神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第3章 侵略の影 第12話 海向こうからの侵略⑴

54 一方、ケカハでは

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 神々が陣取りゲームを繰り広げている間。
 ケカハの私の神社、拝殿の第1会議室では、私の顕現と村の重鎮とで、会議が行われていた。

「作物の収穫や麦の成長は順調です。ですが現時点で、働いている者と働いていない者の差がかなり出てきています。働いている者が不公平と感じないよう、報酬に差をつける必要性があると思われます。
 またミョウドーとの交流が一気に活発になり、物のやりとりも増えています。ですのでそろそろ貨幣を導入し、それぞれの働きに応じた報酬を与えるとともに、貨幣によりミョウドーとの商取引を行いやすくする必要がある。そう私は考えます」

 エイダンが切り出した通り、今日の議題は貨幣の導入についてだ。
 ケカハは元々、鉄とアルミしか金属を産出しない。
 しかしミョウドーが私の領域となったことで、金や銀、銅や鉛が手に入るようになった。

 ミョウドーの通貨だって、今では私が造ってミョウドーの太政官庁に下賜している。
 だからケカハ独自の通貨を作ろうが、ミョウドーの通貨をそのまま使おうが、問題は全くない。

 さて、基本的には私は口を出さず、会議を進めている。
 問題点はどうやらこんな感じのようだ。
  〇 通貨を与えられても、数字が読めない者が多く、価値がわからない上、計画的に使うという事も難しい
  〇 仕事量にあわせた報酬の場合、生活がぎりぎりになる者も数人存在する
  〇 平等に人数割りにした場合、働いている者が不公平と感じる可能性が高い
  〇 報酬以上に浪費し、生活が破綻する者が出る可能性が高い
  〇 公共物の整備費用等で、税金に相当する額を出す必要があるが、それぞれの報酬から引く形にするのは抵抗がある

 通貨を導入する事そのものは、皆さん必要性を感じているようだ。
 だから後は、与え方と使い方。ただし、識字率が低いし計算が出来ないので、計画的に使うという事が期待出来ない。
 あとは報酬を『怠け者の楽園』にならないよう設定する必要がある。

 基本的には、私はこのまま口出ししない方針だ。
 勿論日本で学んだ知識はあるけれど、この世界で通用するとは限らないから。
 提示するのは、たとえばミョウドーにおける制度とか、小麦粉や豆等の価格とか。
 
 こちらの会議は、どうやら午前中いっぱいはかかりそうだ。

 ◇◇◇

 更に私のもう1体の顕現は、ロシュ、ブルージュの他大人5人と一緒に、村の端、川や港に近い辺りにいる。
 これから此処に、醤油や味噌、味醂、酒の醸造場を造るのだ。

 今まではロシュやブルージュが、神社内の施設で試験的に造っていたのだが、つい先日ショーユとミソの第1号が出来上がった。
 酒とミリンも製造方法を確立した。

 酒は日本酒ではなく麦焼酎、それも寝かせていない荒々しいアルコールという感じの蒸留酒。
 ミリンは材料に麦を使ったので、日本にある本来の味醂と香りが少し違うけれど、やはり甘くてとろっとしているもの。

 いずれも悪くない出来で、これなら他の村人でも作れるだろうと判断。
 私の管理ではなく、村人に量産してもらうことになった。

 調味料をわざわざ造るというのは、食料と労働力を消費する贅沢な行為だ。
 しかしこの村の現況なら、その位の贅沢をしても問題無い。
 それに農業が苦手でも、こういった業務なら得意という者がいるかもしれない。
 そう倉庫番のエイダンが判断して、ビブラムがOKを出した。

 そこで『こういった調味料を造る為、このような仕事をする者』を募集したところ、
 ミマス、カジタル、エリオラ、エイミ、デルファ
の5人が集まった。

 ミマスは以前、ケカハの村を偵察に来たうちの1人で22歳。この中での最年長で、文字を一応は読み書き出来る。
 カジタルは20歳の男性で、農作業が肌に合わないということで、この村に来てからは建築や土木作業を中心に働いていた。
 エリオラとエイミは15歳女性で友人同士、それぞれ結婚する気はないけれど家から出て独立したいということで。
 デルファは13歳男性で、やはり家から出て独立したいというのが主な志望理由。

 他にも志望者はいたようだけれど、クエルチェとイルザが面談をして、ちゃんと働いてくれそうな人を選んでくれたそうだ。
 だから勤務意欲については心配しなくて良いだろう。

 それで今、建物を造りつつ、5人に説明をしている訳だ。

「つまり、ここで造る作業をしつつ、村人に出す作業もする訳ですか」

 最年長なので自然まとめ役っぽくなってしまったミマスの質問に私は頷く。

「そう。小麦粉と同じように木札と交換するか、お金で売る方法にするかは、今会議で決めている最中。けれど此処で造って保存している調味料類は、エイダン管理ではなくて、ここの皆と私で管理する形になる予定」
 
「なら記録をつけるために文字を書いたり、木札かお金を確認したり在庫の量を管理するために計算をしたりする事にもなるんでしょうか」

「そう。勿論最初は私か、ロシュとブルージュがついて手伝うつもり。でも早急に文字の読み書きや計算を覚えて、皆で出来る様になって貰おうと思っている」

 ミマスは絵見本を見て育ったので、一応は文字を読める。
 ただし他の4人は図書館でやっているゲームで、やっと自分の名前と数字がわかるようになった程度。
 ただそれでも、いずれは此処で独立して帳簿をつけられる程度にはなって欲しい。
 
 現在、食料や種、更には木材や金属類まで、在庫管理の全てはエイダンと妻のメルサがやっている。
 ミョウドーやセキテツの商人とのやりとりも、この2人が文字が読めず計算も出来ない人々との間を仲介している状態だ。

 これ以上業務を増やしては、あの2人が間違いなく倒れる。
 すでに業務量過多で、子供のイルとサレラも手伝わせている状態だし。

 かといって他に文字が読めて不自由なく計算が出来る大人は、ビブラムとクエルチェ、イルザ、サレルモという村の幹部だけ。
 御意見番のサレルモ以外は皆さん、それなりに忙しい。
 だからちまちま、こういう所から改善していく訳だ。

「もちろん練習する方法や、練習する為の道具は私が用意する。だから当分は、醤油や味噌を造りつつ、読み書きや計算の勉強もしてもらうから」

 ◇◇◇

 神社の方でやっていた幹部会議は、午前中目一杯かけて、無事終わった。
 お疲れ様でしたの昼食は、基本のかけうどん。
 茹でた後しっかり氷水で締めたうどんに、温かい薄い出汁汁でいただく。

 薬味も基本通り、ネギ、おろし生姜、天かす。
 栄養バランスは宜しくないけれど、後は家で食べて調整してもらう方針で。

「この暖かさと喉ごしがいいですね、やっぱり」

 幹部連中には、うどんはもうお馴染みだ。
 此処で会議をやる際、昼食はだいたいうどんにしているから。
 最初はフォークで刺してとって、食べる部分を囓っていたビブラムも、いまではすすって食べるという事を覚えた。
 
 いい感じのいりこ出汁が効いている汁と、腰がしっかりあるけれどつるつるすすれるうどんを味わいつつ、会議の成果を確認する。

 会議の結果、3月1日から通貨の導入が決まった。
 使用する貨幣は、ミョウドーと共通だ。
 なので交換レートはミョウドーとほぼ同じ。厳密にはミョウドーのイノツにおける相場と比較して、
  〇 小麦が全く同じ
  〇 ヒヨコマメもどきがやや安め 
  〇 布・服類がやや高め
といった感じにする予定だ。

 セキテツとくらべると、小麦がやや安く、布・服類が高めという感じだろう。
 この辺は適宜相場を監視して、値付けを考える必要がありそうだ。

 そして給与については、最低額を決め、そこから働きに応じて増額していく形になった。
 ただあまりに働かない者については、強制労働なり村外追放なりの措置を考えるそうだ。

 また支給は基本的に毎日で、先払いはなし。ただし受け取らなかった日がある場合は、その分も支払われるという形式。
 つまり貯金はOK、借金はNGとしたわけだ。

 ただこの金銭出納の管理が出来る者が、現状では村の幹部しかいない。
 ここでも文字を読めて計算が出来る者を育成する必要を感じてしまう。
 
 幸い元ナルゼ配下の山から来た者達は、絵見本のおかげで、ある程度は文字が読める。
 なので最初はこの辺りの皆さんを鍛えて、頑張って貰う事になるだろう。
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