異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第15章 便利なゴーレム

第110話 我が家の製麺方法

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 学校が始まって2週間目の5の曜日。

「お願いがあるのですけれどいいでしょうか」

 夕食時、サラからそんな台詞が出た。

「何かな。大体の事なら大丈夫だけれどさ」

 この返答はミランダだ。

「実は10月に学園祭があるんです。それでお店を出すのですけれど、明日休養日にそのメニューを決める話し合いがあるんです。そこで製麺機をお借りしたいと思うのですけれどいいでしょうか」

 あの鋳鉄製の手回し製麺機、我が家ではかなり活躍している。最近ではスパゲティ風の麺もラーメンも焼きそば麺も全てあれで作った自家製だ。

「乾麺と比べてもちもち感が強くて美味しいですよね。お肉にも簡単なソースにもよくあいますし」
という事で週6日のうち2回以上は自家製麺した麺を食べている状態。

「問題は無いよね。キッチンは基本的にサラの管轄だしさ」

 夕食は基本的にサラが作るし、食料買い出しもサラだ。しかも各種生麺をかなりの量作って自在袋にストックしてある。だから問題はない。
 ただちょっと気になった事がある。

「俺もいいと思うけれどさ。でも学園祭って高級学校にあるんだな。国立ラツィオ校には無かったけれど」

「ラツィオでも領立校にはありましたわ。あと1年の時は小規模ですが実施しました。それ以降もやろうと運動したのですけれど、運動の中心にいたロッサーナ殿下が卒業された後無かった事にされてしまいましたわ」

 なるほど。俺は全然憶えていないのだけれど。

「サラが監修なら美味しいのは間違いないですね。どんなお店になるのでしょうか」

「食べ物屋さんという事は決まったのですが、それ以降は明日に有志で集まって決める予定です。ですのでメニューも値段もお店のコンセプトもまだ決まっていません」

「それじゃまずは決議、サラに製麺機を貸し出す事に賛成の人、挙手!」

 ミランダの台詞でサラ本人以外全員が手をあげる。

「ありがとうございます。それではお借りします」

「それでどんなメニューを作るのかな?」

 フィオナが興味津々という感じで尋ねる。

「明日試作するのはラーメンとつけ麺です。これでしたら独自性が出せますし、味も問題ないと思います。単価もそこまで高くはならないと思います。麺は小麦粉主体ですし他の材料は家が農家の子等から商品にならない野菜等を安く譲って貰う予定ですから。ジュリアも出汁用に実家から売り物にならなかった魚を焼き干しにした物や、同じく売り物にならない魚醤の沈殿部分等を貰ってきてくれるそうです。既に明日の試食分は用意してあります」

 なるほど。確かにそれならそう高価にはならないだろう。

「何か美味しそうだよな」

「あのラーメンって癖になりますわ」

「私は肉多めのつけ麺が好きです」

 はいはいはい。なお肉多めつけ麺派はナディアさんだ。

「そう言えばミランダ、あの製麺機を量産する話はどうなったの?」

 フィオナの台詞にミランダが苦い顔をする。

「よく考えたらスティヴァレでは家庭でじっくり料理するという習慣が無いからさ。今のところは保留だな。作っても小ロットだと高くつく」

「それってあの時アシュに指摘されていたよね」

「そうだけれどさ。実際にこれで作った麺を食べると欲しくなるんだ」

「わかりますわ。私もそう思いましたから」

 実際に作って食べてみれば食べる美味しさも作る楽しさもわかるのだ。しかしやってみないとわからない。だから売れない。そんな状態らしい。

「明日製麺機を使うなら麺帯とかは作ってあるのかな。向こうで作るのかな」

「明日は見本なので作ってある麺帯を持って行って、向こうでは切る作業だけをする予定です」

 手回し式の製麺機を使う場合の製麺工程はラーメンの場合を例にすると、
  ① 強力粉、水、重曹、塩を混ぜる(水まわし作業)
  ② ①を捏ねて丸めてしばらく寝かせる
  ③ ②を棒状に伸ばして、製麺機のローラー部分で平たく伸ばす。
  ④ ③を繰り返して最終的には製麺機のカッターの部分と同じ幅の帯状にする
    (これを麺帯という。この際厚さは麺の太さにあわせる)
  ⑤ ④の麺帯を1~2日寝かした後、製麺機のカッター部分で切る
という感じで結構作業が面倒くさい。
 なおラーメン以外の麺類でも材料が少し変わるだけで他はほぼ同じだ。

 ちなみに我が家では①~④の作業はゴーレムのグルーチョ君が担当している。作業を学習させたのでラーメンの太麺細麺もスパゲティもうどん風もOK。低加水麺も多加水麺も指示するだけでいい。
 指示さえすれば自分で材料を計量して水に塩や重曹や卵を溶かして、水まわしをし、捏ねた塊を作って伸ばして麺帯を作るところまでやってくれる。

 何気に作業が結構面倒だし時間もかかる。しかし学校なら労働力もあるし問題ないだろう。切る作業は面白いから希望者が出るだろうし。

 家でも一応グルーチョ君は全ての作業を自動で出来るのだが、あえて⑤は人がやっている状態だ。特に普段料理から外されているミランダが休日に率先して作っていたりする。
 この作業ならミランダ作でもそう失敗は無い。切るだけだから。

 またグルーチョ君はある程度の料理も出来る。夏のリゾート後からゴーレムに少しずつ家事作業を覚えさせることにしたのだ。具体的には料理、配膳、後片付け、掃除等。

 そんな訳で今ではグルーチョ君もそこそこ料理の戦力になる。魔法は使えないので水甕や火がついた木炭が必要だけれども。
 たとえばラーメンのスープを作ったりご飯を炊いたりは学習済みでほぼ完ぺき。昼食が海鮮丼の時は炊飯して酢飯を作って冷ましておいてくれたりもする。

 なおゴーレムはグルーチョ君の他にジュディーちゃんとパフィーちゃんがいて、一応3機とも同じ事が出来るようになっているらしい。
 でもキッチン担当は基本的にグルーチョ君で、ジュディーちゃんは普段は掃除担当、パフィーちゃんはフィオナの自室用兼研究用だ。

「何ならグルーチョ君も貸そうか。奴がいれば製麺も楽が出来るだろ」

「流石にそれは申し訳ないです。それに料理を手伝うゴーレムは他に無いでしょうから目立ちます」

「同意」

 確かにサラやジュリアの言う通りだ。この家にいると感覚が麻痺するけれど。
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