異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第17章 状況の始まり

第134話 引っ越し作業

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「陛下も殿下もいつも通りで問題は無さそうだな。俺達が襲撃された件についてもまだ知らないようだ」
 そう言いつつちょっと考える。
 皆に伝えるべきだろうかと。
 ロッサーナ殿下の元にソニアさんとレジーナさんがいる事を。
 2人が今までのチャールズ・フォート・ジョウント事案の犯人だという事を。

 でもまずはテディに相談しよう。
 殿下にこっちに何かあった事に気づかれた件も含めて。
 伝達魔法で相手をテディに限定して話しかける。

『今ロッサーナ殿下の処を見た時、殿下に気づかれて少し会話をした。だから殿下は俺達に何かが起きた事を気づいてしまった。あと殿下の執務室にソニアさんとレジーナさんがいた。更に言うとソニアさんがこの前のチャールズ・フォート・ジョウント事案の犯人だ』
『そうでしたか』

 ちょっと間をあけて、そしてテディから返答がくる。
『私が殿下と話しましょう。殿下は王宮にいらっしゃるのでしょうか』
『ああ、王宮3階にある補佐官の執務室だ』
『わかりました』

「それではゼノアから私物を召喚して自室を整理してまいりますわ」
 テディはそう言ってこの場を離れる。
 テディと殿下の話はどうなるかな。

「僕もそうしてこようかな」
「私も」
 皆さんテディの行動を不自然に思う事も無かったようだ。

 そうだ、俺もゼノアから物を取り寄せておこう。
 俺=チャールズ・フォート・ジョウントとなるような証拠はゼノアの家にはない。
 黒子衣装も宇宙論の本も自分用の自在袋に入れて持ち歩いているからだ。
 他に証拠になりそうな物もない。
 でも今まで召喚したり買ったり翻訳した本が無くなると悲しいよな。
 ゴーレムボートなんかの遊び道具も。

 そんな訳で俺はゼノアの家から物を召喚する作業を開始した。
 まずは事務所からだ。
 残った机や戸棚、本棚を片っ端からこっちへ召喚する。
 このリビングは向こうの事務所より更に広い筈だ。
 でも流石に広いこのリビングもいっぱいになるだろうか。
 そうすれば余った部屋に片付ければいいか。
 そんな事を考えながら、とにかく何でもかんでも召喚しまくる。

 やはりこの部屋はゼノアの事務所と比べてかなり広い。
 事務所の机と本棚、戸棚等全てを召喚した時点でまだ一部屋分余裕がある。
 でもこれ以上物を召喚するとリビングとしては使えなくなりそうだ。

 この別荘で次に広い部屋は食堂だ。
 あそこもうちの事務所その2こと実質物置と同じくらいの広さがある筈。
 そんな訳で食堂に移動。
 更に家のあちこちにある私物等を召喚しまくる。

 リビングや隣の食堂にゼノアの家にあった荷物が大量に積まれたところでフィオナがやってきた。
「ごめん、ちょっと頼んでいいかな。僕の部屋は重いものが多くて全部は自分で召喚出来ないんだ。向こうのベランダにも資材も置いているし。あとグルーチョ君達もお願い」

「わかった」
 そう言えばグルーチョ君達は向こうに手に入れられるとまずい。
 何せ本家自律ゴーレムで、しかも空間操作魔法まで入っている。
 あわててグルーチョ君達が持ち去られていないか確認。
 まだゼノアの家にいたので急いで召喚。
 そしてそれ以外のフィオナの部屋にあるグッズやベランダに出している資材を取り寄せる。
「ありがとう。これでこっちでも同じ事が出来る」
 フィオナは部屋に戻っていった。

 入れ替わりにやってきたのはミランダだ。
「悪い、私の部屋散らかっていてさ。私の魔法だとうまく取り寄せられないんだ。だからアシュ頼む。私の部屋にあるものをベッドと机と椅子以外、そのままここの2階の私の部屋に転送してくれ。片づけなくていいから」

 どれどれ。
 魔法で見てみて納得する。
 いわゆる床が見えないという状態だ。
 メモだの号外紙のスクラップだのといったごちゃっとした物が異常に多い。
 それに加え服なども脱いだまま投げてある状態だ。

「これを機に片づけた方がいいんじゃないか」
「片づけるとさ、何処に何があったかわからなくなるんだ。服も使う前に清拭魔法を使えば綺麗にはなるから問題無いしさ」
 うーむ。
 何だかなと思いながらこっちのミランダの部屋に転送する。

「サンクス。それじゃちょい部屋の方を見てくる」
 ミランダが部屋に戻る。

 さて、共用の物を召喚し終えたら自室の方を整理しよう。
 俺の自室にはそれほど物が無い。
 だいたいは自在袋にいれて持ち歩いている。
 だから時間はかからないだろう。

 そうだ、キッチンのタレやソース類もやらないと。
 秘伝お好み焼きソースとか、特製うどんつゆとかも。
 転送しようと思って向こうを確認したら既になくなっていた。
 確認したところ既にこっちのキッチンへと転送されている。
 これはきっとサラだな。
 重いし大変だっただろうに。

 ただ好きな物焼きヴァストリベント用の鉄板付きテーブルは流石に大きくて重すぎて召喚出来なかったようだ。
 だからこれは俺が食堂へと召喚する。
 これでほぼ全部取り寄せたかな。

 忘れ物が無いか、各部屋を確認。
 そしてふと気づく。
 まだ2年も暮らしていないのに、結構あの家に愛着があったんだなと。
 最初にこの家に来た時、やっぱり広いなと思った事。
 事務所の一角に本棚を立て、ここを図書室として本いっぱいにしようと思った事。
 そんな思い出が走馬灯状態になる。

 いや待て、俺。
 別にあの家が他の人に渡った訳じゃない。
 今は一時的に避難しているだけなんだ。
 取り戻せる筈だ。
 帰れる筈だ。
 この事態が終わればきっと。

 忘れ物がない事を確認し、俺は2階の自室へ。
 ちょっと自室にこもって未来視を使おうと思ったのだ。
 今後の出方を間違えない為にも見ておくべきだろう。
 問題は俺が何処まで未来を視ることが出来るかだ。
 俺がわかっている範囲の事実だけで何処まで視えるだろう。
 それが少々不安だ。
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