうもかなりの闇を抱えているようだ。
なおミランダは横で苦笑している。どうやらナディアさんが話した内容、既に聞いてご存知の模様だ。
仕方ない。
「でもいいんですか。俺なんて子爵家の五男でしかも勘当済み。学校時代の成績だって冴えなかったし取り柄も特に無し。元々体力は並程度なのに最近外に出ないから今はもう駄目駄目状態。
仕事だって今だって皆のおかげで何とかなっている状態。その癖実質奥さんが3人もいる。我ながら条件悪いと思いますけれど」
「その辺は私としては異議があるな」
おっと、ミランダが横から参戦してきたぞ。
「この場所はアシュを中心に成り立っているんだ。アシュがいなければ私は今頃南部でつまんない商会の店番をつまらない男としていただろうしさ。テディも心ならずも悪役令嬢まっしぐらだっただろ。フィオナなんて絶対ニートやっているぞ今頃は。サラだって高級学校へ行こうなんて思ってもみなかっただろうしさ。
それに何度も言っているけれどここの商会はアシュの力でやっていけているんだ。アシュが本を取り寄せて最初の翻訳をしてくれなければ全てが終わりさ。
この商会の実質収益は一般的な中規模商会以上で領地持ちの男爵並み。それをたった7人で分け合っているんだ。その中核でなおかつ昨年のスティヴァレ魔法武闘会実質優勝者。これで条件悪いと言ったらスティヴァレの男で条件いい奴はいないぞ」
「そんなに言い訳するという事は、私の事が嫌いですか」
おい待ってくれナディアさん。
「そんな事は無いです。ナディアさんは素敵な女性です。それは間違いない」
「本当ですか」
あ、まずい。この流れは間違いなく……
☆☆☆
翌朝以降。俺当番が1名追加され4名となった。週あたり1人当番が4日と全員一緒が1日。そしてスティヴァレの1週間は6日間である。
つまり俺が独りでゆっくり眠れる夜は、ついに週に1晩だけとなってしまったのだった。
嫌かといえば決してそんな事は無い。でも本当にこれでいいのだろうか。疑問は残りまくりだ。
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なお病院坂黒猫はこのお話のヒロイン
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