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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ
勇者旅立 ⑦
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異世界での目的地(暫定)が決まった。フュルト国まで辿り着けるかどうか不安だったころに比べれば、なんて進歩なの! 相変わらず、生活の基盤の見通しは立ってないけど。
しかも、フュルト国イルブロンの街まで、高ランク冒険者パーティー「ライゼ」が同行してくれる。これは旅の安全が保障されたも同然よ! 注意することは、ドラゴンの背にうっかり乗らないこと。経験豊富で年長のヴィントはいいけど、まだ子どものレーゲンには要注意!
「明日、マクデルの街でアオイたちの冒険者登録を済ませ、ワイバーンの素材を売買してもらう。そうすれば、所持金の問題も解決するが……、そのあと仕事の伝手はあるのか?」
シルビオさんの質問に、大人組である兄と姉、私は俯いてしまう。あっちの世界での職業経験なんて異世界では通用しない。私だって飲食店でバイトをしたことぐらいはあるけど、こっちの世界の飲食店で通用するのか? そもそも料理名とか一緒なのか? ドリンクは? 常識がないから、仕事にありつけても無能扱いされてクビになる気がする。
一応、私と兄は冒険者登録をして、街のお手伝いレベルの依頼はこなそうと考えているけど、それだけでは収入が心許ないというし……。あと、トラブルメーカーの姉を放っておくのは怖い。難民キャンプのときだって、姉が一人でノイス国の文官に交って仕事しているの、心臓に悪かったんだから。
「……ないです。そもそも、俺たちは田舎で細々と暮らしていたので……、働いたことがないです」
兄がちょっと本当のことを混ぜて嘘を吐くと、カルラさんとオリビアさんが納得顔で頷いた。
「そうね……世間知らずだわ」
「田舎から街に出てきてカモにされるパターンだな」
ヒドイな。でも、定できない。兄の料理の腕だったらどこかの店で働けるかもしれないけど、シルビオさんの話では料理人を雇う店はそれなりに敷居の高い店で、働くには身元保証人が必要とのこと。小さな店のほとんどは家族経営で営んでおり雇われ人はいない。他に料理人としての働き口は兵舎や商会の寮、裕福な平民の屋敷などなど。
「あ~、雇われるまでもハードルが高いですけど、あれですね? 終身雇用みたいな?」
兄の言葉にシルビオさんは首を傾げたが、聞きたいことがわかったらしく眉を寄せて変な顔をした。
「せっかく雇われて安定した生活ができるのに、そんなにすぐ辞めるつもりなのか? 次の働き口の紹介状をもらうのもたいへんなんだぞ?」
……うむ、就職するのは難しそう。どこか定住できる場所を見つけてから働き口を探しましょう。移動している間は、冒険者の依頼と日雇いみたいな仕事で乗り切るしかないわ。
「……日雇いか? 子ども連れで? アオイの細腕で?」
前途多難。
「あのぅ……。わたしたちお金はあるんです」
「お姉ちゃん!」
モゴッと姉の口を手で塞いだが、遅かったか……。しかし、兄が苦笑しつつ続きをペロッと話してしまう。な~ん~で~っ。
「実は田舎から出てくるとき、持ちだしたお金はあるんですけど……大金貨でして」
大金貨という言葉にカルラさんは口笛を吹き、オリビアさんは微笑みを深くした、レオンさんは我関せず、シルビオさんは無反応。さすが、高ランク冒険者パーティーとなれば大金貨なぞ見慣れているのですね!
「そのまま大金貨一枚、そう手軽に支払いに使えるものでなく……困ってます」
たははっと頭を掻きながら情けなく笑えば、私と姉も愛想笑いで倣う。小次郎は……うん、神妙な顔をしてなさい。
「あ、そうか。冒険者登録してないから、口座が使えないんだね? そりゃ、屋台とかに大金貨出したら困るよねぇ」
にゃあんと声が聞こえてきそうな顔で同情してくれるカルラさんに対して、オリビアさんは辛辣に言い切った。
「あら、大金貨にまとめておくのがそもそも間違いでしょう? せめて金貨か大銀貨にしておけばよろしかったのに」
本当にね! この世界の神さまに言ってやってください!
「……じゃあ冒険者登録したら、すぐに口座を作って入金しておけ。そうすれば、支払いは冒険者カードで済ませられる。小店や露店用に多少は手元に残しておけよ」
「はい」
「ワイバーンの金も入ってくるから……しばらくは生活できるか? アオイたちがフュルト国に慣れるまでは大丈夫そうだな。金があるうちに、自分に何ができるかいろいろと試してみればいい」
シルビオさんは優しく兄の肩を叩くと、あとの細かい生活レベルの話はカルラさんたちに任せたと、テントへ引っ込んでいった。今日の夜の見張りはシルビオさんとレオンさんが交代で行うから、早めに眠るのだろう。
「じゃあ、あとは私たちから……」
このあと、屋台での買い物、店での買い物、食事、宿の確保から宿での生活、馬車や馬の借り方などなど、細かいことをレクチャーしてもらった。……メ、メモが書きたかった。でも、まだこっちの字を書くことに慣れてないから、必要なメモ書きは姉に任せました。自動翻訳書記ってちょっと手がぞわぞわとするのよね。
「明日はマクデルの街へ行くわよ。アオイたちは見張りはいいから、ゆっくり休んでね」
尻尾をご機嫌に揺らしたカルラさんに見送られて、橘一家はテントへと。本当はドラゴンのヴィントがいるから見張りをしなくても危険が近づいたらすぐにわかるそう。
ん~、危険察知用にドラゴンって便利かも……。
しかも、フュルト国イルブロンの街まで、高ランク冒険者パーティー「ライゼ」が同行してくれる。これは旅の安全が保障されたも同然よ! 注意することは、ドラゴンの背にうっかり乗らないこと。経験豊富で年長のヴィントはいいけど、まだ子どものレーゲンには要注意!
「明日、マクデルの街でアオイたちの冒険者登録を済ませ、ワイバーンの素材を売買してもらう。そうすれば、所持金の問題も解決するが……、そのあと仕事の伝手はあるのか?」
シルビオさんの質問に、大人組である兄と姉、私は俯いてしまう。あっちの世界での職業経験なんて異世界では通用しない。私だって飲食店でバイトをしたことぐらいはあるけど、こっちの世界の飲食店で通用するのか? そもそも料理名とか一緒なのか? ドリンクは? 常識がないから、仕事にありつけても無能扱いされてクビになる気がする。
一応、私と兄は冒険者登録をして、街のお手伝いレベルの依頼はこなそうと考えているけど、それだけでは収入が心許ないというし……。あと、トラブルメーカーの姉を放っておくのは怖い。難民キャンプのときだって、姉が一人でノイス国の文官に交って仕事しているの、心臓に悪かったんだから。
「……ないです。そもそも、俺たちは田舎で細々と暮らしていたので……、働いたことがないです」
兄がちょっと本当のことを混ぜて嘘を吐くと、カルラさんとオリビアさんが納得顔で頷いた。
「そうね……世間知らずだわ」
「田舎から街に出てきてカモにされるパターンだな」
ヒドイな。でも、定できない。兄の料理の腕だったらどこかの店で働けるかもしれないけど、シルビオさんの話では料理人を雇う店はそれなりに敷居の高い店で、働くには身元保証人が必要とのこと。小さな店のほとんどは家族経営で営んでおり雇われ人はいない。他に料理人としての働き口は兵舎や商会の寮、裕福な平民の屋敷などなど。
「あ~、雇われるまでもハードルが高いですけど、あれですね? 終身雇用みたいな?」
兄の言葉にシルビオさんは首を傾げたが、聞きたいことがわかったらしく眉を寄せて変な顔をした。
「せっかく雇われて安定した生活ができるのに、そんなにすぐ辞めるつもりなのか? 次の働き口の紹介状をもらうのもたいへんなんだぞ?」
……うむ、就職するのは難しそう。どこか定住できる場所を見つけてから働き口を探しましょう。移動している間は、冒険者の依頼と日雇いみたいな仕事で乗り切るしかないわ。
「……日雇いか? 子ども連れで? アオイの細腕で?」
前途多難。
「あのぅ……。わたしたちお金はあるんです」
「お姉ちゃん!」
モゴッと姉の口を手で塞いだが、遅かったか……。しかし、兄が苦笑しつつ続きをペロッと話してしまう。な~ん~で~っ。
「実は田舎から出てくるとき、持ちだしたお金はあるんですけど……大金貨でして」
大金貨という言葉にカルラさんは口笛を吹き、オリビアさんは微笑みを深くした、レオンさんは我関せず、シルビオさんは無反応。さすが、高ランク冒険者パーティーとなれば大金貨なぞ見慣れているのですね!
「そのまま大金貨一枚、そう手軽に支払いに使えるものでなく……困ってます」
たははっと頭を掻きながら情けなく笑えば、私と姉も愛想笑いで倣う。小次郎は……うん、神妙な顔をしてなさい。
「あ、そうか。冒険者登録してないから、口座が使えないんだね? そりゃ、屋台とかに大金貨出したら困るよねぇ」
にゃあんと声が聞こえてきそうな顔で同情してくれるカルラさんに対して、オリビアさんは辛辣に言い切った。
「あら、大金貨にまとめておくのがそもそも間違いでしょう? せめて金貨か大銀貨にしておけばよろしかったのに」
本当にね! この世界の神さまに言ってやってください!
「……じゃあ冒険者登録したら、すぐに口座を作って入金しておけ。そうすれば、支払いは冒険者カードで済ませられる。小店や露店用に多少は手元に残しておけよ」
「はい」
「ワイバーンの金も入ってくるから……しばらくは生活できるか? アオイたちがフュルト国に慣れるまでは大丈夫そうだな。金があるうちに、自分に何ができるかいろいろと試してみればいい」
シルビオさんは優しく兄の肩を叩くと、あとの細かい生活レベルの話はカルラさんたちに任せたと、テントへ引っ込んでいった。今日の夜の見張りはシルビオさんとレオンさんが交代で行うから、早めに眠るのだろう。
「じゃあ、あとは私たちから……」
このあと、屋台での買い物、店での買い物、食事、宿の確保から宿での生活、馬車や馬の借り方などなど、細かいことをレクチャーしてもらった。……メ、メモが書きたかった。でも、まだこっちの字を書くことに慣れてないから、必要なメモ書きは姉に任せました。自動翻訳書記ってちょっと手がぞわぞわとするのよね。
「明日はマクデルの街へ行くわよ。アオイたちは見張りはいいから、ゆっくり休んでね」
尻尾をご機嫌に揺らしたカルラさんに見送られて、橘一家はテントへと。本当はドラゴンのヴィントがいるから見張りをしなくても危険が近づいたらすぐにわかるそう。
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