異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第14章 2年目夏のバカンス

第96話 昨日のニュース

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 昼からは俺達がボートでミランダ達がビーチやプール。夜は海鮮丼や刺身やカルパッチョ等海鮮づくし。もちろんミニ龍2頭も毎食一緒だ。
 1日目はこうして平穏に終わった。夜も個室だから安心だ。襲われないで済む。

 2日目もボートに乗る組み合わせ等は変わったがやることはほぼ同じ。あとはビーチコーミングというか貝殻拾いと砂の城作りなんてのもやったかな。それで充分楽しい。
 しかし2日目はそれだけでは終わらなかった。

「今日の夕食は皆で食べたいものをつくりませんか。いつもは食べないようなものでもいいですし、いつももっと食べたいものでもいいですし」

「面白そうです」

「同意」

「僕も久々に作ってみようかな」

「そうですね」

 そんな訳でミランダを除く全員が食べたいものや作りたいものを作る事になった。ミランダはまあ……お察しの理由でリビング待機だ。

「材料は自在袋に入っているもの何でもいいのかな」

 昨日買い出してかなりの品物が入っている。しかしそれだけじゃ面白くない。だから俺もとっておきを出すとしよう。

「俺も今までカーモリ等で買いためた魚介類を放出する。ただウニと牡蠣は俺が使うからさ。使うならそれ以外で」

 俺はそう言って食料等共用自在袋の隣に俺専用自在袋その1を置く。

「拝見」

 すかさずジュリアが俺の自在袋を確認。

「刺身とカルパッチョ。勝手丼予定」

 なるほど。

 それぞれ材料を取って調理がはじまる。
 わかりやすいのがジュリア。スズキ、鯛、鰹、マトウダイ、メカジキといった大物ばかりを俺の自在袋から出してさばいている。
 家が漁師だからかさばくのが実に上手かつ鮮やかだ。途中で出た骨やアラも煮たり揚げたり焼いて出汁にしたりと無駄にしない。

 俺は生ウニ&牡蠣フルコースなんてスペシャルな料理の予定。生ウニはまあそのままで、牡蠣は生、焼き、フライ、ソテーを準備。
 なおジュリアと協議した結果丼用のご飯は俺担当。飯を炊きながらだから結構忙しい。

 フィオナはサラダを作っている模様。
 ナディアさんは何故か牛カツを揚げている。海のリゾートなのに全然関係ない料理なのが潔くていい。ソースも我が家特製お好み焼きソースをベースに自作する模様だ。
 テディとサラはケーキだのパンだのを量産している模様。ミニ龍2頭はあちこちを回りつつおこぼれを貰っているようだ。

 余ってもきちんと整理して自在袋に入れてしまえばまた食べられる。だからいくら作っても問題ない。そして食べたいものを作りたいように作るのもまた楽しいものだ。
 いつもの倍、2時間くらいかけてそろそろ並べようかというその時。ミランダがキッチンにやってきた。何だろう。

「悪い、お客さんだ。夕食は2名追加で頼む」

 おい待て。

「誰だ客って」

 想像はつくのだが一応聞いておこう。

「うちに夕食を食べに来るような客、それもリゾート中にもかかわらず訪ねてくるような客は2人しか居ないだろう」

 はいはい了解だ。皆さんも1名以外了解の模様。

「お客様?」

 ジュリアがサラにこそっと尋ねる。

「国王陛下と王妹のロッサーナ殿下です、おそらく」

「冗談? あだ名?」

 ジュリアの反応が正しいよな、普通なら。

「本物ですわ。でもここに遊びに来ている時はオフですからあまり緊張したりしないで下さいな。特別扱いもしないで大丈夫です。私達の個人的な友人という扱いでお願いしますね」

 テディの説明で冗談ではないと気づいたようだ。

「何故そんな方が遊びで来る?」

「私達の高級学校時代の先輩ですわ」

「了解」

 納得したようだ。

「それじゃ準備が出来たら持って行きますわ」

「頼むな」

 ミランダは部屋の方へ帰っていく。陛下と殿下しかいない部屋に帰るというのもいい度胸だよな。まあミランダは殿下とは古い知り合いだし慣れているのかもしれないけれど。

 さて、そろそろご飯もちょうどいいかな。既にジュリアやフィオナ、ナディアさんは運び始めている。俺も運ぶとしよう。 

 ◇◇◇

「それにしても今日は何故ここへ来たんですか?」

 ウニ載せ特製海鮮丼を自分で作って食べながら陛下に尋ねる。なお陛下は持参した超高級白ワインの1本をがぶ飲みしながら海鮮勝手丼を食べている状態だ。

「いつもと同じだよ。夕食が美味しそうだったからね」

 おいおい。国王陛下ともあろう人が飯をたかりにわざわざやってくるか。
 まあいいけれど。慣れたしさ。

「というのはまあ実際の理由でね。表向きの理由は別だよ。でもまあ食べてからにしようじゃないか。せっかく美味しいご飯があるんだからさ」

 何だそりゃ。飯を食べるのが実際の理由なら表向きの理由は何なんだ。
 そもそも表向きの理由なんて必要ないだろう。勝手に魔法で来ているだけなのに。

 どうしても食べてみたかったのでつい取ってしまったナディアさん謹製ビーフデミカツが余分だった。確かにビーフデミカツ、非常に美味しかったのだ。カツ本体もデミグラスソースも。

 しかし俺の胃袋がそれで限界を超えてしまった。仕方ないので消化吸収促進魔法で少し胃を落ち着ける。

 それにしても皆さんよく食べるな。陛下も勝手丼2杯を食べ、今はビフカツサンドなんて頬張っている。
 他の皆さんもまあ似たようなものだ。あまり様子を見ると胃袋が厳しくなりそうなので意識しないようにするけれど。

「どうもアシュノール君は食べ終わったようだな。それならこれをちょっと読んでくれ給え」

 陛下がどこからともなく号外紙を取り出した。何気なく目を落としたその1面には……

「またあったんですか。チャールズ・フォート・ジョウントの偽物事件が」

 黒抜きに白地で『チャールズ・フォート・ジョウント再び現る!』との見出しが躍っている。

「出たのですか」

「昨日の夜ですわ」

 昨日昼から今まで、俺達は別荘と海岸を往復しただけで他には出ていない。その間に起こったとなれば知らないのも当然だ。
 俺は記事を読んでみる。ふむふむ……

「今回の襲撃先はテーヴェレ侯爵家だ。襲撃態様は相変わらずで突然現れて警備全員を無力化し、金銭と書類を持って逃走。今朝、書類の一部がウェネティの国王庁監査室に届いているという状態だな。現在ウェネティの方で書類を精査中だ」

 陛下はそこまで説明した後、珍しくため息をひとつついて続ける。

「襲撃された理由も状況ももうわかっている。今年収穫の小麦で買い占めというか出し渋りをやったんだ。冬の時とほぼ同じ態様だね。
 だが今回はちょっとこっちとしても面倒なんだ。何せ今度の相手は侯爵家。貴族社会に係累も数多いし取り込まれている貴族も多い。
 それに他の貴族だって完全にシロというわけじゃない。そして数の上で国王は1人だが貴族は大勢だ。国王家の係累である筈の公爵家だって立場は向こう寄り。この人数差をはねのけるのは今のスティヴァレの体制では難しい。政治上の重要案件は事実上国王と主要貴族の合議制だしね」

 ジュリアはチャールズ・フォート・ジョウントが俺達にどう関係しているのか知らない模様だ。そう言えば今まで教えた事が無かったな。
 そんな訳で現在、サラとテディでこれまでの経緯を説明している模様。 
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