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第3部 笑顔の裏に隠された真実
4-1秋と言えばスポーツと食欲とあと1つは……
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午後、四時過ぎ。私は会社のダイニングで、リリーシャさんと、ゆったりお茶をしていた。リリーシャさんは、午前中から予約が一杯で、つい先ほど、最後のお客様の対応が、終わったところだ。
今日は忙しくて、お昼ごはんも、食べていないらしい。人気があるのは、シルフィードとしては、とてもいいことだ。でも、ご飯ものんびり食べられないなんて、本当に大変だよね。
でも、リリーシャさんは、疲れた表情一つ見せない。むしろ、忙しかった日のほうが、生き生きとしている。
今も、何事もなかったかのように、美味しそうに、お茶を飲んでいた。見た目以上に、体力があるようで、どんな過密スケジュールでも、ケロッとこなしている。
私は、相変わらず、雑用と練習の日々だった。リリーシャさんに、出来ることと言ったら、お茶を用意するぐらいなんだよね。
なので、リリーシャさんの、仕事が忙しかった日は、特に心を込めて、美味しいお茶を淹れるようにしている。
「最近、空を飛んでいると、秋の深まりを感じるわね」
「確かに、だいぶ秋っぽく、なって来ましたよねぇ」
この世界の四季は、一から三月が冬、四から六月が春、七から九月が夏、十から十二月が秋だ。向こうの世界と、一ヶ月ずれている。でも、一月から三ヵ月区切りなので、こっちのほうが、分かりやすいかも。
「風の吹き方や質も、秋になると、違うのよね」
「あぁ、分かります。風が夏よりも柔らかくて、匂いも違うんですよね。秋の香というか、何というか」
夏よりも、スッキリした香。あと、パン屋の上空を飛ぶと、より香ばしく、美味しそうな匂いに感じる。空気が、澄んでいるからだろうか?
「確かに、秋の香がするわね」
リリーシャさんは、微笑みながら答える。
そういえば、先日のアリーシャさんの、一件があって以来。リリーシャさんは、笑顔が、自然で柔らかくなった。お蔭で、気楽に話しやすくなった気がする。
前は、ちょっと、距離を置いてる気がしたんだよね。だから、私も踏み込まないように、色々と遠慮しながら話してた。でも、今はだいぶ、距離が近づいたと思う。
「秋と言えば、食欲の秋、スポーツの秋。食べ物がすごく美味しいし、運動も好きなので、とても大好きな季節なんです」
桜の咲く春も好きだけど、秋って景色がキレイだから、好きなんだよね。木が紅葉したり、いわし雲が見えたり、夕焼けが鮮やかだったり。私は、赤色が好きだから、特に美しく、見えるのかもしれない。
ちなみに、夕焼けは、空気中の湿度が高い夏が、最も見やすいんだって。でも、気持ち的に、秋の夕焼けが、一番キレイに感じるかなぁ。
「勉強は、ないの?」
「いたたっ……それは触れないで欲しいです」
二人で、くすくすと笑う。
「でも、運動が好きなら、風歌ちゃん『スポーツ・フェスタ』は、楽しめそうね」
「はい、実は超楽しみなんです。リリーシャさんは、競技に参加したこと、あるんですか?」
スポーツ系は、なんでも大好き。走るのも、泳ぐのも、球技も。どんなスポーツでも楽しめるし、人並み以上に、こなす自信もある。
「私は、子供のころから、運動は苦手だから、いつも見ているだけ。ただ、ツバサちゃんは、色んな競技に、参加していたわよ」
「ツバサさんも、体育会系だったんですよね。やっぱり、小さいころから、運動神経バツグンだったんですか?」
確か学生時代は、野球をやってた、って言ってたよね。
「それはもう、同年代で、ツバサちゃんに勝てる子は、いなかったわ。男の子も、全く相手にならなかったし。学生時代も、色んな部活の助っ人で、引っ張りだこだったわ」
「流石は、ツバサさんですね。じゃあ『ノア・マラソン』も、参加したこと有るんですか?」
詳しい情報は、経験者に訊くのが、一番だからね。是非、色々教えてもらいたい。
「確か『長距離系は好きじゃない』って言ってたから、出たことは、ないんじゃないかしら。ツバサちゃんは、球技や瞬発力の必要なスポーツが、得意なのよね」
「なるほど、スプリンター・タイプですね。私『ノア・マラソン』に、出てみたいので。できれば『情報が欲しいなぁ』なんて思いまして。全く知らないので」
リリーシャさんは、少し考えたあと、
「過去の大会の、記録映像を、見てみたらどうかしら? 図書館で『映像アーカイブ』を見れば、色々参考になると思うわ。全てのイベントの、映像記録が残っているから。スピにも、色々な情報や動画が、出ているし」
とても有益な情報を、教えてくれた。
「あー、なるほど。その手がありましたね」
私は、ポンッと手を叩く。図書館って、学生時代から、全く縁のない場所だったので、思いつかなかったのだ。調べ物も、相変わらず、たまにしかやらないし。
なお、こっちの世界にも本はあるけど、ほとんどは『データファイル』になっている。ほぼ全てが『マナコード化』されているのだ。
『マナコード化』とは、紙の文字を、データファイルにすること。向こうの世界だと『電子書籍化』みたいな感じだね。ただ、この世界には電気がないので、電子という言葉も存在しない。
「私が、教えて上げられれば、いいのだけど。運動は全然ダメで、ごめんなさいね」
「とんでもないです。いつも、リリーシャさんには、一杯、教わってますから。運動は、仕事に関係ないですし」
本当に、数え切れないほどのことを、リリーシャさんから学んでいる。直接、教わることはもちろん、見ているだけでも、非常に学ぶことが多かった。
「毎年『ノア・マラソン』は、参加者が多いけれど、かなり過酷なレースなの。完走者は、六割ぐらいね。風歌ちゃんは、運動が得意だと思うけれど、五十キロも大丈夫?」
フルマラソンよりも、さらに距離が長い『ノア・マラソン』は、まさに過酷なレースだ。私は、ハーフマラソンしか走ったことが無いので、フルマラソンの距離が走れるかも、完全に未知数だった。
しかも、こっちに来てから、全くトレーニングをしていない。移動は、全てエア・ドルフィンだから、走る機会なんて全くないし。
「フルマラソンすら、走ったことがないので。正直、完走できるかは、分かりません。でも、走るのが好きですし。目の前に大きな壁があると、つい乗り越えたく、なってしまうんですよね――」
何でも、やってみないと気が済まない。それに、壁が高ければ高いほど、燃えて来る。それがスポーツなら、なおさらだ。
「風歌ちゃんらしいわね。何事にも、臆さず挑む姿勢は、とても立派だと思うわ」
「いやー、単に後先考えてないというか、怖いもの知らずというか」
実際に、何をやる時も、思い立ったら即実行。何か問題があったら、その時に考える。これが、私の基本スタイルだ。
最近は、だいぶ思慮深くなったと思う。でも、やりもしないで、自分の限界を決めてしまうのは、どうにもスッキリしない。もし、実際にやってみて、それでもダメなら納得する、って感じかな。
「若いって、いいわね」
「いやいや、リリーシャさんも、若いじゃないですか」
リリーシャさんって、物凄く大人だけど、同じ十代だし。
「風歌ちゃんから見たら、私なんか、もう、おばさんじゃない?」
「とんでもないです! リリーシャさんがおばさんだったら、世の中の女性、全員、おばあさんですよ」
こぶしを握り締め、力一杯に否定した。
「ウフフッ、風歌ちゃんは、大げさね」
リリーシャさんは微笑む。
私は今まで、リリーシャさんほど、美しい女性を見たことがない。言葉遣いや、一つ一つの振る舞いはもちろん、何と言っても、容姿が美しい。永遠に十代でも、通るんじゃないか、とすら思う。私にとっては、理想の女性像だ。
ただ、凄くしっかりしているので、たまに、物凄く年上に感じることもある。あまりにも落ちついているから、年齢以上に、大人に見えるのだと思う。けど、実際には、まだ十代だし、私と四つしか違わないんだよね。
「やっぱり『スポーツ・フェスタ』の期間は、仕事が忙しくなるんですか? 世界中から、観光客が来るんですよね?」
MVで、世界中に放送されるので、かなり知名度が高い。ちなみに『MV』とは『マナ・ライブ・ビュアー』の略称で、向こうの世界の、TVと同じようなものだ。若者たちは、略して『ラビ』と言ったりもする。
ELと同じで、魔力通信で、映像が配信されていた。TVなどの専用装置がなくても、マギコンを起動すれば、見ることができる。ライブでも見れるし、配信後のデータファイルで、見ることも可能だ。
「観戦だけではなく、参加される方たちも来られるから、予約もたくさん入るの。イベントの参加ついでに、観光される方も多いわね」
「せっかく遠くから来たのだから、観光もして行きたいですもんね」
そもそも、毎月、行われているイベントは、この町に観光客を、誘致するためのものだ。それに、大陸からだと遠いので、日帰りの人は、あまりいないと思う。
「風歌ちゃんのいた世界から、来られるお客様も、年々増えているのよ」
「えっ、本当ですか? それって、なんか嬉しいですね」
まだ〈グリュンノア〉に来て、数ヶ月だけど。すでに、第二の故郷のようになっていた。だから、遠くから、お客様が来てくれるのは、物凄く嬉しい。特に、向こうの世界の人には、この町のよさを、もっと知ってもらいたいと思う。
「これからも、どんどん増えて行くと思うし。風歌ちゃんが、有名になったら、大挙して押し寄せて来るかもしれないわね」
「いやー、いつのことになるのやら……」
二人で顔を見合わせると、静かに笑った。
そっかー、向こうの世界からも、お客様が来るのかぁ。だとしたら、恥ずかしい姿は、見せられないよね。
シルフィードとして、しっかりやるのはもちろん、ノア・マラソンも、頑張らないと。知ってる人は、来てないだろうけど、同郷の人に、みっともない走りは見せられないもん。
「風歌ちゃんは、根性があるから。初参加でも、完走できるかもしれないわね」
「はい。気合と根性で、必ず走り切って見せます!」
うおぉぉー、何か久しぶりに、熱いものがたぎって来た。最近、すっかり忘れていた、走ることへの情熱と陸上部魂が、よみがえって来た気がする。
よし、ノア・マラソン完走を目指して、気合で頑張りまっしょい!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『風を切って走っている時が一番生きてる実感がするんだよね』
簡単すぎる人生に、生きる価値などない
今日は忙しくて、お昼ごはんも、食べていないらしい。人気があるのは、シルフィードとしては、とてもいいことだ。でも、ご飯ものんびり食べられないなんて、本当に大変だよね。
でも、リリーシャさんは、疲れた表情一つ見せない。むしろ、忙しかった日のほうが、生き生きとしている。
今も、何事もなかったかのように、美味しそうに、お茶を飲んでいた。見た目以上に、体力があるようで、どんな過密スケジュールでも、ケロッとこなしている。
私は、相変わらず、雑用と練習の日々だった。リリーシャさんに、出来ることと言ったら、お茶を用意するぐらいなんだよね。
なので、リリーシャさんの、仕事が忙しかった日は、特に心を込めて、美味しいお茶を淹れるようにしている。
「最近、空を飛んでいると、秋の深まりを感じるわね」
「確かに、だいぶ秋っぽく、なって来ましたよねぇ」
この世界の四季は、一から三月が冬、四から六月が春、七から九月が夏、十から十二月が秋だ。向こうの世界と、一ヶ月ずれている。でも、一月から三ヵ月区切りなので、こっちのほうが、分かりやすいかも。
「風の吹き方や質も、秋になると、違うのよね」
「あぁ、分かります。風が夏よりも柔らかくて、匂いも違うんですよね。秋の香というか、何というか」
夏よりも、スッキリした香。あと、パン屋の上空を飛ぶと、より香ばしく、美味しそうな匂いに感じる。空気が、澄んでいるからだろうか?
「確かに、秋の香がするわね」
リリーシャさんは、微笑みながら答える。
そういえば、先日のアリーシャさんの、一件があって以来。リリーシャさんは、笑顔が、自然で柔らかくなった。お蔭で、気楽に話しやすくなった気がする。
前は、ちょっと、距離を置いてる気がしたんだよね。だから、私も踏み込まないように、色々と遠慮しながら話してた。でも、今はだいぶ、距離が近づいたと思う。
「秋と言えば、食欲の秋、スポーツの秋。食べ物がすごく美味しいし、運動も好きなので、とても大好きな季節なんです」
桜の咲く春も好きだけど、秋って景色がキレイだから、好きなんだよね。木が紅葉したり、いわし雲が見えたり、夕焼けが鮮やかだったり。私は、赤色が好きだから、特に美しく、見えるのかもしれない。
ちなみに、夕焼けは、空気中の湿度が高い夏が、最も見やすいんだって。でも、気持ち的に、秋の夕焼けが、一番キレイに感じるかなぁ。
「勉強は、ないの?」
「いたたっ……それは触れないで欲しいです」
二人で、くすくすと笑う。
「でも、運動が好きなら、風歌ちゃん『スポーツ・フェスタ』は、楽しめそうね」
「はい、実は超楽しみなんです。リリーシャさんは、競技に参加したこと、あるんですか?」
スポーツ系は、なんでも大好き。走るのも、泳ぐのも、球技も。どんなスポーツでも楽しめるし、人並み以上に、こなす自信もある。
「私は、子供のころから、運動は苦手だから、いつも見ているだけ。ただ、ツバサちゃんは、色んな競技に、参加していたわよ」
「ツバサさんも、体育会系だったんですよね。やっぱり、小さいころから、運動神経バツグンだったんですか?」
確か学生時代は、野球をやってた、って言ってたよね。
「それはもう、同年代で、ツバサちゃんに勝てる子は、いなかったわ。男の子も、全く相手にならなかったし。学生時代も、色んな部活の助っ人で、引っ張りだこだったわ」
「流石は、ツバサさんですね。じゃあ『ノア・マラソン』も、参加したこと有るんですか?」
詳しい情報は、経験者に訊くのが、一番だからね。是非、色々教えてもらいたい。
「確か『長距離系は好きじゃない』って言ってたから、出たことは、ないんじゃないかしら。ツバサちゃんは、球技や瞬発力の必要なスポーツが、得意なのよね」
「なるほど、スプリンター・タイプですね。私『ノア・マラソン』に、出てみたいので。できれば『情報が欲しいなぁ』なんて思いまして。全く知らないので」
リリーシャさんは、少し考えたあと、
「過去の大会の、記録映像を、見てみたらどうかしら? 図書館で『映像アーカイブ』を見れば、色々参考になると思うわ。全てのイベントの、映像記録が残っているから。スピにも、色々な情報や動画が、出ているし」
とても有益な情報を、教えてくれた。
「あー、なるほど。その手がありましたね」
私は、ポンッと手を叩く。図書館って、学生時代から、全く縁のない場所だったので、思いつかなかったのだ。調べ物も、相変わらず、たまにしかやらないし。
なお、こっちの世界にも本はあるけど、ほとんどは『データファイル』になっている。ほぼ全てが『マナコード化』されているのだ。
『マナコード化』とは、紙の文字を、データファイルにすること。向こうの世界だと『電子書籍化』みたいな感じだね。ただ、この世界には電気がないので、電子という言葉も存在しない。
「私が、教えて上げられれば、いいのだけど。運動は全然ダメで、ごめんなさいね」
「とんでもないです。いつも、リリーシャさんには、一杯、教わってますから。運動は、仕事に関係ないですし」
本当に、数え切れないほどのことを、リリーシャさんから学んでいる。直接、教わることはもちろん、見ているだけでも、非常に学ぶことが多かった。
「毎年『ノア・マラソン』は、参加者が多いけれど、かなり過酷なレースなの。完走者は、六割ぐらいね。風歌ちゃんは、運動が得意だと思うけれど、五十キロも大丈夫?」
フルマラソンよりも、さらに距離が長い『ノア・マラソン』は、まさに過酷なレースだ。私は、ハーフマラソンしか走ったことが無いので、フルマラソンの距離が走れるかも、完全に未知数だった。
しかも、こっちに来てから、全くトレーニングをしていない。移動は、全てエア・ドルフィンだから、走る機会なんて全くないし。
「フルマラソンすら、走ったことがないので。正直、完走できるかは、分かりません。でも、走るのが好きですし。目の前に大きな壁があると、つい乗り越えたく、なってしまうんですよね――」
何でも、やってみないと気が済まない。それに、壁が高ければ高いほど、燃えて来る。それがスポーツなら、なおさらだ。
「風歌ちゃんらしいわね。何事にも、臆さず挑む姿勢は、とても立派だと思うわ」
「いやー、単に後先考えてないというか、怖いもの知らずというか」
実際に、何をやる時も、思い立ったら即実行。何か問題があったら、その時に考える。これが、私の基本スタイルだ。
最近は、だいぶ思慮深くなったと思う。でも、やりもしないで、自分の限界を決めてしまうのは、どうにもスッキリしない。もし、実際にやってみて、それでもダメなら納得する、って感じかな。
「若いって、いいわね」
「いやいや、リリーシャさんも、若いじゃないですか」
リリーシャさんって、物凄く大人だけど、同じ十代だし。
「風歌ちゃんから見たら、私なんか、もう、おばさんじゃない?」
「とんでもないです! リリーシャさんがおばさんだったら、世の中の女性、全員、おばあさんですよ」
こぶしを握り締め、力一杯に否定した。
「ウフフッ、風歌ちゃんは、大げさね」
リリーシャさんは微笑む。
私は今まで、リリーシャさんほど、美しい女性を見たことがない。言葉遣いや、一つ一つの振る舞いはもちろん、何と言っても、容姿が美しい。永遠に十代でも、通るんじゃないか、とすら思う。私にとっては、理想の女性像だ。
ただ、凄くしっかりしているので、たまに、物凄く年上に感じることもある。あまりにも落ちついているから、年齢以上に、大人に見えるのだと思う。けど、実際には、まだ十代だし、私と四つしか違わないんだよね。
「やっぱり『スポーツ・フェスタ』の期間は、仕事が忙しくなるんですか? 世界中から、観光客が来るんですよね?」
MVで、世界中に放送されるので、かなり知名度が高い。ちなみに『MV』とは『マナ・ライブ・ビュアー』の略称で、向こうの世界の、TVと同じようなものだ。若者たちは、略して『ラビ』と言ったりもする。
ELと同じで、魔力通信で、映像が配信されていた。TVなどの専用装置がなくても、マギコンを起動すれば、見ることができる。ライブでも見れるし、配信後のデータファイルで、見ることも可能だ。
「観戦だけではなく、参加される方たちも来られるから、予約もたくさん入るの。イベントの参加ついでに、観光される方も多いわね」
「せっかく遠くから来たのだから、観光もして行きたいですもんね」
そもそも、毎月、行われているイベントは、この町に観光客を、誘致するためのものだ。それに、大陸からだと遠いので、日帰りの人は、あまりいないと思う。
「風歌ちゃんのいた世界から、来られるお客様も、年々増えているのよ」
「えっ、本当ですか? それって、なんか嬉しいですね」
まだ〈グリュンノア〉に来て、数ヶ月だけど。すでに、第二の故郷のようになっていた。だから、遠くから、お客様が来てくれるのは、物凄く嬉しい。特に、向こうの世界の人には、この町のよさを、もっと知ってもらいたいと思う。
「これからも、どんどん増えて行くと思うし。風歌ちゃんが、有名になったら、大挙して押し寄せて来るかもしれないわね」
「いやー、いつのことになるのやら……」
二人で顔を見合わせると、静かに笑った。
そっかー、向こうの世界からも、お客様が来るのかぁ。だとしたら、恥ずかしい姿は、見せられないよね。
シルフィードとして、しっかりやるのはもちろん、ノア・マラソンも、頑張らないと。知ってる人は、来てないだろうけど、同郷の人に、みっともない走りは見せられないもん。
「風歌ちゃんは、根性があるから。初参加でも、完走できるかもしれないわね」
「はい。気合と根性で、必ず走り切って見せます!」
うおぉぉー、何か久しぶりに、熱いものがたぎって来た。最近、すっかり忘れていた、走ることへの情熱と陸上部魂が、よみがえって来た気がする。
よし、ノア・マラソン完走を目指して、気合で頑張りまっしょい!
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