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追記 ガシャールの挑戦
EX3 決闘開始
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「ならばフタナジマから、領民ほとんどが魔法を使える場所という脅威を取り除くには、土地神コトーミを排除するしかない。違うだろうか」
理屈は通っている。少なくとも言葉上は。
しかし何か違和感がある。
『ガシャールが告げているのは、本心ではありません』
全知もそう判断した。
本心までは全知でも把握出来ないけれど。
「本当にそうお考えなのでしょうか。他に本心があると私の全知は告げておりますけれど」
「それなら私は、コトーミ殿にこう告げるだけだ。それを知りたければ、我を決闘で倒すがいいと」
様式美という奴だろう。
今のガシャールの言葉も、その前の決闘理由についての説明も。
そしてガシャールは、更に付け加える。
「ただし今の時点では、我とコトーミ殿の神力が違いすぎる。決闘であれば、対等の条件で望むのが礼儀。
神力を同等にしよう。私が見たところ、現在のコトーミ殿の神力は15万ちょうど。なら私も神力を15万に調整しよう」
ガシャールが2柱に分神した。
神力が15万ちょうどの顕現と、神力が30万ちょっとの方の顕現。
この場には神力が15万の方が残り、もう1体は姿を消す。
『見える範囲で移動を繰り返し、トサハタ方向へ向かっています』
確かにこれで神力は対等だ。
しかしやはり違和感がありまくる。
本気で私をフタナジマから追い出したいなら、ここで神力を私に合わせない方が正解だろう。
武士道とか騎士道のような美学的理由というのは、単なる言い訳に過ぎない気がするのだ。
しかし此処でその事について尋ねても、先程と同じ回答で躱されるだけだろう。
どうやら私は、戦うしかなさそうだ。
「それでは決闘をはじめる前に一言。私はアルツァーヤからコトーミの戦い方について聞いている。だから私の戦い方もここで言っておこう。私は基本的に、この刀二振りとこの弓を使う」
『刀は刃長72cmの打刀と55cmの脇差しで、どちらも刃が通った場所にある物を全て切断します。また弓は全長221cmの和弓で、500mの範囲内において命中したものを必ず貫通します』
神器だが、ナハルやモ・トーの使用した神器のような『刃の長さより遠くを切断』といったチート能力はないようだ。
「ありがとうございます。私の戦い方についても開示致しましょうか」
「いや、それには及ばない。石礫や槍に化したりする戦い方については、既に聞いている。それ以上については此処の技として公開すべきではないだろう。
それでは決闘に移ることとしたい。キンビーラ殿、そしてアルツァーヤ。此処が見える範囲で少し離れていただけるだろうか。あとアルツァーヤには適宜離れたところで、決闘開始の合図をお願いしたい」
「わかりました」
アルツァーヤは無表情でそう返答すると、キンビーラの腕を掴んで姿を消した。
河原には私とガシャールだけが残される。
「場所はそのままでよろしいか」
「配慮ありがとうございます。少し離れます」
ガシャールは刀と弓、両方を持っている。
近距離と遠距離両方に対応しているという事だろう。
一方で、私の攻撃は遠距離中心だ。
だから河原で現にガシャールを見る事がぎりぎり可能な場所、およそ100m先に移動する。
更に周囲をしっかり確認。
これは自分の領地ではないので、見た場所しか移動できないから。
最初から核分裂を使用するつもりはない。
というか、そもそも戦う気もあまりない。
だから時間をかけてガシャールの真意を引き出すこと。
それが第一目的だ。
『準備はよろしいでしょうか』
アルツァーヤからの意思伝達に私は頷いた。
「ええ、大丈夫です」
『では開始して下さい』
その言葉と同時に、ガシャールの姿が消えた。
まずい! 本能的に私は移動をかける。
50mほど上流側の河原から、つい先程私がいた場所を見る形になった。
しかしガシャールの姿が視界内に無い。
考えるより先に、私は瞬間移動をかける。
姿は見えないが、ガシャールは私を追っている。
位置を確認しようと止まったら危険だ。そんな感覚が止まらない。
此処は私の領地では無い。だから目視出来なければガシャールの位置は掴めない。
しかし目視するのに適した場所を思いつけない。
規則性がないように、見える範囲の瞬間移動を繰り返すだけだ。
そうだ、一箇所思いついた。
ここまでガシャールが追ってくる事はないだろう。
ただし気づかれると、どこからも狙える場所だ。
だから私はあえてそちら方向に顔をうごかさずに。
上空100mに、下向きの形で瞬間移動をかけた。
今までいた河原全体が眼下に目視出来る。
しかしガシャールがいない。
視界に入っていれば、全知ですぐに発見出来る筈なのに。
まさか、更に上空にいるのか。
とっさに瞬間移動をかけたが間に合わなかった。
右肩に痛みが走る。矢が後ろから突き抜けたのだ。
この程度ならまだ瞬時に治せる。
しかし今の状態では、ガシャールの位置を掴みきれない。
ガシャールが攻撃が出来ない位の早さで連続移動しつつ、分散思考で考える。
ガシャールがどう移動していたかは、概ね予測出来た。
① 私が出現した場所の私の後ろ側に、私が見える方向を向く形で瞬間移動
② 私に隙があれば弓矢で攻撃
③ 私が瞬間移動したら、次に移動するだろう場所を探す。
瞬間移動の兆候として神力が凝集するのが見えたら、その位置で私より向こう側、背後になるだろう位置へと移動
④ 以降、②と③の繰り返し
今考えると私は移動する際、必ず以前いた方向を向くようにしていた。
だから背後をとるのも楽だっただろう。
自分の領地でないから、視界に入らない場所はわからない。
だから私はガシャールを捉えられずにいた訳だ。
そして今のように、上空と地上をランダムに高速移動する分には、攻撃までは出来ない模様。
ならばだ。
次の移動で、私はあえて今までと反対方向を向いた。
予想通り、私の前方にガシャールの神力が出現し始める。
瞬間移動で出現する兆候だ。
『花さそふ嵐の庭の雪ならで』
出現したガシャールに高速の石礫400個が襲いかかる。
移動して逃げるだろう。そうすれば周囲を確認し、また出現地点を攻撃すればいい。
そう思った私の予想はあっさりと裏切られた。
ガシャールは日本刀を抜いて石礫を払いつつ、こちらを振り返る。
次の瞬間、石礫攻撃を受けつつもこっちに向け走り出した。
理屈は通っている。少なくとも言葉上は。
しかし何か違和感がある。
『ガシャールが告げているのは、本心ではありません』
全知もそう判断した。
本心までは全知でも把握出来ないけれど。
「本当にそうお考えなのでしょうか。他に本心があると私の全知は告げておりますけれど」
「それなら私は、コトーミ殿にこう告げるだけだ。それを知りたければ、我を決闘で倒すがいいと」
様式美という奴だろう。
今のガシャールの言葉も、その前の決闘理由についての説明も。
そしてガシャールは、更に付け加える。
「ただし今の時点では、我とコトーミ殿の神力が違いすぎる。決闘であれば、対等の条件で望むのが礼儀。
神力を同等にしよう。私が見たところ、現在のコトーミ殿の神力は15万ちょうど。なら私も神力を15万に調整しよう」
ガシャールが2柱に分神した。
神力が15万ちょうどの顕現と、神力が30万ちょっとの方の顕現。
この場には神力が15万の方が残り、もう1体は姿を消す。
『見える範囲で移動を繰り返し、トサハタ方向へ向かっています』
確かにこれで神力は対等だ。
しかしやはり違和感がありまくる。
本気で私をフタナジマから追い出したいなら、ここで神力を私に合わせない方が正解だろう。
武士道とか騎士道のような美学的理由というのは、単なる言い訳に過ぎない気がするのだ。
しかし此処でその事について尋ねても、先程と同じ回答で躱されるだけだろう。
どうやら私は、戦うしかなさそうだ。
「それでは決闘をはじめる前に一言。私はアルツァーヤからコトーミの戦い方について聞いている。だから私の戦い方もここで言っておこう。私は基本的に、この刀二振りとこの弓を使う」
『刀は刃長72cmの打刀と55cmの脇差しで、どちらも刃が通った場所にある物を全て切断します。また弓は全長221cmの和弓で、500mの範囲内において命中したものを必ず貫通します』
神器だが、ナハルやモ・トーの使用した神器のような『刃の長さより遠くを切断』といったチート能力はないようだ。
「ありがとうございます。私の戦い方についても開示致しましょうか」
「いや、それには及ばない。石礫や槍に化したりする戦い方については、既に聞いている。それ以上については此処の技として公開すべきではないだろう。
それでは決闘に移ることとしたい。キンビーラ殿、そしてアルツァーヤ。此処が見える範囲で少し離れていただけるだろうか。あとアルツァーヤには適宜離れたところで、決闘開始の合図をお願いしたい」
「わかりました」
アルツァーヤは無表情でそう返答すると、キンビーラの腕を掴んで姿を消した。
河原には私とガシャールだけが残される。
「場所はそのままでよろしいか」
「配慮ありがとうございます。少し離れます」
ガシャールは刀と弓、両方を持っている。
近距離と遠距離両方に対応しているという事だろう。
一方で、私の攻撃は遠距離中心だ。
だから河原で現にガシャールを見る事がぎりぎり可能な場所、およそ100m先に移動する。
更に周囲をしっかり確認。
これは自分の領地ではないので、見た場所しか移動できないから。
最初から核分裂を使用するつもりはない。
というか、そもそも戦う気もあまりない。
だから時間をかけてガシャールの真意を引き出すこと。
それが第一目的だ。
『準備はよろしいでしょうか』
アルツァーヤからの意思伝達に私は頷いた。
「ええ、大丈夫です」
『では開始して下さい』
その言葉と同時に、ガシャールの姿が消えた。
まずい! 本能的に私は移動をかける。
50mほど上流側の河原から、つい先程私がいた場所を見る形になった。
しかしガシャールの姿が視界内に無い。
考えるより先に、私は瞬間移動をかける。
姿は見えないが、ガシャールは私を追っている。
位置を確認しようと止まったら危険だ。そんな感覚が止まらない。
此処は私の領地では無い。だから目視出来なければガシャールの位置は掴めない。
しかし目視するのに適した場所を思いつけない。
規則性がないように、見える範囲の瞬間移動を繰り返すだけだ。
そうだ、一箇所思いついた。
ここまでガシャールが追ってくる事はないだろう。
ただし気づかれると、どこからも狙える場所だ。
だから私はあえてそちら方向に顔をうごかさずに。
上空100mに、下向きの形で瞬間移動をかけた。
今までいた河原全体が眼下に目視出来る。
しかしガシャールがいない。
視界に入っていれば、全知ですぐに発見出来る筈なのに。
まさか、更に上空にいるのか。
とっさに瞬間移動をかけたが間に合わなかった。
右肩に痛みが走る。矢が後ろから突き抜けたのだ。
この程度ならまだ瞬時に治せる。
しかし今の状態では、ガシャールの位置を掴みきれない。
ガシャールが攻撃が出来ない位の早さで連続移動しつつ、分散思考で考える。
ガシャールがどう移動していたかは、概ね予測出来た。
① 私が出現した場所の私の後ろ側に、私が見える方向を向く形で瞬間移動
② 私に隙があれば弓矢で攻撃
③ 私が瞬間移動したら、次に移動するだろう場所を探す。
瞬間移動の兆候として神力が凝集するのが見えたら、その位置で私より向こう側、背後になるだろう位置へと移動
④ 以降、②と③の繰り返し
今考えると私は移動する際、必ず以前いた方向を向くようにしていた。
だから背後をとるのも楽だっただろう。
自分の領地でないから、視界に入らない場所はわからない。
だから私はガシャールを捉えられずにいた訳だ。
そして今のように、上空と地上をランダムに高速移動する分には、攻撃までは出来ない模様。
ならばだ。
次の移動で、私はあえて今までと反対方向を向いた。
予想通り、私の前方にガシャールの神力が出現し始める。
瞬間移動で出現する兆候だ。
『花さそふ嵐の庭の雪ならで』
出現したガシャールに高速の石礫400個が襲いかかる。
移動して逃げるだろう。そうすれば周囲を確認し、また出現地点を攻撃すればいい。
そう思った私の予想はあっさりと裏切られた。
ガシャールは日本刀を抜いて石礫を払いつつ、こちらを振り返る。
次の瞬間、石礫攻撃を受けつつもこっちに向け走り出した。
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