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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ
勇者仲間 ①
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結果、どこぞの貴族のお嬢さんが投げつけた手袋を解いて作った編みぐるみは大きくなりませんでした。
だって、魔力を渡すってどうやるの?
「ダンジョンでは大きくなって動いたんだろう?」
「気が付いたらそうだったの。お兄ちゃんは私にもう一度、あんな目に遭えって言いたいの?」
あのね? 危機一髪の状況で、万事休すの二人は、絶体絶命だったんですよ?
「魔法を使うみたいに魔力を意識して……」
「そもそも、魔力なんて感じないって。体の中にそんな異物があるなんて信じられないよ」
姉からの言葉に私は叫ぶように言い放った。
「……でも、小次郎は聖剣に魔力を注ぐことができたんだよな?」
そうなのである。小次郎は、あのボスモンスターのブタもどきへの初撃は空振りだったのに、最後の一撃は、聖剣に魔力を注いでスパッとブタもどきを倒したらしい。私はそのとき、魔力切れでダウンしていたので、見てはいない。
「菊華ちゃん、魔力わからないの?」
やめて、そんな純真な瞳で私を見ないで! いやぁ、フツーわからないでしょ? 兄や姉みたいに日常使いの魔法じゃないし。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、最初はどうやったの?」
異世界から来たスタートは一緒のはずだから、兄と姉が魔法を行使できるようになったやり方を教えてください。
「いやぁ、桜がな、魔力は全身に流れている血と同じだって言うから」
「血? は? 魔力って血管から流れてんの?」
「あと……桜さんがお腹の下の方に力を感じるって」
小次郎は自分のお腹に手を当てて「ここ」と教えてくれた。……姉からの情報って、それ正しいの?
「お姉ちゃん?」
「異世界ものファンタジーではド定番なのよ。力はだいたい丹田にあって、魔力は血が流れていることを意識すると感知することができるの!」
パンッと両手を叩いて嬉しそうに話すが、それはフィクションの世界の常識では?
「菊華、騙されたと思ってやってみろ。俺もそうだったし、小次郎もそうだったから」
「……はぁ~い」
そんなことで魔法が使えるようになって、編みぐるみが動くようになるなら、神様なんていらないのよ……。
……できてしまった。
なんなの? 魔力を感じるってそんな簡単なの? 血の巡りなんて感じたことないって兄に言ったら「息を止めろ」って助言されて、呼吸止めること数十秒……ハーッ、ハーッ、死ぬっと深呼吸する私の首筋に手を当てた兄はにんまりと笑った。確かに、そこはドクドクと血が流れているけど、こんな苦しい思いしないとダメだったの?
そして、なんだかんだで編みぐるみに魔力を注ぐと、白い犬はぴょこりと起き上がり、兄と姉の匂いをフンフンと嗅いだ。
「おおーっ。かわいいな。大きさは変わらないけど」
「たぶん菊華ちゃんが注いだ魔力が少ないからだと思う」
小次郎は冷静に分析しているようで、目はちょこちょこ動く犬に釘付けだ。もしかして、かわいいもの好きだったりした?
「この子……もしかしてフェンリル?」
姉よ、顔が近いって!
「違うわよ。どう見ても犬でしょ? ワンちゃんだよ」
私の言葉を聞いて、兄の手と戯れていた動く編みぐるみは、こちらにくるりと顔を向けて情けない顔で泣いた。
「くぅ~ん」
兄と姉は「わあっ、鳴いた」と大はしゃぎだが、小次郎はちょっと怒った顔で私を叱る。
「だから菊華ちゃん。この子はオオカミだってば。ちゃんと僕の鑑定に出てるんだから。かわいそうだから、犬って呼ばないで」
「はい、すみません」
いや、でもね? 作成者の私は犬のつもりで編んだんですけど? はい、まぁいいですよオオカミで。フェンリルではないと思うが。
「ねぇ、菊華ちゃん。この子の名前はどうするの?」
「……ぬいぐるみに名前付けるの?」
姉は何を言い出したのか? そりゃ、お互い幼いときはぬいぐるみに名前を付けて可愛がったけど、この年齢でぬいぐるみに名前付けるのは、ちょっと恥ずかしいですよ?
「名前を付けると契約ができて、菊華ちゃんとこの子の絆が深くなるのよ。それぐらい、異世界での名づけって大事なの」
「だから、それは物語の中の設定でしょ? このぬいぐるみに名前付けても、私との繋がりなんてできないでしょ?」
私はとっても常識的なことを言っているのに、はむはむと右手を編みぐるみの犬、じゃなかったオオカミが甘噛みするから、ちょっと説得力がないな。
「菊華、試しに付けてみろよ。もしかしたら、何か変化があるかも。だってコイツ、お前の魔力で動いてるんだろう?」
兄の言うことも一理ある。小次郎を窺うと、ワクワクとした表情で私を見ている。
「名前……シロとかチビとかはダメよねぇ?」
候補に上げた名前に、兄と姉、小次郎まで揃って頭を横に振った。私のネーミングセンスよ……。あと、さりげなく項垂れて名前を拒否るぬいぐるみの姿にも、心が痛むわ。
「どうしようかな? 白い狼の名前ねぇ……」
私はチラッと姉を見る。ここは姉のなんだかわからない異世界知識の使いどころではないのか? 姉よ、オタク知識を唸らせろ。
「そうね、白いし……ブランってどう?」
「……そのままだな」
兄はやや呆れているが、兄のネーミングセンスも私と変わらないようだし、この子の名前はブランで決定。
「よし、じゃあ、あんたはブラン。ブランだからね」
ちょんちょんと人差し指で頭を撫でながら告げると、編みぐるみから眩しい閃光が放たれた。
だって、魔力を渡すってどうやるの?
「ダンジョンでは大きくなって動いたんだろう?」
「気が付いたらそうだったの。お兄ちゃんは私にもう一度、あんな目に遭えって言いたいの?」
あのね? 危機一髪の状況で、万事休すの二人は、絶体絶命だったんですよ?
「魔法を使うみたいに魔力を意識して……」
「そもそも、魔力なんて感じないって。体の中にそんな異物があるなんて信じられないよ」
姉からの言葉に私は叫ぶように言い放った。
「……でも、小次郎は聖剣に魔力を注ぐことができたんだよな?」
そうなのである。小次郎は、あのボスモンスターのブタもどきへの初撃は空振りだったのに、最後の一撃は、聖剣に魔力を注いでスパッとブタもどきを倒したらしい。私はそのとき、魔力切れでダウンしていたので、見てはいない。
「菊華ちゃん、魔力わからないの?」
やめて、そんな純真な瞳で私を見ないで! いやぁ、フツーわからないでしょ? 兄や姉みたいに日常使いの魔法じゃないし。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、最初はどうやったの?」
異世界から来たスタートは一緒のはずだから、兄と姉が魔法を行使できるようになったやり方を教えてください。
「いやぁ、桜がな、魔力は全身に流れている血と同じだって言うから」
「血? は? 魔力って血管から流れてんの?」
「あと……桜さんがお腹の下の方に力を感じるって」
小次郎は自分のお腹に手を当てて「ここ」と教えてくれた。……姉からの情報って、それ正しいの?
「お姉ちゃん?」
「異世界ものファンタジーではド定番なのよ。力はだいたい丹田にあって、魔力は血が流れていることを意識すると感知することができるの!」
パンッと両手を叩いて嬉しそうに話すが、それはフィクションの世界の常識では?
「菊華、騙されたと思ってやってみろ。俺もそうだったし、小次郎もそうだったから」
「……はぁ~い」
そんなことで魔法が使えるようになって、編みぐるみが動くようになるなら、神様なんていらないのよ……。
……できてしまった。
なんなの? 魔力を感じるってそんな簡単なの? 血の巡りなんて感じたことないって兄に言ったら「息を止めろ」って助言されて、呼吸止めること数十秒……ハーッ、ハーッ、死ぬっと深呼吸する私の首筋に手を当てた兄はにんまりと笑った。確かに、そこはドクドクと血が流れているけど、こんな苦しい思いしないとダメだったの?
そして、なんだかんだで編みぐるみに魔力を注ぐと、白い犬はぴょこりと起き上がり、兄と姉の匂いをフンフンと嗅いだ。
「おおーっ。かわいいな。大きさは変わらないけど」
「たぶん菊華ちゃんが注いだ魔力が少ないからだと思う」
小次郎は冷静に分析しているようで、目はちょこちょこ動く犬に釘付けだ。もしかして、かわいいもの好きだったりした?
「この子……もしかしてフェンリル?」
姉よ、顔が近いって!
「違うわよ。どう見ても犬でしょ? ワンちゃんだよ」
私の言葉を聞いて、兄の手と戯れていた動く編みぐるみは、こちらにくるりと顔を向けて情けない顔で泣いた。
「くぅ~ん」
兄と姉は「わあっ、鳴いた」と大はしゃぎだが、小次郎はちょっと怒った顔で私を叱る。
「だから菊華ちゃん。この子はオオカミだってば。ちゃんと僕の鑑定に出てるんだから。かわいそうだから、犬って呼ばないで」
「はい、すみません」
いや、でもね? 作成者の私は犬のつもりで編んだんですけど? はい、まぁいいですよオオカミで。フェンリルではないと思うが。
「ねぇ、菊華ちゃん。この子の名前はどうするの?」
「……ぬいぐるみに名前付けるの?」
姉は何を言い出したのか? そりゃ、お互い幼いときはぬいぐるみに名前を付けて可愛がったけど、この年齢でぬいぐるみに名前付けるのは、ちょっと恥ずかしいですよ?
「名前を付けると契約ができて、菊華ちゃんとこの子の絆が深くなるのよ。それぐらい、異世界での名づけって大事なの」
「だから、それは物語の中の設定でしょ? このぬいぐるみに名前付けても、私との繋がりなんてできないでしょ?」
私はとっても常識的なことを言っているのに、はむはむと右手を編みぐるみの犬、じゃなかったオオカミが甘噛みするから、ちょっと説得力がないな。
「菊華、試しに付けてみろよ。もしかしたら、何か変化があるかも。だってコイツ、お前の魔力で動いてるんだろう?」
兄の言うことも一理ある。小次郎を窺うと、ワクワクとした表情で私を見ている。
「名前……シロとかチビとかはダメよねぇ?」
候補に上げた名前に、兄と姉、小次郎まで揃って頭を横に振った。私のネーミングセンスよ……。あと、さりげなく項垂れて名前を拒否るぬいぐるみの姿にも、心が痛むわ。
「どうしようかな? 白い狼の名前ねぇ……」
私はチラッと姉を見る。ここは姉のなんだかわからない異世界知識の使いどころではないのか? 姉よ、オタク知識を唸らせろ。
「そうね、白いし……ブランってどう?」
「……そのままだな」
兄はやや呆れているが、兄のネーミングセンスも私と変わらないようだし、この子の名前はブランで決定。
「よし、じゃあ、あんたはブラン。ブランだからね」
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