異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第16章 冬のリゾート

第128話 ボート&ゴーレム使用の魚捕り

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 翌日朝食の後。ミランダは別荘の契約のためにネイプルへ。
 俺は、
「海上から絵を描きたい。魚捕りも」
というジュリアにつきあって船にゴーレムを乗せて海上へ。
 フィオナとテディは温泉の改良点を調べるという名目で温泉施設。
 ナディアさんとサラは岩場で釣りや採取だそうだ。

 ジュリアはいきなりかなり沖まで出た後、何もない海面に何か目印でもあるかのように慎重に場所を決めて船を止める。

「何かここにした理由があるのか?」

「この下、岩場で浅い。魚が集まりやすい」

「何故わかるんだ」

「波と潮の流れ」

 その辺は実家での経験なのだろう。言われても俺には全くわからない。
 でもとりあえずアンカーを下ろしてまずジュリアは絵画、俺はゴーレム漁を開始。

「金属性魔法、ゴーレム操作、メプティ、起動」

 水中用ゴーレムの視界と感覚が俺の脳に流れ込む。ゴーレムは船の後部から海の中へ。

 確かにジュリアの言ったように高くなっている岩があった。まるで見えているようだなと思いつつ、付近をゆっくり泳いで魚を探す。
 自分で泳ぐのと違い簡単に潜れて浮き上がる事が無くて楽だ。息継ぎも必要ないし。

 さて獲物はと辺りを見てみる。小さいのはうじゃうじゃと群れで泳いでいるのだが大きいのは見えない。
 もう少し深い方かな。ゆっくりと潜っていく。

 岩がオーバーハングしている辺りに少し大きめな魚がいた。
 昨日釣った黒鯛もどきに似ているが少し違うような。海中なので今ひとつよくわからない。
 とりあえず水魔法で脳天を一発。一発で駄目なら2、3発。

 動かなくなったので取寄魔法アポートで船上へ。海面に出して観察してみると昨日の黒鯛もどきとは違う魚だ。
 形は鯛に近いが雰囲気がアジっぽい。大きさは全長40cmくらい。大きくて美味しそうなので回収することに決定。
 絵を描いているジュリアの方へしぶきがはねないよう自在袋に入れる。

 さて、他に大物はいないかな。おっと、岩陰からウツボっぽいのが睨んでいる。しかしあれは食べ方がわからない。だから今は無視しよう。

 岩のまわりをぐるりと回る。さっきのと同じでかくて体高が高いアジを発見。
 今度は水魔法一発で仕留め取寄魔法アポートで海面へ。先程と同じくらいの大きさだ。やはり自在袋へ入れる。

 船の前方でジュリアが動いたのが見えた。自在袋にお絵かきセットをしまってこっちを見る。

「どう? いる?」

「今のところアジの大きな奴だけ」

 ジュリアは状況を理解したらしく頷く。

「相乗りいい?」

 相乗りとは同じゴーレムを2人で操作する事だ。俺より海中の事は詳しそうなのでちょうどいい。

「頼む」

「了解。金属性魔法、ゴーレム操作、メプティ、起動」

 これでゴーレムは俺とジュリア双方から見て動かせる状態になった。

「行動開始」

 ゴーレムは一気に潜り始める。どうやら狙うべき層はもっと深い場所のようだ。

 だいぶ潜った感じだが周りはまだ上からの光が届いている。水深は10腕20m15腕30m位だろうか。もう1腕2mくらい下は海底だ。

 この辺は砂底で、所々に岩が立っているという感じになっている。見える岩で一番大きいのが船の下にある岩だ。
 小魚はその周囲、ゴーレムより上方で群れをなして泳いでいる状態。しかし大物は一見する限り見当たらない。

「いた」

 ジュリアの声。同じ視界を共有している筈の俺にはそれらしい魚は見えない。

 次の瞬間、砂底の海底がふっと舞った。ゴーレムを通してジュリアが水魔法をしかけたのだ。そのまま海底の一部分が剥がれるように持ち上がる。

 底ではなく魚だった。ヒラメとかカレイに似た感じだがもっと菱形に近い形で身も分厚い感じ。ふっとその魚の姿が消え、次の瞬間ジュリアの横付近の海面に浮かび上がる。

「キオダート。これも美味しい魚」

 こうやって近くで見るとかなり大きい。全長60cmくらいありそうだ。

「全然見えなかったな、これがいるの」

「慣れるとなんとなく違和感を感じる」

 なるほどな。

「底物をもう少し探す」

 ゴーレムは海底に沿うように泳ぎ始める。

 ◇◇◇

 キオダートと呼んでいたヒラメっぽい魚2匹。砂底をヒレで歩くように泳いでいた赤色のハゼを大きくしたような魚4匹。舌平目っぽい魚6匹等を捕って別荘へ戻る。

 面倒なので船ごと移動魔法で別荘下の浜辺へ。そこからは岩の階段を上って別荘へ。

「大漁」

 ジュリアはなかなかご機嫌な様子。

「あのキオダートって魚はどうやって食べるんだ?」

「5枚におろしてムニエル。最高に美味しい。カルパッチョも悪くない。真っ白な身で旨みと甘みがある」

 やはりヒラメ等と同じような魚なのだろうか。話を聞くからに美味しそうだ。

「やっぱりジュリアはこういった事をよく知っているよな」

「高級学校へ行かなければ漁師をやっていた。家業」

 なるほど。

「でも今が一番楽しい。学校も楽しいし仕事も楽しい。休みでこうやって魚を捕ったりも出来る」

「なら良かったな」

 そんな話をしながら別荘内へ。
 帰ってみるとほぼ皆さん揃っている。思ったより時間が経っていたのだろうか。

「悪い、遅くなった」

「いや、ちょうどじゃないかな。僕らは家にいたしさ」

「そうですね。こちらも釣った魚をお昼に使おうと思って早めにもどりましたから」

「私もネイプルへ行って契約して帰ってきただけだからな」

 なるほど。

「あとテディは?」

 この場にいない1名の事を聞いてみる。

「よっぽど温泉施設が気に入ったらしくてさ。まだ中だと思うよ」

「湯あたりとかしないか、いい加減」

「適当に寝湯とかで休んでいるから大丈夫じゃ無いかな」

 そんな事を言っていると奥から本人がやってきた。

「どうだった?」

「最高ですわ」

 よっぽど気に入ったのだろう。それだけでは済まずに後が続く。

「ただの露天風呂が最高なのですけれど、それ以外もいい感じなのですわ。寝湯でぼーっと休んだり、椅子湯でちょっとぬるめにして休んだり、歩行湯を行ったり来たりして。これはもう離れられないですわ」

「もうここも本契約したからいつでも使えるぞ。移動魔法も使えるしさ」

「毎日でも夜だけでは足りない位ですわ」

 おいおい。気に入ったのはいいけれどさ。
  
「ところでミランダにしては早く帰ってきたよね、今日。ミランダのことだからあちこちの図書館とか回ってくるかと思ったんだけれど」

 そういえばフィオナの言う通りだ。そう思ってミランダの方を見ると何か苦い顔をしている。

「いや、本当はそうするつもりだったんだ。だけどさ、ちょっとネイプルの空気が悪くてさ。さっさと逃げてきたというのが本当の処だ」

 空気が悪い?

「どういう事でしょうか」

「昼食を食べながら話そうか」

「なら食堂へ行きましょう」

 既に出来ているらしい。釣り組がナディアさんとサラだからどっちも料理は出来るしな。
 それにしても空気が悪いとはどういう事なのだろう。昼食そのものは楽しみなのだけれど気になる。
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