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勇者召喚と逃亡
勇者逃亡 ④
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私と小次郎が食材の下拵えをしている姿を、木の影からこっそりと覗いていた二人の子どもは姉弟で、他の人たちと同じくスタンピードで村から逃げてきた避難民だった。
「……ウッツ。この子はロッツよ」
「私は菊華で、この子は小次郎。仲良くしてね」
ひととおり野菜を洗い終わった私たちは、兄の獅子奮迅の働きもあり、お役御免となった。獣人の子たちを気にしている小次郎と一緒に木の側まで移動して、なるべく優しい声で話しかけた結果、めでたく自己紹介となったのだ。
「コジロー? 変な名前」
小次郎より少し年上の女の子、ウッツちゃんが小次郎の名前に首を傾げる。そりゃね、異世界の名前だもの。聞き慣れなくて変だと思うよね?
小次郎はちょっとしょんぼりしちゃったけど、ドンマイ!
「ねぇ、ウッツちゃんたちって、一番端のテントを使っている?」
私の素朴な質問にウッツちゃんは顔を強張らせて、ロッツちゃんはきょとんとした顔。あ~こりゃ、予想が当たっちゃったかな?
「あのね、私たちはその隣のテントを使っているの。私たちはあの村の住民じゃなくてね、親戚を頼って旅をしていて、運悪くスタンピードに遭遇してしまって。だから私たちは余所者なんだ」
笑顔で明るく、なんでもないことのように話すと、ウッツちゃんたちは顔を見合わせて、おずおずと自分たちも余所者だと打ち明けてくれた。
ウッツちゃんたちは、一家でスタンピードに遭遇した旅人らしい。お父さんのモーリッツさん、お母さんのレオニーさんとウッツちゃん、ロッツちゃんの四人家族。お父さんは商人でトリーア国を通り抜け、違う国で店を開こうと移動していたが、トリーア王国でスタンピードに遭って荷物を放り出して逃げてきたんだって。商品がなくなってしまったので、仕切り直しをするために一旦、故郷に戻るそうだ。
「故郷ってどこなの?」
「うんっと、この国のお隣。アーゲン国のう~んと北の方。そこはあたしたちみたいな獣人たちの集落があるの」
獣人……。私と小次郎はお互いの顔を見て、こっそりと頷いた。やっぱり……獣人だった! ウッツちゃんの耳と尻尾からたぶん犬獣人かな? こうしてお喋りしている間もフリフリと尻尾が揺れててかわいい。
「トリーア国はあたしたち獣人は差別されるんだって。だからパパもママも外に出ないようにって。でも……つまんない」
しゅんと耳と尻尾が垂れるウッツちゃんの姿に、胸がキュュュュゥンとなる。小次郎も彼女の姿に眉を下げていた。
「マノロさんたちもそう? 意地悪だった?」
私の質問に、ウッツちゃんもロッツちゃんも黙って頭を横に振る。よかった……ノイス国は獣人差別の酷い国じゃなさそう。でも、ここの避難民はトリーア国の人だから、ウッツちゃんたちには肩身が狭いのかもしれない。かわいそうなことだけど。
「私たちは大丈夫よ。元々トリーア国の人間じゃないし。ウッツちゃんもロッツちゃんもかわいいと思うもの。ね、小次郎」
バンッと小次郎の背中を叩いて同意を求めれば、小次郎は私の顔を見て二人の顔を見てを交互に繰り返し、とっても小さい声で「うん」と返事した。
「小次郎。ウッツちゃんたちがイヤなことされていたら、助けてあげようね!」
「うん!」
私と小次郎の固い決意に、ウッツちゃんたちもかわいい笑顔を見せてくれた。
私たち、異世界で初めての友達ができたみたいです。
この世界の食事は、朝と夜の二食みたいです。……いや、避難生活だからか?
「そうか……あの勇者召喚した国は獣人を差別する国だったのか……。なんか、他にもいろいろとありそうな国だと思うが……」
朝だけでなく夕食の炊き出しでも無双した兄は、責任者の肝っ玉母さん、イネスさんに気に入られ、たくさんの食事を貰うことができた。
テント内で夕食を食べつつ、今日お友達になったお隣のウッツちゃんたちの話をしたところ、動物好きの兄の顔が歪んだ。
「あら、ここノイス国でもあまり歓迎されていないわ。税もちょっと高いし、人族以外は土地を買ったり店を持ったりはできないみたいよ」
兄が作った温かいスープを笑顔で口に運ぶ姉が、ノイス国での獣人の扱いを教えてくれた。姉はマノロさんに連れられノイス国の役人たちがいる場所で、今日一日書類仕事に勤めてきた。無事に異世界の文字が読め、書けたらしい。
自動書記みたいで慣れるまで気持ち悪かったとのことだが、すぐになんとも思わなくなり、スイスイと仕事が捗ったって、本当?
「ドナトさん……スタンピードにあった村の村長さんね。この人と一緒に、ノイス国まで逃げてきた避難民の名簿を作ったのよ。半分以上は行方不明ってことだけど、反対方向に逃げた人もいるから、村を再興したら戻ってくる人がいるかもしれないわ」
「村……再興するの?」
スタンピードって魔獣に襲われた村でしょ? 戻ってもまた襲われたらどうするのよ?
「まあ……このままノイス国に留まる人が多いでしょうね? トリーア国の評判も悪かったし。あとは……隣の国アーゲン国への馬車も出してもらえそうよ」
ノイス国では一か月ほど避難民を受け入れて、その後ノイス国での生活補助を受け住む人以外、トーリア国へ帰国する人と隣国アーゲン国へ行く人の無料送迎が始まるそうだ。
私たちも一か月間、しっかりと話し合って定住するところを見つけないとね。
「……ウッツ。この子はロッツよ」
「私は菊華で、この子は小次郎。仲良くしてね」
ひととおり野菜を洗い終わった私たちは、兄の獅子奮迅の働きもあり、お役御免となった。獣人の子たちを気にしている小次郎と一緒に木の側まで移動して、なるべく優しい声で話しかけた結果、めでたく自己紹介となったのだ。
「コジロー? 変な名前」
小次郎より少し年上の女の子、ウッツちゃんが小次郎の名前に首を傾げる。そりゃね、異世界の名前だもの。聞き慣れなくて変だと思うよね?
小次郎はちょっとしょんぼりしちゃったけど、ドンマイ!
「ねぇ、ウッツちゃんたちって、一番端のテントを使っている?」
私の素朴な質問にウッツちゃんは顔を強張らせて、ロッツちゃんはきょとんとした顔。あ~こりゃ、予想が当たっちゃったかな?
「あのね、私たちはその隣のテントを使っているの。私たちはあの村の住民じゃなくてね、親戚を頼って旅をしていて、運悪くスタンピードに遭遇してしまって。だから私たちは余所者なんだ」
笑顔で明るく、なんでもないことのように話すと、ウッツちゃんたちは顔を見合わせて、おずおずと自分たちも余所者だと打ち明けてくれた。
ウッツちゃんたちは、一家でスタンピードに遭遇した旅人らしい。お父さんのモーリッツさん、お母さんのレオニーさんとウッツちゃん、ロッツちゃんの四人家族。お父さんは商人でトリーア国を通り抜け、違う国で店を開こうと移動していたが、トリーア王国でスタンピードに遭って荷物を放り出して逃げてきたんだって。商品がなくなってしまったので、仕切り直しをするために一旦、故郷に戻るそうだ。
「故郷ってどこなの?」
「うんっと、この国のお隣。アーゲン国のう~んと北の方。そこはあたしたちみたいな獣人たちの集落があるの」
獣人……。私と小次郎はお互いの顔を見て、こっそりと頷いた。やっぱり……獣人だった! ウッツちゃんの耳と尻尾からたぶん犬獣人かな? こうしてお喋りしている間もフリフリと尻尾が揺れててかわいい。
「トリーア国はあたしたち獣人は差別されるんだって。だからパパもママも外に出ないようにって。でも……つまんない」
しゅんと耳と尻尾が垂れるウッツちゃんの姿に、胸がキュュュュゥンとなる。小次郎も彼女の姿に眉を下げていた。
「マノロさんたちもそう? 意地悪だった?」
私の質問に、ウッツちゃんもロッツちゃんも黙って頭を横に振る。よかった……ノイス国は獣人差別の酷い国じゃなさそう。でも、ここの避難民はトリーア国の人だから、ウッツちゃんたちには肩身が狭いのかもしれない。かわいそうなことだけど。
「私たちは大丈夫よ。元々トリーア国の人間じゃないし。ウッツちゃんもロッツちゃんもかわいいと思うもの。ね、小次郎」
バンッと小次郎の背中を叩いて同意を求めれば、小次郎は私の顔を見て二人の顔を見てを交互に繰り返し、とっても小さい声で「うん」と返事した。
「小次郎。ウッツちゃんたちがイヤなことされていたら、助けてあげようね!」
「うん!」
私と小次郎の固い決意に、ウッツちゃんたちもかわいい笑顔を見せてくれた。
私たち、異世界で初めての友達ができたみたいです。
この世界の食事は、朝と夜の二食みたいです。……いや、避難生活だからか?
「そうか……あの勇者召喚した国は獣人を差別する国だったのか……。なんか、他にもいろいろとありそうな国だと思うが……」
朝だけでなく夕食の炊き出しでも無双した兄は、責任者の肝っ玉母さん、イネスさんに気に入られ、たくさんの食事を貰うことができた。
テント内で夕食を食べつつ、今日お友達になったお隣のウッツちゃんたちの話をしたところ、動物好きの兄の顔が歪んだ。
「あら、ここノイス国でもあまり歓迎されていないわ。税もちょっと高いし、人族以外は土地を買ったり店を持ったりはできないみたいよ」
兄が作った温かいスープを笑顔で口に運ぶ姉が、ノイス国での獣人の扱いを教えてくれた。姉はマノロさんに連れられノイス国の役人たちがいる場所で、今日一日書類仕事に勤めてきた。無事に異世界の文字が読め、書けたらしい。
自動書記みたいで慣れるまで気持ち悪かったとのことだが、すぐになんとも思わなくなり、スイスイと仕事が捗ったって、本当?
「ドナトさん……スタンピードにあった村の村長さんね。この人と一緒に、ノイス国まで逃げてきた避難民の名簿を作ったのよ。半分以上は行方不明ってことだけど、反対方向に逃げた人もいるから、村を再興したら戻ってくる人がいるかもしれないわ」
「村……再興するの?」
スタンピードって魔獣に襲われた村でしょ? 戻ってもまた襲われたらどうするのよ?
「まあ……このままノイス国に留まる人が多いでしょうね? トリーア国の評判も悪かったし。あとは……隣の国アーゲン国への馬車も出してもらえそうよ」
ノイス国では一か月ほど避難民を受け入れて、その後ノイス国での生活補助を受け住む人以外、トーリア国へ帰国する人と隣国アーゲン国へ行く人の無料送迎が始まるそうだ。
私たちも一か月間、しっかりと話し合って定住するところを見つけないとね。
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