迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~

沢野 りお

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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

勇者挑戦 ⑨

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異世界に勇者召喚された橘一家と出会ったのが運の尽き? 高ランク冒険者パーティー「ライゼ」は、こちらの常識も持ってない私たちのフォローをするべくフュルト国のイルブロンの街まで同行してくれ、初心者冒険者の教育のためダンジョン探索にまで付き合ってくれた。冒険者として登録した兄と私以外にも、しょぼい治癒魔法しかない姉と勇者としてポテンシャルは高いがレベルが低い小次郎と共にダンジョンへ!

予定では夕方までにはダンジョンから出て、「ライゼ」の皆さんとお別れするはずでしたが、私と小次郎がうっかり転移トラップにひっかかり、ダンジョンボスが待つ部屋へ強制移動され、二人ともボスは倒せたが魔力切れでぶっ倒れた。
結果、「ライゼ」の皆さんは出立をズラし、今夜はダンジョン近くの野営地で過ごすことになりました。

「うう……すみません。ご迷惑をおかけしました」

出会ってから迷惑しかかけてないけど……そのお返しがいつできるかわからないけど……いまの私には頭を下げて謝ることしかできないのです。

私の唐突な謝罪に、兄お手製のポトフを食べていた「ライゼ」の皆さんは食材を齧りついたまま首を傾げた。極厚ベーコンのシルビオさんとレオンさんはいいとして、芋で頬をいっぱいにしているカルラさんと、口からブロッコリーを生やしているオリビアさんは少し落ち着いて食べてください。

「うんぐっ。キッカ、トラップにかかるのは運の問題だ。謝ることはない」

口の端を汚したレオンさんがキリッとした顔で慰めてくれる。

「運だけで片付けるな。まぁ、今回はキッカのせいではない。むしろこちらの不注意だ。すまなかった」

大きなベーコンを素早く咀嚼したシルビオさんは、ペコリとこちらへ頭を下げた。ひえぇぇっ、悪いのはこちらです。謝らないでください。兄と一緒にシルビオさんと謝罪合戦が始まろうとしたそのとき、カルラさんとオリビアさんの会話が聞こえてきた。

「よかったわよ、しょぼいダンジョンで経験できて」

「そうよね。これがダンジョンに慣れたころだったら格上すぎるボスに手も足もでないで、この世とさようならよ?」

ウフフ、アハハと笑い合う二人の姿に、私は口から魂が抜けてしまった。そ……そんな危険なダンジョンなんて、もう二度と行かないからね!

こうして、「ライゼ」の皆さんに最後の最後まで面倒をみてもらい、翌朝ドラゴンの背に乗って去り行くみんなを見送った。

「とりあえず、街に帰るか?」

兄の疲れた顔を見て私たちは苦笑して頷いた。街に帰って宿に帰り、ちょっと休んだあとに例のことを話そう。私はそっと布バッグに括りつけた編みぐるみを撫でた。
































じゅ、熟睡してしまった。

街に戻り、宿までの道すがら朝ご飯にと屋台で買い食いしつつ、宿に着いてからは順番にお風呂に入り仮眠をとることにしたけど、びっくりするぐらい熟睡してしまった……。

「菊華ちゃん、疲れてたのよ」

姉が美しい慈愛の微笑みで頭を撫でてくれるけど、小次郎がすでに起きて兄の手伝いをしている姿を見てしまったら、大人として恥ずかしい。
くっ、すべてあのブタもどきが悪いのよっ。

「お、菊華、起きてきたか。ちょうどいい昼飯だぞ」

「……はぁい」

ご飯を食べてるときに話す内容じゃないかもしれないけど、橘家のコミュニケーションはいつもご飯どきなのです。

「で、菊華と小次郎が閉じ込められたボス部屋で、活躍したのがそこの……ぬいぐるみ?」

兄がチュルンとパスタを口に入れて、まじまじとテーブルの上に置いた編みぐるみを眺める。昨日の闘いで付いた血のあとは兄の生活魔法でキレイになっていた。便利な生活魔法が羨ましい。

「こんなにかわいいのに強いの? そもそも大きさが……」

姉が両手でパンを持ってはむっと噛む。相変わらずひと口が小さいけど、高速で動くリスみたいな食べ方だ。

「大きくなったのよ。大型犬よりも一回り大きかったかな? ちゃんともふもふの毛もあったし、牙も爪もあったわよ」

パスタの肉団子をフォークで刺してソースをたっぷりと付けて、大口を開けるついでに編みぐるみの大きさについて報告を済ませる。

「すごかったよ。早く動けるし吠えるし。……たぶん菊華ちゃんが命令したら、もっと強くなると思う」

口の周りを赤く汚した小次郎が恐ろしいことを言う。やめて! 編みぐるみが私の魔力で動くというのも考えたくないのに、私が命令するなんて無理だよっ。

「神さまからもらった「手芸創作」のスキルか……。菊華、あとでこいつに魔力を渡して動かしてみてくれ」

「え?」

ちょっと待って。あのときはなんで編みぐるみが動いたのかわからないんですけど? 兄や姉と違い普段使いの魔法スキルがないから、魔力を渡すってどうやるの?

「菊華ちゃん、もしかして、他にも編みぐるみを作ったら動くのかしら? だったらもっと仲間を増やさない?」

姉もとんでもないことを言い出した。ふんすふんすとオレンジジュース片手に顔を近づけるのやめて。あと、異世界もので有名であろう動物の名前を連呼するのもやめて。フェンリルなんて見たことないから作れないわよ!

「馬があれば移動が楽だな」

兄よ、お前もか!

「ドラゴンだったら、シルビオさんたちみたいに空を飛べるかもね!」

小次郎ーっ!
あのね、それは全部、私の魔力で動くんでしょう? 私の魔力の量も考えてくれーっ!
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