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第7話 雨期に来るもの⑴
33 ここからが本題と思ったら
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ビブラム一家3人が合計12玉分、しっかり食べた後。
おつまみとして作った『揚げぴっぴ 海鮮塩味』をつまみながら、本題についての話を開始する。
「雨期になると、山から猪や鹿など大型の獣が降りてくるだろうと聞きました。畑等を荒らす場合も多いと思いますが、この村には何か対処方法はあるでしょうか」
「基本的は狩りです。私を含めて7人、兼務で狩人をやる者がいます。害獣を発見した際は、私をはじめとしたその7人を中心にして、狩りを行います」
やっぱり狩りがメインの方法らしい。
ビブラムの説明は、更に続く。
「狩りには、今までは弓と槍を使っていました。ですがコトーミ様に魔法を授けていただきましたので、魔法を使ってもっと有効な武器を使えないかということで、現在新しい武器や魔法をテスト中です」
なるほど。ただ新しい武器があったとしてもだ。
「山から下りてきた後、村の側に作った林や河原等にそういった獣が住み着いて、繁殖する可能性もあると思います。またこの村の人数を考えると、そういった獣を全部は狩りきれない可能性があります。
そういった場合、私が手を出して全部倒した方がいいですか?」
「いえ、ある程度繁殖した方がいい位です。肉を確保出来るというのは、かなり大きな利点ですから。
現在この村には豚はいませんし、山羊も数が少なく肉に出来る状態ではありません。ですから猟で鹿や猪が獲れる環境にあることは、むしろありがたい。勿論畑も多少は荒らされるでしょう。ですがそれを差し引いたとしてもです」
確かに肉となる動物にやる餌の分を考えると、多少畑に損害があっても、問題はないのかもしれない。
ただ問題は、損害が多少で済むかどうかだ。
「畑の損害は、多少程度で済むのでしょうか?」
「もちろん害獣に入られないようにします。高い柵を作ったり、柵の下を魔法で岩にしたり等して、出来る限りの対処はするつもりです。あとは害獣が出た際、いただいた魔法を使用して早期に狩る事が出来れば、被害はそこまで広がらないでしょう」
なら私が対処を考える必要はないだろう。
新しい武器というのが気になるけれど、そこは後で全知を使って確認すればいい。
なら用件はこれで終わりだな。そう思った時だった。
『ドキ川上流から、こちらに向かっている者がいます』
全知が速報として知らせてきた。
実は雨期に入ってから、人がケカハ山脈に入ってきた事には気づいていた。
夏には稜線の向こう側、ミョウドーの領域に住んでいた人々が、時折稜線の手前側へやってきていたのだ。
しかし平野まで降りてくる事はなかったから静観していた。
それが、こちらに向かっているとは……
敵か味方か。どういう立場か。
そう思ったところで、更なる追加情報が脳裏に流れる。
これはビブラム達に相談した方がいいだろう。
そう判断した私は、頭の中で情報を整理し、そして口を開く。
「話はかわりますが、つい今、ドキ川上流方向からこちらに向かってきている者3人を確認しました。まっすぐ進めば半日程度でこの村に到着します。
3人とも20歳前後で、元はケカハの住民です。10年前に平野を離れ、山に移り住んだとあります」
「私が知っている者かもしれません。その3人の名前はわかりますでしょうか」
全知のおかげで、ひととおりの情報は頭の中に入っている。
「ナルゼ、アルガ、ミマスの3人です。3人に探索を命じたのは イルザという者で、50人程の小集団で山中にて生活しています」
「3人とも子供時代までですが、知っております。それにイルザのところでしたら、心配は無いでしょう」
ビブラムだけでなく、クエルチェもかなり良く知っている者達のようだ。
表情の動きで、どういう関係でどう思っているのかが何となくわかる。
無粋なので、あえて全知で情報を探ったりしない。
全知で確認するのは、ビブラム達の本日の予定だ。
具体的には今日の午後、何をしなければならなかったかについて。
『村の長としての予定はありません。自分の畑の雑草取り、水やりだけです』
なら問題はない。
「迎えに行きますか。車を出せば、1時間程度で合流できるでしょう。何でしたら、ここにいる全員で向かってもかまいません。
畑の方は、今日の分だけはこちらでやっておきましょう。出迎えの方が重要です」
ビブラムとクエルチェは行きたい様子だ。ならアルトラを1人残すのも何だろう。
ロシュとブルージュは、車を出す以上行く事になる。
車を出すときは必ず2人で出るよう、言ってあるから。
つまり、出るのはここの全員だ。
「ありがとうございます。それではお願い致します」
「それじゃ此処は片付けるから、ロシュとブルージュは準備して」
食べ終わった皿を収納して、収納内で洗って。
その間にロシュとブルージュを含め、私以外の5人は小型の背負い袋を装備する。
この背負い袋はつい最近、村で開発されたものだ。用途は魔法を使う際の燃料となる薪を持ち歩く為。
この背負い袋に薪を入れて背負っておけば、薪が全部灰になるまで、魔法を使い放題になる。
これで魔法で薪を必要としても、両手が空いた状態で作業が出来る訳だ。
魔法に使った薪は灰になるけれど、別に火が燃えたりする訳ではないし、温度も上がらない。
だから布で出来たバッグに収納しても大丈夫。
そして農作業や漁業、その他の採取活動等では、相当無茶な事をしない限り、薪2kgあれば充分だ。
金属加工や家の建築等では、もっと薪が必要な場合もある。
ただそういった作業の際は、必要な薪を現場に積んでおけばいいだけ。
なので何かと便利なこの背負い薪袋、今では村人ほぼ全員が使用している。
微妙に違和感がある風景だけれど、実用を考えると仕方ない。
片付けが終わって外へ。車は神社に入ってすぐ西側にある車庫の中だ。
今は荷物を運ぶことが多いから、座席は前2列だけで、後ろは荷台状態。
ただ今日は最大9人乗る可能性があるから、座席は最低3列は必要だな。
収納から座席を一列追加してボルトで止め、改めて車を確認。
この車は屋根も扉もなく、風防だけついているという完全なオープンカーだ。
今までは雨が降る事はほとんどなかったけれど、雨期に入ったし、屋根をつけた方がいいだろうか。
今日は雨は降っていない。それに雨期と言っても今はまだ、2~3日に2時間程度、地面が濡れたかなという程度に降る程度だ。
しかし冬になれば、もう少し降る日も出てくるだろう。
雨の中、出かけなければならない時だってあるかもしれない。
なら屋根と扉もつけるべきだろう。
しかしそうなると、トラックとバス兼用というのが難しくなる。
新たな屋根付き車を作った方がいいか、考えながら車庫に入っている車に乗り込む。
私とロシュとブルージュが前で、ビブラム達が二列目。
「ドキ川の堤防に出て、堤防の上を川上に向かって。近づいたらまた追加指示を出すから」
「わかりました」
まずはロシュの運転で車は走り始める。
私が造った堤防は、土ではなく岩に加工してある。
コンクリート製と同じか、それ以上に頑丈だ。
ついでに言うと、上が平らな形状にもなっている。
つまり上は道路として使える訳だ。
という訳で堤防の上を、鉄輪の台車で疾走する。
日々改良を加えてはいるけれど、60km/h程度で飛ばしていると、やはり乗り心地は宜しくない。
それでもロシュの運転は危なげないし、皆さん景色を楽しむ余裕がある感じだ。
「緑の場所が、大分広がっている」
アルトラが河原側と草原側両方を見て呟いた。
「川にずっと水があります。十一年前、まだこの時期にはほとんど水が無かった筈です。水が貯まると池になりそうな土地もあります。これは全部、コトーミ様が為されたのでしょうか」
流石ビブラム、よく見ているな。
そう思いつつ返答する。
「ええ。ですが乾燥した草原地帯も一部には残しておくつもりです。そこに適応した動物がいますから」
たとえばシラプ、骨付鳥としていただいたあの鳥は、ある程度水場から離れた草原が生活場所だ。
だから草原が完全に開発されると絶滅してしまう。
「これですと、来年はこの辺りが大きく変わりそうな気がします。狩猟対象となる獣も増えるでしょう。先程話を伺った害獣対策について、村や畑の周囲に塀を作るなど、早急に対策を進めておきましょう」
村の外周は、現在は特に塀とかは作っていない。
街や村を塀で囲むという発想が日本人であった私には無かったからだ。
ケカハ平野には大型の獣がいなかったから、必要性を感じなかったというのもある。
「イルザやセティアは、元気でしょうか」
「もうじきわかるだろう」
クエルチェとビブラムの会話に出た名前も、今は全知で確認しない。
それでもやはり向こうの集団について、ビブラムとクエルチェは知っているようだ。
おつまみとして作った『揚げぴっぴ 海鮮塩味』をつまみながら、本題についての話を開始する。
「雨期になると、山から猪や鹿など大型の獣が降りてくるだろうと聞きました。畑等を荒らす場合も多いと思いますが、この村には何か対処方法はあるでしょうか」
「基本的は狩りです。私を含めて7人、兼務で狩人をやる者がいます。害獣を発見した際は、私をはじめとしたその7人を中心にして、狩りを行います」
やっぱり狩りがメインの方法らしい。
ビブラムの説明は、更に続く。
「狩りには、今までは弓と槍を使っていました。ですがコトーミ様に魔法を授けていただきましたので、魔法を使ってもっと有効な武器を使えないかということで、現在新しい武器や魔法をテスト中です」
なるほど。ただ新しい武器があったとしてもだ。
「山から下りてきた後、村の側に作った林や河原等にそういった獣が住み着いて、繁殖する可能性もあると思います。またこの村の人数を考えると、そういった獣を全部は狩りきれない可能性があります。
そういった場合、私が手を出して全部倒した方がいいですか?」
「いえ、ある程度繁殖した方がいい位です。肉を確保出来るというのは、かなり大きな利点ですから。
現在この村には豚はいませんし、山羊も数が少なく肉に出来る状態ではありません。ですから猟で鹿や猪が獲れる環境にあることは、むしろありがたい。勿論畑も多少は荒らされるでしょう。ですがそれを差し引いたとしてもです」
確かに肉となる動物にやる餌の分を考えると、多少畑に損害があっても、問題はないのかもしれない。
ただ問題は、損害が多少で済むかどうかだ。
「畑の損害は、多少程度で済むのでしょうか?」
「もちろん害獣に入られないようにします。高い柵を作ったり、柵の下を魔法で岩にしたり等して、出来る限りの対処はするつもりです。あとは害獣が出た際、いただいた魔法を使用して早期に狩る事が出来れば、被害はそこまで広がらないでしょう」
なら私が対処を考える必要はないだろう。
新しい武器というのが気になるけれど、そこは後で全知を使って確認すればいい。
なら用件はこれで終わりだな。そう思った時だった。
『ドキ川上流から、こちらに向かっている者がいます』
全知が速報として知らせてきた。
実は雨期に入ってから、人がケカハ山脈に入ってきた事には気づいていた。
夏には稜線の向こう側、ミョウドーの領域に住んでいた人々が、時折稜線の手前側へやってきていたのだ。
しかし平野まで降りてくる事はなかったから静観していた。
それが、こちらに向かっているとは……
敵か味方か。どういう立場か。
そう思ったところで、更なる追加情報が脳裏に流れる。
これはビブラム達に相談した方がいいだろう。
そう判断した私は、頭の中で情報を整理し、そして口を開く。
「話はかわりますが、つい今、ドキ川上流方向からこちらに向かってきている者3人を確認しました。まっすぐ進めば半日程度でこの村に到着します。
3人とも20歳前後で、元はケカハの住民です。10年前に平野を離れ、山に移り住んだとあります」
「私が知っている者かもしれません。その3人の名前はわかりますでしょうか」
全知のおかげで、ひととおりの情報は頭の中に入っている。
「ナルゼ、アルガ、ミマスの3人です。3人に探索を命じたのは イルザという者で、50人程の小集団で山中にて生活しています」
「3人とも子供時代までですが、知っております。それにイルザのところでしたら、心配は無いでしょう」
ビブラムだけでなく、クエルチェもかなり良く知っている者達のようだ。
表情の動きで、どういう関係でどう思っているのかが何となくわかる。
無粋なので、あえて全知で情報を探ったりしない。
全知で確認するのは、ビブラム達の本日の予定だ。
具体的には今日の午後、何をしなければならなかったかについて。
『村の長としての予定はありません。自分の畑の雑草取り、水やりだけです』
なら問題はない。
「迎えに行きますか。車を出せば、1時間程度で合流できるでしょう。何でしたら、ここにいる全員で向かってもかまいません。
畑の方は、今日の分だけはこちらでやっておきましょう。出迎えの方が重要です」
ビブラムとクエルチェは行きたい様子だ。ならアルトラを1人残すのも何だろう。
ロシュとブルージュは、車を出す以上行く事になる。
車を出すときは必ず2人で出るよう、言ってあるから。
つまり、出るのはここの全員だ。
「ありがとうございます。それではお願い致します」
「それじゃ此処は片付けるから、ロシュとブルージュは準備して」
食べ終わった皿を収納して、収納内で洗って。
その間にロシュとブルージュを含め、私以外の5人は小型の背負い袋を装備する。
この背負い袋はつい最近、村で開発されたものだ。用途は魔法を使う際の燃料となる薪を持ち歩く為。
この背負い袋に薪を入れて背負っておけば、薪が全部灰になるまで、魔法を使い放題になる。
これで魔法で薪を必要としても、両手が空いた状態で作業が出来る訳だ。
魔法に使った薪は灰になるけれど、別に火が燃えたりする訳ではないし、温度も上がらない。
だから布で出来たバッグに収納しても大丈夫。
そして農作業や漁業、その他の採取活動等では、相当無茶な事をしない限り、薪2kgあれば充分だ。
金属加工や家の建築等では、もっと薪が必要な場合もある。
ただそういった作業の際は、必要な薪を現場に積んでおけばいいだけ。
なので何かと便利なこの背負い薪袋、今では村人ほぼ全員が使用している。
微妙に違和感がある風景だけれど、実用を考えると仕方ない。
片付けが終わって外へ。車は神社に入ってすぐ西側にある車庫の中だ。
今は荷物を運ぶことが多いから、座席は前2列だけで、後ろは荷台状態。
ただ今日は最大9人乗る可能性があるから、座席は最低3列は必要だな。
収納から座席を一列追加してボルトで止め、改めて車を確認。
この車は屋根も扉もなく、風防だけついているという完全なオープンカーだ。
今までは雨が降る事はほとんどなかったけれど、雨期に入ったし、屋根をつけた方がいいだろうか。
今日は雨は降っていない。それに雨期と言っても今はまだ、2~3日に2時間程度、地面が濡れたかなという程度に降る程度だ。
しかし冬になれば、もう少し降る日も出てくるだろう。
雨の中、出かけなければならない時だってあるかもしれない。
なら屋根と扉もつけるべきだろう。
しかしそうなると、トラックとバス兼用というのが難しくなる。
新たな屋根付き車を作った方がいいか、考えながら車庫に入っている車に乗り込む。
私とロシュとブルージュが前で、ビブラム達が二列目。
「ドキ川の堤防に出て、堤防の上を川上に向かって。近づいたらまた追加指示を出すから」
「わかりました」
まずはロシュの運転で車は走り始める。
私が造った堤防は、土ではなく岩に加工してある。
コンクリート製と同じか、それ以上に頑丈だ。
ついでに言うと、上が平らな形状にもなっている。
つまり上は道路として使える訳だ。
という訳で堤防の上を、鉄輪の台車で疾走する。
日々改良を加えてはいるけれど、60km/h程度で飛ばしていると、やはり乗り心地は宜しくない。
それでもロシュの運転は危なげないし、皆さん景色を楽しむ余裕がある感じだ。
「緑の場所が、大分広がっている」
アルトラが河原側と草原側両方を見て呟いた。
「川にずっと水があります。十一年前、まだこの時期にはほとんど水が無かった筈です。水が貯まると池になりそうな土地もあります。これは全部、コトーミ様が為されたのでしょうか」
流石ビブラム、よく見ているな。
そう思いつつ返答する。
「ええ。ですが乾燥した草原地帯も一部には残しておくつもりです。そこに適応した動物がいますから」
たとえばシラプ、骨付鳥としていただいたあの鳥は、ある程度水場から離れた草原が生活場所だ。
だから草原が完全に開発されると絶滅してしまう。
「これですと、来年はこの辺りが大きく変わりそうな気がします。狩猟対象となる獣も増えるでしょう。先程話を伺った害獣対策について、村や畑の周囲に塀を作るなど、早急に対策を進めておきましょう」
村の外周は、現在は特に塀とかは作っていない。
街や村を塀で囲むという発想が日本人であった私には無かったからだ。
ケカハ平野には大型の獣がいなかったから、必要性を感じなかったというのもある。
「イルザやセティアは、元気でしょうか」
「もうじきわかるだろう」
クエルチェとビブラムの会話に出た名前も、今は全知で確認しない。
それでもやはり向こうの集団について、ビブラムとクエルチェは知っているようだ。
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