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勇者召喚と逃亡
勇者逃亡 ⑭
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なぜかこちらに飛来してきた群れからはぐれたらしきワイバーンは、謎の光に包まれて討伐の瞬間を誰にも見られることもなく儚くなられた。チーン。そういうことで話がまとまり、討伐したのは剣を持っていた私、偶然と運で討伐できたという報告をしてくれるそうです。よかったぁ。
「で、そのワイバーンはどうする?」
「どうする?」
どうするの? このまま道のド真ん中に放っておいたら邪魔だということはわかる。みんなでゴロゴロと転がして端に寄せますか?
「……。ワイバーンを冒険者ギルドに持ち込めばかなりの金になるが?」
「このワイバーン、貰えるんですか?」
噓ッ。ワイバーンを売ったお金を貰えるの? それっていくら? いやいや、冒険者ギルドに売ればどんな大金でも使いやすい硬貨に両替してくれるよね?
「お兄ちゃん!」
「菊華でかした!」
橘家が歓喜に包まれた! 兄は言葉では私を褒めているが、その手は本当の討伐者である小次郎の頭をナデナデしている。うん、姉はドラゴンに夢中だから無視しよう。せめてキラキライケメンさんにうっとりしてくれ、姉よ。
「アーゲン国依頼のワイバーン討伐ですよね? こちらで売りさばいていいんですか?」
あーっ、余計なこと言わないでよ、エンリケさん。お金は持っているのに使えない橘家の批難の視線がエンリケさんに集中する。
「かまわない。取り逃がしたのはアーゲン国の騎士たちだ。このワイバーンは「ライゼ」が追跡し他者が討伐したことを確認した。正当な売買金をこちらの少女に渡す。ところで……この馬車はどこへ行く予定だった?」
ここでレオンさんは馬車の乗客が国境を越えるには軽装過ぎることに気づいた。乗っているのも子どもがいる家族や年寄り、まだ若い人とバラバラだしね。
エンリケさんが、トリーア王国でスタンピードに遭い廃村となった村人が移動している馬車だと教え、行き先がアーゲン国のウェルタ辺境伯領地の領都ラントだと聞くと、レオンさんはラントの冒険者ギルドにワイバーンを買い取りに出そうと提案してきた。もちろん、同意します!
ただ……問題は、このワイバーンをどう運ぶかです。
兄たちには神様から貰った鞄がある。なんでも入る魔法の鞄だけど、持っていることが周りに知られるとかなり危険なブツである。ワイバーンのお金は欲しいが、このバカデカイものが入る鞄を持っていることは知られたくない。どうしたらいいのだろうと無表情を繕いながらも悶々と考えていた橘一家の前で、ドラゴンに乗ってやってきた冒険者レオンさんはワイバーンの体と首をひょいとどこかへ入れてしまった。
「ええーっ!」
ど、どこにやったの? 私たちの生命線でもあるワイバーンを! 兄と私、小次郎で目を見開いて口を開けていると、レオンさんは怪訝な表情でこちらを見た。
「どうした? ちゃんと『無限収納』に入れてあるから、ラントの冒険者ギルドで返すぞ?」
「む、むむむ、『無限収納』?」
なにそれ? 三人揃って首を傾げていると、ドラゴン観察に満足したのか姉が得意げに教えてくれた。
「『無限収納』っていうのはね、スキルの一つで無限に物を入れておけるのよ。その中では時間経過がないから、熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままだし、腐らないの」
「なにその魔法瓶みたいな能力?」
「ま……魔法の瓶?」
はっ、しまった! うっかりあちらの言葉を使ってしまった。キラキライケメンさんが不思議そうな顔をしている。ちなみに魔法の瓶ではない。
「さ、さあ、馬車は無事だったし、遅くならないうちに移動しよう」
エンリケさんが冷や汗をかきかき、移動するよう促してきた。地味にワイバーンの血で汚れた道をドラさんが魔法でキレイにしている。うらやましい……。私と小次郎もワイバーンの返り血を浴びてるし、泥だらけなんですが……。
「いいなぁ」
「どうして? 魔法が使えないのか? “清浄”これでいいか?」
キラキラとしたエフェクトが私と小次郎の周りに現れて……あれれ? ワイバーンの血生臭さも泥が渇いてカピカピしていた突っ張りも感じない!
「
キレイになってる?」
「うん、菊華ちゃんよかったね!」
小次郎と顔を見合わせたあと、ニッコリと笑い合う。はぁぁぁーっ、よかった。お風呂になかなか入れない世界だから、助かっちっゃた。
そんな和やかな空気を一変させる影が、私たちを覆う。覆ってしまう。
グルッ。
野太い鳴き声に上を確認すると……うん、やっぱりデッカイ何かが飛んでいる。
「ド、ドラゴン……」
またドラゴン。しかもレオンさんが乗ってきたドラゴンよりも一回り以上大きい。こ……このドラゴンは味方でしょうか? それとも……。
「安心しろ。あのドラゴンにはうちのリーダーが乗っている。あの子の親ドラゴンだ」
レオンさんがクイッと親指で示したあの子とは、姉が纏わりついて迷惑をかけているドラゴンのことですか? そしてそのドラゴンの親が飛んでいるドラゴン。
「あのぅ……ドラゴンに乗るのって、日常なんでしょうか?」
モーリッツさん一家とレオンさんがびっくりした顔で私を見ているけど、そう思ってもしょうがないでしょ! ファンタジーな異世界なんだもん。タクシー代わりにドラゴンを乗り回す世界でも驚きはしないわ。
「で、そのワイバーンはどうする?」
「どうする?」
どうするの? このまま道のド真ん中に放っておいたら邪魔だということはわかる。みんなでゴロゴロと転がして端に寄せますか?
「……。ワイバーンを冒険者ギルドに持ち込めばかなりの金になるが?」
「このワイバーン、貰えるんですか?」
噓ッ。ワイバーンを売ったお金を貰えるの? それっていくら? いやいや、冒険者ギルドに売ればどんな大金でも使いやすい硬貨に両替してくれるよね?
「お兄ちゃん!」
「菊華でかした!」
橘家が歓喜に包まれた! 兄は言葉では私を褒めているが、その手は本当の討伐者である小次郎の頭をナデナデしている。うん、姉はドラゴンに夢中だから無視しよう。せめてキラキライケメンさんにうっとりしてくれ、姉よ。
「アーゲン国依頼のワイバーン討伐ですよね? こちらで売りさばいていいんですか?」
あーっ、余計なこと言わないでよ、エンリケさん。お金は持っているのに使えない橘家の批難の視線がエンリケさんに集中する。
「かまわない。取り逃がしたのはアーゲン国の騎士たちだ。このワイバーンは「ライゼ」が追跡し他者が討伐したことを確認した。正当な売買金をこちらの少女に渡す。ところで……この馬車はどこへ行く予定だった?」
ここでレオンさんは馬車の乗客が国境を越えるには軽装過ぎることに気づいた。乗っているのも子どもがいる家族や年寄り、まだ若い人とバラバラだしね。
エンリケさんが、トリーア王国でスタンピードに遭い廃村となった村人が移動している馬車だと教え、行き先がアーゲン国のウェルタ辺境伯領地の領都ラントだと聞くと、レオンさんはラントの冒険者ギルドにワイバーンを買い取りに出そうと提案してきた。もちろん、同意します!
ただ……問題は、このワイバーンをどう運ぶかです。
兄たちには神様から貰った鞄がある。なんでも入る魔法の鞄だけど、持っていることが周りに知られるとかなり危険なブツである。ワイバーンのお金は欲しいが、このバカデカイものが入る鞄を持っていることは知られたくない。どうしたらいいのだろうと無表情を繕いながらも悶々と考えていた橘一家の前で、ドラゴンに乗ってやってきた冒険者レオンさんはワイバーンの体と首をひょいとどこかへ入れてしまった。
「ええーっ!」
ど、どこにやったの? 私たちの生命線でもあるワイバーンを! 兄と私、小次郎で目を見開いて口を開けていると、レオンさんは怪訝な表情でこちらを見た。
「どうした? ちゃんと『無限収納』に入れてあるから、ラントの冒険者ギルドで返すぞ?」
「む、むむむ、『無限収納』?」
なにそれ? 三人揃って首を傾げていると、ドラゴン観察に満足したのか姉が得意げに教えてくれた。
「『無限収納』っていうのはね、スキルの一つで無限に物を入れておけるのよ。その中では時間経過がないから、熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままだし、腐らないの」
「なにその魔法瓶みたいな能力?」
「ま……魔法の瓶?」
はっ、しまった! うっかりあちらの言葉を使ってしまった。キラキライケメンさんが不思議そうな顔をしている。ちなみに魔法の瓶ではない。
「さ、さあ、馬車は無事だったし、遅くならないうちに移動しよう」
エンリケさんが冷や汗をかきかき、移動するよう促してきた。地味にワイバーンの血で汚れた道をドラさんが魔法でキレイにしている。うらやましい……。私と小次郎もワイバーンの返り血を浴びてるし、泥だらけなんですが……。
「いいなぁ」
「どうして? 魔法が使えないのか? “清浄”これでいいか?」
キラキラとしたエフェクトが私と小次郎の周りに現れて……あれれ? ワイバーンの血生臭さも泥が渇いてカピカピしていた突っ張りも感じない!
「
キレイになってる?」
「うん、菊華ちゃんよかったね!」
小次郎と顔を見合わせたあと、ニッコリと笑い合う。はぁぁぁーっ、よかった。お風呂になかなか入れない世界だから、助かっちっゃた。
そんな和やかな空気を一変させる影が、私たちを覆う。覆ってしまう。
グルッ。
野太い鳴き声に上を確認すると……うん、やっぱりデッカイ何かが飛んでいる。
「ド、ドラゴン……」
またドラゴン。しかもレオンさんが乗ってきたドラゴンよりも一回り以上大きい。こ……このドラゴンは味方でしょうか? それとも……。
「安心しろ。あのドラゴンにはうちのリーダーが乗っている。あの子の親ドラゴンだ」
レオンさんがクイッと親指で示したあの子とは、姉が纏わりついて迷惑をかけているドラゴンのことですか? そしてそのドラゴンの親が飛んでいるドラゴン。
「あのぅ……ドラゴンに乗るのって、日常なんでしょうか?」
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