7 / 52
勇者召喚と逃亡
勇者逃亡 ②
しおりを挟む
それから歩くこと体感時間で三時間ぐらい。学生時代にスポーツをしていて、最近ではスーパーのタイムセールをハシゴしている兄と、まだまだ大学生で若い私はなんとか歩き続けられた。小次郎は途中で涙目になっていて、無理やり靴を脱がしたら足の裏が真っ赤だったので、兄が負ぶっている。
姉は……あの人ね……、やっぱり体力なかった。フラフラと倒れこみグシグシと泣き出した。
泣いても空が飛べるわけもなく、この異世界にタクシーが来ることもない。黙って歩けと告げた私に恨みがましい目を向けた姉には、なぜか手が差し伸べられる。
美人ってお得……。本来はお年寄りや怪我人、病人しか乗せられない馬車に乗っけてもらって移動することになったのだ。
この集団のリーダーであるおっさんが、許可してくれたからね。姉の美貌に鼻の下をみっともなく伸ばしていたけど。
こうして、私たちは無事に勇者召喚なんてしやがったトーリア王国を脱出し、隣国ノイス国へと渡ることができたのでした!
ノイス国といっても、異世界人である私たちには、トーリア王国とどう違うのかはわからない。もっと言えば、こっちの世界の常識も生活様式もわからない。
このスタンピードで村を追われた人たちに紛れて生活しながら、情報を仕入れなきゃ!
でも、なんでこの難民キャンプの端っこに私たちは追いやられてしまったのだろう……。怪しい人認定されるほど何もしてないし、会話もしてないのに。
「そりゃ、余所者だからだろう?」
渡された支給品のひとつ、テントをせっせっと立てる兄の言葉に納得。姉のオタク知識によれば、この世界の人の命はとっても軽く、平民は病気になっても、薬が買えず医者にも診てらえない。強盗が多く村や町の外に出て運が悪ければ死ぬし、村や町の中にいても運が悪ければ死ぬ。
だから、余所者に対して警戒心が高いのは当たり前。それは、同じスタンピードに遭い逃げてきた境遇でも、油断はできない。
理解はしたわ。私たちがこの難民キャンプの端っこに割り当てられた理由は。
「じゃあ、なんで私たちよりも端っこにいる家族がいるの?」
それって、異世界人の私たちより怪しい人たちってことでしょう?
「……本当だな」
テント……といってもターフテントみたいな仕様で四角の木の支柱に布をかけ、風などで捲れないように、ペグじゃないな……木の杭を打ちこむ。
その杭を手に持ったまま、兄も私たちのテントより外に張られたテントを見つめる。
しかし、そのテントの住人はピッチリとテントの布を閉めていて、どんな人たちのなのかわからない。
「とにかく、今は長い距離を移動してきてみんなが疲れている。俺たちも早く休んで、明日からいろいろと動こう」
「そうね」
カーンカーンと木の杭を打つ音があちこちから響いてくる。
そのうち、この難民キャンプを開いてくれたノイス国の辺境伯様、その辺境伯様から責任者に任命されたマノロさんがお湯を持って挨拶にきてくれた。
「大丈夫か? 怪我とかはしていないか? むむむ、子どもがいるな。甘い菓子をやろう」
どうも、到着当日にせめて清拭だけでもと、お湯がでるポットを抱えてテントを回っているらしい。責任者として怪しい人がいなかの検分も兼ねているだろう。
テントと一緒に支給された大き目な盥の中に、ポットからお湯が注がれる。注がれる。注がれる?
え? 花瓶ぐらいの大きさのポットからなみなみとお湯が注がれるんだけども?
「ん? どうした」
私たちがびっくり眼で盥とポットを見ているので、マノロさんが怪訝な顔をした。
「いっ、いいえ。ありがとうございます」
清拭用のタオルもあるし。一応、夕食用に干し肉とパンも分けてもらった。ものすごく固いけど。
「すまないが、明日からは、手分けしてここを運営していかないといけない。君たちも手伝ってくれ」
「はい」
兄が代表して答える。ここの責任者はこのマノロさん。五〇代前半の体格のいいおじさんだ。こっちの代表はドナトさんで、魔獣に襲われた村の村長さんらしい。
マノロさんが隣のテントへ行ってしまうと、私たちはテントの中で姉と私。外では兄と小次郎で体を拭き、分けてもらったお湯でお茶を淹れて飲んだ。
「ふわわわ」
「あー、生き返る」
「……あちっ」
小次郎は猫舌かもしれない。
「明日からどうしよう」
「とにかく、ここにいる間に生活に必要な知識を集めよう」
兄の言う通りだ。私たちはここの世界の人が朝起きたら何をして、何を食べて、何をして賃金を得ているのか知らない。お金の種類も知らないし、食べられるものもわからない。文字も読めないし書けない……かもしれない。
「……ちょっとハードモードね」
小次郎はきょとんとした顔をして、項垂れる私たちを見ていた。
だって、この歳で幼児レベルから勉強し直しって……ツライ。
姉は……あの人ね……、やっぱり体力なかった。フラフラと倒れこみグシグシと泣き出した。
泣いても空が飛べるわけもなく、この異世界にタクシーが来ることもない。黙って歩けと告げた私に恨みがましい目を向けた姉には、なぜか手が差し伸べられる。
美人ってお得……。本来はお年寄りや怪我人、病人しか乗せられない馬車に乗っけてもらって移動することになったのだ。
この集団のリーダーであるおっさんが、許可してくれたからね。姉の美貌に鼻の下をみっともなく伸ばしていたけど。
こうして、私たちは無事に勇者召喚なんてしやがったトーリア王国を脱出し、隣国ノイス国へと渡ることができたのでした!
ノイス国といっても、異世界人である私たちには、トーリア王国とどう違うのかはわからない。もっと言えば、こっちの世界の常識も生活様式もわからない。
このスタンピードで村を追われた人たちに紛れて生活しながら、情報を仕入れなきゃ!
でも、なんでこの難民キャンプの端っこに私たちは追いやられてしまったのだろう……。怪しい人認定されるほど何もしてないし、会話もしてないのに。
「そりゃ、余所者だからだろう?」
渡された支給品のひとつ、テントをせっせっと立てる兄の言葉に納得。姉のオタク知識によれば、この世界の人の命はとっても軽く、平民は病気になっても、薬が買えず医者にも診てらえない。強盗が多く村や町の外に出て運が悪ければ死ぬし、村や町の中にいても運が悪ければ死ぬ。
だから、余所者に対して警戒心が高いのは当たり前。それは、同じスタンピードに遭い逃げてきた境遇でも、油断はできない。
理解はしたわ。私たちがこの難民キャンプの端っこに割り当てられた理由は。
「じゃあ、なんで私たちよりも端っこにいる家族がいるの?」
それって、異世界人の私たちより怪しい人たちってことでしょう?
「……本当だな」
テント……といってもターフテントみたいな仕様で四角の木の支柱に布をかけ、風などで捲れないように、ペグじゃないな……木の杭を打ちこむ。
その杭を手に持ったまま、兄も私たちのテントより外に張られたテントを見つめる。
しかし、そのテントの住人はピッチリとテントの布を閉めていて、どんな人たちのなのかわからない。
「とにかく、今は長い距離を移動してきてみんなが疲れている。俺たちも早く休んで、明日からいろいろと動こう」
「そうね」
カーンカーンと木の杭を打つ音があちこちから響いてくる。
そのうち、この難民キャンプを開いてくれたノイス国の辺境伯様、その辺境伯様から責任者に任命されたマノロさんがお湯を持って挨拶にきてくれた。
「大丈夫か? 怪我とかはしていないか? むむむ、子どもがいるな。甘い菓子をやろう」
どうも、到着当日にせめて清拭だけでもと、お湯がでるポットを抱えてテントを回っているらしい。責任者として怪しい人がいなかの検分も兼ねているだろう。
テントと一緒に支給された大き目な盥の中に、ポットからお湯が注がれる。注がれる。注がれる?
え? 花瓶ぐらいの大きさのポットからなみなみとお湯が注がれるんだけども?
「ん? どうした」
私たちがびっくり眼で盥とポットを見ているので、マノロさんが怪訝な顔をした。
「いっ、いいえ。ありがとうございます」
清拭用のタオルもあるし。一応、夕食用に干し肉とパンも分けてもらった。ものすごく固いけど。
「すまないが、明日からは、手分けしてここを運営していかないといけない。君たちも手伝ってくれ」
「はい」
兄が代表して答える。ここの責任者はこのマノロさん。五〇代前半の体格のいいおじさんだ。こっちの代表はドナトさんで、魔獣に襲われた村の村長さんらしい。
マノロさんが隣のテントへ行ってしまうと、私たちはテントの中で姉と私。外では兄と小次郎で体を拭き、分けてもらったお湯でお茶を淹れて飲んだ。
「ふわわわ」
「あー、生き返る」
「……あちっ」
小次郎は猫舌かもしれない。
「明日からどうしよう」
「とにかく、ここにいる間に生活に必要な知識を集めよう」
兄の言う通りだ。私たちはここの世界の人が朝起きたら何をして、何を食べて、何をして賃金を得ているのか知らない。お金の種類も知らないし、食べられるものもわからない。文字も読めないし書けない……かもしれない。
「……ちょっとハードモードね」
小次郎はきょとんとした顔をして、項垂れる私たちを見ていた。
だって、この歳で幼児レベルから勉強し直しって……ツライ。
76
あなたにおすすめの小説
異世界のんびり放浪記
立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。
冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。
よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。
小説家になろうにも投稿しています。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中
奏穏朔良
ファンタジー
「俺は人外じゃないし、女神の子供でもないし、救国の英雄でも、治癒を司る神でもないし、権力も信仰も興味無いから錬金術だけやらせてよ。」
女神の事情でVRゲームの元になった異世界に転移した男子高校生が何故かめちゃくちゃ勘違いされる話。
****
またもや勘違いものです。
主人公に対して各キャラ(男女問わず)から矢印を向けられる総愛され気味ですが、本編で特定の誰かとくっ付くことはありません。
目指せ毎週月、金16時更新。(1話と2話のみ同日更新です。)
どうしても間に合わない場合はXにて告知します。
感想!貰えたら!!嬉しいです!!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる