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勇者召喚と逃亡
勇者逃亡 ⑱
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ワイバーンの解体は翌日となり、そのときに冒険者ギルドに売ったお金がもらえることになった。レオンさんの予想では、ワイバーン一体で家族四人三ヶ月は余裕で暮らせるらしい。まぁ……こっちの世界は光熱費なんて薪と灯り用の油ぐらいだし、食事も平民はパンにスープという素朴さだもん。ワイバーンの価値がよくわからん。
「これでフュルト国への船賃は賄えますかね?」
重要なのはアーゲン国からフュルト国へ渡る費用なのだ!
「……船賃は大丈夫だが……」
レオンさんたちが私たちをジロジロと品定めするよう眺め、クルリと背を向けて仲間と円陣を組んでコソコソと何かを話し始めた。私たちは、その様子をポケーッと見ている。
暫し待っていたが、だんだん飽きてきた。そろそろ、声をかけてもいいかな? そろぉっと首を伸ばして窺うと、冒険者パーティー「ライゼ」のメンバーがクルッと一斉に振り向いた。
「うわっ」
唐突に視線が合って驚く。 多少、不可解な言動をしても、ここは「ライゼ」の定宿であり、パーティーが貸し切りにしている最上階のスイートルーム。騒いでも極秘の話を交わしても大丈夫!
……って、問題はそこではない。どうしてか、橘一家は蛇に睨まれた蛙の心地でゴクリと喉を鳴らす。
「アオイ。君が長兄だったな?」
シルビオさんの威圧感ある質問に、兄はビビリながら頷いた。
「はい、そうです」
「では、決定権はアオイにあるということで、これから我々「ライゼ」からの提案を受けるかどうか、アオイが決めてくれ」
「え?」
……ワイバーン一体の値段から、とんでもないことに発展しそうなんだけど……どうなってんの?
とにかく落ち着いて話をしようとシルビオさんの号令のもと、豪華なスイートルームに設けられたリビングルームのふかふかソファーに座ります。うわっ、ふかふか、気持ちいいーっ。
体の小さな小次郎がちょっと座りにくそうにしているのが、かわいい。
「アーゲン国では冒険者ギルドに登録しないそうだが、他のギルドにも登録しないんだろう?」
兄の正面に座ったシルビオさんは渋い声で尋ねてくるが、なんで全員分のお茶を淹れてるのがレオンさんなんだろう? 一番下っ端なのかな?
「アーゲン国でどこかのギルドに登録すると、アーゲン国に籍を置くことになります。できたらフュルト国でどこかのギルドに登録するか、市民権を得たいと思ってます」
ここで、どうしてアーゲン国に籍を置きたくないのかって質問はしないでください! 私たちは追及されるとボロボロとヤバイものが出てしまうので、お願いします!
「ふむ。フュルト国は穏やかで他国からの移住者にも寛大だ。住みやすい国だと言えるが……。どこの国でも仕事がなければ食っていけない。アオイは何か技能は持っているのか?」
……家事全般です。いい奥さんになりますよ、と勧められないのが悔しい。
「えっと……。書類仕事ばかりで、最近は料理……ですかね?」
シルビオさんの眼がお前たちは? と無言で問いかけてくるので、姉をツンツンと肘で突ついてみた。
「あ、えっとぉ、わたしも書類仕事かしら?」
「……い、家の手伝いです」
学生と主張してもよかったのだが、この世界の人たち識字率が低い。難民キャンプでも読み書きできる人が少なかった。ただ田舎だったからかもしれないが、読み書き計算ができた姉をノイス国の文官が引き止めたことも考えて、あまり学があると思われないほうがいいかも。
「……それで、フュルト国で暮らしていけんの? 伝手がないと仕事を見つけるの難しいよ?」
むしゃむしゃと手づかみで焼き菓子を頬張っていたカルラさんが、心配そうに眉を寄せる。
「……伝手……」
そんなもの、橘一家にあるわけない。あるのは神様のやらかしだけ。
「ふむ。フュルト国に伝手があるわけでもないんだな。それじゃ、冒険者ギルドに登録するのがお勧めだ」
「え?」
そんな力で解決、脳筋野郎の仲間入りするのはご遠慮したいのですが? ワイバーン討伐が日常なんて暮らしはしたくない。
「お得ですよ? 国境を越えるのも街から街へ移動するときも、身分証になって入国税も入街税も免除ですし」
ニコーッとオリビアさんが冒険者の特権を教えてくれるけど、益々胡散臭い気がするのはなぜ?
「それだけじゃない。薬草採取や街の手伝いでもそれなり稼げる。他の国ではあまり依頼のない仕事も、フュルト国では冒険者ギルドに頼む人が多い。それこそレストランの仕込みの手伝いや、商会の書類仕事など。アオイやサクラでも受けることができるレベルだと思う」
シルビオさんの言葉に私たちは互いの顔を見合わせた。てっきり冒険者ギルドの依頼って斬った倒したばかりだと思っていたけど、薬草採取したり、街のお手伝いをしたりも仕事として依頼があるんだ。飲食店の手伝いとか商会の仕事なら兄や姉でも依頼を受けることができそう。
私は薬草採取とか……家のお掃除とかかな? う~ん、小次郎はどうしよう? こっちの世界じゃ小学校とかなさそうなんだけど……。
「フュルト国で生活基盤ができるまで、ワイバーン討伐の金はとっておいたほうがいい。子どもがいると病気や怪我で急に大金が必要になったりするからな」
「そ、そうなると……いつ、フュルト国へ行けるか……」
ワイバーンのお金なしではフュルト国へ渡る船賃がないんですうぅぅぅっ。
「それなら、俺たちが送っていこう。ドラゴンの背に乗せて!」
はい?
「これでフュルト国への船賃は賄えますかね?」
重要なのはアーゲン国からフュルト国へ渡る費用なのだ!
「……船賃は大丈夫だが……」
レオンさんたちが私たちをジロジロと品定めするよう眺め、クルリと背を向けて仲間と円陣を組んでコソコソと何かを話し始めた。私たちは、その様子をポケーッと見ている。
暫し待っていたが、だんだん飽きてきた。そろそろ、声をかけてもいいかな? そろぉっと首を伸ばして窺うと、冒険者パーティー「ライゼ」のメンバーがクルッと一斉に振り向いた。
「うわっ」
唐突に視線が合って驚く。 多少、不可解な言動をしても、ここは「ライゼ」の定宿であり、パーティーが貸し切りにしている最上階のスイートルーム。騒いでも極秘の話を交わしても大丈夫!
……って、問題はそこではない。どうしてか、橘一家は蛇に睨まれた蛙の心地でゴクリと喉を鳴らす。
「アオイ。君が長兄だったな?」
シルビオさんの威圧感ある質問に、兄はビビリながら頷いた。
「はい、そうです」
「では、決定権はアオイにあるということで、これから我々「ライゼ」からの提案を受けるかどうか、アオイが決めてくれ」
「え?」
……ワイバーン一体の値段から、とんでもないことに発展しそうなんだけど……どうなってんの?
とにかく落ち着いて話をしようとシルビオさんの号令のもと、豪華なスイートルームに設けられたリビングルームのふかふかソファーに座ります。うわっ、ふかふか、気持ちいいーっ。
体の小さな小次郎がちょっと座りにくそうにしているのが、かわいい。
「アーゲン国では冒険者ギルドに登録しないそうだが、他のギルドにも登録しないんだろう?」
兄の正面に座ったシルビオさんは渋い声で尋ねてくるが、なんで全員分のお茶を淹れてるのがレオンさんなんだろう? 一番下っ端なのかな?
「アーゲン国でどこかのギルドに登録すると、アーゲン国に籍を置くことになります。できたらフュルト国でどこかのギルドに登録するか、市民権を得たいと思ってます」
ここで、どうしてアーゲン国に籍を置きたくないのかって質問はしないでください! 私たちは追及されるとボロボロとヤバイものが出てしまうので、お願いします!
「ふむ。フュルト国は穏やかで他国からの移住者にも寛大だ。住みやすい国だと言えるが……。どこの国でも仕事がなければ食っていけない。アオイは何か技能は持っているのか?」
……家事全般です。いい奥さんになりますよ、と勧められないのが悔しい。
「えっと……。書類仕事ばかりで、最近は料理……ですかね?」
シルビオさんの眼がお前たちは? と無言で問いかけてくるので、姉をツンツンと肘で突ついてみた。
「あ、えっとぉ、わたしも書類仕事かしら?」
「……い、家の手伝いです」
学生と主張してもよかったのだが、この世界の人たち識字率が低い。難民キャンプでも読み書きできる人が少なかった。ただ田舎だったからかもしれないが、読み書き計算ができた姉をノイス国の文官が引き止めたことも考えて、あまり学があると思われないほうがいいかも。
「……それで、フュルト国で暮らしていけんの? 伝手がないと仕事を見つけるの難しいよ?」
むしゃむしゃと手づかみで焼き菓子を頬張っていたカルラさんが、心配そうに眉を寄せる。
「……伝手……」
そんなもの、橘一家にあるわけない。あるのは神様のやらかしだけ。
「ふむ。フュルト国に伝手があるわけでもないんだな。それじゃ、冒険者ギルドに登録するのがお勧めだ」
「え?」
そんな力で解決、脳筋野郎の仲間入りするのはご遠慮したいのですが? ワイバーン討伐が日常なんて暮らしはしたくない。
「お得ですよ? 国境を越えるのも街から街へ移動するときも、身分証になって入国税も入街税も免除ですし」
ニコーッとオリビアさんが冒険者の特権を教えてくれるけど、益々胡散臭い気がするのはなぜ?
「それだけじゃない。薬草採取や街の手伝いでもそれなり稼げる。他の国ではあまり依頼のない仕事も、フュルト国では冒険者ギルドに頼む人が多い。それこそレストランの仕込みの手伝いや、商会の書類仕事など。アオイやサクラでも受けることができるレベルだと思う」
シルビオさんの言葉に私たちは互いの顔を見合わせた。てっきり冒険者ギルドの依頼って斬った倒したばかりだと思っていたけど、薬草採取したり、街のお手伝いをしたりも仕事として依頼があるんだ。飲食店の手伝いとか商会の仕事なら兄や姉でも依頼を受けることができそう。
私は薬草採取とか……家のお掃除とかかな? う~ん、小次郎はどうしよう? こっちの世界じゃ小学校とかなさそうなんだけど……。
「フュルト国で生活基盤ができるまで、ワイバーン討伐の金はとっておいたほうがいい。子どもがいると病気や怪我で急に大金が必要になったりするからな」
「そ、そうなると……いつ、フュルト国へ行けるか……」
ワイバーンのお金なしではフュルト国へ渡る船賃がないんですうぅぅぅっ。
「それなら、俺たちが送っていこう。ドラゴンの背に乗せて!」
はい?
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