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勇者召喚と逃亡
勇者召喚 ③
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仕事いや、趣味で読みまくっていた本や見まくっていたアニメからの知識で、姉が導き出した答えは「勇者のチート能力」という……え? 意味わからん。
「つまりね、勇者として異世界に召喚された人は、魔王とか強い魔獣と戦うために超人的スキルをもらえるのよ」
見ただけでそれが何か判別できる「鑑定」、他にも「無限収納」とか「全属性魔法」とか、テレビのヒーローものでよく見る必殺技とかが得られるらしい。
「小次郎、わかる?」
君は世界を渡ったときに、何か特別な力をもらったのかい?
小次郎はキョロキョロと自分の手や足、体のあちこちを見てみるが、首を傾げたあと、申し訳なさそうな声で呟く。
「ごめんなさい。わからない」
「……いいのよ。わからなくて当たり前なんだから」
クシャクシャと小次郎の柔らかな髪の毛をかき混ぜるように撫でた。そもそも、私たちは召喚した奴らが鼻で笑う程度の能力なのだから、小次郎が役に立つスキルを持っていてラッキーと思わなきゃ。
「今回は眠り薬だったが、そのうち毒薬になってもおかしくない。異世界の人の考えることはわからないし。早めにここを抜け出そう」
兄の言葉に強く頷いた。薬を盛られるのも怖いが、国王たちの人間性も酷そうで、こんなところに長居してもいいことはないだろう。
しばらくすると、無表情なメイドが騎士たちを引き連れてやってきた。眠ることなく部屋にいる私たちの姿に、ほんの少しだけ奴らの表情が変わった気がした。
無言で朝食の皿を片付けていくメイドの横を通り過ぎ、一人の騎士が私たちの前に立つ。
「宰相様がお呼びです。こちらへ」
当然、騎士が手を差し伸べた相手は小次郎ただ一人。もちろん、小次郎一人で行かせるものですか。騎士の邪魔をするように私と兄が小次郎の前に出て、姉が小次郎の体を抱きしめ部屋の隅へと移動する。
「どけっ」
キーッ、勇者のおまけの私たちに対する態度がヒドイ! でも負けないもん。
ギリッと目尻を吊り上げ騎士を睨む。すると騎士の後ろから別の騎士が二人、進み出てきて私と兄を素早く拘束してしまった。
「あっ」
ジタバタと抵抗する私と兄を一瞥した一番偉そうなその騎士は、感情のない声でメイドに「薬を飲ませろ」と命じた。
ええーっ、せっかく飲まないで済んだ薬なのに、結局力尽くで飲ませられるの? なんなのよ、それ
兄と私はこれでもかっと首を横に振り、薬が入ったコップを口に近づけようとするメイドの手を避けまくった。
「さあ、勇者様」
勇者様と呼びながら、騎士はまだ細い小次郎の腕を掴んで強く引き寄せる。
「小次郎ちゃん」
姉の叫びと小次郎のうめき声が重なった。
「こんにゃろ!」
私はゴツンと後頭部を思いっきり後ろの騎士の顔にぶつけ、拘束する腕の力が弱まったタイミングで前にいたメイドを蹴り飛ばした。
運よくメイドの体は小次郎を捕まえた騎士の背中にぶち当たった。
「おわっ」
その衝撃に驚いたのか小次郎を掴んだ力が弱まり、小次郎が解放された。小次郎はそのまま姉と手を繋ぎ扉へと走り出した。
「お兄ちゃん!」
兄も同僚の騎士たちの失態に虚を突かれた騎士の腕を抱えなおし、柔道の背負い投げのようにぶん投げた。
「行くぞ!」
兄と私は小次郎と姉の後を追い、部屋を飛び出したのだった。
騎士たちからは逃げられたのはいいけど、ここどこ?
ただでさえ知らない世界、前の世界でも足を踏み入れたことのないお城の中……あ、アミューズメントパークのお城ならあったわ。でも、あれちゃんと順路を示す看板や印があったもんね。
ダダダッと全力疾走し続けられるわけもなく、子どもの小次郎はコンパスの差が、運動不足の姉には体力の限界があった。
「お兄ちゃん、ど、どうする?」
先頭を走る兄に問いかけるも、振り返った兄の顔は真っ青で唇が震えていた。
「ヤバい。前からも来た」
えっと兄の体越しに前を見ると、ガチャンガチャンと音が鳴りそうな金属製の鎧をしっかりと着込んだ騎士たち数名がこちらに迫ってきた。
「菊華ちゃん、後ろからも」
姉の切羽詰まった声に反応すると、確かに後ろからさっきの騎士たち、こっちは軽装の鎧を着ていたため動きが早いのか、もうすぐそばまで来ている。
「こっちだ」
兄がやけくそでバーンと適当な部屋の扉を開けて中に入る。私たちも後に続く。
だが、当然部屋の中に入ってしまえば逃げ場はない。ないんだよーっ。
それでも部屋の奥へ奥へと走り続け、ピタリと足を止めたのは……窓を出てバルコニーに追い詰められたからだ。
「ど……どうしよう」
オロオロと左右を見回す姉の言葉に、ゴクリと私は唾を飲み込んだ。もしかして、ここで覚悟を決めないとダメな場面かも。
チラリと下を見てみたけど、たぶん三階か四階ぐらいの高さだ。飛び降りたら、あ、足の骨折とかで済むかな?
「やめろ、菊華。たぶん、死ぬぞ」
「ひいいいいっ」
四人固まってバルコニーの柵を背にジリジリと後退る。私たちの前には抜刀している騎士たちが怖い顔で睨んでいる。
つ、詰んだかも。
「さあ、勇者様。こちらへ」
差し伸べられた手を、じっと見つめたあと小次郎はおずおずと手を伸ばした。
「ダメーッ!」
その伸ばした手ごと、私は小次郎の体を抱きしめ止める。
「そこをどけーっ」
ブンッと剣を振り上げる音が耳に届き、ぎゅうと強く小次郎を抱きしめる。私の背中に覆いかぶさるのは姉で、私たちの前に両手を広げて守ろうとするのは兄だ。
しかし、騎士の無感情な目は私たちを邪魔者としか捉えていない。このまま、剣を振り下ろされれば……みんな、死んでしまう!
ピカッ! ゴロゴロゴロ、ドッカーン!
眩しい閃光に包まれて、何も見えず何も聞こえず……自分の感覚が失われていく……。
もしかして、死んじゃった?
「つまりね、勇者として異世界に召喚された人は、魔王とか強い魔獣と戦うために超人的スキルをもらえるのよ」
見ただけでそれが何か判別できる「鑑定」、他にも「無限収納」とか「全属性魔法」とか、テレビのヒーローものでよく見る必殺技とかが得られるらしい。
「小次郎、わかる?」
君は世界を渡ったときに、何か特別な力をもらったのかい?
小次郎はキョロキョロと自分の手や足、体のあちこちを見てみるが、首を傾げたあと、申し訳なさそうな声で呟く。
「ごめんなさい。わからない」
「……いいのよ。わからなくて当たり前なんだから」
クシャクシャと小次郎の柔らかな髪の毛をかき混ぜるように撫でた。そもそも、私たちは召喚した奴らが鼻で笑う程度の能力なのだから、小次郎が役に立つスキルを持っていてラッキーと思わなきゃ。
「今回は眠り薬だったが、そのうち毒薬になってもおかしくない。異世界の人の考えることはわからないし。早めにここを抜け出そう」
兄の言葉に強く頷いた。薬を盛られるのも怖いが、国王たちの人間性も酷そうで、こんなところに長居してもいいことはないだろう。
しばらくすると、無表情なメイドが騎士たちを引き連れてやってきた。眠ることなく部屋にいる私たちの姿に、ほんの少しだけ奴らの表情が変わった気がした。
無言で朝食の皿を片付けていくメイドの横を通り過ぎ、一人の騎士が私たちの前に立つ。
「宰相様がお呼びです。こちらへ」
当然、騎士が手を差し伸べた相手は小次郎ただ一人。もちろん、小次郎一人で行かせるものですか。騎士の邪魔をするように私と兄が小次郎の前に出て、姉が小次郎の体を抱きしめ部屋の隅へと移動する。
「どけっ」
キーッ、勇者のおまけの私たちに対する態度がヒドイ! でも負けないもん。
ギリッと目尻を吊り上げ騎士を睨む。すると騎士の後ろから別の騎士が二人、進み出てきて私と兄を素早く拘束してしまった。
「あっ」
ジタバタと抵抗する私と兄を一瞥した一番偉そうなその騎士は、感情のない声でメイドに「薬を飲ませろ」と命じた。
ええーっ、せっかく飲まないで済んだ薬なのに、結局力尽くで飲ませられるの? なんなのよ、それ
兄と私はこれでもかっと首を横に振り、薬が入ったコップを口に近づけようとするメイドの手を避けまくった。
「さあ、勇者様」
勇者様と呼びながら、騎士はまだ細い小次郎の腕を掴んで強く引き寄せる。
「小次郎ちゃん」
姉の叫びと小次郎のうめき声が重なった。
「こんにゃろ!」
私はゴツンと後頭部を思いっきり後ろの騎士の顔にぶつけ、拘束する腕の力が弱まったタイミングで前にいたメイドを蹴り飛ばした。
運よくメイドの体は小次郎を捕まえた騎士の背中にぶち当たった。
「おわっ」
その衝撃に驚いたのか小次郎を掴んだ力が弱まり、小次郎が解放された。小次郎はそのまま姉と手を繋ぎ扉へと走り出した。
「お兄ちゃん!」
兄も同僚の騎士たちの失態に虚を突かれた騎士の腕を抱えなおし、柔道の背負い投げのようにぶん投げた。
「行くぞ!」
兄と私は小次郎と姉の後を追い、部屋を飛び出したのだった。
騎士たちからは逃げられたのはいいけど、ここどこ?
ただでさえ知らない世界、前の世界でも足を踏み入れたことのないお城の中……あ、アミューズメントパークのお城ならあったわ。でも、あれちゃんと順路を示す看板や印があったもんね。
ダダダッと全力疾走し続けられるわけもなく、子どもの小次郎はコンパスの差が、運動不足の姉には体力の限界があった。
「お兄ちゃん、ど、どうする?」
先頭を走る兄に問いかけるも、振り返った兄の顔は真っ青で唇が震えていた。
「ヤバい。前からも来た」
えっと兄の体越しに前を見ると、ガチャンガチャンと音が鳴りそうな金属製の鎧をしっかりと着込んだ騎士たち数名がこちらに迫ってきた。
「菊華ちゃん、後ろからも」
姉の切羽詰まった声に反応すると、確かに後ろからさっきの騎士たち、こっちは軽装の鎧を着ていたため動きが早いのか、もうすぐそばまで来ている。
「こっちだ」
兄がやけくそでバーンと適当な部屋の扉を開けて中に入る。私たちも後に続く。
だが、当然部屋の中に入ってしまえば逃げ場はない。ないんだよーっ。
それでも部屋の奥へ奥へと走り続け、ピタリと足を止めたのは……窓を出てバルコニーに追い詰められたからだ。
「ど……どうしよう」
オロオロと左右を見回す姉の言葉に、ゴクリと私は唾を飲み込んだ。もしかして、ここで覚悟を決めないとダメな場面かも。
チラリと下を見てみたけど、たぶん三階か四階ぐらいの高さだ。飛び降りたら、あ、足の骨折とかで済むかな?
「やめろ、菊華。たぶん、死ぬぞ」
「ひいいいいっ」
四人固まってバルコニーの柵を背にジリジリと後退る。私たちの前には抜刀している騎士たちが怖い顔で睨んでいる。
つ、詰んだかも。
「さあ、勇者様。こちらへ」
差し伸べられた手を、じっと見つめたあと小次郎はおずおずと手を伸ばした。
「ダメーッ!」
その伸ばした手ごと、私は小次郎の体を抱きしめ止める。
「そこをどけーっ」
ブンッと剣を振り上げる音が耳に届き、ぎゅうと強く小次郎を抱きしめる。私の背中に覆いかぶさるのは姉で、私たちの前に両手を広げて守ろうとするのは兄だ。
しかし、騎士の無感情な目は私たちを邪魔者としか捉えていない。このまま、剣を振り下ろされれば……みんな、死んでしまう!
ピカッ! ゴロゴロゴロ、ドッカーン!
眩しい閃光に包まれて、何も見えず何も聞こえず……自分の感覚が失われていく……。
もしかして、死んじゃった?
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