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第6部 飛び立つ勇気
2-6どんな世界でも頂点は一席だけだよね
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午前中の仕事を終えたあと、私は、エア・ドルフィンに乗って、練習飛行をしていた。先日、降った雪が、まだあちこちに残っていて、物凄く寒い。上空は、さらに冷え込んでおり、顔は凍り付くほど、冷たくなっていた。
エア・ドルフィンは、気温が高い時は、全身に風を浴びて、物凄く気持ちがいい。でも、冬になると、全身に冷風を浴びて、とんでもない寒さだ。普通なら、かなり厚着をして飛ぶところだけど、さすがに、シルフィードでそれは出来ない。
着ぶくれした、シルフィードが飛んでいたら、様にならないもんね。華麗さが求められるので、見た目は非常に重要だ。一応、制服の下には、薄い防寒インナーを着ている。あと、ハンドル部分には『エア・ガード』を付けていた。
エア・ガードは、薄いマナ・フィールドを発生させ、風よけの役目を果たす装置。これは、先日リリーシャさんに、取り付けてもらったもので、直接、手に風が当たらないので、だいぶ楽だ。
とはいえ、いくら防寒対策をしても、上空は風が強いうえに、空気も冷たいので、滅茶苦茶、寒い。だから、最後は精神力で、我慢するしかなかった。
リリーシャさんには『見習いの内は、寒ければ、手袋やマフラーを使ってもいい』って言われたけど。さすがに、それはねぇ……。
どこを見回しても、厚着をしているシルフィードなんて、誰もいないし。一人前の人たちは、みんな、澄ました顔で飛んでいる。なので、私も気合で、平気なフリをしていた。
ただ、元々寒さには弱いほうなので、やや高度を低めに取り、かなりゆっくり飛んでいる。向かう先は〈東地区〉の海岸だ。海のほうが、内陸よりも、少し気温が高い。あと、少し砂浜で動いて、体を温めようかと思って。
住宅街の上を、しばらく飛んでいくと、海が見えてきた。〈エメラルド・ビーチ〉からは、少し離れており、何もない場所だ。ここなら、誰もいないので、思いっきり体を動かしても、問題ない。
だが、少し先のほうに、人影が見えた。熱心に、砂浜ダッシュで、走り込んでいる。そういえば、以前も、同じ光景を見た気がする――。
私は、少し離れたところに着陸すると、
「おーい、キラリンちゃーん!」
元気に呼びかけた。
すると、彼女はこちらに振り返り、
「キ・ラ・リ・スだっ!」
大きな声で返してくる。
ゆっくり近づいて行くと、彼女は腰に手を当て、息を整えていた。トレーニング・ウェアを着ているので、本格的に走り込んでいたようだ。
「今日も、格闘技の練習なの?」
「いや、今日は、そういうんじゃない。明日に備えてだ」
「明日って、何かあるの?」
「明日は、昇級試験だろーが! お前、どんだけボケてんだよ?」
「あー、そっか、そうだったね。あははっ」
私は、まだ先だけど、新人シルフィードにとって、明日は大変なイベントだ。
「お前、そんなんで、昇級試験、大丈夫なのか?」
「あー、私は四月から働き始めたから、まだ受けられないんだよね」
「なんだ、そうだったのか?」
「私がこっちの世界に来たのは、三月末で。入社したの、四月だから」
まだ、右も左も分からず、日々オロオロしていた時期だ。シルフィードの知識はおろか、この世界の常識すら、ほとんど知らなかった。あのころに比べれば、驚くほど成長したと思う。
「そういや、お前。異世界から、来たんだもんなぁ。ちっ……」
「って、何で舌打ち? なんか、変なこと言った?」
「異世界人とか、超カッコいいじゃないか。風歌の癖に、生意気だ!」
「いやいや、私、単に向こうから来ただけで。ごく普通の、一般人だけど――」
相変わらず、彼女のカッコイイと言う基準が、よく分からない。
「それより、キラリンちゃんこそ、大丈夫なの? 明日、試験なのに。昇級試験に、体力測定とかないよね?」
昇級試験は、学科試験と実技試験だ。学科は、いわゆるペーパー・テスト。学科試験に合格すると、後日、操縦の試験と、接客の試験が行われる。
「まぁ、確かに関係ないけどな。ちょっと、気持ちを落ち着けようと思ったんだ」
「もしかして、緊張してる?」
「って、してないし! たかが昇級試験だぞ。試合に比べたら、屁でもないさ」
その割に、いつもに比べて、元気がないというか、言葉に切れがない。そりゃ、誰だって、緊張するよね。昇級できるかどうかは、新人シルフィードにとっては、一大事なんだから。
「別に、いいんじゃないかな、緊張したって? だって、自分の人生が、掛かってるんだし。きっと、みんな同じ気持ちだよ」
「だから、緊張してないって、言ってるだろ!」
彼女は、少しイラついた声で返して来る。体からも、ピリピリした空気を発していた。
いつも、ノリのいい彼女にしては、珍しい反応だ。でも、気持ちは、よく分かる。緊張してる時って、物凄く神経質になるし、つい過敏に反応しちゃうんだよね。
「私は、まだ先だけど、凄く緊張してるよ。でも、それで、いいと思うんだ。緊張しないと思うと、逆に緊張しちゃうから。むしろ、認めちゃったほうが、逆に、冷静になれる気がするんだよね」
彼女は、私の言葉を聴いて、黙り込んだ。
しばらくして、
「ちっ、風歌の癖に、生意気だぞ。人の心を、勝手に読むんじゃない! さては貴様、魔眼の持ち主だな?」
何か、いつものノリに、戻った気がする。
「いや、心を読むも何も、表情に出てるけど」
「マジかっ?! くっ、結界をもっと強めたほうがいいのか……」
キラリスちゃんも、私と同じで、結構、喜怒哀楽の激しい性格だ。なので、表情がコロコロ変わって、結構わかりやすかった。おそらく私も、周りの人からは、いつもこんな感じに、見えているのかもしれない。
「それより、試験は大丈夫そう? 私は、実技には自信があるんだけど。学科のほうが、凄く心配なんだよねぇ。元々勉強は、苦手だし」
「まぁ、お前、頭悪そうだしなぁー」
「ちょっ! 確かに、頭は良くないけど、その言い方――。キラリンちゃんこそ、勉強はどうなのよ?」
「クフフフッ。マナ工学なら、任せておけ。昔から、いつも満点だ」
左手を顔にあて、指の隙間からこちらを覗きこみながら、笑みを浮かべる。
「へぇぇー、意外だね。マナ工学って、超難しいのに」
「意外とはなんだ、意外とは! 魔法って、超カッコいいだろ」
「あぁー、そういうことね……」
彼女は基本、カッコいいこと全般が、好きらしい。
「じゃあ、他の教科は?」
「フッ。自慢じゃないが、マナ工学以外は、さっぱりだ」
「って、何で自信満々に? それじゃ、全然ダメじゃん!」
「うっさいな。一応、他のも仕方なく勉強してるよ。合格点スレスレぐらいには」
何という偏り方。その尖った感じが、彼女らしいけどね。
「でも、一人前になったら、全部、必要でしょ?」
「まぁな。でも、ほどほどに出来れば、やって行けるだろ?」
実際、一人前になって、接客で使う知識は限られている。なので、学習科目の中で、必要ない知識も結構あるのは、学生時代と変わらない。実用的な知識と、人間形成に必要な教養は、別問題だからね。
「それは、そうかもだけど。それじゃあ、上は目指せないでしょ?」
「ちゃんと、目指してるよ。しっかり、頂点をな」
「それって――まさか『グランド・エンプレス』を目指してるの?!」
彼女の、意外な言葉に驚いた。だって、そこまで真剣そうに、見えないから。そもそも、彼女がシルフィードをやってること自体、かなり謎だし。
「いや、そっちじゃなくて、MMAのチャンピオンな」
「えっ?! 格闘技のほう? じゃあ、何でシルフィードになったの?」
格闘技をやるなら、そっちに専念することも、出来るはずだ。そもそも、上品さや華麗さを求めるシルフィードとは、完全に対極の存在だし。
「しょうがないだろ。ミラ先輩が、シルフィードやってたんだから」
「あー、なるほど……。そういうことね」
「なんだよ、悪いかよ?」
「ううん、憧れの人を追い掛けるのは、素敵だと思うよ。私も同じだし」
憧れの人に近づくために、何から何まで、真似したい気持ちは、物凄くよく分かる。私も、何から何まで、リリーシャさんの真似をしてるので。
「お前は、誰を追い掛けてるんだよ?」
「私は、リリーシャさん。でもって『グランド・エンプレス』目指してるんで」
「お前、マジか?! 上位階級しかなれないし。たった、一席しかないんだぞ」
「でも、格闘技のチャンピオンだって、一席でしょ?」
「ふむ、それもそうだな」
どの世界だって、頂点は一人しかなれないのは、同じことだ。
「クフフフッ、だが、甘い、甘いぞ! 無知なる者よ。我がいる限り、グランド・エンプレスになるのは、絶対に不可能だ」
彼女は、急に変なポーズをとって、自信ありげな表情を浮かべた。
「えっ? だって、チャンピオンを目指すなら、関係ないでしょ?」
「誰も、グランド・エンプレスを狙っていないとは、言っていないだろ」
「あー、ズルイ! 何で二つも狙ってるのよ?」
「うっさいな。シルフィードなら、可能か不可能かはおいといて、誰だって目指すだろうが」
彼女は、さも当たり前に答えた。
「そうかなぁ? 全然、興味がなさそうな人もいるけど」
「そんな、ぬるい奴らは、論外だ。頂点を目指すぐらいの野心がなけりゃ、何やっても、上手く行くはずないだろ?」
「何か意外だね。キラリンちゃんが、まともなこと、言うなんて――」
「って、全然、意外じゃないだろ! 私はいつだって、まともだぞ。それから、キ・ラ・リ・スなっ!」
結局、このあとも、なんやかんやと話して、盛り上がる。
ちょっと、変わったところも有るけど、意外と話が合うんだよね。同じ体育会系なのも、あるかもしれないけど。彼女は、意外と意識が高かった。しかも、何の躊躇もなく、それを口にする。
でも、誰だって、大なり小なり、上を目指しているんだよね。だったら、頂点を目指す気持ちでやらないと、勝てるわけがない。
なら、私も正々堂々と『トップを獲る』と言えるようにならないと。例え、笑われようと、誰にも認めてもらえなかろうと。それこそが、本当の覚悟だと思うから……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『久々の女子会でちょっとサプライズをやってみた』
人生には適度なサプライズ的サプリメントが必要なんだよ!
エア・ドルフィンは、気温が高い時は、全身に風を浴びて、物凄く気持ちがいい。でも、冬になると、全身に冷風を浴びて、とんでもない寒さだ。普通なら、かなり厚着をして飛ぶところだけど、さすがに、シルフィードでそれは出来ない。
着ぶくれした、シルフィードが飛んでいたら、様にならないもんね。華麗さが求められるので、見た目は非常に重要だ。一応、制服の下には、薄い防寒インナーを着ている。あと、ハンドル部分には『エア・ガード』を付けていた。
エア・ガードは、薄いマナ・フィールドを発生させ、風よけの役目を果たす装置。これは、先日リリーシャさんに、取り付けてもらったもので、直接、手に風が当たらないので、だいぶ楽だ。
とはいえ、いくら防寒対策をしても、上空は風が強いうえに、空気も冷たいので、滅茶苦茶、寒い。だから、最後は精神力で、我慢するしかなかった。
リリーシャさんには『見習いの内は、寒ければ、手袋やマフラーを使ってもいい』って言われたけど。さすがに、それはねぇ……。
どこを見回しても、厚着をしているシルフィードなんて、誰もいないし。一人前の人たちは、みんな、澄ました顔で飛んでいる。なので、私も気合で、平気なフリをしていた。
ただ、元々寒さには弱いほうなので、やや高度を低めに取り、かなりゆっくり飛んでいる。向かう先は〈東地区〉の海岸だ。海のほうが、内陸よりも、少し気温が高い。あと、少し砂浜で動いて、体を温めようかと思って。
住宅街の上を、しばらく飛んでいくと、海が見えてきた。〈エメラルド・ビーチ〉からは、少し離れており、何もない場所だ。ここなら、誰もいないので、思いっきり体を動かしても、問題ない。
だが、少し先のほうに、人影が見えた。熱心に、砂浜ダッシュで、走り込んでいる。そういえば、以前も、同じ光景を見た気がする――。
私は、少し離れたところに着陸すると、
「おーい、キラリンちゃーん!」
元気に呼びかけた。
すると、彼女はこちらに振り返り、
「キ・ラ・リ・スだっ!」
大きな声で返してくる。
ゆっくり近づいて行くと、彼女は腰に手を当て、息を整えていた。トレーニング・ウェアを着ているので、本格的に走り込んでいたようだ。
「今日も、格闘技の練習なの?」
「いや、今日は、そういうんじゃない。明日に備えてだ」
「明日って、何かあるの?」
「明日は、昇級試験だろーが! お前、どんだけボケてんだよ?」
「あー、そっか、そうだったね。あははっ」
私は、まだ先だけど、新人シルフィードにとって、明日は大変なイベントだ。
「お前、そんなんで、昇級試験、大丈夫なのか?」
「あー、私は四月から働き始めたから、まだ受けられないんだよね」
「なんだ、そうだったのか?」
「私がこっちの世界に来たのは、三月末で。入社したの、四月だから」
まだ、右も左も分からず、日々オロオロしていた時期だ。シルフィードの知識はおろか、この世界の常識すら、ほとんど知らなかった。あのころに比べれば、驚くほど成長したと思う。
「そういや、お前。異世界から、来たんだもんなぁ。ちっ……」
「って、何で舌打ち? なんか、変なこと言った?」
「異世界人とか、超カッコいいじゃないか。風歌の癖に、生意気だ!」
「いやいや、私、単に向こうから来ただけで。ごく普通の、一般人だけど――」
相変わらず、彼女のカッコイイと言う基準が、よく分からない。
「それより、キラリンちゃんこそ、大丈夫なの? 明日、試験なのに。昇級試験に、体力測定とかないよね?」
昇級試験は、学科試験と実技試験だ。学科は、いわゆるペーパー・テスト。学科試験に合格すると、後日、操縦の試験と、接客の試験が行われる。
「まぁ、確かに関係ないけどな。ちょっと、気持ちを落ち着けようと思ったんだ」
「もしかして、緊張してる?」
「って、してないし! たかが昇級試験だぞ。試合に比べたら、屁でもないさ」
その割に、いつもに比べて、元気がないというか、言葉に切れがない。そりゃ、誰だって、緊張するよね。昇級できるかどうかは、新人シルフィードにとっては、一大事なんだから。
「別に、いいんじゃないかな、緊張したって? だって、自分の人生が、掛かってるんだし。きっと、みんな同じ気持ちだよ」
「だから、緊張してないって、言ってるだろ!」
彼女は、少しイラついた声で返して来る。体からも、ピリピリした空気を発していた。
いつも、ノリのいい彼女にしては、珍しい反応だ。でも、気持ちは、よく分かる。緊張してる時って、物凄く神経質になるし、つい過敏に反応しちゃうんだよね。
「私は、まだ先だけど、凄く緊張してるよ。でも、それで、いいと思うんだ。緊張しないと思うと、逆に緊張しちゃうから。むしろ、認めちゃったほうが、逆に、冷静になれる気がするんだよね」
彼女は、私の言葉を聴いて、黙り込んだ。
しばらくして、
「ちっ、風歌の癖に、生意気だぞ。人の心を、勝手に読むんじゃない! さては貴様、魔眼の持ち主だな?」
何か、いつものノリに、戻った気がする。
「いや、心を読むも何も、表情に出てるけど」
「マジかっ?! くっ、結界をもっと強めたほうがいいのか……」
キラリスちゃんも、私と同じで、結構、喜怒哀楽の激しい性格だ。なので、表情がコロコロ変わって、結構わかりやすかった。おそらく私も、周りの人からは、いつもこんな感じに、見えているのかもしれない。
「それより、試験は大丈夫そう? 私は、実技には自信があるんだけど。学科のほうが、凄く心配なんだよねぇ。元々勉強は、苦手だし」
「まぁ、お前、頭悪そうだしなぁー」
「ちょっ! 確かに、頭は良くないけど、その言い方――。キラリンちゃんこそ、勉強はどうなのよ?」
「クフフフッ。マナ工学なら、任せておけ。昔から、いつも満点だ」
左手を顔にあて、指の隙間からこちらを覗きこみながら、笑みを浮かべる。
「へぇぇー、意外だね。マナ工学って、超難しいのに」
「意外とはなんだ、意外とは! 魔法って、超カッコいいだろ」
「あぁー、そういうことね……」
彼女は基本、カッコいいこと全般が、好きらしい。
「じゃあ、他の教科は?」
「フッ。自慢じゃないが、マナ工学以外は、さっぱりだ」
「って、何で自信満々に? それじゃ、全然ダメじゃん!」
「うっさいな。一応、他のも仕方なく勉強してるよ。合格点スレスレぐらいには」
何という偏り方。その尖った感じが、彼女らしいけどね。
「でも、一人前になったら、全部、必要でしょ?」
「まぁな。でも、ほどほどに出来れば、やって行けるだろ?」
実際、一人前になって、接客で使う知識は限られている。なので、学習科目の中で、必要ない知識も結構あるのは、学生時代と変わらない。実用的な知識と、人間形成に必要な教養は、別問題だからね。
「それは、そうかもだけど。それじゃあ、上は目指せないでしょ?」
「ちゃんと、目指してるよ。しっかり、頂点をな」
「それって――まさか『グランド・エンプレス』を目指してるの?!」
彼女の、意外な言葉に驚いた。だって、そこまで真剣そうに、見えないから。そもそも、彼女がシルフィードをやってること自体、かなり謎だし。
「いや、そっちじゃなくて、MMAのチャンピオンな」
「えっ?! 格闘技のほう? じゃあ、何でシルフィードになったの?」
格闘技をやるなら、そっちに専念することも、出来るはずだ。そもそも、上品さや華麗さを求めるシルフィードとは、完全に対極の存在だし。
「しょうがないだろ。ミラ先輩が、シルフィードやってたんだから」
「あー、なるほど……。そういうことね」
「なんだよ、悪いかよ?」
「ううん、憧れの人を追い掛けるのは、素敵だと思うよ。私も同じだし」
憧れの人に近づくために、何から何まで、真似したい気持ちは、物凄くよく分かる。私も、何から何まで、リリーシャさんの真似をしてるので。
「お前は、誰を追い掛けてるんだよ?」
「私は、リリーシャさん。でもって『グランド・エンプレス』目指してるんで」
「お前、マジか?! 上位階級しかなれないし。たった、一席しかないんだぞ」
「でも、格闘技のチャンピオンだって、一席でしょ?」
「ふむ、それもそうだな」
どの世界だって、頂点は一人しかなれないのは、同じことだ。
「クフフフッ、だが、甘い、甘いぞ! 無知なる者よ。我がいる限り、グランド・エンプレスになるのは、絶対に不可能だ」
彼女は、急に変なポーズをとって、自信ありげな表情を浮かべた。
「えっ? だって、チャンピオンを目指すなら、関係ないでしょ?」
「誰も、グランド・エンプレスを狙っていないとは、言っていないだろ」
「あー、ズルイ! 何で二つも狙ってるのよ?」
「うっさいな。シルフィードなら、可能か不可能かはおいといて、誰だって目指すだろうが」
彼女は、さも当たり前に答えた。
「そうかなぁ? 全然、興味がなさそうな人もいるけど」
「そんな、ぬるい奴らは、論外だ。頂点を目指すぐらいの野心がなけりゃ、何やっても、上手く行くはずないだろ?」
「何か意外だね。キラリンちゃんが、まともなこと、言うなんて――」
「って、全然、意外じゃないだろ! 私はいつだって、まともだぞ。それから、キ・ラ・リ・スなっ!」
結局、このあとも、なんやかんやと話して、盛り上がる。
ちょっと、変わったところも有るけど、意外と話が合うんだよね。同じ体育会系なのも、あるかもしれないけど。彼女は、意外と意識が高かった。しかも、何の躊躇もなく、それを口にする。
でも、誰だって、大なり小なり、上を目指しているんだよね。だったら、頂点を目指す気持ちでやらないと、勝てるわけがない。
なら、私も正々堂々と『トップを獲る』と言えるようにならないと。例え、笑われようと、誰にも認めてもらえなかろうと。それこそが、本当の覚悟だと思うから……。
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次回――
『久々の女子会でちょっとサプライズをやってみた』
人生には適度なサプライズ的サプリメントが必要なんだよ!
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