神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第6話 先遣隊の迎え入れ

26 見せしめと温情措置

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 最初の車は、日本風に言うと午前11時20分に村に到着した。
 なお荷車は鉄輪だけれど、思ったよりは乗り心地が酷くは無かった。
 勿論『思ったより』程度だけれど、60km/h程度で走る分には許容範囲内の振動と横揺れだ。

 とりあえず子供達や世話担当その他を下ろして、簡単に指示。

「皆が来るまでの間、ここの集会所を使って休んで下さい。また村の中は、自由に見学して構いません。ですが川や池等で、溺れたりする事がないよう、注意して下さい。
 以上の指示は、この後に着いた者に対しても伝達願います。
 私はもう一度今の道を戻って、あと半刻1時間以内で辿り着けないだろう者を、車で拾ってきます」

 私は荷車を収納し、トヨハマの休憩所へと移動。2回目の運行、落第者拾いに荷車を走らせる。
 
 落第者といっても、体力があまり無いとか魔法を上手く使えない程度なら問題無い。
 何せ魔法を授与してまだ一日。すんなり使いこなせなくても無理はないだろう。

 ただ、最初に荷車に乗せなかった連中には、性格・性質的に駄目駄目な輩が何人かいる。
 どうせそいつらも拾うことになるのだろうな。そう思うと、少々気が重い。

 そして約50分後。
 回収した12名のうち10名は、駄目駄目な輩だ。
 なまじ腕力があったり、顔や体型が良くてちやほやされたり、親が有力者だったり、逆に親がどうしようも無い輩で、それしか知らないという状態だったり。

 そんな感じなので、魔法授与という新たな力を手に入れたのに、自分で考えて上手く使おうと考えない、もしくは使おうとしないのだろう。
 
 黙って乗っていても、全知によって人物像はまるわかりだ。
 だから先程の私の考えが、そう外れていない事は確認出来てしまった。

 それでも人のことは、基本的には人に任せた方が無難だろう。
 だから私は、基本的には黙っているつもりだった。
 
 ただ、やはり100人もいれば、どうしようもない輩は出るものだ。 
 村まで残り12km程度のところで拾った、30代前半程度の男が、乗せた後、車が走り出すと同時に騒ぎ出す。

「なんだよ。こんな楽なのがあればよ。最初から乗せろよなあ。態度がなってねえよ。サネソン様を迎える態度がよ」

 あの輩が実際はどんな輩なのか、全知で瞬時に把握した。
 正直どうしようもない輩のようだ。
 親が村の有力者だった事からわがままに育ち、腕力が強かった事から同世代の中でも好き放題して、そのうち村の中では腕力が強い方となったから文句を言う者もいなくなり……

 ついでに言うと、現代日本基準なら10年以上の懲役になりそうな事を、5回以上はやっている。

 この自称サネソン様は正直、ここで廃棄した方がいいような気がする。
 それでも私は一応神だ。だからよほどの事がない限りは、私が直接手を下すなんて事はしない方がいいとは思うのだけれど……

「よう、そこの神様よ。俺様は疲れているんだからよ、あの家で配ったようなものを何かくれよ。歓迎するといっていただろう……」

 駄目だな、これは。
 ここで身の程を知らせておかないと、他に悪影響が出る。
 そう判断した私は、自称サネソン様を、全在を使った力の魔法で、荷車のなかから吹っ飛ばした。

 60km/h程度で走っている車内から飛ばされて、落ちた先が岩舗装の道路。
 転がって、そして道端で止まったのを確認しつつ、私は荷車を止める。

 まずは後ろに乗車中の連中に告げておこう。

「私は愚か者は嫌いです。ですが今日は初日、あの愚か者にも、少しだけ猶予を与えましょう。あの者に今日の処分を告げてきます。私が戻るまで、この場所で待っているように。もしそれ以外の行動をとるならば、その結果私がどう判断しどう処分するかを考えてからにした方がいいでしょう」

 馬鹿にはこんな話し方では、理解出来ないかもしれない。でも私が怒っていることさえわかれば、当座は構わない。
 それすらわからず無駄な事をやる輩がいたら、処分するだけだ。

 車の先頭座席から、奴の転がっているところまで、場所を意識して瞬間移動の方式で移動。

 奴は転がって、ウーウーうめいている。
 全在で強引に道ばたに寄せ、そして車に残した連中にも聞こえる様、やはり全在を使ってはっきりとした大声で告げる。

「あちらでも言いましたが、私は愚か者は嫌いです。ですがまだ初日、少しだけ温情を与えましょう」

 全在は治療魔法の様にも使用出来る。なので骨折その他を、歩く事が可能な程度に治療する。
 うめき声が少しだけ治まった。しかし、立ち上がったり文句を言ったりする気力は無いようだ。

「最低限の治療魔法をかけました。これで歩ける程度には回復した筈です。
 さて、仮にも神に対して、そこまで文句を言える実力があるのなら、私の力無しで生きてゆくのがいいでしょう。先程授与した魔法は取り上げます。
 ですがまだ初日。追放処分まではいたしません。
 新しい村はこの先2里半10km程の場所です。もしまだ村に来る気があるのなら、今の状態でも本日中には着く筈です。
 自分の力で村までたどり着いたなら、監視付きですが、魔法以外は他の者とそう変わらない待遇を与えましょう。
 以上です。ここから先は、自分で判断しなさい」

 車の最前列の席を意識する。次の瞬間、私は車に戻っていた。
 後ろに座っている連中に、声をかける。
 
「以上です。あとあの者については、以降特別扱いする必要はありません。暴力で何かしようとしてきたら、魔法で倒してしまって構いませんから。それでは村に向け、出発します」

 今のは教育の機会になっただろうか。そう思いつつ、私は車をスタートさせる。

 ◇◇◇

 村へついた後。全員を集会場のひとつに集め、昼食にする。
 本当はこういう時こそうどんの出番なのだけれど、この者達はまだそんな食物に慣れていない。

 だから今回は、ケカハらしい食事に近いものとした。
 具体的には、
  〇 肉がわりの揚げ蒲鉾てんぷら(平天2枚)
  〇 豆と野菜、鳥肉入りスープ
  〇 パン(酵母を入れて焼いた、日本風の食パンに近いものを、概ね6枚切り食パンサイズ3枚)
  〇 パン用ペースト(内臓肉ペースト、野菜ペースト)
というメニューだ。
 
 またあの男から魔法を取り上げ、荷車から降ろした件については、全員にあの場の映像を音声入りで脳内へと送り、説明した。

「今までは、力さえあれば通じるという状況があったのかもしれません。ですが皆さんケカハの住民には、魔法を授与しております。ですから今後は、単なる腕力や体力自慢は必要ありません。
 またそういった腕力を使って理不尽を押し通そうとする場合に限り、魔法を使って抵抗、または反撃することを許可します。またその場合の判断と処分は、当分の間、私自身が行います。
 私はケカハの土地神です。この土地で起こった事、またこの土地に居る者の全てを知る事が可能です。その事を心にとめておいて下さい」

 つまり私が法律で絶対だと宣言した訳だ。わかって貰えたかどうかは微妙だけれど。

 私は神で、ここケカハは私が治める領域。
 だからこういった面は、この土地の人間の慣習になびくなんて事はしない方がいいし、するべきではない。

 この世界の考え方は、私が自然と考えるものより大分古く、因習やマッチョイズムに溢れているだろう。
 その辺は心配だけれど、それでも妥協はしないつもりだ。

 何というか、こういった事を考えるのは、本来の私らしくはないし、したくもない。
 ただお役所の窓口で駄目駄目な輩を相手にした経験があるので、どうしてもあれこれ考えてしまうのだ。
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