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第1部 家出して異世界へ
4-1もうすぐ魔法祭なのでグリュンノアを1周してみた
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風歌の街視察回(説明回)なので
地の文がメインです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
午前中の仕事を全て終えたあと、私は〈東地区〉にある〈エメラルド・ビーチ〉に来ていた。
空は雲一つない快晴で、風も心地よく、エンジンの調子も良好。ちなみに、エンジンの調子は、自分の体調とも連動している。体調によって、魔力制御の精度が変わるため、上昇や加速が微妙に変化するのだ。
今日は朝から加速がよく、物凄く絶好調。天気もいいので、最高の練習日和だ。ただ、いつもと違い、一つの地域を飛ぶのではなく〈グリュンノア〉を、ぐるりと一周する。
これは『サーキット飛行』と呼ばれ、速さや魔力制御を追求する人は、好んで行う練習法だった。私は単に、昨日リリーシャさんに『魔法祭の準備の様子を見てきたら』と言われたからだ。
私もちょうど、町の様子を見てみたかったんだよね。初めての『魔法祭』だし。そもそも、イベントにちゃんと参加するのは、今回が初めてだ。
今までは、色々とバタバタしてて、生活で一杯一杯だったので、イベントを楽しむ余裕はなかった。そんな訳で、初のお祭り参加で、ワクワクしっぱなしだ。
でも、これは、あくまでも練習だからね。少し、気を引き締めないと。それに、ちゃんと『魔法祭』の由来や歴史も調べてきた。だから、観光案内の勉強であり、歴史の勉強でもある。
以前なら、歴史の勉強なんて、絶対にしなかったと思う。でも、ナギサちゃんがうるさいので、前よりも真面目に勉強するようになった。
いやー、自主的に勉強するなんて、私も成長したよねぇ。
なお、この町の東西南北には『守護女神像』が、一体ずつ立っていた。この四人の女神は、この町を作った偉大な三人の魔女と、その弟子のことだ。
三人の魔女は、こないだナギサちゃんが言っていた『魔法御三家』のご先祖様。ちゃんと今日のために、四人の魔女がどうやって町を作ったかも、バッチリ勉強してきた。なので、復習もかねて見て行こうと思う。
今、私の目の前にある像が『大地の魔女』レイアード・ハイゼル。魔法だけではなく、剣や軍略にも優れており『大陸最強の武人』とも言われていた。
また、世界規模の大戦だった『第四次水晶戦争』の際に、他の魔女たちに呼びかけ〈グリュンノア〉の作るきっかけになった、三魔女のリーダーだ。剣を掲げた姿は、実に力強く凛々しかった。
んー、やっぱりカッコイイね。いかにもリーダーって感じ。
この町では『勝利の女神』として信仰され、色んな人達が勝利祈願にやってくる。特に、スポーツ選手に人気があるみたいだ。
私も体育会系なので、超大先輩として、とても尊敬する女性だ。ちなみに『レイアード武闘祭』という格闘技のイベントが、年に一度開かれる。
私は『勝利の女神』にお参りを済ますと、エア・ドルフィンで〈南地区〉に向かった。町を見ながら飛んでいると、あちこちで『魔法祭』の準備が行われていた。
日に日に、町が華やかになっていく様子が、見ていてとても楽しい。特に〈南地区〉は空港があり、観光客の出入り口なので、かなり派手に飾り付けていた。
お祭りの準備の活気を楽しみながら飛んでいると、やがて〈南地区〉の女神像に到着する。この像は『水竜の魔女』アルティナ・ミレニウムだ。
水の魔法のエキスパートだったが、農耕の知識にも優れており、麦など様々な作物の畑を開墾したことでも知られている。そのため、この町では『豊穣の女神』として信仰されていた。
また、彼女は料理も得意で、中でも『パン作り』の腕は、天才的だったらしい。多くの人たちにパンの作り方を教え、この町にパン屋が多いのも、彼女の影響だった。
そのため、パン職人からは『パンの女神』と言われている。ちなみに『アルティナ祭』という、パンのお祭りもあるんだよね。
さらに、資金難だった〈グリュンノア〉の財政を支えていたのも彼女だ。商才にも優れ、様々な方法で金策をし、町を発展させた。
そのため『商売の女神』とも言われ、商売をやっている人たちにも人気がある。とにかく、何をやっても器用にこなす、多芸な人だったようだ。
私は両手を胸の前で組み、目を閉じると『毎日、美味しいパンをありがとうございます』と、感謝の気持で祈った。この町で、美味しパンを食べて生きていけるのは、全て彼女のお陰だ。なので、一番お世話になってる女神様だと思う。
いや、本当にお世話になってます。一日三食パンなので……。
私は再びエア・ドルフィンに乗り、移動を開始した。次に向かうのは〈西地区〉だ。〈南地区〉と同様に、開発が進んだ地域だけど、だいぶ雰囲気が違う。〈南地区〉は、高層の大きな建物も多く、完全な都心といった感じ。
対して〈西地区〉は、大きな建物は少なめで、風車など、のどかな風景が多い。あと『風』にちなんだ名称が多かった。〈ウインド・ストリート〉〈風車丘陵〉〈ウィンドミル本社〉など、風に関係あるものばかりだ。
フィニーちゃんが言っていたように、マナ・ラインの影響で、風がよく吹く場所ということ。でも、一番の理由は、この地域の守護女神の影響だと思う。私は〈サファイア・ビーチ〉に着陸すると、女神像に向かった。
ここに立っている像は『旋風の魔女』フィーネ・カリバーンだ。風の魔法の使い手であり、治癒魔法や医術にも精通していた。敵味方の区別なく、多くの怪我人や病人の命を救ったことで、知られている。
そのため、この町では『生命の女神』として信仰されていた。ちなみに、フィニーちゃんの、ご先祖様でもある。
町ができた当初は、医者が一人もおらず、彼女が全町民の医者代わりだった。また、数多くのお産にも立ち会い、沢山の赤子を取り上げたらしい。
医療関係の仕事をする人たちからは『医療の女神』として敬愛され、妊婦たちは必ず『安産祈願』に訪れる。
風を好む〈グリュンノア〉の人達からは、とても愛されており、この町の女性で一番、多い名前が『フィーネ』だった。女の子が生まれると、健康を願って彼女の名前を付ける親が多いためだ。
あと、他の三人の魔女と違い、のんびりして楽天的な性格だったらしく、暇さえあれば、昼寝をしていたという逸話もあった。
何かほんわかした雰囲気が、フィニーちゃんっぽいかも。
私は像の前に立つと『これからも健康でいられますように』と、真剣にお祈りした。私って、元気が取り柄なので、健康って超大事なんだよね。それに、病院は大嫌いなので、絶対に病気にはなりたくなかった。
私は再びエア・ドルフィンに乗ると、最後の目的地である〈北地区〉に向かう。〈北地区〉は、あまり開発が進んでいない地域で、民家が多かった。
さらに北のほうに進むにつれて、田園風景が広がっていく。麦畑が多く、秋になると黄金色に染まるらしい。
北に向かうメイン・ストリートでは『魔法祭』の飾り付けの真っ最中だった。杭を打ったり、柱を建てている大工さんたちの姿が多数見えた。
畑や牧場が多く、あまり発展していない地域だけど、ある意味『魔法祭』では、北の守護女神が主役だ。そのため、北の女神像に続く道には、沢山の飾り付けが行われる。
それにしても〈北地区〉って、物凄く広いんだよね。元々は戦時中に作られた町で、自給自足のために、広大な穀倉地が必要だったらしい。今でも自給率は高く、特に小麦粉は、ほぼ百パーセント地元産だ。
私はかなり長い距離を飛んでから、北の漁港近くに着陸する。女神像の周囲では、だいぶ飾り付けが進んでいた。他の地区に比べて、かなり力が入っている気がする。流石は『建国の母』と言われるだけあるよね。
この女神像は『叡智の魔女』ナターシャ・ノーブル。元々は『大地の魔女』レイアードの弟子だったが、他の二人の魔女からも教えを受け、あらゆる魔法を使いこなした、天才魔女と言われている。
ただ、彼女は他の三人の魔女とは少し違う。なぜなら、戦に参加した記録が残っていないからだ。そのため、魔女としてよりも、政治家として有名だった。
病や戦で命を落とした、三魔女の志を継ぎ、彼女がこの町の代表になったあと、非常に多くの改革や政策を実行した。
今の〈グリュンノア〉の行政や経済、インフラや各種システムは、ほとんど彼女が作ったものだ。『建国の母』と言われているのも、そのためだった。
また、彼女は議長に就任後『シルフィード・プロジェクト』を実行した。それまでは、この町の発展を重視していたが、このプロジェクトは〈グリュンノア〉を起点に、全世界を平和にする、壮大な計画だった。
『シルフィード・プロジェクト』のために、世界中から一流のエキスパートが集められ、様々な部門が作られた。中でも、最も偉大な発明は『マナ工学部門』で開発された『人工マナ・クリスタル』だ。
『人工マナ・クリスタル』の登場により、エネルギー問題が解決し、世界大戦の終結に多大な貢献をした。
現在の『シルフィード』も、このプロジェクトの一環として作られた。世界中から集った、初代シルフィードたちは『親善大使』であり、平和の象徴でもあった。そのため、物凄く重要な任務で、エリート揃いだったのも頷ける。
ちなみに、ナターシャ・ノーブルの死後、彼女の名前が、偽名だったことが発覚した。
彼女の本当の名前は、エリーゼ・ロイエール・ドルギア。ドルギア帝国の、元第一王女だったのだ。ドルギア帝国は『第四次水晶戦争』を引き起こした国であり、三魔女たちの、最大の敵国でもあった。
彼女は、父である国王に、何度も停戦と和平を進言した。しかし、全く聴き入れて貰えず、国を飛び出し王女の身分を捨て、祖国と父を敵に回しながらも、世界平和のために尽力したのだ。
彼女の経歴が公開され、世界中に大きな衝撃が走ったが、それ以上に称賛の声が多く上がった。今では、世界中で『救世の英雄』として讃えられている。
ちなみに、この町では『学問の女神』としても、信仰されていた。『叡智の魔女』にあやかろうと、多くの学生達が、試験前にお参りにやってくる。
その気持ち分かるなぁー。私も試験前だけ、神社にお参り行ってたもん。
私は像の前で手を組むと『どうか勉強がはかどりますように』とお願いした。そして、もう一つ『世界がいつまでも平和でありますように』と、心の底から祈りをささげる。
私は四人の中では『叡智の魔女』ナターシャが、一番好きだ。自分の夢を実現するために、親と喧嘩して家を飛び出して、しかも、見事に達成させた。私と境遇が似ていて、物凄く共感するし、大きな勇気をもらえる。
彼女は元お姫様だし、実現したのは世界平和で、私なんかとでは、スケールが別次元だ。
それでも、強い意志を持って行動すれば、何でも達成できることを、彼女は身を持って証明してくれた。だから私も、もっともっと、気合を入れて頑張らないとね。
「よし、これからも、夢の実現のために頑張りまっしょい!」
私は頬を軽く叩くと、エア・ドルフィンに乗り、再び空に舞い上がった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『買い物に行ったら裏路地は迷宮のようだった』
おやおや、この地下迷宮に迷い人とは珍しい
地の文がメインです。
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午前中の仕事を全て終えたあと、私は〈東地区〉にある〈エメラルド・ビーチ〉に来ていた。
空は雲一つない快晴で、風も心地よく、エンジンの調子も良好。ちなみに、エンジンの調子は、自分の体調とも連動している。体調によって、魔力制御の精度が変わるため、上昇や加速が微妙に変化するのだ。
今日は朝から加速がよく、物凄く絶好調。天気もいいので、最高の練習日和だ。ただ、いつもと違い、一つの地域を飛ぶのではなく〈グリュンノア〉を、ぐるりと一周する。
これは『サーキット飛行』と呼ばれ、速さや魔力制御を追求する人は、好んで行う練習法だった。私は単に、昨日リリーシャさんに『魔法祭の準備の様子を見てきたら』と言われたからだ。
私もちょうど、町の様子を見てみたかったんだよね。初めての『魔法祭』だし。そもそも、イベントにちゃんと参加するのは、今回が初めてだ。
今までは、色々とバタバタしてて、生活で一杯一杯だったので、イベントを楽しむ余裕はなかった。そんな訳で、初のお祭り参加で、ワクワクしっぱなしだ。
でも、これは、あくまでも練習だからね。少し、気を引き締めないと。それに、ちゃんと『魔法祭』の由来や歴史も調べてきた。だから、観光案内の勉強であり、歴史の勉強でもある。
以前なら、歴史の勉強なんて、絶対にしなかったと思う。でも、ナギサちゃんがうるさいので、前よりも真面目に勉強するようになった。
いやー、自主的に勉強するなんて、私も成長したよねぇ。
なお、この町の東西南北には『守護女神像』が、一体ずつ立っていた。この四人の女神は、この町を作った偉大な三人の魔女と、その弟子のことだ。
三人の魔女は、こないだナギサちゃんが言っていた『魔法御三家』のご先祖様。ちゃんと今日のために、四人の魔女がどうやって町を作ったかも、バッチリ勉強してきた。なので、復習もかねて見て行こうと思う。
今、私の目の前にある像が『大地の魔女』レイアード・ハイゼル。魔法だけではなく、剣や軍略にも優れており『大陸最強の武人』とも言われていた。
また、世界規模の大戦だった『第四次水晶戦争』の際に、他の魔女たちに呼びかけ〈グリュンノア〉の作るきっかけになった、三魔女のリーダーだ。剣を掲げた姿は、実に力強く凛々しかった。
んー、やっぱりカッコイイね。いかにもリーダーって感じ。
この町では『勝利の女神』として信仰され、色んな人達が勝利祈願にやってくる。特に、スポーツ選手に人気があるみたいだ。
私も体育会系なので、超大先輩として、とても尊敬する女性だ。ちなみに『レイアード武闘祭』という格闘技のイベントが、年に一度開かれる。
私は『勝利の女神』にお参りを済ますと、エア・ドルフィンで〈南地区〉に向かった。町を見ながら飛んでいると、あちこちで『魔法祭』の準備が行われていた。
日に日に、町が華やかになっていく様子が、見ていてとても楽しい。特に〈南地区〉は空港があり、観光客の出入り口なので、かなり派手に飾り付けていた。
お祭りの準備の活気を楽しみながら飛んでいると、やがて〈南地区〉の女神像に到着する。この像は『水竜の魔女』アルティナ・ミレニウムだ。
水の魔法のエキスパートだったが、農耕の知識にも優れており、麦など様々な作物の畑を開墾したことでも知られている。そのため、この町では『豊穣の女神』として信仰されていた。
また、彼女は料理も得意で、中でも『パン作り』の腕は、天才的だったらしい。多くの人たちにパンの作り方を教え、この町にパン屋が多いのも、彼女の影響だった。
そのため、パン職人からは『パンの女神』と言われている。ちなみに『アルティナ祭』という、パンのお祭りもあるんだよね。
さらに、資金難だった〈グリュンノア〉の財政を支えていたのも彼女だ。商才にも優れ、様々な方法で金策をし、町を発展させた。
そのため『商売の女神』とも言われ、商売をやっている人たちにも人気がある。とにかく、何をやっても器用にこなす、多芸な人だったようだ。
私は両手を胸の前で組み、目を閉じると『毎日、美味しいパンをありがとうございます』と、感謝の気持で祈った。この町で、美味しパンを食べて生きていけるのは、全て彼女のお陰だ。なので、一番お世話になってる女神様だと思う。
いや、本当にお世話になってます。一日三食パンなので……。
私は再びエア・ドルフィンに乗り、移動を開始した。次に向かうのは〈西地区〉だ。〈南地区〉と同様に、開発が進んだ地域だけど、だいぶ雰囲気が違う。〈南地区〉は、高層の大きな建物も多く、完全な都心といった感じ。
対して〈西地区〉は、大きな建物は少なめで、風車など、のどかな風景が多い。あと『風』にちなんだ名称が多かった。〈ウインド・ストリート〉〈風車丘陵〉〈ウィンドミル本社〉など、風に関係あるものばかりだ。
フィニーちゃんが言っていたように、マナ・ラインの影響で、風がよく吹く場所ということ。でも、一番の理由は、この地域の守護女神の影響だと思う。私は〈サファイア・ビーチ〉に着陸すると、女神像に向かった。
ここに立っている像は『旋風の魔女』フィーネ・カリバーンだ。風の魔法の使い手であり、治癒魔法や医術にも精通していた。敵味方の区別なく、多くの怪我人や病人の命を救ったことで、知られている。
そのため、この町では『生命の女神』として信仰されていた。ちなみに、フィニーちゃんの、ご先祖様でもある。
町ができた当初は、医者が一人もおらず、彼女が全町民の医者代わりだった。また、数多くのお産にも立ち会い、沢山の赤子を取り上げたらしい。
医療関係の仕事をする人たちからは『医療の女神』として敬愛され、妊婦たちは必ず『安産祈願』に訪れる。
風を好む〈グリュンノア〉の人達からは、とても愛されており、この町の女性で一番、多い名前が『フィーネ』だった。女の子が生まれると、健康を願って彼女の名前を付ける親が多いためだ。
あと、他の三人の魔女と違い、のんびりして楽天的な性格だったらしく、暇さえあれば、昼寝をしていたという逸話もあった。
何かほんわかした雰囲気が、フィニーちゃんっぽいかも。
私は像の前に立つと『これからも健康でいられますように』と、真剣にお祈りした。私って、元気が取り柄なので、健康って超大事なんだよね。それに、病院は大嫌いなので、絶対に病気にはなりたくなかった。
私は再びエア・ドルフィンに乗ると、最後の目的地である〈北地区〉に向かう。〈北地区〉は、あまり開発が進んでいない地域で、民家が多かった。
さらに北のほうに進むにつれて、田園風景が広がっていく。麦畑が多く、秋になると黄金色に染まるらしい。
北に向かうメイン・ストリートでは『魔法祭』の飾り付けの真っ最中だった。杭を打ったり、柱を建てている大工さんたちの姿が多数見えた。
畑や牧場が多く、あまり発展していない地域だけど、ある意味『魔法祭』では、北の守護女神が主役だ。そのため、北の女神像に続く道には、沢山の飾り付けが行われる。
それにしても〈北地区〉って、物凄く広いんだよね。元々は戦時中に作られた町で、自給自足のために、広大な穀倉地が必要だったらしい。今でも自給率は高く、特に小麦粉は、ほぼ百パーセント地元産だ。
私はかなり長い距離を飛んでから、北の漁港近くに着陸する。女神像の周囲では、だいぶ飾り付けが進んでいた。他の地区に比べて、かなり力が入っている気がする。流石は『建国の母』と言われるだけあるよね。
この女神像は『叡智の魔女』ナターシャ・ノーブル。元々は『大地の魔女』レイアードの弟子だったが、他の二人の魔女からも教えを受け、あらゆる魔法を使いこなした、天才魔女と言われている。
ただ、彼女は他の三人の魔女とは少し違う。なぜなら、戦に参加した記録が残っていないからだ。そのため、魔女としてよりも、政治家として有名だった。
病や戦で命を落とした、三魔女の志を継ぎ、彼女がこの町の代表になったあと、非常に多くの改革や政策を実行した。
今の〈グリュンノア〉の行政や経済、インフラや各種システムは、ほとんど彼女が作ったものだ。『建国の母』と言われているのも、そのためだった。
また、彼女は議長に就任後『シルフィード・プロジェクト』を実行した。それまでは、この町の発展を重視していたが、このプロジェクトは〈グリュンノア〉を起点に、全世界を平和にする、壮大な計画だった。
『シルフィード・プロジェクト』のために、世界中から一流のエキスパートが集められ、様々な部門が作られた。中でも、最も偉大な発明は『マナ工学部門』で開発された『人工マナ・クリスタル』だ。
『人工マナ・クリスタル』の登場により、エネルギー問題が解決し、世界大戦の終結に多大な貢献をした。
現在の『シルフィード』も、このプロジェクトの一環として作られた。世界中から集った、初代シルフィードたちは『親善大使』であり、平和の象徴でもあった。そのため、物凄く重要な任務で、エリート揃いだったのも頷ける。
ちなみに、ナターシャ・ノーブルの死後、彼女の名前が、偽名だったことが発覚した。
彼女の本当の名前は、エリーゼ・ロイエール・ドルギア。ドルギア帝国の、元第一王女だったのだ。ドルギア帝国は『第四次水晶戦争』を引き起こした国であり、三魔女たちの、最大の敵国でもあった。
彼女は、父である国王に、何度も停戦と和平を進言した。しかし、全く聴き入れて貰えず、国を飛び出し王女の身分を捨て、祖国と父を敵に回しながらも、世界平和のために尽力したのだ。
彼女の経歴が公開され、世界中に大きな衝撃が走ったが、それ以上に称賛の声が多く上がった。今では、世界中で『救世の英雄』として讃えられている。
ちなみに、この町では『学問の女神』としても、信仰されていた。『叡智の魔女』にあやかろうと、多くの学生達が、試験前にお参りにやってくる。
その気持ち分かるなぁー。私も試験前だけ、神社にお参り行ってたもん。
私は像の前で手を組むと『どうか勉強がはかどりますように』とお願いした。そして、もう一つ『世界がいつまでも平和でありますように』と、心の底から祈りをささげる。
私は四人の中では『叡智の魔女』ナターシャが、一番好きだ。自分の夢を実現するために、親と喧嘩して家を飛び出して、しかも、見事に達成させた。私と境遇が似ていて、物凄く共感するし、大きな勇気をもらえる。
彼女は元お姫様だし、実現したのは世界平和で、私なんかとでは、スケールが別次元だ。
それでも、強い意志を持って行動すれば、何でも達成できることを、彼女は身を持って証明してくれた。だから私も、もっともっと、気合を入れて頑張らないとね。
「よし、これからも、夢の実現のために頑張りまっしょい!」
私は頬を軽く叩くと、エア・ドルフィンに乗り、再び空に舞い上がった。
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