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第3章 侵略の影 第12話 海向こうからの侵略⑴
52 対処
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キンビーラは理解したようだ。表情が少し和らいだのが見てわかる。
「なるほど……確かに可能だ。直ちにやってみよう。しかし、言われてみれば確かにその通りなのだが、気づかないものだな」
「私も思いつきませんでしたわ。やはりコトーミは別の世界を知っているから、予想外の事を思いつきますわね」
ここでやっぱり全知の解説が入る。
『地形を意図的に変えるという事は、この世界に元々いた神の常識にはありません。ですからキンビーラは思いつかなかったものと思われます』
以前、アルツァーヤに紹介された日、川を作り直す話をしたけれど、すぐには理解して貰えなかった。
あの時と同じという事だろう。
でもそれならビシューの土地神モ・トーは、何故海を埋め立てるなんて事を思いついたのだろう。
思いつくとすれば……
「ひょっとしたらアキヅシマでは、地形を変えるという考え方が一般的になっているのかもしれません。そうでなければ、海を埋め立てるという発想は思いつかない気がします」
「確かにそうだな。あと、確かにコトーミの言う通りの方法で、埋め立てた場所を削り、島に戻す事は成功した。それなりに海底を深くしたから、同じ程度の土の量では埋め立てられないだろう。
ただし、これでも完全に防げる訳ではない。たとえば内陸部から山をまるごと持って来て投入した場合、すぐに削るのは無理だ」
確かにその通りだろう。
『沿海神が領地としている島は、陸で繋がった瞬間に、繋がった先の土地神の領地となります。これは陸地は本来土地神が管理するものという原則があるからです。
領地となった場所は土地神の権限で、神力の範囲で自由に加工する事が可能となります。その気になれば繋がったと同時に高い頑丈な堤防を作り、波を利用した浸食を防ぐ事も可能です』
ならば、これも聞いておいた方がいいだろう。
「島に戻って良かったです。ですが島が繋がった間に、島そのものを改造されていなかったでしょうか」
「ちょっと待ってくれ……そこまではやっていないようだ。なるほど、土地神としての権限が使用出来る間に、島そのものを神力で変えてしまう可能性があった訳か」
どうやらキンビーラも、私が気づいた危険性を把握したようだ。
「そうなると今のままでは、島を取り返せない事態が起こる可能性がある訳か。ならいっそ、セート海域の島については、セキテツとケカハに所属させてしまうのが正解なのかもしれない」
そういう事が出来るのだろうか。
以前、話し合いで土地の領有を動かす事は出来ないと、全知で確認した気がするのだけれど。
『それは土地神同士の場合です。陸地は本来土地神が管理するものという原則があるので、沿海神が自分の領有とされている土地をしかるべき土地神の領有にする事は可能です。またこの逆で、土地神が島の領有をその海域を領海とする沿海神の領有にする事も、一定以下の大きさの島に限り可能となっています。これは沿海神と土地神の権利を対等とする為の規定です』
誰に規定されたのだ、というのはとりあえず置いておこう。
今必要なのは、沿海神と土地神の間でなら、話し合いで領地をやりとりする事が可能という事。
しかしキンビーラが、自分の領地を減らす事を言い出すとは思わなかった。
それはそれで思い切った事を考えたなとは思う。
しかし確かにそうしないと、今後面倒なことになる可能性はあるのは事実だろう。
「何故でしょうか」
アルツァーヤは理解出来なかったようだ。
キンビーラは、説明の言葉を続ける。
「私は沿海神であるが故に、陸が繋がったら領有権を奪われる。陸を加工することも出来ない。しかし土地神なら陸が繋がってもすぐに領有権を奪われるという事はない。敵の信徒が攻めてきても、陸を改変して地形を変えて応戦する事が可能だ」
『キンビーラは沿海神であり、神力を得る方法が土地神と異なります。沿海神の神力に関係するのは、航海する人や物の量、漁獲高、魚や生物の量、近隣住民による航海安全や豊漁を願う祈り等です。ですから島が領地ではなくなっても、神力に直接の影響はありません』
ならキンビーラは島の防衛を気にする必要がなくなって、私は領地と住民を得る事が出来るという訳か。
私の本音としては、忙しくなるのは勘弁だ。今ののんびりした生活を満喫したい。それ以上は望まない。
しかし島の住民の生活を守る為に、そしてケカハへ攻め込まれないようにする為には、必要なのだろう。
そう思ったところで、アルツァーヤが口を開いた。
「それはかまいませんが、その場合、人による島の統治体制はどうするつもりでしょうか?」
確かにそれは考慮すべき点だろう。
セキテツは人口が3万人程の、それなりに大きな国だ。ケカハやミョウドーと異なり、行政組織がそれなりに整っているらしい。
「出来れば現状を維持して貰えればありがたい。どちらも島それぞれに村があるだけで、何処が治めているなんてことはない。何かあったら隣の島の村と相談して、話がまとまらなければ更に隣の島から調停役を呼ぶとともに、神である私にお伺いを立てる。今はそういった体制だ」
「そうなるとセキテツに組み入れる訳にはいきませんわ。同じ土地神の領域ではあるけれど、別の国という扱いになります……」
この辺の話し合いは、アルツァーヤとキンビーラにお任せだ。
いずれケカハも、統治とか税金徴収とかを考えなければならなくなるのだろう。
三権のうち、立法機関は少し後になるかもしれない。でも行政機関と司法機関はある程度社会が大きくなれば必要になる。
ケカハはともかくミョウドーにも、役所というか行政機関と司法機関が合体したものが存在しているし。
◇◇◇
話し合った結果、
① 島民の合意が得られた場合、それぞれの島をアルツァーヤまたはコトーミの領域とする
② 統治機関等は特に設けず、独立した領域であることを維持する
ことが無事決まった。
「島民への説明と合意とりつけは既にはじめている。明日にはそちらへ島を渡せるだろう。ただタケヒカタ島だけは、出来る限り早く対策を取りたい。
コトーミには申し訳ないが、埋め立てられた跡地の確認と現地への説明に同行して貰えないだろうか」
領地譲り渡しまでは、一応は他領扱いだ。
しかし今回は戦闘に行くわけではないし、領地としているのはキンビーラ。
それに万が一があったとしても、ケカハの神社に顕現を残しておけばいいだけだ。
ついでに言うと、現在の私の神力は30,000以上残っている。
何せミョウドーの人口だけで3,000人くらいいる。その上前任者が酷すぎたせいか、私に対する信仰度合いがかなり高い模様だ。
だから今の私なら、その気になれば大規模な地形改変だって余裕。
つまり問題は、全く無い。
強いて言えば移動方法くらいだが……
「わかりました。この場合の移動は、キンビーラにお願いすればいいでしょうか」
「ああ。手を貸してくれ」
そう来たか!
手汗はかいていない! そう念じつつ、私は右手を出す。
「なるほど……確かに可能だ。直ちにやってみよう。しかし、言われてみれば確かにその通りなのだが、気づかないものだな」
「私も思いつきませんでしたわ。やはりコトーミは別の世界を知っているから、予想外の事を思いつきますわね」
ここでやっぱり全知の解説が入る。
『地形を意図的に変えるという事は、この世界に元々いた神の常識にはありません。ですからキンビーラは思いつかなかったものと思われます』
以前、アルツァーヤに紹介された日、川を作り直す話をしたけれど、すぐには理解して貰えなかった。
あの時と同じという事だろう。
でもそれならビシューの土地神モ・トーは、何故海を埋め立てるなんて事を思いついたのだろう。
思いつくとすれば……
「ひょっとしたらアキヅシマでは、地形を変えるという考え方が一般的になっているのかもしれません。そうでなければ、海を埋め立てるという発想は思いつかない気がします」
「確かにそうだな。あと、確かにコトーミの言う通りの方法で、埋め立てた場所を削り、島に戻す事は成功した。それなりに海底を深くしたから、同じ程度の土の量では埋め立てられないだろう。
ただし、これでも完全に防げる訳ではない。たとえば内陸部から山をまるごと持って来て投入した場合、すぐに削るのは無理だ」
確かにその通りだろう。
『沿海神が領地としている島は、陸で繋がった瞬間に、繋がった先の土地神の領地となります。これは陸地は本来土地神が管理するものという原則があるからです。
領地となった場所は土地神の権限で、神力の範囲で自由に加工する事が可能となります。その気になれば繋がったと同時に高い頑丈な堤防を作り、波を利用した浸食を防ぐ事も可能です』
ならば、これも聞いておいた方がいいだろう。
「島に戻って良かったです。ですが島が繋がった間に、島そのものを改造されていなかったでしょうか」
「ちょっと待ってくれ……そこまではやっていないようだ。なるほど、土地神としての権限が使用出来る間に、島そのものを神力で変えてしまう可能性があった訳か」
どうやらキンビーラも、私が気づいた危険性を把握したようだ。
「そうなると今のままでは、島を取り返せない事態が起こる可能性がある訳か。ならいっそ、セート海域の島については、セキテツとケカハに所属させてしまうのが正解なのかもしれない」
そういう事が出来るのだろうか。
以前、話し合いで土地の領有を動かす事は出来ないと、全知で確認した気がするのだけれど。
『それは土地神同士の場合です。陸地は本来土地神が管理するものという原則があるので、沿海神が自分の領有とされている土地をしかるべき土地神の領有にする事は可能です。またこの逆で、土地神が島の領有をその海域を領海とする沿海神の領有にする事も、一定以下の大きさの島に限り可能となっています。これは沿海神と土地神の権利を対等とする為の規定です』
誰に規定されたのだ、というのはとりあえず置いておこう。
今必要なのは、沿海神と土地神の間でなら、話し合いで領地をやりとりする事が可能という事。
しかしキンビーラが、自分の領地を減らす事を言い出すとは思わなかった。
それはそれで思い切った事を考えたなとは思う。
しかし確かにそうしないと、今後面倒なことになる可能性はあるのは事実だろう。
「何故でしょうか」
アルツァーヤは理解出来なかったようだ。
キンビーラは、説明の言葉を続ける。
「私は沿海神であるが故に、陸が繋がったら領有権を奪われる。陸を加工することも出来ない。しかし土地神なら陸が繋がってもすぐに領有権を奪われるという事はない。敵の信徒が攻めてきても、陸を改変して地形を変えて応戦する事が可能だ」
『キンビーラは沿海神であり、神力を得る方法が土地神と異なります。沿海神の神力に関係するのは、航海する人や物の量、漁獲高、魚や生物の量、近隣住民による航海安全や豊漁を願う祈り等です。ですから島が領地ではなくなっても、神力に直接の影響はありません』
ならキンビーラは島の防衛を気にする必要がなくなって、私は領地と住民を得る事が出来るという訳か。
私の本音としては、忙しくなるのは勘弁だ。今ののんびりした生活を満喫したい。それ以上は望まない。
しかし島の住民の生活を守る為に、そしてケカハへ攻め込まれないようにする為には、必要なのだろう。
そう思ったところで、アルツァーヤが口を開いた。
「それはかまいませんが、その場合、人による島の統治体制はどうするつもりでしょうか?」
確かにそれは考慮すべき点だろう。
セキテツは人口が3万人程の、それなりに大きな国だ。ケカハやミョウドーと異なり、行政組織がそれなりに整っているらしい。
「出来れば現状を維持して貰えればありがたい。どちらも島それぞれに村があるだけで、何処が治めているなんてことはない。何かあったら隣の島の村と相談して、話がまとまらなければ更に隣の島から調停役を呼ぶとともに、神である私にお伺いを立てる。今はそういった体制だ」
「そうなるとセキテツに組み入れる訳にはいきませんわ。同じ土地神の領域ではあるけれど、別の国という扱いになります……」
この辺の話し合いは、アルツァーヤとキンビーラにお任せだ。
いずれケカハも、統治とか税金徴収とかを考えなければならなくなるのだろう。
三権のうち、立法機関は少し後になるかもしれない。でも行政機関と司法機関はある程度社会が大きくなれば必要になる。
ケカハはともかくミョウドーにも、役所というか行政機関と司法機関が合体したものが存在しているし。
◇◇◇
話し合った結果、
① 島民の合意が得られた場合、それぞれの島をアルツァーヤまたはコトーミの領域とする
② 統治機関等は特に設けず、独立した領域であることを維持する
ことが無事決まった。
「島民への説明と合意とりつけは既にはじめている。明日にはそちらへ島を渡せるだろう。ただタケヒカタ島だけは、出来る限り早く対策を取りたい。
コトーミには申し訳ないが、埋め立てられた跡地の確認と現地への説明に同行して貰えないだろうか」
領地譲り渡しまでは、一応は他領扱いだ。
しかし今回は戦闘に行くわけではないし、領地としているのはキンビーラ。
それに万が一があったとしても、ケカハの神社に顕現を残しておけばいいだけだ。
ついでに言うと、現在の私の神力は30,000以上残っている。
何せミョウドーの人口だけで3,000人くらいいる。その上前任者が酷すぎたせいか、私に対する信仰度合いがかなり高い模様だ。
だから今の私なら、その気になれば大規模な地形改変だって余裕。
つまり問題は、全く無い。
強いて言えば移動方法くらいだが……
「わかりました。この場合の移動は、キンビーラにお願いすればいいでしょうか」
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手汗はかいていない! そう念じつつ、私は右手を出す。
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