異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第14章 2年目夏のバカンス

第98話 本日の買い出し

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 翌朝。朝食を食べたらまずは買い出しだ。
 昨日は大量に食料を消費してしまった。おかげで自在袋内の在庫がかなり減っている。それにこの辺の市場ではゼノア等とは違ったものが売っているかもしれない。

「買い出しに行きたい人は挙手!」

 ミランダの台詞に手をあげたのは3人。俺、テディ、サラだ。

「ジュリアは?」

「絵を描きたい。この辺一帯の」

 なるほど。

「僕はゴーレムの作業をちょっとね」

 フィオナはあの研究用ゴーレムを自在袋から取り出した。

「私はミランダさんと沖の方へ出ようと思います」

「目指せ大物って感じだな。成果は少しだけ期待していてくれ」

 それも楽しそうだ。

 家にある最大容量の自在袋の中を空にして持っていく。これはフィオナが以前お好み焼き用の鉄板を購入した際に購入した市販品最大容量のものだ。更に食料買い出し用に食料用の自在袋も持って出かける。
 なお財布は個人用の自在袋に入っている。

 本来自在袋は高価なものなのに随分と使っているな、俺達。学生の頃とはえらい違いだ。

「車は俺が運転するよ」

 テディの運転は少しばかり荒いので事前に言っておく。

「それでは車に風魔法をかけますわ」

「頼む」

 俺は前座席の右側に乗り、テディとサラが乗って扉を閉めたのを確認して車を起動した。

「まずはゲルセットの街の中央に向かって行くな」

 別荘はゲルセットでもかなり外れの方に建っている。だからこそ広大なプライベート砂浜なんてあるのだろうけれど。
 道はやや荒れ気味の石畳だが、重心低めでサスペンションもよく出来ているせいか乗り心地は悪くない。速度は馬車の3倍くらい出している筈なのだけれど。
 もちろん人や馬車がいたら速度を落とす。しかし幸いなことに田舎過ぎて他の馬車等は滅多にいない。

「来るときも感じましたけれど、速くて怖いくらいです」

「自分で運転しているともっと出せると感じるのですけれどね」

 テディも自分が運転している時に速度を出し過ぎな事は気づいている模様。
 なら帰り、郊外に出てから位は運転させてやってもいいかな。最悪事故りそうな際は空間操作魔法で車ごと転移させればいいし。

 小さな橋をわたると一気に家が増える。ゲルセットの市街地だ。この町に来たのは初めてなので、様子をうかがいつつ馬車並の速度で進む。

「市場はどの辺かな」

「この感じですとまだ先ですね」

 地理がわからないので雰囲気的に賑やかな方へと車を向ける。

 何度か同じ場所をぐるぐる回って、何とか市場の外れらしい場所に出た。ゴーレム車を停めさっと降りた後、最大容量の自在袋にゴーレム車を入れる。
 何とか入って一安心。これで駐車場問題も気にならない。

「この自在袋も役に立ちましたね」

「まさかここまで巨大容量の自在袋を買ってくるとは思わなかったけれどな」

 ちなみにこの自在袋、1袋で正金貨20枚2千万円もする。ゴーレム車と同じ値段だ。
 俺だったら絶対買えない。気分的に。

 さて市場はというと、街の規模の割に大きい印象だ。おそらくこの周辺の街や村の集散地という側面があるせいだろう。
 肉や野菜、海産物もそこそこ揃っている。無論国内最大級であるゼノアの市場程種類は多くないがその分安い。

「ここは野菜類と鶏肉が安いです。今後の分も買っておきましょう」

 サラがそんな感じで買いまくりはじめた。自在袋があれば物が悪くなるという事は無い。だから安かったり物が良かったりする時に買いだめするのは基本だ。
 でもこれでサラの号外も鶏肉が多くなるのかな。
 ちなみにこの辺の鶏肉というのはニワトリではない。合鴨っぽい鳥の肉だ。

「野菜も美味しそうですね。生のトマトやジャガイモもあります」
 
 スティヴァレではトマトは冷凍して年中使うのが普通。ジャガイモも一度加熱した後冷凍状態で売っている。
 だからか生のトマトやジャガイモは割と貴重品だ。サラが品種を確かめつつ大人買い。

 おっとトウモロコシもあの棒状の生の状態で発見。これも種を取って乾燥させた状態で流通するからそのままは少ないんだよな。これは俺が購入だ。

 こうやって改めて見るとスティヴァレは加工野菜が普及しているんだなと感じる。そこに生で売っているアスパラガスだって基本的には冷凍だ。
 高価な自在袋に収納するよりも毎日冷凍魔法をかけた方が安上がりだしな。その程度の魔法は誰でも使えるから。

 おっと、海産物で思わぬ物を売っていた。イカだ。
 ゼノアでもラツィオでもタコは食べたがイカは無かった。食べる習慣がなかったせいだろうけれど、こんなところにあったか。
 物自体はヤリイカの小さいのといった形だ。すかさず大人買いさせて貰う。
 おっと甲イカっぽいのも発見。こちらも大人買いだ。

「アシュ、その変な形のものは食べられるのでしょうか」

「美味しいぞ。帰ったら色々作るからさ」

「私もそれは食べた事が無いです」

「まあ任せてくれ」

 夏と言えば焼きイカと焼きトウモロコシだ。どっちも醤油を塗って少々焦げるくらいに焼くのが正しいと思う。醤油は無いから臭い少なめの魚醤を使おう。

 あとイカは刺身にしたり詰めものにしたりしてもいいな。そうだ塩辛も絶対作らないと。
 なら買い占めるくらい買っておいてもいいな。誰も食べなければ俺が食べるまでだ。

 結局、
  ○ 俺がイカと生野菜各種
  ○ サラが鶏肉と生野菜各種
  ○ テディがレモン酒をはじめとした酒各種
を主に購入した。

「この干しぶどうで作るワイン、この辺の名産らしいですわ。こっちのレモンで作ったお酒も」

 テディは熟成した辛めの酒よりも若くて甘いお酒が好みだ。ミランダやナディアさんは蒸留酒とか、ワインだと熟成した辛めのが好きらしいけれど。
 ただ頼むから今度はサラには飲ませないでくれ。冬に厳しい目にあったからな、俺が。
 
 なお帰りはテディが運転したそうだったので、市街地を出たところで交代した。やっぱりヤバ目の運転だったので、今後市街地では絶対テディに運転させないようにしようと強く強く誓ったのだった。
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