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第17章 状況の始まり
第133話 状況のはじまり
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毎度の事だがリゾートから帰ると仕事をしなければならない状態になる。
そんな訳で事務所にはミランダとフィオナ以外全員が揃っていた。
サラやジュリアもまだ冬休み中なので事務所にいる。
俺自身は本来の意味での急ぎの仕事そのものはない。
でもテディとサラに定期的に与える恋愛小説を探す必要があるし、ジュリアも新しい漫画が欲しいと言っている。
ナディアさんも新しい本をあるていど与えないと似たような状態になるしな。
そんな訳で俺は彼女達に与える餌探しを開始する。
そうは言っても恋愛小説系統は苦手。
だから書評誌を再び召喚して熟読する事になる訳だ。
本命が見つからないまま俺の好みの本を何冊か召喚してしまうのも毎度の通り。
『君に届け』をジュリア用に30巻まで全部召喚したり。
『デューン/砂の惑星』をついつい召喚してしまったり。
『スカートのなかのひみつ。』を召喚してこれどうやって訳そうか悩んだり。
『戦略拠点32098 楽園』はあえてそのまま訳そうかと思ったり。
なんて事を事務所でやっていた時だ。
ドンドン。
扉が乱暴にノックされ、そして開かれる。
「ここは梟商会で間違いないな」
入ってきたのは衛視庁の制服を着た連中だ。
だが雰囲気が何かおかしい。
「何のご用でしょうか」
「一連のチャールズ・フォート・ジョウントによる貴族・商会襲撃事件の犯人として逮捕す……」
最後まで言い終わることは出来なかった。
彼をはじめバタバタと入ってきた連中が倒れる。
「説明は後です。昨日までいた場所に」
今のはナディアさんの仕業らしい。
「わかった。俺がかける」
作業中の机ごと移動魔法をかける。
別荘のリビングは空きスペースがかなり広い。
だから机もそのままで移動完了だ。
「何なんだ、今のは」
「衛視庁の制服を着ていますが近衛騎士団です。それも表向きには騎士団に所属していない部隊になります。ゴーレムの空間操作魔法を使用して接触し電撃魔法で麻痺させたので6半時間は動けない筈です」
ナディアさんの口調はあくまで落ち着いている。
「俗に暗闇部隊と呼ばれている部隊ですね」
「ええ。間違いありません。顔を知っていますから」
そんな部隊が存在する事すら俺は知らない。
でもそうなると心配なのはここにいない2人だ。
「とりあえずフィオナやミランダにも連絡しておこう」
「そうですね」
そう話しているとふっとリビングに魔法の反応。
咄嗟に身構えるが知っている反応だ。
ミランダ、そして少し遅れてフィオナが出現する。
「何なの。いきなり衛視庁の制服に襲われたから逃げてきたけれど」
「こっちもだ。なにがあったんだ」
「旧来の貴族の誰かがチャールズ・フォート・ジョウントの正体に気づいたのでしょう。それで消すつもりで近衛騎士団の暗闇部隊に襲撃させたものと思われます」
テディが落ち着いた口調で説明する。
「こんな白昼堂々とか」
「ええ。殺害するつもりで襲撃すればこちらも逃げるか攻撃するかしかありませんから。いずれにせよこちらがチャールズ・フォート・ジョウントの一味であるとの証拠とするには充分です」
これはナディアさんだ。
「つまり殺害するのではなく、チャールズ・フォート・ジョウントが誰か明らかにするのが目的という訳か」
「出来れば殺害するつもりだったでしょう。ですがこちらが何処へでも移動できる事は予測している筈です。ですので殺害できなくともチャールズ・フォート・ジョウント一味の存在と正体を明らかにする事を目的としたものと思われます」
なるほど。
やっと俺も図式が見えてきた。
「それにしても何故衛視庁ではなく近衛騎士団が」
「近衛騎士団は手先として使われているのでしょう。衛視庁は国の役所として正当な証拠とそれを認める司法判断がなければ動けません。ですが騎士団、特に近衛騎士団は貴族というだけで高位にいる者がうじゃうじゃいます。衛視庁のような法による統制もきいていません。故に私兵として動かすのにちょうど良かったかと」
「あとは逃げたとしても応戦したとしても犯罪として告発するわけか」
「そういう事です。襲撃してきた中に顔を知っている者がいたので気づきました」
その辺はナディアさん様々だなと思う。
少なくとも俺はそういった事に気づけないだろうと思うから。
「ならここも安全とは言えないかな」
「それは多分大丈夫だ」
今度はナディアさんではなくミランダが言う。
「どうしてかな」
「此処はまだ梟商会の登録になっていない。来年に代金を払い終えるまでは名義は商業ギルドの預かりになっている。売買をおこなったのも商業ギルドを通してだ。
そして商業ギルドが今回の事案に協力する可能性は極めて低い。違うか、ナディアさん」
「その通りです」
ナディアさんは頷いた。
「最近の不公正な商取引で貴族や癒着した大手商会は商業ギルドからかなり怒りをかっています。それに商業ギルドはあくまで独立組織です。騎士団や衛視庁からの要請があっても今回のような場合には情報を開示しないでしょう」
なるほど。
「つまりここに籠もっていれば当分は安全という事だね。でも何年も籠もっているわけにはいかないよね。サラ達も学校があるし」
「何年もかかる事は無いでしょう。おそらく数日のうちに情勢が動きますわ」
これはテディだ。
「あとロッサーナ殿下や陛下は大丈夫でしょうか」
「見てみるか」
王宮内でまずは陛下の魔力を探してみる。
いたいた。
どうやら会議中のようだ。
会議の議題は……スベイ伯爵家領主館打ち壊し事件の処理のようだ。
偉そうな貴族どもが何人も席についていてそれぞれ勝手な事を主張している。
この分だと結論が出るのはまだまだ先になりそうだな。
そう思いつつ次はロッサーナ殿下の捜索へ。
殿下も王宮内にいた。
これは補佐官としての執務室だな。
部屋に控えているのは侍女っぽい姿の女性と護衛らしい女性騎士の2人。
ヤバい。
感じたのと同時につながっていた空間をずらす。
何か魔法がさっきまで俺がのぞいていた空間を掠めていった。
攻撃魔法を放ったのは護衛の女性騎士。
まさかこの魔法に気づかれたのか。
「心配いりませんわ、ソニア。その方は敵ではありません」
ロッサーナ殿下の声。
という事は気づきにくいはずの俺の空間操作魔法に2人とも気づいたという訳か。
「アシュノールさんですね。違いますか」
バレては仕方ない。
ただ直接行くのも問題だから声だけで応答する。
「ええ。アシュノールです」
「どうなさいましたか。これまでそちらからこちらに連絡を取る事は無かったと思いますけれど」
どうやら殿下は俺達が襲撃された事を知らないようだ。
ここは教えるべきだろうか。
「ご無事なら問題ありません」
その俺の一言で殿下は察したようだ。
「そちらで何か起こったのですね」
「詳細は後ほど連絡させていただきます」
とりあえずそう言ってごまかしておく。
「わかりました。それでは連絡をお待ちしていますわ。もし私が会議中もしくは接客中の場合は、このソニアかレジーナに代わりにお話し下さって結構です。
2人とも私の直属ですから」
ソニアさんとは去年の魔法武闘会の優勝候補だったあのソニアさんだろう。
あとレジーナさん、何処かで聞いた名前だなと思って侍女さんの方を見る。
姿形で記憶が呼び戻された。
おい、何故……いや、必然なのか。
でもまさか闇魔法のレジーナさんが侍女としてここにいるとは思わなかったな。
そして更に気づいた事がある。
この前のチャールズ・フォート・ジョウント事案を起こした第三の人物。
間違いなくソニアさんだ。
という事は今までのチャールズ・フォート・ジョウント事案は全部ロッサーナ殿下の指示だった訳か。
以前のテディの予測はあたっていた訳だ。
そんな訳で事務所にはミランダとフィオナ以外全員が揃っていた。
サラやジュリアもまだ冬休み中なので事務所にいる。
俺自身は本来の意味での急ぎの仕事そのものはない。
でもテディとサラに定期的に与える恋愛小説を探す必要があるし、ジュリアも新しい漫画が欲しいと言っている。
ナディアさんも新しい本をあるていど与えないと似たような状態になるしな。
そんな訳で俺は彼女達に与える餌探しを開始する。
そうは言っても恋愛小説系統は苦手。
だから書評誌を再び召喚して熟読する事になる訳だ。
本命が見つからないまま俺の好みの本を何冊か召喚してしまうのも毎度の通り。
『君に届け』をジュリア用に30巻まで全部召喚したり。
『デューン/砂の惑星』をついつい召喚してしまったり。
『スカートのなかのひみつ。』を召喚してこれどうやって訳そうか悩んだり。
『戦略拠点32098 楽園』はあえてそのまま訳そうかと思ったり。
なんて事を事務所でやっていた時だ。
ドンドン。
扉が乱暴にノックされ、そして開かれる。
「ここは梟商会で間違いないな」
入ってきたのは衛視庁の制服を着た連中だ。
だが雰囲気が何かおかしい。
「何のご用でしょうか」
「一連のチャールズ・フォート・ジョウントによる貴族・商会襲撃事件の犯人として逮捕す……」
最後まで言い終わることは出来なかった。
彼をはじめバタバタと入ってきた連中が倒れる。
「説明は後です。昨日までいた場所に」
今のはナディアさんの仕業らしい。
「わかった。俺がかける」
作業中の机ごと移動魔法をかける。
別荘のリビングは空きスペースがかなり広い。
だから机もそのままで移動完了だ。
「何なんだ、今のは」
「衛視庁の制服を着ていますが近衛騎士団です。それも表向きには騎士団に所属していない部隊になります。ゴーレムの空間操作魔法を使用して接触し電撃魔法で麻痺させたので6半時間は動けない筈です」
ナディアさんの口調はあくまで落ち着いている。
「俗に暗闇部隊と呼ばれている部隊ですね」
「ええ。間違いありません。顔を知っていますから」
そんな部隊が存在する事すら俺は知らない。
でもそうなると心配なのはここにいない2人だ。
「とりあえずフィオナやミランダにも連絡しておこう」
「そうですね」
そう話しているとふっとリビングに魔法の反応。
咄嗟に身構えるが知っている反応だ。
ミランダ、そして少し遅れてフィオナが出現する。
「何なの。いきなり衛視庁の制服に襲われたから逃げてきたけれど」
「こっちもだ。なにがあったんだ」
「旧来の貴族の誰かがチャールズ・フォート・ジョウントの正体に気づいたのでしょう。それで消すつもりで近衛騎士団の暗闇部隊に襲撃させたものと思われます」
テディが落ち着いた口調で説明する。
「こんな白昼堂々とか」
「ええ。殺害するつもりで襲撃すればこちらも逃げるか攻撃するかしかありませんから。いずれにせよこちらがチャールズ・フォート・ジョウントの一味であるとの証拠とするには充分です」
これはナディアさんだ。
「つまり殺害するのではなく、チャールズ・フォート・ジョウントが誰か明らかにするのが目的という訳か」
「出来れば殺害するつもりだったでしょう。ですがこちらが何処へでも移動できる事は予測している筈です。ですので殺害できなくともチャールズ・フォート・ジョウント一味の存在と正体を明らかにする事を目的としたものと思われます」
なるほど。
やっと俺も図式が見えてきた。
「それにしても何故衛視庁ではなく近衛騎士団が」
「近衛騎士団は手先として使われているのでしょう。衛視庁は国の役所として正当な証拠とそれを認める司法判断がなければ動けません。ですが騎士団、特に近衛騎士団は貴族というだけで高位にいる者がうじゃうじゃいます。衛視庁のような法による統制もきいていません。故に私兵として動かすのにちょうど良かったかと」
「あとは逃げたとしても応戦したとしても犯罪として告発するわけか」
「そういう事です。襲撃してきた中に顔を知っている者がいたので気づきました」
その辺はナディアさん様々だなと思う。
少なくとも俺はそういった事に気づけないだろうと思うから。
「ならここも安全とは言えないかな」
「それは多分大丈夫だ」
今度はナディアさんではなくミランダが言う。
「どうしてかな」
「此処はまだ梟商会の登録になっていない。来年に代金を払い終えるまでは名義は商業ギルドの預かりになっている。売買をおこなったのも商業ギルドを通してだ。
そして商業ギルドが今回の事案に協力する可能性は極めて低い。違うか、ナディアさん」
「その通りです」
ナディアさんは頷いた。
「最近の不公正な商取引で貴族や癒着した大手商会は商業ギルドからかなり怒りをかっています。それに商業ギルドはあくまで独立組織です。騎士団や衛視庁からの要請があっても今回のような場合には情報を開示しないでしょう」
なるほど。
「つまりここに籠もっていれば当分は安全という事だね。でも何年も籠もっているわけにはいかないよね。サラ達も学校があるし」
「何年もかかる事は無いでしょう。おそらく数日のうちに情勢が動きますわ」
これはテディだ。
「あとロッサーナ殿下や陛下は大丈夫でしょうか」
「見てみるか」
王宮内でまずは陛下の魔力を探してみる。
いたいた。
どうやら会議中のようだ。
会議の議題は……スベイ伯爵家領主館打ち壊し事件の処理のようだ。
偉そうな貴族どもが何人も席についていてそれぞれ勝手な事を主張している。
この分だと結論が出るのはまだまだ先になりそうだな。
そう思いつつ次はロッサーナ殿下の捜索へ。
殿下も王宮内にいた。
これは補佐官としての執務室だな。
部屋に控えているのは侍女っぽい姿の女性と護衛らしい女性騎士の2人。
ヤバい。
感じたのと同時につながっていた空間をずらす。
何か魔法がさっきまで俺がのぞいていた空間を掠めていった。
攻撃魔法を放ったのは護衛の女性騎士。
まさかこの魔法に気づかれたのか。
「心配いりませんわ、ソニア。その方は敵ではありません」
ロッサーナ殿下の声。
という事は気づきにくいはずの俺の空間操作魔法に2人とも気づいたという訳か。
「アシュノールさんですね。違いますか」
バレては仕方ない。
ただ直接行くのも問題だから声だけで応答する。
「ええ。アシュノールです」
「どうなさいましたか。これまでそちらからこちらに連絡を取る事は無かったと思いますけれど」
どうやら殿下は俺達が襲撃された事を知らないようだ。
ここは教えるべきだろうか。
「ご無事なら問題ありません」
その俺の一言で殿下は察したようだ。
「そちらで何か起こったのですね」
「詳細は後ほど連絡させていただきます」
とりあえずそう言ってごまかしておく。
「わかりました。それでは連絡をお待ちしていますわ。もし私が会議中もしくは接客中の場合は、このソニアかレジーナに代わりにお話し下さって結構です。
2人とも私の直属ですから」
ソニアさんとは去年の魔法武闘会の優勝候補だったあのソニアさんだろう。
あとレジーナさん、何処かで聞いた名前だなと思って侍女さんの方を見る。
姿形で記憶が呼び戻された。
おい、何故……いや、必然なのか。
でもまさか闇魔法のレジーナさんが侍女としてここにいるとは思わなかったな。
そして更に気づいた事がある。
この前のチャールズ・フォート・ジョウント事案を起こした第三の人物。
間違いなくソニアさんだ。
という事は今までのチャールズ・フォート・ジョウント事案は全部ロッサーナ殿下の指示だった訳か。
以前のテディの予測はあたっていた訳だ。
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