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ガサリ、と割と大きな音が聞こえ、ハッと目が覚めた。ドアにもたれかかって眠っていたので、そこまで眠りが深くなかったことも、音に気づけた要因だろう。まだ少し、ぼんやりとする頭で音の方へ目を向けると、ずっと眠ったままだったボルドーの髪色をした男性が起き上がっていた。
「目が覚めたんですね、よかった……」
彼は私の存在に気づいていたようで、黒髪の男性同様にとても警戒している。私が話しかけても、厳しい表情でだんまりだ。
「ここはリリム王国のエインズワース伯爵領です。あなた方を森で見つけたので保護しました。この小屋は国境の森の中にある森番の小屋です」
あまりにも厳しい表情なので、正直怖いがその心の内を悟られないように、笑顔でこの場所がどこなのかを告げる。
「私はエインズワース伯爵が長女、ユーニス・エインズワースと申します。どうぞ、ユーニスとお呼びください」
名前を名乗らないのも警戒する一つか、と思ったので先に名乗りも済ませておく。私は社交界に出ていないので、信憑性を問われるとそれまでなのだが、名乗らないよりはマシだ。
「……保護してくれたこと、感謝する」
表情はちょっと怖いが、先ほどよりは柔らかな雰囲気で、初めてその人は言葉を発した。まっすぐにこちらに向けられる瞳の色はミッドナイトブルー。美しいその瞳に、何もかもを見透かされたような気がして。
「お気になさらないでください。さて、食事は取れそうですか? 食べられそうなスープを作りました。私もまだ食事をしていないので、一緒に食べることを許してくださいね」
吸い込まれそうなほどに深い色の瞳は、私の心の中までも見られているような、そんな気持ちになる。私の心のうちにある感情全てをむき出しにされるような、そんな。
「食べられそうでしたら、どうぞ」
二つのお椀に具だくさんのスープを入れ、彼の前に一つ置く。そして私は彼が見ているのをわかっていて目の前で食べる。毒の混入に気を付けているのはわかっているので、こうすることで少しでも安心してもらえるといいな、とは思う。
「いただこう」
「熱いので、気をつけてくださいね」
毒味をさせた、という彼の意図に気づかないふりをして、笑顔で返事をした。私も今日初めての食事とだったので、大切にスープを飲み込む。いつ次の食事が食べられるかはわからない。ここにこの人たちがいる間は、心配ないとは思うけれど、いなくなってしまえば食事にも困るので。
「あなたも、目が覚めたようですね。食事はできそうですか?」
お椀に一杯だけよそったスープを大事に飲み切り、おかわりが必要かな、と振り向くと黒髪の男性も目を覚ましていた。彼の分もよそって、スプーンと一緒に渡す。
黒髪の男性は、私ともう一人の人が食べているのを見て、頷いた。きっと毒の心配がないことを確認したからだろう。
「お水も、どうぞ」
何杯かスープを食べた二人にお水も差しだし、私は後片付けをする。思ったよりも回復が早いので、二人は数日以内にここを離れられるはずだ。
「ユーニス、ありがとう」
「いえ、当然のことです」
黒髪の男性が私に向かってお礼を言った。まさか名前を覚えられているとは思っていなかったし、呼ばれるとも思っていなかったので、驚いてしまったのは言うまでもない。
驚いた胸の内を隠すように、微笑を浮かべる。お母さまに習った、数少ないことの一つだ。お母さまから習ったことは少ないけれど、どれも私が生きていくうえで必要なものばかり。
お母さまは、感情はうまく隠しなさい、と言った。きっとわかっていたのだと思う、自分がいなくなった後に私がどんな扱いを受けるのかを。そんなお母さまの教えをしっかりと守っているおかげで、私は自分の身を守ることができている。
「目が覚めたんですね、よかった……」
彼は私の存在に気づいていたようで、黒髪の男性同様にとても警戒している。私が話しかけても、厳しい表情でだんまりだ。
「ここはリリム王国のエインズワース伯爵領です。あなた方を森で見つけたので保護しました。この小屋は国境の森の中にある森番の小屋です」
あまりにも厳しい表情なので、正直怖いがその心の内を悟られないように、笑顔でこの場所がどこなのかを告げる。
「私はエインズワース伯爵が長女、ユーニス・エインズワースと申します。どうぞ、ユーニスとお呼びください」
名前を名乗らないのも警戒する一つか、と思ったので先に名乗りも済ませておく。私は社交界に出ていないので、信憑性を問われるとそれまでなのだが、名乗らないよりはマシだ。
「……保護してくれたこと、感謝する」
表情はちょっと怖いが、先ほどよりは柔らかな雰囲気で、初めてその人は言葉を発した。まっすぐにこちらに向けられる瞳の色はミッドナイトブルー。美しいその瞳に、何もかもを見透かされたような気がして。
「お気になさらないでください。さて、食事は取れそうですか? 食べられそうなスープを作りました。私もまだ食事をしていないので、一緒に食べることを許してくださいね」
吸い込まれそうなほどに深い色の瞳は、私の心の中までも見られているような、そんな気持ちになる。私の心のうちにある感情全てをむき出しにされるような、そんな。
「食べられそうでしたら、どうぞ」
二つのお椀に具だくさんのスープを入れ、彼の前に一つ置く。そして私は彼が見ているのをわかっていて目の前で食べる。毒の混入に気を付けているのはわかっているので、こうすることで少しでも安心してもらえるといいな、とは思う。
「いただこう」
「熱いので、気をつけてくださいね」
毒味をさせた、という彼の意図に気づかないふりをして、笑顔で返事をした。私も今日初めての食事とだったので、大切にスープを飲み込む。いつ次の食事が食べられるかはわからない。ここにこの人たちがいる間は、心配ないとは思うけれど、いなくなってしまえば食事にも困るので。
「あなたも、目が覚めたようですね。食事はできそうですか?」
お椀に一杯だけよそったスープを大事に飲み切り、おかわりが必要かな、と振り向くと黒髪の男性も目を覚ましていた。彼の分もよそって、スプーンと一緒に渡す。
黒髪の男性は、私ともう一人の人が食べているのを見て、頷いた。きっと毒の心配がないことを確認したからだろう。
「お水も、どうぞ」
何杯かスープを食べた二人にお水も差しだし、私は後片付けをする。思ったよりも回復が早いので、二人は数日以内にここを離れられるはずだ。
「ユーニス、ありがとう」
「いえ、当然のことです」
黒髪の男性が私に向かってお礼を言った。まさか名前を覚えられているとは思っていなかったし、呼ばれるとも思っていなかったので、驚いてしまったのは言うまでもない。
驚いた胸の内を隠すように、微笑を浮かべる。お母さまに習った、数少ないことの一つだ。お母さまから習ったことは少ないけれど、どれも私が生きていくうえで必要なものばかり。
お母さまは、感情はうまく隠しなさい、と言った。きっとわかっていたのだと思う、自分がいなくなった後に私がどんな扱いを受けるのかを。そんなお母さまの教えをしっかりと守っているおかげで、私は自分の身を守ることができている。
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