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番外編 イアン 5
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「ご報告申し上げます、イアン殿下」
「ああ、頼む」
心配されていた、皇女お披露目も無事に終了した。ユーニスの容姿が皇族の特徴を持っていたというのも、受け入れやすい要因だったらしく。大きな反発もないままに、レイフとの婚約も認められた。そもそも皇帝たる父が、二人の仲を認めた以上、異を唱えることができる貴族など存在しない。思い合う二人を引き裂きたくない、という言葉も頷きやすかった。
「ユーニス殿下は、無事にガードナー侯爵領を出発され、まもなく次の領地へ到着予定だそうです。近衛として同行中のアランからも、同様の報告が来ております」
「そうか……何事もないといいのだが」
本人たっての希望で、全地域の視察が始まった。最初は警備はどうするのか、移動はどうするのか、課題は山積み。そもそも、皇族が視察となると、より良く見せようとして、本来の姿が見られないことも多い。
まず、移動はシリルの設置した魔法のゲート。道中は国を代表する文官に扮し、男装。移動がゲートになれば、移動中の危険性はグッと下がるし、男装となると皇女本人だとわかりづらくなるから、見たいものが見られる。
身の安全のために、シリルの開発した安全用魔法具も持たせ、毎日のように通信も行う。近衛に選出されたアランは、イーデン自身も目をかけている騎士なので、戦闘力に不足もなし。
アランには、事前に近衛とはまた違う影の騎士を数名、同行させると伝えているので、万が一の時にも安心だ。ユーニスにこの事は伝えていないが、聡いあの子は気づいていそうだ。
「第二皇子殿下直属の、例の部隊も複数名同行中だと聞いております。先んじて道中の安全を確認している部隊からも、盗賊等の輩はいない、と」
「だろうな。この話が出た時に、イーデンとシリルが討伐しに行ったし」
「関所で盗賊達が捕まっている、とやたらと報告があった日がありましたが……お二方の……」
「やはり噂になっていたか……」
ユーニスの考えた策は、よく練られていて対応策についても問題点はなかった。ただ、それで無事に終わるまでは、安心できないのが現状。妹を思う兄心が三人分、あったということだ。
「失礼いたします、皇太子殿下。第三皇子殿下が、お見えになられました」
「わかった、通せ」
「はっ」
侍従からシリルの来訪を聞き、部屋に通すように伝える。こんなふうに弟が訪ねてくるのも、妹ができてからだ。前なら会ったタイミングで話をする、もしくは急ぎの物は書簡でやり取りすることが多かった。
仲が悪いわけではなくとも、お互いに多忙の身。部屋にいるとわかっている相手ならともかく、二人に関してはそうも行かない。武術や魔法に対して、貪欲な二人が部屋で執務をする時間なんぞ、最低限に等しい。
執務が終われば訓練・研究、そちらにかかりきりになれば、会うことは難しくなるのも当然か。訓練は大事なことだ、騎士たちを鍛えるという意味でも、元帥として軍を率いる己の研鑽のためにも。
もちろん、魔法の研究だって大事なことだ。日夜、研究に励む者がいるおかげで、便利な生活になっている。何より、治療などの魔法研究の分野は、大きな医学の進歩になる。道具があれば、魔法が不得手な人も便利に生活ができるようになるし、二人のしていることは無駄ではない。
ただ、そう、執務が苦手なだけだ。得意とする分野が、それぞれ三兄弟で違う。そのおかげで、俺自身も国を率いるために時間を費やせるのだ。二人の集めた情報は、とても役に立つものばかり。そこから得たことを、政に反映させることで国も良い方へ導かれていくから。
「すみません、兄上。お忙しいとはわかっていたのですが……」
「構わないよ、シリル。ちょうど、通信機の話もしたかったんだ」
「そうでしたか、早速使っていただけたのですね」
「ああ、テストも兼ねてアランに。雑音もないし、途切れることもなかった。安定して機能していたよ。魔力もそんなに必要なかったから、魔法石も高価なものでなくとも長持ちしそうだ。後は、魔法石を交換するようにすれば、もっと長く使えるだろうね」
「ありがとうございます、兄上。今、いくつか試作したものを使ってもらっているのですが、改めて実際の使用感を聞けてよかったです。魔法石を取り付ける話も出ていたのですが、使ってみてからでないとどれくらいの魔力消費なのかもわからなかったので……その感想はとても参考になります」
「研究所だと、魔力の多い者が大半だろう。その点、俺はごく一般的な魔力量だからね」
「兄上のおかげで、たくさん研究が捗っていますよ」
僅かに疲れの見えていたシリルの表情、使い心地を伝えるとパッと明るくなって。研究は大変だけど、実際の話を聞いて改良したり、新たに開発するのが楽しいという、可愛らしい反応だ。
シリルのいる研究所は、様々な分野で道具なり魔法なりを開発している。そのどれもが、すぐに民間に浸透していくので、あったら便利なのにな、を叶えてくれる。好きでなければ、続けられない仕事。
弟二人の努力は、兄として負けられないと思うことはある。ただその前に、純粋に尊敬できるものでもあるのだ。
「ああ、頼む」
心配されていた、皇女お披露目も無事に終了した。ユーニスの容姿が皇族の特徴を持っていたというのも、受け入れやすい要因だったらしく。大きな反発もないままに、レイフとの婚約も認められた。そもそも皇帝たる父が、二人の仲を認めた以上、異を唱えることができる貴族など存在しない。思い合う二人を引き裂きたくない、という言葉も頷きやすかった。
「ユーニス殿下は、無事にガードナー侯爵領を出発され、まもなく次の領地へ到着予定だそうです。近衛として同行中のアランからも、同様の報告が来ております」
「そうか……何事もないといいのだが」
本人たっての希望で、全地域の視察が始まった。最初は警備はどうするのか、移動はどうするのか、課題は山積み。そもそも、皇族が視察となると、より良く見せようとして、本来の姿が見られないことも多い。
まず、移動はシリルの設置した魔法のゲート。道中は国を代表する文官に扮し、男装。移動がゲートになれば、移動中の危険性はグッと下がるし、男装となると皇女本人だとわかりづらくなるから、見たいものが見られる。
身の安全のために、シリルの開発した安全用魔法具も持たせ、毎日のように通信も行う。近衛に選出されたアランは、イーデン自身も目をかけている騎士なので、戦闘力に不足もなし。
アランには、事前に近衛とはまた違う影の騎士を数名、同行させると伝えているので、万が一の時にも安心だ。ユーニスにこの事は伝えていないが、聡いあの子は気づいていそうだ。
「第二皇子殿下直属の、例の部隊も複数名同行中だと聞いております。先んじて道中の安全を確認している部隊からも、盗賊等の輩はいない、と」
「だろうな。この話が出た時に、イーデンとシリルが討伐しに行ったし」
「関所で盗賊達が捕まっている、とやたらと報告があった日がありましたが……お二方の……」
「やはり噂になっていたか……」
ユーニスの考えた策は、よく練られていて対応策についても問題点はなかった。ただ、それで無事に終わるまでは、安心できないのが現状。妹を思う兄心が三人分、あったということだ。
「失礼いたします、皇太子殿下。第三皇子殿下が、お見えになられました」
「わかった、通せ」
「はっ」
侍従からシリルの来訪を聞き、部屋に通すように伝える。こんなふうに弟が訪ねてくるのも、妹ができてからだ。前なら会ったタイミングで話をする、もしくは急ぎの物は書簡でやり取りすることが多かった。
仲が悪いわけではなくとも、お互いに多忙の身。部屋にいるとわかっている相手ならともかく、二人に関してはそうも行かない。武術や魔法に対して、貪欲な二人が部屋で執務をする時間なんぞ、最低限に等しい。
執務が終われば訓練・研究、そちらにかかりきりになれば、会うことは難しくなるのも当然か。訓練は大事なことだ、騎士たちを鍛えるという意味でも、元帥として軍を率いる己の研鑽のためにも。
もちろん、魔法の研究だって大事なことだ。日夜、研究に励む者がいるおかげで、便利な生活になっている。何より、治療などの魔法研究の分野は、大きな医学の進歩になる。道具があれば、魔法が不得手な人も便利に生活ができるようになるし、二人のしていることは無駄ではない。
ただ、そう、執務が苦手なだけだ。得意とする分野が、それぞれ三兄弟で違う。そのおかげで、俺自身も国を率いるために時間を費やせるのだ。二人の集めた情報は、とても役に立つものばかり。そこから得たことを、政に反映させることで国も良い方へ導かれていくから。
「すみません、兄上。お忙しいとはわかっていたのですが……」
「構わないよ、シリル。ちょうど、通信機の話もしたかったんだ」
「そうでしたか、早速使っていただけたのですね」
「ああ、テストも兼ねてアランに。雑音もないし、途切れることもなかった。安定して機能していたよ。魔力もそんなに必要なかったから、魔法石も高価なものでなくとも長持ちしそうだ。後は、魔法石を交換するようにすれば、もっと長く使えるだろうね」
「ありがとうございます、兄上。今、いくつか試作したものを使ってもらっているのですが、改めて実際の使用感を聞けてよかったです。魔法石を取り付ける話も出ていたのですが、使ってみてからでないとどれくらいの魔力消費なのかもわからなかったので……その感想はとても参考になります」
「研究所だと、魔力の多い者が大半だろう。その点、俺はごく一般的な魔力量だからね」
「兄上のおかげで、たくさん研究が捗っていますよ」
僅かに疲れの見えていたシリルの表情、使い心地を伝えるとパッと明るくなって。研究は大変だけど、実際の話を聞いて改良したり、新たに開発するのが楽しいという、可愛らしい反応だ。
シリルのいる研究所は、様々な分野で道具なり魔法なりを開発している。そのどれもが、すぐに民間に浸透していくので、あったら便利なのにな、を叶えてくれる。好きでなければ、続けられない仕事。
弟二人の努力は、兄として負けられないと思うことはある。ただその前に、純粋に尊敬できるものでもあるのだ。
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