私異世界で成り上がる!! ~家出娘が異世界で極貧生活しながら虎視眈々と頂点を目指す~

春風一

文字の大きさ
27 / 363
第1部 家出して異世界へ

4-1もうすぐ魔法祭なのでグリュンノアを1周してみた

しおりを挟む
 風歌の街視察回(説明回)なので
 地の文がメインです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 午前中の仕事を全て終えたあと、私は〈東地区〉にある〈エメラルド・ビーチ〉に来ていた。

 空は雲一つない快晴で、風も心地よく、エンジンの調子も良好。ちなみに、エンジンの調子は、自分の体調とも連動している。体調によって、魔力制御の精度が変わるため、上昇や加速が微妙に変化するのだ。

 今日は朝から加速がよく、物凄く絶好調。天気もいいので、最高の練習日和だ。ただ、いつもと違い、一つの地域を飛ぶのではなく〈グリュンノア〉を、ぐるりと一周する。

 これは『サーキット飛行』と呼ばれ、速さや魔力制御を追求する人は、好んで行う練習法だった。私は単に、昨日リリーシャさんに『魔法祭の準備の様子を見てきたら』と言われたからだ。

 私もちょうど、町の様子を見てみたかったんだよね。初めての『魔法祭』だし。そもそも、イベントにちゃんと参加するのは、今回が初めてだ。

 今までは、色々とバタバタしてて、生活で一杯一杯だったので、イベントを楽しむ余裕はなかった。そんな訳で、初のお祭り参加で、ワクワクしっぱなしだ。

 でも、これは、あくまでも練習だからね。少し、気を引き締めないと。それに、ちゃんと『魔法祭』の由来や歴史も調べてきた。だから、観光案内の勉強であり、歴史の勉強でもある。

 以前なら、歴史の勉強なんて、絶対にしなかったと思う。でも、ナギサちゃんがうるさいので、前よりも真面目に勉強するようになった。

 いやー、自主的に勉強するなんて、私も成長したよねぇ。

 なお、この町の東西南北には『守護女神像』が、一体ずつ立っていた。この四人の女神は、この町を作った偉大な三人の魔女と、その弟子のことだ。

 三人の魔女は、こないだナギサちゃんが言っていた『魔法御三家』のご先祖様。ちゃんと今日のために、四人の魔女がどうやって町を作ったかも、バッチリ勉強してきた。なので、復習もかねて見て行こうと思う。

 今、私の目の前にある像が『大地の魔女』レイアード・ハイゼル。魔法だけではなく、剣や軍略にも優れており『大陸最強の武人』とも言われていた。

 また、世界規模の大戦だった『第四次水晶戦争』の際に、他の魔女たちに呼びかけ〈グリュンノア〉の作るきっかけになった、三魔女のリーダーだ。剣を掲げた姿は、実に力強く凛々しかった。

 んー、やっぱりカッコイイね。いかにもリーダーって感じ。

 この町では『勝利の女神』として信仰され、色んな人達が勝利祈願にやってくる。特に、スポーツ選手に人気があるみたいだ。

 私も体育会系なので、超大先輩として、とても尊敬する女性だ。ちなみに『レイアード武闘祭』という格闘技のイベントが、年に一度開かれる。

 私は『勝利の女神』にお参りを済ますと、エア・ドルフィンで〈南地区〉に向かった。町を見ながら飛んでいると、あちこちで『魔法祭』の準備が行われていた。

 日に日に、町が華やかになっていく様子が、見ていてとても楽しい。特に〈南地区〉は空港があり、観光客の出入り口なので、かなり派手に飾り付けていた。

 お祭りの準備の活気を楽しみながら飛んでいると、やがて〈南地区〉の女神像に到着する。この像は『水竜の魔女』アルティナ・ミレニウムだ。

 水の魔法のエキスパートだったが、農耕の知識にも優れており、麦など様々な作物の畑を開墾したことでも知られている。そのため、この町では『豊穣の女神』として信仰されていた。

 また、彼女は料理も得意で、中でも『パン作り』の腕は、天才的だったらしい。多くの人たちにパンの作り方を教え、この町にパン屋が多いのも、彼女の影響だった。

 そのため、パン職人からは『パンの女神』と言われている。ちなみに『アルティナ祭』という、パンのお祭りもあるんだよね。 

 さらに、資金難だった〈グリュンノア〉の財政を支えていたのも彼女だ。商才にも優れ、様々な方法で金策をし、町を発展させた。

 そのため『商売の女神』とも言われ、商売をやっている人たちにも人気がある。とにかく、何をやっても器用にこなす、多芸な人だったようだ。

 私は両手を胸の前で組み、目を閉じると『毎日、美味しいパンをありがとうございます』と、感謝の気持で祈った。この町で、美味しパンを食べて生きていけるのは、全て彼女のお陰だ。なので、一番お世話になってる女神様だと思う。

 いや、本当にお世話になってます。一日三食パンなので……。

 私は再びエア・ドルフィンに乗り、移動を開始した。次に向かうのは〈西地区〉だ。〈南地区〉と同様に、開発が進んだ地域だけど、だいぶ雰囲気が違う。〈南地区〉は、高層の大きな建物も多く、完全な都心といった感じ。

 対して〈西地区〉は、大きな建物は少なめで、風車など、のどかな風景が多い。あと『風』にちなんだ名称が多かった。〈ウインド・ストリート〉〈風車丘陵〉〈ウィンドミル本社〉など、風に関係あるものばかりだ。

 フィニーちゃんが言っていたように、マナ・ラインの影響で、風がよく吹く場所ということ。でも、一番の理由は、この地域の守護女神の影響だと思う。私は〈サファイア・ビーチ〉に着陸すると、女神像に向かった。

 ここに立っている像は『旋風の魔女』フィーネ・カリバーンだ。風の魔法の使い手であり、治癒魔法や医術にも精通していた。敵味方の区別なく、多くの怪我人や病人の命を救ったことで、知られている。

 そのため、この町では『生命の女神』として信仰されていた。ちなみに、フィニーちゃんの、ご先祖様でもある。

 町ができた当初は、医者が一人もおらず、彼女が全町民の医者代わりだった。また、数多くのお産にも立ち会い、沢山の赤子を取り上げたらしい。

 医療関係の仕事をする人たちからは『医療の女神』として敬愛され、妊婦たちは必ず『安産祈願』に訪れる。

 風を好む〈グリュンノア〉の人達からは、とても愛されており、この町の女性で一番、多い名前が『フィーネ』だった。女の子が生まれると、健康を願って彼女の名前を付ける親が多いためだ。

 あと、他の三人の魔女と違い、のんびりして楽天的な性格だったらしく、暇さえあれば、昼寝をしていたという逸話もあった。

 何かほんわかした雰囲気が、フィニーちゃんっぽいかも。

 私は像の前に立つと『これからも健康でいられますように』と、真剣にお祈りした。私って、元気が取り柄なので、健康って超大事なんだよね。それに、病院は大嫌いなので、絶対に病気にはなりたくなかった。

 私は再びエア・ドルフィンに乗ると、最後の目的地である〈北地区〉に向かう。〈北地区〉は、あまり開発が進んでいない地域で、民家が多かった。

 さらに北のほうに進むにつれて、田園風景が広がっていく。麦畑が多く、秋になると黄金色に染まるらしい。

 北に向かうメイン・ストリートでは『魔法祭』の飾り付けの真っ最中だった。杭を打ったり、柱を建てている大工さんたちの姿が多数見えた。

 畑や牧場が多く、あまり発展していない地域だけど、ある意味『魔法祭』では、北の守護女神が主役だ。そのため、北の女神像に続く道には、沢山の飾り付けが行われる。

 それにしても〈北地区〉って、物凄く広いんだよね。元々は戦時中に作られた町で、自給自足のために、広大な穀倉地が必要だったらしい。今でも自給率は高く、特に小麦粉は、ほぼ百パーセント地元産だ。

 私はかなり長い距離を飛んでから、北の漁港近くに着陸する。女神像の周囲では、だいぶ飾り付けが進んでいた。他の地区に比べて、かなり力が入っている気がする。流石は『建国の母』と言われるだけあるよね。

 この女神像は『叡智の魔女』ナターシャ・ノーブル。元々は『大地の魔女』レイアードの弟子だったが、他の二人の魔女からも教えを受け、あらゆる魔法を使いこなした、天才魔女と言われている。

 ただ、彼女は他の三人の魔女とは少し違う。なぜなら、戦に参加した記録が残っていないからだ。そのため、魔女としてよりも、政治家として有名だった。

 病や戦で命を落とした、三魔女の志を継ぎ、彼女がこの町の代表になったあと、非常に多くの改革や政策を実行した。

 今の〈グリュンノア〉の行政や経済、インフラや各種システムは、ほとんど彼女が作ったものだ。『建国の母』と言われているのも、そのためだった。

 また、彼女は議長に就任後『シルフィード・プロジェクト』を実行した。それまでは、この町の発展を重視していたが、このプロジェクトは〈グリュンノア〉を起点に、全世界を平和にする、壮大な計画だった。

『シルフィード・プロジェクト』のために、世界中から一流のエキスパートが集められ、様々な部門が作られた。中でも、最も偉大な発明は『マナ工学部門』で開発された『人工マナ・クリスタル』だ。

『人工マナ・クリスタル』の登場により、エネルギー問題が解決し、世界大戦の終結に多大な貢献をした。

 現在の『シルフィード』も、このプロジェクトの一環として作られた。世界中から集った、初代シルフィードたちは『親善大使』であり、平和の象徴でもあった。そのため、物凄く重要な任務で、エリート揃いだったのも頷ける。

 ちなみに、ナターシャ・ノーブルの死後、彼女の名前が、偽名だったことが発覚した。

 彼女の本当の名前は、エリーゼ・ロイエール・ドルギア。ドルギア帝国の、元第一王女だったのだ。ドルギア帝国は『第四次水晶戦争』を引き起こした国であり、三魔女たちの、最大の敵国でもあった。

 彼女は、父である国王に、何度も停戦と和平を進言した。しかし、全く聴き入れて貰えず、国を飛び出し王女の身分を捨て、祖国と父を敵に回しながらも、世界平和のために尽力したのだ。

 彼女の経歴が公開され、世界中に大きな衝撃が走ったが、それ以上に称賛の声が多く上がった。今では、世界中で『救世の英雄』として讃えられている。

 ちなみに、この町では『学問の女神』としても、信仰されていた。『叡智の魔女』にあやかろうと、多くの学生達が、試験前にお参りにやってくる。

 その気持ち分かるなぁー。私も試験前だけ、神社にお参り行ってたもん。

 私は像の前で手を組むと『どうか勉強がはかどりますように』とお願いした。そして、もう一つ『世界がいつまでも平和でありますように』と、心の底から祈りをささげる。

 私は四人の中では『叡智の魔女』ナターシャが、一番好きだ。自分の夢を実現するために、親と喧嘩して家を飛び出して、しかも、見事に達成させた。私と境遇が似ていて、物凄く共感するし、大きな勇気をもらえる。

 彼女は元お姫様だし、実現したのは世界平和で、私なんかとでは、スケールが別次元だ。

 それでも、強い意志を持って行動すれば、何でも達成できることを、彼女は身を持って証明してくれた。だから私も、もっともっと、気合を入れて頑張らないとね。

「よし、これからも、夢の実現のために頑張りまっしょい!」

 私は頬を軽く叩くと、エア・ドルフィンに乗り、再び空に舞い上がった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回――
『買い物に行ったら裏路地は迷宮のようだった』

 おやおや、この地下迷宮に迷い人とは珍しい
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

処理中です...