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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ
勇者旅立 ⑥
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フュルト国の端っこから入国する私たちは、そこから北上すると王都があり、そのまま北上していくと隣国との境にある山脈に突き当たると教えてもらった。
「まさか、例の霊峰!」
竜人族がドラゴンと生活しているという幻の! さっきシルビオさんに教えてもらった知識です。
「ちがう。俺たちはもっと北に住んでいる」
「あ、そうですか……」
しょぼん。覚えたての知識を披露したつもりだったのに、間違っていたとは。地理、苦手なんだよなぁ。
「アオイたちの場合は、下手に人が少ないところだったら、返って目立ちそうだな」
シルビオさんが顎に手をあてて考えていると、オリビアさんがバサッと地図を広げた。
「これは私たちが書きこんで作ったフュルト国の地図です。美味しいお店や安くていい宿、質のいい武器防具屋が書かれています」
「わぁっ、すごっ」
いいなぁ、これ。簡単にコピーとかできないかな? でも、冒険者が自分で書きこんで作った地図は非売品だし、仲間以外には見せないんだって。
ここアーゲン国と接している街、マクデルは国境ということもあってほぼ森林。森の中の小さな街。冒険者ギルドはあるし、森林には魔獣もいて冒険者の往来はかなりある。街も冒険者向けの店や宿が多いそうだ。
「マクデルで冒険者登録は済ませておこう。で、一泊したら出発だ」
シルビオさんの決定に「ライゼ」の皆さんから反対意見はでなかった。当然、お荷物である橘一家も反対はしません。もっとゆっくりしたい気持ちはあるけど、シルビオさんたちが一緒にいてくれる間に、安全地帯へ辿り着きたいのである。
「マクデルを出て真っ直ぐ北上すると、ここリンゲンの街に着く。ここは鉱山があって細工が盛んだ。職人になるならここだが……。う~む」
目を瞑って考えこんじゃったシルビオさんの肩を、レオンさんが軽く叩く。
「ここは鉱山夫や細工師、宝飾店から雑貨店まであるから、仕事には就きやすいが、冒険者への依頼は討伐系が多い。アオイたちには無理だ」
「そうだな……」
あと、カルラさんの情報では、治安もあまりよくないみたい。酒飲みが多くて酔っ払いに絡まれることもあるとか。酔っ払いか……姉が危ないな。
「ここから真っ直ぐ王都方向へ進めばイルブロンの街で、右に行けば湖があるファーレンの街。どちらも賑やかでいい街だぞ。ああ……領主も話のわかる人物だ」
「領主様って、貴族ですか?」
兄の問いかけにシルビオさんは頷いた。イルブロンの街を治めるのは侯爵家で、ファーレンの街を治めるのは伯爵家。そうか……王政の国だもん、貴族もいるよね。顔を合わすことはなないだろうけど、なんとなく面倒だな。
「王都はノルトライン。美しい街並みで美食の都だ! ここが一番のお勧めだが……宿代が高い」
「ああ~」
そりゃ国の中心地だもん。地価が高いのは当たり前。それだけでなく物価も高いだろう。仕事も多いだろうけど、悪い奴もいそうだ。詐欺とか詐欺とか詐欺とか。
「王都を過ぎたところでは、公爵家が治めるシュタットの街も歴史があっていい落ち着くいい街だぞ。あとは……東側に海の街、フォルハイムがある。ただ、冒険者への依頼も海に関わることが多いから、アオイたちには荷が重いかもしれん」
海か~。島国出身としては海には心魅かれるものがあるけど、冒険者としての仕事はこなせそうもないし、こっちの世界は生で魚を食べる文化があるのかわからない。あと、姉が下を向いてグヒグヒと気持ち悪い笑いをもらしているのが気になる。「クラーケンが……。リヴァイアサンが……」と呟いてるけど、それ魔物の名前? なんかヤバそうだから、海には近づかないようにしよう。
「……とりあえず、リンゲンの街は素通りして、ここ、イルブロンの街を目指します。妹二人にとって安全なところがいいので」
兄はリンゲンの街は血の気の多い男の街と認識してしまったようで、私たちの安住の地候補からあっさりと外した。
「いいのではないでしょうか? リンゲンの街は住みやすいとは言えません。イルブロンの街は他国からの商人や冒険者も訪れるダンジョンの街ですし」
……へ?
「ダンジョン!」
やっべ、姉のテンションが爆上がりした!
「お、お姉ちゃん。ダンジョンとか危ないんじゃないの? 下手なところには近づかないほうがいいよ」
つんつんと袖を引っ張ってその勢いを制止しようと思ったが、グルンとこちらを向いた姉の顔はもうダメだった。儚い系の美女のくせに目が血走っている。
「菊華ちゃん! 何を悠長なことを言っているの? わたしたちはレベルを上げないとダメなのよ? せっかくもらったスキルを使いこなせないでしょう?」
「……っぐ」
珍しいことに姉が正論を言った! 兄も私の隣で驚いている。小次郎はさりげなく姉の隣に陣取り、そっとダンジョンのある街へ行くことに賛成の意思を示しているみたい。
「ぐぐぐ~っ。イルブロンの街には行くけど、そこに定住するかどうかはまだわからないからね!」
そうよ、異世界に来たんだもの。いろいろなところを巡って、それから決めても遅くはない。
「じゃあ、俺たちはアオイたちをイルブロンの街まで送っていこうとしよう」
シルビオさんではなく、レオンさんが微笑んで、そう約束してくれた。レーゲンもこっちを見てうんうんと頷いているけど、アンタの背中には二度と乗らないからね!
「まさか、例の霊峰!」
竜人族がドラゴンと生活しているという幻の! さっきシルビオさんに教えてもらった知識です。
「ちがう。俺たちはもっと北に住んでいる」
「あ、そうですか……」
しょぼん。覚えたての知識を披露したつもりだったのに、間違っていたとは。地理、苦手なんだよなぁ。
「アオイたちの場合は、下手に人が少ないところだったら、返って目立ちそうだな」
シルビオさんが顎に手をあてて考えていると、オリビアさんがバサッと地図を広げた。
「これは私たちが書きこんで作ったフュルト国の地図です。美味しいお店や安くていい宿、質のいい武器防具屋が書かれています」
「わぁっ、すごっ」
いいなぁ、これ。簡単にコピーとかできないかな? でも、冒険者が自分で書きこんで作った地図は非売品だし、仲間以外には見せないんだって。
ここアーゲン国と接している街、マクデルは国境ということもあってほぼ森林。森の中の小さな街。冒険者ギルドはあるし、森林には魔獣もいて冒険者の往来はかなりある。街も冒険者向けの店や宿が多いそうだ。
「マクデルで冒険者登録は済ませておこう。で、一泊したら出発だ」
シルビオさんの決定に「ライゼ」の皆さんから反対意見はでなかった。当然、お荷物である橘一家も反対はしません。もっとゆっくりしたい気持ちはあるけど、シルビオさんたちが一緒にいてくれる間に、安全地帯へ辿り着きたいのである。
「マクデルを出て真っ直ぐ北上すると、ここリンゲンの街に着く。ここは鉱山があって細工が盛んだ。職人になるならここだが……。う~む」
目を瞑って考えこんじゃったシルビオさんの肩を、レオンさんが軽く叩く。
「ここは鉱山夫や細工師、宝飾店から雑貨店まであるから、仕事には就きやすいが、冒険者への依頼は討伐系が多い。アオイたちには無理だ」
「そうだな……」
あと、カルラさんの情報では、治安もあまりよくないみたい。酒飲みが多くて酔っ払いに絡まれることもあるとか。酔っ払いか……姉が危ないな。
「ここから真っ直ぐ王都方向へ進めばイルブロンの街で、右に行けば湖があるファーレンの街。どちらも賑やかでいい街だぞ。ああ……領主も話のわかる人物だ」
「領主様って、貴族ですか?」
兄の問いかけにシルビオさんは頷いた。イルブロンの街を治めるのは侯爵家で、ファーレンの街を治めるのは伯爵家。そうか……王政の国だもん、貴族もいるよね。顔を合わすことはなないだろうけど、なんとなく面倒だな。
「王都はノルトライン。美しい街並みで美食の都だ! ここが一番のお勧めだが……宿代が高い」
「ああ~」
そりゃ国の中心地だもん。地価が高いのは当たり前。それだけでなく物価も高いだろう。仕事も多いだろうけど、悪い奴もいそうだ。詐欺とか詐欺とか詐欺とか。
「王都を過ぎたところでは、公爵家が治めるシュタットの街も歴史があっていい落ち着くいい街だぞ。あとは……東側に海の街、フォルハイムがある。ただ、冒険者への依頼も海に関わることが多いから、アオイたちには荷が重いかもしれん」
海か~。島国出身としては海には心魅かれるものがあるけど、冒険者としての仕事はこなせそうもないし、こっちの世界は生で魚を食べる文化があるのかわからない。あと、姉が下を向いてグヒグヒと気持ち悪い笑いをもらしているのが気になる。「クラーケンが……。リヴァイアサンが……」と呟いてるけど、それ魔物の名前? なんかヤバそうだから、海には近づかないようにしよう。
「……とりあえず、リンゲンの街は素通りして、ここ、イルブロンの街を目指します。妹二人にとって安全なところがいいので」
兄はリンゲンの街は血の気の多い男の街と認識してしまったようで、私たちの安住の地候補からあっさりと外した。
「いいのではないでしょうか? リンゲンの街は住みやすいとは言えません。イルブロンの街は他国からの商人や冒険者も訪れるダンジョンの街ですし」
……へ?
「ダンジョン!」
やっべ、姉のテンションが爆上がりした!
「お、お姉ちゃん。ダンジョンとか危ないんじゃないの? 下手なところには近づかないほうがいいよ」
つんつんと袖を引っ張ってその勢いを制止しようと思ったが、グルンとこちらを向いた姉の顔はもうダメだった。儚い系の美女のくせに目が血走っている。
「菊華ちゃん! 何を悠長なことを言っているの? わたしたちはレベルを上げないとダメなのよ? せっかくもらったスキルを使いこなせないでしょう?」
「……っぐ」
珍しいことに姉が正論を言った! 兄も私の隣で驚いている。小次郎はさりげなく姉の隣に陣取り、そっとダンジョンのある街へ行くことに賛成の意思を示しているみたい。
「ぐぐぐ~っ。イルブロンの街には行くけど、そこに定住するかどうかはまだわからないからね!」
そうよ、異世界に来たんだもの。いろいろなところを巡って、それから決めても遅くはない。
「じゃあ、俺たちはアオイたちをイルブロンの街まで送っていこうとしよう」
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