22 / 52
勇者召喚と逃亡
勇者逃亡 ⑰
しおりを挟む
アーゲン国ウェルタ辺境伯領都ラントの冒険者ギルドまで、レオンさんに案内してもらおうとその姿を探してみるがみつからない。あんなにキラキラとしたイケメンなのにいない。隣には相棒のドラゴンを連れているのに見当たらない。嘘でしょ! ワイバーン持ち逃げされた!
「菊華、菊華。こっちだよ、こっち」
兄にトントンと肩を叩かれて振り向くと、いましたキラキラとしたイケメンさん!
「あれ? レーゲンはどこに?」
まだ子どもだというバカデカイ体の「びゅい」とかわいく鳴く、レーゲンの姿がどこにも見えないけど? キョロキョロしている私に、レオンさんはププッと噴き出して笑う。
「なんですか?」
「ああ、すまない。レーゲンならここにいるよ」
くるりと背中を見せるレオンさん。そのマントにはべったりと張り付く大きなトカゲ? トカゲなの、これ? 羽が付いてるけど?
「レーゲンだよ。街中だからね、縮小化させている。ドラゴンでも高位になると人化や縮小化ができるんだよ」
「人化ーっ!」
姉が急に興奮して騒ぎ出した。オタクの世界ではあらゆるものが擬人化されるので、人化の言葉にオタク心が刺激されたんだろう。あの興奮状態はいつものことなので、放っておく。
「冒険者ギルドに行く前に仲間を紹介したい。アオイ、サクラ、キッカ、コジロー、こっちに」
背中にちっちゃいドラゴンをくっつけたレオンさんの後ろをついていくと、肩にちっちゃいドラゴンを乗せた体の大きい男の人と黒いローブを着た女の人と白いローブを着た女の人がいた。体の大きい人は、さっきのワイバーン騒ぎのときにもいた人だった。
「冒険者パーティー「ライゼ」のリーダー、シルビオだ。こっちは魔法使いのカルラでこっちはヒーラーのオリビア。よろしくな」
「タ……、コホン。トリーア王国のスタンピードから避難してきたアオイです。こっちは上の妹のサクラ、こっちは下の妹のキッカ。それと……弟のコジローです」
ペコリと頭を下げて挨拶すると、三人から息を呑む気配がした。う~む、クセでついやっちゃうけど、安易に頭は下げないほうがいいかも。
「リーダーのシルビオだ。ワイバーン討伐では迷惑をかけた」
「あら、迷惑をかけたのは弱っちいアーゲン国の騎士たちよ。あたしたちは依頼された数のワイバーンを瞬殺したわ」
フンッと顎を上げて尊大に言い放つのは黒いローブの女性で、魔法使いと紹介されたカルラさんだ。
「クスクス。だめよ、本当のことを言っては。正直、私たちだけですべて完璧に討伐できましたけどね」
カルラさんを嗜めるようでいて、さらに毒を放つのは白いローブを着たヒーラーのオリビアさん。ヒーラー? 外見はおっとりして美人だからヒーラーにはピッタリだけど……セリフは辛辣だわ。
「ここね」
三階建ての冒険者ギルドを、家族揃って仰ぎ見る。私と兄はワイバーンの買い取り価格が気になるし、小次郎は子どもらしくワクワクしている。姉? あの人はハワハワ言いながら、出入りする冒険者をジロジロ見ている不審者となり下がった。もう、知らん。
「そんなに緊張しなくてもいいぞ?」
「そうよ。突っかかってくるバカがいたら、あたしがぶっ飛ばすわ!」
ニカッと人懐っこい笑みを向けるカルラさんだが、言葉は武闘派である。なに、この子怖い。
シルビオさんに先導されつつギルドの中へ。お邪魔しまーす。
「あれ? あまり人がいませんね?」
アーゲン国のラントの街は、冒険者が少ないとか?
「昼どきですし。ギルドが混むのは依頼書が貼りだされる朝早くと、依頼を終えて戻ってくる夕方ですよ」
「あ~あ」
オリビアさんはその後も何も知らない私たちに、依頼書が貼りだされる掲示板とか、受付窓口と買い取り窓口、魔獣を解体する作業場と、冒険者から持ち込まれた素材を鑑定する窓口などを説明してくれた。なんて親切な人!
「あのギルド職員はクソです。あっちの職員はバカです」
……その情報はいらなかったかなぁ。
横目でギルド内を観察しつつ、買い取り窓口をスルーして直接解体作業場へ。
「おーい、解体を頼む」
「おう、ランゼの。今日もワイバーンか?」
金属製の大きな作業机の向こうから野太い声が響き、ぬぼっと現れたのは、シルビオさんぐらいの大きさの筋肉隆々なエプロンをしたおじさんだった。すっご、筋肉。片手にでっかい包丁持ってるけど。
「またワイバーンだが、これは騎士の依頼とは別口だ」
「ほう、じゃあ素材は冒険者ギルドに売ってもらえるのか?」
橘一家は魚の卸市場みたいな作業場にキョロキョロ。いまは解体作業をしていないので、グロい魔獣の姿が見えない。そんなの見たくない。
「アオイさん。ワイバーンはどの部分を売りますか?」
「へ?」
ここでレオンさんたちと相談。勘違いしていたけど、まずワイバーンは討伐料がもらえる。これだけでもかなり高額なんだって。ワイバーンが高ランクの魔獣、つまりそれだけ危険だということだけど。そして解体して出た素材のお金は別。ワイバーンってば、二度おいしいわ!
「皮は防具、マントや靴にも使える。爪はナイフにいい。内臓には薬の材料になるもの……」
「あ……、別にほしいものはないです」
小次郎がもう少し大きくなったら防具とか揃えてあげたいけど……まだ成長期だしね。兄には神様からもらった包丁があるから、刃物は足りているし。内臓もらっても……薬なんて調合できないし。何もいらないからお金をください。
「いいのか? 肉は美味いぞ?」
「お肉は引き取りで!」
橘家の心がひとつになった!
「菊華、菊華。こっちだよ、こっち」
兄にトントンと肩を叩かれて振り向くと、いましたキラキラとしたイケメンさん!
「あれ? レーゲンはどこに?」
まだ子どもだというバカデカイ体の「びゅい」とかわいく鳴く、レーゲンの姿がどこにも見えないけど? キョロキョロしている私に、レオンさんはププッと噴き出して笑う。
「なんですか?」
「ああ、すまない。レーゲンならここにいるよ」
くるりと背中を見せるレオンさん。そのマントにはべったりと張り付く大きなトカゲ? トカゲなの、これ? 羽が付いてるけど?
「レーゲンだよ。街中だからね、縮小化させている。ドラゴンでも高位になると人化や縮小化ができるんだよ」
「人化ーっ!」
姉が急に興奮して騒ぎ出した。オタクの世界ではあらゆるものが擬人化されるので、人化の言葉にオタク心が刺激されたんだろう。あの興奮状態はいつものことなので、放っておく。
「冒険者ギルドに行く前に仲間を紹介したい。アオイ、サクラ、キッカ、コジロー、こっちに」
背中にちっちゃいドラゴンをくっつけたレオンさんの後ろをついていくと、肩にちっちゃいドラゴンを乗せた体の大きい男の人と黒いローブを着た女の人と白いローブを着た女の人がいた。体の大きい人は、さっきのワイバーン騒ぎのときにもいた人だった。
「冒険者パーティー「ライゼ」のリーダー、シルビオだ。こっちは魔法使いのカルラでこっちはヒーラーのオリビア。よろしくな」
「タ……、コホン。トリーア王国のスタンピードから避難してきたアオイです。こっちは上の妹のサクラ、こっちは下の妹のキッカ。それと……弟のコジローです」
ペコリと頭を下げて挨拶すると、三人から息を呑む気配がした。う~む、クセでついやっちゃうけど、安易に頭は下げないほうがいいかも。
「リーダーのシルビオだ。ワイバーン討伐では迷惑をかけた」
「あら、迷惑をかけたのは弱っちいアーゲン国の騎士たちよ。あたしたちは依頼された数のワイバーンを瞬殺したわ」
フンッと顎を上げて尊大に言い放つのは黒いローブの女性で、魔法使いと紹介されたカルラさんだ。
「クスクス。だめよ、本当のことを言っては。正直、私たちだけですべて完璧に討伐できましたけどね」
カルラさんを嗜めるようでいて、さらに毒を放つのは白いローブを着たヒーラーのオリビアさん。ヒーラー? 外見はおっとりして美人だからヒーラーにはピッタリだけど……セリフは辛辣だわ。
「ここね」
三階建ての冒険者ギルドを、家族揃って仰ぎ見る。私と兄はワイバーンの買い取り価格が気になるし、小次郎は子どもらしくワクワクしている。姉? あの人はハワハワ言いながら、出入りする冒険者をジロジロ見ている不審者となり下がった。もう、知らん。
「そんなに緊張しなくてもいいぞ?」
「そうよ。突っかかってくるバカがいたら、あたしがぶっ飛ばすわ!」
ニカッと人懐っこい笑みを向けるカルラさんだが、言葉は武闘派である。なに、この子怖い。
シルビオさんに先導されつつギルドの中へ。お邪魔しまーす。
「あれ? あまり人がいませんね?」
アーゲン国のラントの街は、冒険者が少ないとか?
「昼どきですし。ギルドが混むのは依頼書が貼りだされる朝早くと、依頼を終えて戻ってくる夕方ですよ」
「あ~あ」
オリビアさんはその後も何も知らない私たちに、依頼書が貼りだされる掲示板とか、受付窓口と買い取り窓口、魔獣を解体する作業場と、冒険者から持ち込まれた素材を鑑定する窓口などを説明してくれた。なんて親切な人!
「あのギルド職員はクソです。あっちの職員はバカです」
……その情報はいらなかったかなぁ。
横目でギルド内を観察しつつ、買い取り窓口をスルーして直接解体作業場へ。
「おーい、解体を頼む」
「おう、ランゼの。今日もワイバーンか?」
金属製の大きな作業机の向こうから野太い声が響き、ぬぼっと現れたのは、シルビオさんぐらいの大きさの筋肉隆々なエプロンをしたおじさんだった。すっご、筋肉。片手にでっかい包丁持ってるけど。
「またワイバーンだが、これは騎士の依頼とは別口だ」
「ほう、じゃあ素材は冒険者ギルドに売ってもらえるのか?」
橘一家は魚の卸市場みたいな作業場にキョロキョロ。いまは解体作業をしていないので、グロい魔獣の姿が見えない。そんなの見たくない。
「アオイさん。ワイバーンはどの部分を売りますか?」
「へ?」
ここでレオンさんたちと相談。勘違いしていたけど、まずワイバーンは討伐料がもらえる。これだけでもかなり高額なんだって。ワイバーンが高ランクの魔獣、つまりそれだけ危険だということだけど。そして解体して出た素材のお金は別。ワイバーンってば、二度おいしいわ!
「皮は防具、マントや靴にも使える。爪はナイフにいい。内臓には薬の材料になるもの……」
「あ……、別にほしいものはないです」
小次郎がもう少し大きくなったら防具とか揃えてあげたいけど……まだ成長期だしね。兄には神様からもらった包丁があるから、刃物は足りているし。内臓もらっても……薬なんて調合できないし。何もいらないからお金をください。
「いいのか? 肉は美味いぞ?」
「お肉は引き取りで!」
橘家の心がひとつになった!
99
あなたにおすすめの小説
異世界のんびり放浪記
立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。
冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。
よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。
小説家になろうにも投稿しています。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
錬金術にしか興味のない最弱職アルケミストの異世界勘違い道中
奏穏朔良
ファンタジー
「俺は人外じゃないし、女神の子供でもないし、救国の英雄でも、治癒を司る神でもないし、権力も信仰も興味無いから錬金術だけやらせてよ。」
女神の事情でVRゲームの元になった異世界に転移した男子高校生が何故かめちゃくちゃ勘違いされる話。
****
またもや勘違いものです。
主人公に対して各キャラ(男女問わず)から矢印を向けられる総愛され気味ですが、本編で特定の誰かとくっ付くことはありません。
目指せ毎週月、金16時更新。(1話と2話のみ同日更新です。)
どうしても間に合わない場合はXにて告知します。
感想!貰えたら!!嬉しいです!!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる