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「お、おはようございます、レイフ様」
「おはよう、ユーニス。アルもおはよう」
大泣きした時に、レイフ様に抱きしめてもらった日から一週間が経った。日を追うごとに、レイフ様の新たな面が見えて、胸がドクリと跳ねる。あの日出会ったアルビスも、今ではアルと名付けられて私の側にいる。今日もアルは美しい身体で自由に部屋の中を飛び回っていて元気そうだ。
「うん、よく似合っている。緊張するとは思うが、大丈夫だ。俺がいるから」
「は、はい! 頑張ります!」
泣いたときに少しだけ、心の傷には瘡蓋ができたらしい。前を向いてこのアルムテア帝国で生きていくことに、何のためらいもなくなった。そして今日は、私の後見人に名乗りを上げているイアン皇太子殿下を含む皇族の方々との面会日。
今まで、そんな高貴な方々にお会いすることがなかったから、緊張でどうにかなりそうだ。この日のために、マナー講習も受けたし、着慣れないドレスに慣れようとダンスの練習までした。
「行こうか」
「はい」
格式ばった謁見ではなく、あくまでも面会なので、気楽にしていいとは言われたが、それはやはり難しい。私はリリム王国の王立アカデミーにさえも通えなかった人間だ、何か粗相があったらと思うと怖くてたまらない。
「ようこそ、アルムテア帝国の皇宮へ。ユーニス、元気にしていたかい?」
「この度は、本当にありがとうございます。ウェイン公爵様に、とてもよくしていただいております。皇太子殿下も、あれからお身体の具合はいかがでしょうか……?」
「元気だよ。ユーニスも、よかった」
「お気遣いいただき、感謝いたします」
さっそく出迎えてくれたイアン皇太子殿下は、すっかりと傷も癒えていて、とても元気そうだ。事前にレイフ様から聞いていたからか、アルが肩にいても気にせず招いてくれる。
「今日は本当に、ただの面会というか、お茶会みたいなものだ。アルも一緒に楽しめるものを用意したから、こちらへどうぞ」
アルのためのおやつも並べてくれているようで、アルもそれが分かったらしい。嬉しそうに鳴いていた。
「初めまして、あなたがユーニスちゃん? 私はアルムテア帝国皇妃……ですが、その前にイアンの母でもあります。息子を助けてくれてありがとう」
「私は、当然のことをしたまでです。それに私は手当てをしただけで……実際に身体を治したのはイアン皇太子殿下ですから、その……私はあくまでもそのお手伝いをしたにすぎません」
「ふふ、聞いていた通りの子ね。ユーニスちゃん、私は助けてくれたのがあなたでよかったと思うわ」
優しい笑顔の皇妃様は、私の左隣の席に座っている。円卓はかなり広く、私の右隣はレイフ様。向かいにイアン皇太子殿下と皇帝陛下、第二皇子、第三皇子が並んで座っている。アルムテア帝国皇族は男ばかりで淋しい、と皇妃様が笑っているが、この場の支配権を握っているのは間違いなく皇妃様だった。
「ユーニス嬢、アルムテア皇室はあなたのことを皇女として迎えたいと思っている。あなたの立場を考えると、皇女の身分があったほうがいいのではないか、と考えたのだ」
「たしかに、私たちはみな兄弟が男ですから、妹がいると嬉しいですね」
「妹ほしかったんだよねぇ」
皇帝陛下ならびに第二、第三皇子殿下も私を普通に受け入れているが……。その受け入れ先が皇女という身分だったとは予想外だ。どこまで私のことを把握しているのかはわからないけれど、この分だとほぼ全て私の力も含めて把握しているだろう。
「陛下、お申し出は光栄ですが……彼女に私は求婚している身です。皇女という身分を得た彼女との婚約となると、他の貴族が許さないでしょう。ウェイン公爵家の力が強くなりすぎるという反発が出るのは、想像に難くない」
「ふむ、たしかに公爵の言う通りだ。しかし、ユーニス嬢の後ろ盾がウェイン公爵家同等の家格となると限られる。さらに言えば、名前だけを快く貸してもらう、となると難しいだろう。それならば、皇女として彼女を迎えたほうが、不要な諍いは防げるはずだ。少しばかりの反発は致し方ない」
「それは……そうですが……」
私のことを知っているレイフ様には、私が持っている力はアルムテア帝国でも秘密にする必要があると念押しされている。諸外国に知られれば、後ろ盾がない私は誘拐される可能性もあると言っていた。
アルムテア帝国は治安がいいとはいえ、貴族間での諍いが全くないわけではないことも聞いている。度の貴族も互いに牽制し合っているから、平和に見えるだけだとも。もしもそこへ私という存在がどこかの家へ養女という形で迎え入れられれば、裏でどんなことになるかはわからない。
表向きは令嬢として扱ったとしても、その裏では利用するだけして捨てられる可能性だって否めない。それを考えると、陛下の皇女として迎え入れるという案は、かなり理にかなっていると見ていい。
「おはよう、ユーニス。アルもおはよう」
大泣きした時に、レイフ様に抱きしめてもらった日から一週間が経った。日を追うごとに、レイフ様の新たな面が見えて、胸がドクリと跳ねる。あの日出会ったアルビスも、今ではアルと名付けられて私の側にいる。今日もアルは美しい身体で自由に部屋の中を飛び回っていて元気そうだ。
「うん、よく似合っている。緊張するとは思うが、大丈夫だ。俺がいるから」
「は、はい! 頑張ります!」
泣いたときに少しだけ、心の傷には瘡蓋ができたらしい。前を向いてこのアルムテア帝国で生きていくことに、何のためらいもなくなった。そして今日は、私の後見人に名乗りを上げているイアン皇太子殿下を含む皇族の方々との面会日。
今まで、そんな高貴な方々にお会いすることがなかったから、緊張でどうにかなりそうだ。この日のために、マナー講習も受けたし、着慣れないドレスに慣れようとダンスの練習までした。
「行こうか」
「はい」
格式ばった謁見ではなく、あくまでも面会なので、気楽にしていいとは言われたが、それはやはり難しい。私はリリム王国の王立アカデミーにさえも通えなかった人間だ、何か粗相があったらと思うと怖くてたまらない。
「ようこそ、アルムテア帝国の皇宮へ。ユーニス、元気にしていたかい?」
「この度は、本当にありがとうございます。ウェイン公爵様に、とてもよくしていただいております。皇太子殿下も、あれからお身体の具合はいかがでしょうか……?」
「元気だよ。ユーニスも、よかった」
「お気遣いいただき、感謝いたします」
さっそく出迎えてくれたイアン皇太子殿下は、すっかりと傷も癒えていて、とても元気そうだ。事前にレイフ様から聞いていたからか、アルが肩にいても気にせず招いてくれる。
「今日は本当に、ただの面会というか、お茶会みたいなものだ。アルも一緒に楽しめるものを用意したから、こちらへどうぞ」
アルのためのおやつも並べてくれているようで、アルもそれが分かったらしい。嬉しそうに鳴いていた。
「初めまして、あなたがユーニスちゃん? 私はアルムテア帝国皇妃……ですが、その前にイアンの母でもあります。息子を助けてくれてありがとう」
「私は、当然のことをしたまでです。それに私は手当てをしただけで……実際に身体を治したのはイアン皇太子殿下ですから、その……私はあくまでもそのお手伝いをしたにすぎません」
「ふふ、聞いていた通りの子ね。ユーニスちゃん、私は助けてくれたのがあなたでよかったと思うわ」
優しい笑顔の皇妃様は、私の左隣の席に座っている。円卓はかなり広く、私の右隣はレイフ様。向かいにイアン皇太子殿下と皇帝陛下、第二皇子、第三皇子が並んで座っている。アルムテア帝国皇族は男ばかりで淋しい、と皇妃様が笑っているが、この場の支配権を握っているのは間違いなく皇妃様だった。
「ユーニス嬢、アルムテア皇室はあなたのことを皇女として迎えたいと思っている。あなたの立場を考えると、皇女の身分があったほうがいいのではないか、と考えたのだ」
「たしかに、私たちはみな兄弟が男ですから、妹がいると嬉しいですね」
「妹ほしかったんだよねぇ」
皇帝陛下ならびに第二、第三皇子殿下も私を普通に受け入れているが……。その受け入れ先が皇女という身分だったとは予想外だ。どこまで私のことを把握しているのかはわからないけれど、この分だとほぼ全て私の力も含めて把握しているだろう。
「陛下、お申し出は光栄ですが……彼女に私は求婚している身です。皇女という身分を得た彼女との婚約となると、他の貴族が許さないでしょう。ウェイン公爵家の力が強くなりすぎるという反発が出るのは、想像に難くない」
「ふむ、たしかに公爵の言う通りだ。しかし、ユーニス嬢の後ろ盾がウェイン公爵家同等の家格となると限られる。さらに言えば、名前だけを快く貸してもらう、となると難しいだろう。それならば、皇女として彼女を迎えたほうが、不要な諍いは防げるはずだ。少しばかりの反発は致し方ない」
「それは……そうですが……」
私のことを知っているレイフ様には、私が持っている力はアルムテア帝国でも秘密にする必要があると念押しされている。諸外国に知られれば、後ろ盾がない私は誘拐される可能性もあると言っていた。
アルムテア帝国は治安がいいとはいえ、貴族間での諍いが全くないわけではないことも聞いている。度の貴族も互いに牽制し合っているから、平和に見えるだけだとも。もしもそこへ私という存在がどこかの家へ養女という形で迎え入れられれば、裏でどんなことになるかはわからない。
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