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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ
勇者旅立 ⑨
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無事に兄と冒険者登録を済ませた私たちの手には、クレジットカードみたいな金属製のギルドカードがある。色は鈍い銅色。チラリとシルビオさんとレオンさんのギルドカードを見せてもらったら、金色だった。どうやらランクによって色が変わるらしい。最高ランクは黒色、次は金、その次は銀……最低ランクと見習いは銅色で私と兄のギルドカードである。
ギルドに登録したら永久的に所属できるわけではなく、決められた期間中に決められた回数の依頼をこなし、実績を積む必要がある。この期間や依頼回数はランクが上がれば条件が緩くなり、シルビオさんたちは無期限で必要な依頼回数もないけど、緊急招集には応えないとダメ。これはスタンピードや凶悪な魔獣討伐隊の際、高ランク冒険者にかけられる招集らしい。
私たちは冒険者成り立てほやほやだから緊急招集されることはないけど、定期的に依頼をこなさないと失効されてしまうのだ。ギルドカードの色なんてどうでもいいの。ちょっと銀色がいいなぁと思ってもね。
冒険者ギルドに出入りしているあらゆる種族の人に興味を引かれ挙動不審な姉を連れ、シルビオさんたちと一緒に外に出たらもうお昼を過ぎていた。
「リーダー。どっかでご飯食べていく?」
目を瞑りヒクヒクと鼻を動かすカルラさんに、シルビオさんは腕を組んでう~んと考えてしまう。
「このままマクデルを出てイルブロンの街に向かうか……。昼飯は……どうするか……」
そんなお昼ご飯のことで、世界が終わるみたいな苦悶の表情を浮かべなくてもいいと思うのですが? でも、「ライゼ」の皆さんが同じ表情で迷っておられる。
「屋台で買ってヴィントの背で食べればいいのでは?」
兄の何気ない一言に、みんなの眼がグワッと開く。……いやいや、長い冒険者生活でこんな簡単なことも気が付かなかったの? 大丈夫?
「では、それぞれ屋台で食いたいものを買い、冒険者ギルド前に集合だ。時間はそうだな、あの時計塔の短い針が反対側を指すまでだ」
シルビオさんが指で示したのは、冒険者ギルドの上にある時計。見慣れた形だし、時計の読み方も同じみたい。短針が真反対を指すまでということは、三〇分ぐらいかな?
「お兄ちゃん、私たちはどうする?」
「バラバラに動いたらとんでもないことになると思う。一緒に屋台を見にいこう」
はい、賛成です。小次郎もニッコリ笑って私の手を握っているので、不満はない。姉? なんかギャーギャー言っているけど無視。あんたが一番、迷子になりそうだから、大人しく言うこと聞きなさい!
時間どおりに集合した私たちは、そのままマクデルの街を出た。短い滞在時間だったけど、私は忘れない。だって、ここで冒険者登録したんだもん。生活に余裕ができれば、再び訪れたいものである。
「……なぜ、言うことをきかない?」
レオンさんが元の大きさに戻ったレーゲンを前に腕組みして困っている。それもそのはず。レーゲンはまた私をその背に乗せて飛びたいと我儘を言い出したからだ。本当に止めていただきたい。
私はなるべくレーゲンの視界に入らないように、ヴィントの体に隠れる。不思議そうに私を見るヴィントだが、あなたもレーゲンのお母さんなら子どもの我儘を諫めてほしい。切実に。
「……レーゲンが小さくなって、一緒にヴィントの背に乗ればいいんじゃないか?」
両手に串焼きやらスープやら昼食を持った兄が首を傾げて提案すると、レーゲンは口をパカリと開けて驚いた。……そう、そんな簡単なことに気が付かなかったのね? あれ? レオンさんたち「ライゼ」って冒険者仲間でも有名な高ランク冒険者パーティーなんだよね? だ、大丈夫なのかな?
「よし、レーゲンは小さくなってレオンが抱えておけ。それじゃ、ヴィントに乗って移動するぞ。メシを食いながらこれからのことを少し話そう」
シルビオさんが満足そうに頷くと、私たちはヴィントの背に乗る。前回、必死な形相でよじ登った私たちを憐れんでか、ヴィントが少し小さくなってくれた。私たちが登ったあとは元の大きさに戻ったけど……レオンさんたちはヒラリヒラリと軽い足さばきで登ってくるんだよなぁ。
ヴィントが軽い動作で浮遊したら、お昼ご飯タイムです。姉が大人しいのはお腹が空きすぎて省エネモードに入ったからです。ほら、肉でもお食べ。
「イルブロンの街へ向かうが、街から徒歩で二~三日程度の場所でヴィントからは下りるぞ」
シルビオさんの発言に橘一家は衝撃を受ける。希少種のドラゴニュートである美丈夫なシルビオさんの口に肉串のタレが付いているからではなく、イルブロンの街に着く前に「ライゼ」とはお別れだと思ったからだ。
そ、そんなぁ……。そりゃ、ほとんど初対面の皆さんにいろいろと面倒をみてもらったとは思うけど……身寄りも親戚もない異世界だから、できればイルブロンの街に入るまでは同行してほしかった……。
「キッカ。そんな泣きそうな顔をするな。ちゃんと俺たちはイルブロンの街まで付き合うぞ」
「……アオイたちは旅の仕方もわからないだろう? もしイルブロンの街で仕事が見つからなかったら、他の街へ移動するのに今のままだと心配だからな。俺たちがいる間に野営のことを教えておこうと思って」
シ、シルビオさーん。あんた、本当にイイ人だよおおぉぉぉっ。今日から心の中でアニキって呼びます!
ギルドに登録したら永久的に所属できるわけではなく、決められた期間中に決められた回数の依頼をこなし、実績を積む必要がある。この期間や依頼回数はランクが上がれば条件が緩くなり、シルビオさんたちは無期限で必要な依頼回数もないけど、緊急招集には応えないとダメ。これはスタンピードや凶悪な魔獣討伐隊の際、高ランク冒険者にかけられる招集らしい。
私たちは冒険者成り立てほやほやだから緊急招集されることはないけど、定期的に依頼をこなさないと失効されてしまうのだ。ギルドカードの色なんてどうでもいいの。ちょっと銀色がいいなぁと思ってもね。
冒険者ギルドに出入りしているあらゆる種族の人に興味を引かれ挙動不審な姉を連れ、シルビオさんたちと一緒に外に出たらもうお昼を過ぎていた。
「リーダー。どっかでご飯食べていく?」
目を瞑りヒクヒクと鼻を動かすカルラさんに、シルビオさんは腕を組んでう~んと考えてしまう。
「このままマクデルを出てイルブロンの街に向かうか……。昼飯は……どうするか……」
そんなお昼ご飯のことで、世界が終わるみたいな苦悶の表情を浮かべなくてもいいと思うのですが? でも、「ライゼ」の皆さんが同じ表情で迷っておられる。
「屋台で買ってヴィントの背で食べればいいのでは?」
兄の何気ない一言に、みんなの眼がグワッと開く。……いやいや、長い冒険者生活でこんな簡単なことも気が付かなかったの? 大丈夫?
「では、それぞれ屋台で食いたいものを買い、冒険者ギルド前に集合だ。時間はそうだな、あの時計塔の短い針が反対側を指すまでだ」
シルビオさんが指で示したのは、冒険者ギルドの上にある時計。見慣れた形だし、時計の読み方も同じみたい。短針が真反対を指すまでということは、三〇分ぐらいかな?
「お兄ちゃん、私たちはどうする?」
「バラバラに動いたらとんでもないことになると思う。一緒に屋台を見にいこう」
はい、賛成です。小次郎もニッコリ笑って私の手を握っているので、不満はない。姉? なんかギャーギャー言っているけど無視。あんたが一番、迷子になりそうだから、大人しく言うこと聞きなさい!
時間どおりに集合した私たちは、そのままマクデルの街を出た。短い滞在時間だったけど、私は忘れない。だって、ここで冒険者登録したんだもん。生活に余裕ができれば、再び訪れたいものである。
「……なぜ、言うことをきかない?」
レオンさんが元の大きさに戻ったレーゲンを前に腕組みして困っている。それもそのはず。レーゲンはまた私をその背に乗せて飛びたいと我儘を言い出したからだ。本当に止めていただきたい。
私はなるべくレーゲンの視界に入らないように、ヴィントの体に隠れる。不思議そうに私を見るヴィントだが、あなたもレーゲンのお母さんなら子どもの我儘を諫めてほしい。切実に。
「……レーゲンが小さくなって、一緒にヴィントの背に乗ればいいんじゃないか?」
両手に串焼きやらスープやら昼食を持った兄が首を傾げて提案すると、レーゲンは口をパカリと開けて驚いた。……そう、そんな簡単なことに気が付かなかったのね? あれ? レオンさんたち「ライゼ」って冒険者仲間でも有名な高ランク冒険者パーティーなんだよね? だ、大丈夫なのかな?
「よし、レーゲンは小さくなってレオンが抱えておけ。それじゃ、ヴィントに乗って移動するぞ。メシを食いながらこれからのことを少し話そう」
シルビオさんが満足そうに頷くと、私たちはヴィントの背に乗る。前回、必死な形相でよじ登った私たちを憐れんでか、ヴィントが少し小さくなってくれた。私たちが登ったあとは元の大きさに戻ったけど……レオンさんたちはヒラリヒラリと軽い足さばきで登ってくるんだよなぁ。
ヴィントが軽い動作で浮遊したら、お昼ご飯タイムです。姉が大人しいのはお腹が空きすぎて省エネモードに入ったからです。ほら、肉でもお食べ。
「イルブロンの街へ向かうが、街から徒歩で二~三日程度の場所でヴィントからは下りるぞ」
シルビオさんの発言に橘一家は衝撃を受ける。希少種のドラゴニュートである美丈夫なシルビオさんの口に肉串のタレが付いているからではなく、イルブロンの街に着く前に「ライゼ」とはお別れだと思ったからだ。
そ、そんなぁ……。そりゃ、ほとんど初対面の皆さんにいろいろと面倒をみてもらったとは思うけど……身寄りも親戚もない異世界だから、できればイルブロンの街に入るまでは同行してほしかった……。
「キッカ。そんな泣きそうな顔をするな。ちゃんと俺たちはイルブロンの街まで付き合うぞ」
「……アオイたちは旅の仕方もわからないだろう? もしイルブロンの街で仕事が見つからなかったら、他の街へ移動するのに今のままだと心配だからな。俺たちがいる間に野営のことを教えておこうと思って」
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