異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第20章 バジリカタ親征

第154話 朝のミーティング

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 毎日朝食の後、皆がこの別荘を出る前に打ち合わせをしている。
 今日はまず俺が今朝見た未来視の内容を報告するところからはじまった。

「今朝視たんだが、1週間後に騎士団がバジリカタに攻めてくるようだ。だが今度の件は俺だけじゃないくナディアさんも戦場に出て貰う必要がある」

「何故でしょうか」

 今までは俺一人でかたがついていた。俺の魔法で全部片付けられる相手だったからだ。
 でもこの次は違う。
 
「今度は陛下も出てくる。おそらく俺対策だろう」

「それじゃその戦いが最終決戦なのかな」

 フィオナの台詞に俺は首を横に振る。

「ではないようだ。その先の戦いも視えるから」

「陛下が特殊な魔法を使える事を一部の貴族は知っています。ですからチャールズ・フォート・ジョウント対策に間違いないでしょう。騎士団が陛下に泣きついたのか、陛下が自ら出ると決意されたのかはわかりませんけれども」

 テディも俺と同じ考えのようだ。

「そうらしい。だから陛下が前面に出てきた場合、俺は陛下の相手をしなければならなくなる。だからゴーレム部隊や騎士団はナディアさんとニア・マイアに対応して貰う事になる訳だ」

「でも戦闘用ゴーレムは例の呪文で無力化できるよね。ならこの中の誰でもいいんじゃないかな。あとは移動魔法で将校クラスを移動させれば簡単だよね」

 確かにこの戦闘だけで見ればそうだ。しかし今後を考えた上で未来視で視て調べた結果はそうならない。

「この先の展開を進めるためにさ。貴族を出来るだけ国王陛下側に集めたまま逃がさないようにしたいんだ。その為には陛下が俺と対等に戦える事と、戦闘用ゴーレムが有効な兵器だという事を向こう側に信じさせた方がいいらしい。その為に、
  ○ 戦闘用ゴーレムが無力化出来る事を気づかせない
  ○ 平民の兵士を出来るだけ投降させつつ貴族の将校の欠落は抑える
  ○ 移動魔法を使えるのはこちらではチャールズ1人だけと思わせる
という制約条件で戦いたいんだ。
 未来視ではこれがうまくいけば今の内乱状態が長引かず、新政権で王族や貴族の支配を切るのも楽になるようにみえる」

 皆が移動魔法を使えるのは味方にも秘密にしてある。ゴーレムもチャールズ一味専用の通信装置としてしか認識されていない。
 実際味方の他部署に貸し出しているゴーレムは通信機能のみだ。だから今のところゴーレムが移動魔法を持っている事は味方も知らない。

「しかしゴーレム部隊を前面にして攻めてきたらニアとマイアでも危なくないか?」

 確かに300近いゴーレム相手では龍2頭も傷つくかもしれない。それは俺としても本意では無い。
 だがそれに対しても既に作戦はある。

「こちらでも捕らえた戦闘ゴーレムがあるよね。あれを前面にたてるのかな」

 フィオナが気づいたようだ。俺は頷く。

「そのつもりだ。戦闘用ゴーレムは戦闘用ゴーレムで対処し、残った戦闘用ゴーレムはニアとマイアの攻撃で倒す作戦でいきたい。
 ただ出せるゴーレムはうちの方が少ないだろう。だからうちの戦闘用ゴーレムは出来れば戦闘の時までに対ゴーレム戦用に戦術を教え込んでいて欲しいんだ。ゴーレムの弱点を狙うような形で。ゴーレム同士が相打ちになるような展開が一番いい。その辺はフィオナ、任せていいか」

「わかった。オッタービオさんと相談してやっておくよ」

「頼む」

 これで次の戦いは大丈夫な筈だ。

「それで陛下をお救いする事は出来るのでしょうか」

 ナディアさんの台詞に俺は首を横に振る。

「まだその方法は見つからないんだ。もう少し考えさせてくれ」

「わかりました」

 陛下を殺さず死なせずかつ無効化する方法。未来視で視る限り方法はあるような気がする。だが未だに思いつけないだけのだ、俺が。

「次の戦闘の件については未来視で更に詳しく視て内容を紙にまとめておく。この件で今日の午後以降、対策本部の幹部とバジリカタ派遣部隊長を含む会議を開きたい。俺も参加する。テディ、その辺の連絡調整は頼むな」

「わかりましたわ」

 こういった事はテディに任せておけば安心だ。

「それじゃ他に誰かあるかな。ちなみに私は今日も外回りだ。締め切りを延ばしてくれという出版社へのお願いと情報収集だな」

「締め切り延長は是非お願いしますわ」

「僕からも頼むね」

「私もお願いします」

 サラとジュリアはお願いしなくとも平気なようだ。

「このご時世だからな。まあ国立図書館は私達が騎士団に手配されている件を知っているから何とかなる。他の出版社も今はこの状況の特集で忙しいから大丈夫だろう。号外系の出版社はまさに今書き入れ時で忙しいしさ。
 私は以上だが他には?」

「アシュノールさんとミランダさんのお昼御飯はいつもと同じように自在袋に入れておきました。ドリンクとデザートもです。他の皆さんのは私が持っている自在袋に入れていきます。
 あと午前中、適宜買い出しに行く予定です」

「ありがとう」

「サンキュー」

「僕はとりあえずオッタービオさんにアシュに頼まれた件で相談かな。何かあったらゴーレムで呼んでね」

「私は騎士団の方に詰める予定です。いつも通り何かありましたら私宛に一報お願いしますわ」

「私は本部のデスクですわ」

「私は特になし」

「それじゃミランダ以外はリビングに8時半集合だな」

 俺達は出かける支度をはじめる。
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