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第7話 雨期に来るもの⑴
34 村へ戻りながら
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全知から注意が入った。
『あと2kmで3人と接触します。この車で走っていると未知の獣と勘違いされ、攻撃されたり逃げられたりする可能性があります。ですから今のうちに、先触れをしておいた方が無難です』
確かにこの荷車、知らない者が見れば何だと思うだろう。鉄車輪だから轟音もするし。
だから私は、前方にいる3人に声が届くよう意識して、話しかける。
『聞こえますでしょうか。私はケカハの新たな神、コトーミです。現在貴方方と話をするため、ビブラムやクエルチェとともに川沿いを向かっています。轟音を発する大きな乗り物に乗っていますから、驚かないで下さい』
全知の映像で3人を確認。
聞こえたようだ。驚いて、そしてこちらをきょろきょろ見ている。
「もう少しで3人が見えるから、そうしたら速度を落として」
「わかりました」
話している間も、車は60km/hで走って行く。
『あと1kmです』
「それじゃロシュ、速度を落として。だいたい村の中で移動する時の速度まで」
タイヤが鉄輪で道路が岩だから、急がつく動作は出来ない。
だから村の中で作業するときは、人が早足で歩く程度の速度までで動かすよう、ロシュにもブルージュにも言ってある。
ただ2人とも、思い切り速く走らせるのが好きだ。
だから今でも毎日1回は、確認と称してセキテツへの道を飛ばして走っている。
なんてのは置いておいて……
速度を落として、大体30km/h位になった頃、普通の視力でも前方に3人を確認出来るようになった。
更に速度を落として、8km/hくらいで前進。3人の前10m位を見計らって、ロシュに指示して止める。
それではご挨拶だ。
「ビブラムとクエルチェ、先導をお願いします」
「わかりました」
最初は面識が少しでもある者の方がいい。
そんな判断で、2人を先頭に、あとは私、ブルージュ、ロシェ、アルトラという順で3人の方へ。
3m位のところで、ビブラムから声をかけた。
「ナルゼ、アルガ、ミマス、十年ぶりだな。もう覚えていないかもしれないが、以前ヤーシマにいたビブラムだ。イルザやセティア、マルゴ達は元気か?」
「ビブラムさん、そしてクエルチェさんですよね。お久しぶりです。現在はイルザさん以下、この背後にあるサントーゴエ山の、ミョウドー側に住んでおります。
ところで先程、ケカハの新しい神様からのお声を頂戴致しました。宜しければ拝謁を賜りたいのですが、宜しいでしょうか」
うんうん、これが神に対する正しい態度だ。数日前の、あのサネソン様はやっぱり、駄目駄目側の下限だったのだろう。
それでもあまり構えられていては、話が進みにくい。
だからここは、もう少し軽く接しておくことにしよう。
「そこまでかしこまる事はありませんよ。土地神と人とは、共生関係でもあるのですから」
そう言ってから、ビブラムとクエルチェに並ぶ場所へと出る。
「初めまして。本年の夏にケカハの土地神に就いたコトーミです。こちらにいらした事を、心より歓迎します。
ところでこちらには、何故いらしたのでしょうか」
「私達は3日の日程で調査を行う予定で、今朝出てきたところです。イルザさんからは、川を中心とした変化した地形、わかれば変化した原因、もしケカハに人が再び居住しているようなら、その確認をして来るよう、命じられています」
なるほど。なら問題は無いだろう。
「でしたらこの後、村を実際に見て、ビブラム達から説明を受ければいいでしょう。此処から村までは、この車で半刻かかりません。帰りはこの車で走れる範囲内までは送ります」
「そうして頂けると、大変助かります。ですが宜しいのでしょうか」
勿論だ。私は頷く。
「ええ。本日はその為に、此処へ来たのですから」
という事で3人を乗せて再出発。
帰りはブルージュが運転する。やっぱり60km/hくらいの速度で飛ばすけれど、不安な感じはない。
なので私は一応、万一の事故がないよう注意はしておくけれど、気になった事について考えてみることにした。
全知を使って状況を整理しつつ、思考をまとめておこう。
先程ナルゼは、山のミョウドー側に住んでいると言っていた。
ミョウドーの土地神ナハルは、かつてケカハに侵略しようとして失敗した過去があった筈。
そこの土地に住んでいた者がケカハに来て、問題はないのだろうか。
『人間の移動そのものには、制限はありません。またどの神の信徒であろうと、自分の領地内にいる人間からは真素を得ることが出来ます。自分への信仰心が高い程、神力に変換しやすい真素を得る事が可能です。ただし自分の信徒であろうと、他の神の領地にいる者からは、真素を得ることは出来ません』
なるほど。人がいれば、真素は入る訳か。
ただそうなると、人が去ったら得られる真素も減ってしまう。
ならナハルとしては、ナルゼ達がケカハに戻るのは、気に入らないだろう。
そこまで考えて、ふと思いつく。
領地内にいる人間からは、信徒でなくても真素を得る事が出来る。なら人間同士が戦争をしても、土地神の領地が増減しなければ、神への影響はほとんどない。
ならば、人間同士の戦争で神の領地が増減する規則なり方法なりがある筈だ。
『占領という規則があります。1里四方に、土地神Aの信徒のみが、100人以上、30日以上居住している場合、その土地は土地神Aの領地となります。また20平方里以下の領域が他の同一神の領域で囲まれた場合は、囲まれた時点で囲んだ神の領域として扱います』
『あと2kmで3人と接触します。この車で走っていると未知の獣と勘違いされ、攻撃されたり逃げられたりする可能性があります。ですから今のうちに、先触れをしておいた方が無難です』
確かにこの荷車、知らない者が見れば何だと思うだろう。鉄車輪だから轟音もするし。
だから私は、前方にいる3人に声が届くよう意識して、話しかける。
『聞こえますでしょうか。私はケカハの新たな神、コトーミです。現在貴方方と話をするため、ビブラムやクエルチェとともに川沿いを向かっています。轟音を発する大きな乗り物に乗っていますから、驚かないで下さい』
全知の映像で3人を確認。
聞こえたようだ。驚いて、そしてこちらをきょろきょろ見ている。
「もう少しで3人が見えるから、そうしたら速度を落として」
「わかりました」
話している間も、車は60km/hで走って行く。
『あと1kmです』
「それじゃロシュ、速度を落として。だいたい村の中で移動する時の速度まで」
タイヤが鉄輪で道路が岩だから、急がつく動作は出来ない。
だから村の中で作業するときは、人が早足で歩く程度の速度までで動かすよう、ロシュにもブルージュにも言ってある。
ただ2人とも、思い切り速く走らせるのが好きだ。
だから今でも毎日1回は、確認と称してセキテツへの道を飛ばして走っている。
なんてのは置いておいて……
速度を落として、大体30km/h位になった頃、普通の視力でも前方に3人を確認出来るようになった。
更に速度を落として、8km/hくらいで前進。3人の前10m位を見計らって、ロシュに指示して止める。
それではご挨拶だ。
「ビブラムとクエルチェ、先導をお願いします」
「わかりました」
最初は面識が少しでもある者の方がいい。
そんな判断で、2人を先頭に、あとは私、ブルージュ、ロシェ、アルトラという順で3人の方へ。
3m位のところで、ビブラムから声をかけた。
「ナルゼ、アルガ、ミマス、十年ぶりだな。もう覚えていないかもしれないが、以前ヤーシマにいたビブラムだ。イルザやセティア、マルゴ達は元気か?」
「ビブラムさん、そしてクエルチェさんですよね。お久しぶりです。現在はイルザさん以下、この背後にあるサントーゴエ山の、ミョウドー側に住んでおります。
ところで先程、ケカハの新しい神様からのお声を頂戴致しました。宜しければ拝謁を賜りたいのですが、宜しいでしょうか」
うんうん、これが神に対する正しい態度だ。数日前の、あのサネソン様はやっぱり、駄目駄目側の下限だったのだろう。
それでもあまり構えられていては、話が進みにくい。
だからここは、もう少し軽く接しておくことにしよう。
「そこまでかしこまる事はありませんよ。土地神と人とは、共生関係でもあるのですから」
そう言ってから、ビブラムとクエルチェに並ぶ場所へと出る。
「初めまして。本年の夏にケカハの土地神に就いたコトーミです。こちらにいらした事を、心より歓迎します。
ところでこちらには、何故いらしたのでしょうか」
「私達は3日の日程で調査を行う予定で、今朝出てきたところです。イルザさんからは、川を中心とした変化した地形、わかれば変化した原因、もしケカハに人が再び居住しているようなら、その確認をして来るよう、命じられています」
なるほど。なら問題は無いだろう。
「でしたらこの後、村を実際に見て、ビブラム達から説明を受ければいいでしょう。此処から村までは、この車で半刻かかりません。帰りはこの車で走れる範囲内までは送ります」
「そうして頂けると、大変助かります。ですが宜しいのでしょうか」
勿論だ。私は頷く。
「ええ。本日はその為に、此処へ来たのですから」
という事で3人を乗せて再出発。
帰りはブルージュが運転する。やっぱり60km/hくらいの速度で飛ばすけれど、不安な感じはない。
なので私は一応、万一の事故がないよう注意はしておくけれど、気になった事について考えてみることにした。
全知を使って状況を整理しつつ、思考をまとめておこう。
先程ナルゼは、山のミョウドー側に住んでいると言っていた。
ミョウドーの土地神ナハルは、かつてケカハに侵略しようとして失敗した過去があった筈。
そこの土地に住んでいた者がケカハに来て、問題はないのだろうか。
『人間の移動そのものには、制限はありません。またどの神の信徒であろうと、自分の領地内にいる人間からは真素を得ることが出来ます。自分への信仰心が高い程、神力に変換しやすい真素を得る事が可能です。ただし自分の信徒であろうと、他の神の領地にいる者からは、真素を得ることは出来ません』
なるほど。人がいれば、真素は入る訳か。
ただそうなると、人が去ったら得られる真素も減ってしまう。
ならナハルとしては、ナルゼ達がケカハに戻るのは、気に入らないだろう。
そこまで考えて、ふと思いつく。
領地内にいる人間からは、信徒でなくても真素を得る事が出来る。なら人間同士が戦争をしても、土地神の領地が増減しなければ、神への影響はほとんどない。
ならば、人間同士の戦争で神の領地が増減する規則なり方法なりがある筈だ。
『占領という規則があります。1里四方に、土地神Aの信徒のみが、100人以上、30日以上居住している場合、その土地は土地神Aの領地となります。また20平方里以下の領域が他の同一神の領域で囲まれた場合は、囲まれた時点で囲んだ神の領域として扱います』
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