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23.愛しい氷の貴公子 ~ラインハルト~
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それから、ほどなくして騎士団と魔法騎士団の救援部隊が到着した。その場に待機していたわたしたちは、その魔法騎士団からすぐに本部へ帰還することを求められた。不本意である。
「しかし、ラファエルが、わたしの婚約者が戦闘中のはずなのだ。同行しても差し支えないのではないか?」
「いえ、同行となりますれば、殿下の御身の安全を守るための人員が必要になります。何卒本部へ先にお帰りくださいますようにお願いいたします」
わたしは、現場まで同行すると言ったのだが、先に本部に帰還するようにと強硬に言われてしまった。
「ラインハルト様あ、僕う、怖かったですう……」
レヒナー男爵令息は、魔獣から逃げて来てからわたしにすがりついたままだ。現場では、怖い思いをしたのだろうと考えて、なだめたり慰めたりしていた。彼は、合同演習のときも疑似魔獣が凶暴化した場面に出くわしている不運な少年だ。多少のことは大目に見ても仕方ないと判断したのだ。
しかし、レヒナー男爵令息は、本部へ到着してもわたしから離れようとはしない。
「本部へ帰って来たからもう大丈夫だ。もう離れなさい」
「あちらの看護場所へ行きましょう。さあ、殿下の腕を放して……」
「僕う、怖いんですう!」
「怖かったのならなおさら、学校の医務官に診てもらいなさい」
「……」
わたしが、離れるように促したり、アルブレヒトやディートフリートが手を放すようにと注意をしたりしても、レヒナー男爵令息はまったく無視している状況だ。まだ怖がっているのであれば、強硬に引き離すのも良くないことだろうと考えたのが裏目に出た。
先生がたも、救援部隊を出さなければならない事態になって混乱している。彼は、特に私を害そうとしているわけではないのだから、この程度のことで注意をするよう求めるわけにもいかない。
体をこすりつけるような動作は、この少年の性的に放埓な行動を思い出させる。
この馴れ馴れしい態度はどうしたものか。
かなりうんざりしていたところへ、ラファエルとマルティンが本部に帰還したという連絡が入った。
「ラファエルが帰って来たか」
わたしは、本部から飛び出してラファエルを迎えた。わたしの横にはディートフリートが、そして、腕にはレヒナー男爵令息がぶら下がったままだ。アルブレヒトは、わたしたちの後ろにいる。
こちらに歩いてくるラファエルとマルティンの後ろには、牛ほどもあるヘルハウンドが氷漬けにされて運ばれてきていた。
今回討伐した魔獣の後片付け等については、当初の予定を変更して、すべて魔法騎士団が行うことになってしまったので学校の生徒は手を出せない。なぜ、そうしたのかがよくわかる。
あのヘルハウンドの大きさは異常だ。
ヘルハウンドはそれほど大きくなる魔獣ではなかったはずだ。このようなものが出て来てしまっては、今後の魔獣への対応を変更するのは必然だろう。
そして、二年生が担架で運ばれてきていた。彼が、最初にヘルハウンドの群れに出会ったのだろう。状態が酷くなければいいのだが。
ラファエルとマルティンは、見たところ、けがなどはしていないようだ。しかし、明らかに疲れた様子のラファエルに、わたしは声をかけた。
「ラファエル、無事か?」
「ラインハルトでん……」
「ラインハルト様ああ、怖いいい。あのおっきいのが凍っちゃってるよお!」
わたしの声に答えようとしたラファエルの言葉を遮って、レヒナー男爵令息が甲高い叫び声を上げた。ヘルハウンドに遭遇した時の恐怖が蘇ったのではないだろう。なぜならば、彼の声がとても楽しげだったからだ。
他者の会話を邪魔するというのは、非常に無礼な行動である。しかも、王族とその婚約者の会話である。いいかげん、この図々しい少年をどうにかしなければならないだろう。
礼儀作法も、シュテルン魔法学校の学習内容に含まれているはずだ。
それは、わたしがレヒナー男爵令息の腕を振り払うのと同時だった。
「レヒナー男爵令息、そのように王族に触れているのは無礼なことです。すぐにラインハルト様から離れなさい」
ラファエルは、周囲を凍らせるような冷たく美しい声で、レヒナー男爵令息に注意を与えたのだ。
そう、ラファエルは、自分の言葉が遮られたという無礼より、わたしに対する無礼を優先する。戦闘の後で、疲れているだろうし、興奮状態であるだろう。そうであっても、わたしを優先するのだ。
ああ、なんと愛しいのだろう。
ラファエルの正しい言葉に、周囲の空気が凍りついていくのがわかる。氷の貴公子と呼ばれているのは、わたしも知っている。それは、ラファエルを称賛する言葉なのだ。
王族の婚約者にふさわしい態度と言葉に、誰もが黙るしかないと思える状況だと思っていたのだが。
「ひっひどいっ! ラファエルって、どうしてっ、どうして僕にそんな意地悪を言うんですかあああ! うわあああああんっ!」
レヒナー男爵令息が、叫び声を上げて泣き出した。その尋常でない様子に、周りの生徒も騎士も、魔法騎士も、とにかく全員がひどく驚いている。
まるで、幼児のようだ。
とても魔法学校の生徒の行動とは思えないその姿に、周囲に呆れが広がっていく。
そもそも、ラファエルを呼び捨てにするとは、なんと無礼なのだろうか。
ラファエルは、美しい氷河の瞳でわたしを見つめた。これ以上、ラファエルが注意を与えてもレヒナー男爵令息は騒ぎ立てるだけであると判断して、わたしの言葉を求めているのだろう。しかし、わたしが何らかの指示を与えるまでもなく、わたしと同様に不快な気持ちになったのであろう三人が、声を上げた。
「帰ってきた途端に怖いと騒がれるなどとは、心外だな。ましてや、君たちを助けたラファエルを悪く言うなど言語道断だ」
「ふえ?」
「人前でそのように泣くなどと、貴族として恥ずかしくないのか?」
「うえ?」
「何度か、ラインハルト殿下に対しているとは思えない、図々しいふるまいを注意したが、耳を貸さなかったではないか。それと同じことを、ラファエルに注意されたら騒ぎ出すとは何事であるか」
「くえええええ?」
まず、魔獣を討伐したばかりで気が立っているマルティンが、レヒナー男爵令息の言葉に不快を示した。そして、アルブレヒトとディートフリートが、先ほどより厳しい言葉で注意を与えている。
それに対して、レヒナー男爵令息は奇妙な声を上げている。それだけを取り上げても、貴族としてどころか、平民であっても魔法学校へ来る人物としての素養がまったくないだろう。
しかし、いつまでもレヒナー男爵令息に関わっている場合ではない。
「ラファエル、疲れたであろう。早くわたしに、無事な顔を見せておくれ」
不快な空気を入れ替えるには、ラファエルに触れるのがもっとも効果的だ。わたしは、大きな歩幅でラファエルに近づいて、今度こそ労うための声をかけた。
「はい、ラファエル、婚約者としてラインハルト殿下のお名を汚すことのないよう、魔獣を討伐してまいりました」
「よくやった、ラファエル。無事でよかった……」
わたしは、美しい礼を取ったラファエルに近づき、その顔を両手で包んで額にキスをしてから、腕を回して体を抱きしめた。
わたしは、戦闘後で少し体温の上がっているラファエルを堪能する。
「相変わらずの溺愛ぶりで」「お二人の邪魔をしたら馬に蹴られてしまいますわね」「ああ、眼福……」
周囲の空気が柔らかなものに変わっていくのを感じる。この学校の生徒たちは、わたしとラファエルをいつも祝福してくれているのだ。
わたしはラファエルの首筋に顔を埋めて、ブルーローズのようなラファエルの香りを堪能する。
「ラインハルト殿下、そろそろ、後片付けに取り掛からねばならないのですが」
「ああ、ラファエルが後片付けをする必要はない。調査の必要があるので、騎士団と魔法騎士団で魔獣の遺体は処理するそうだ、それより、本部のテントに入って休憩をしよう。わたしとしたことが、ラファエルをすぐに休ませてあげることができなかったね」
「いえ、僕はまだ体力も魔力も残っております。休憩につきましては、どうぞ、ラインハルト様のお心のままに」
「では、中に入ろうか」
ラファエルを抱きしめるのに夢中になっていた。ラファエルは疲れているのだろうから休憩をさせなければならなかったのだ。わたしとしたことが。
わたしは、まだ動く気であったラファエルの腰を抱いてテントに入り、生徒会メンバーがいるベンチまで連れて行った。大人しくわたしに連れられるラファエルはひどく愛らしい。
ベンチでお茶を飲み、今日の実習について皆で語り合う。凶暴化した魔獣については、今後それぞれの立場で対応していかねばならないだろう。それは、わたしたち王族や高位貴族の責務でもある。
レヒナー男爵令息は、あの直後、副学長と作法の先生に腕をつかまれ、強制的にその場から連れていかれていたというのを、マルティンが鼻息荒く教えてくれた。本当に再教育をしてもらわなければ、わたしたちが注意をするだけでは追いつかない。
「貴族籍にあるというのに、あれほどの礼儀知らずでは、どうしようもないな」
マルティンはレヒナー男爵令息への怒りを隠すこともなく、そう吐き捨てた。魔獣の討伐は命がけである。命がけで自分が助けた相手が幼児のように騒ぎ立て、ともに戦った仲間を悪し様に言うのを聞いては、怒りを覚えるのは当然だろう。
ラファエルは疲れた様子で、わたしに身を預けてくる。また、何かを考えているようだ。疲れた頭では考えがまとまらないだろうに。
わたしは周囲の生温い視線を感じながら、わたしの愛しい氷の貴公子、ラファエルの髪にキスをした。
★★★★★★★★
次回からラファエル視点に戻ります。
「しかし、ラファエルが、わたしの婚約者が戦闘中のはずなのだ。同行しても差し支えないのではないか?」
「いえ、同行となりますれば、殿下の御身の安全を守るための人員が必要になります。何卒本部へ先にお帰りくださいますようにお願いいたします」
わたしは、現場まで同行すると言ったのだが、先に本部に帰還するようにと強硬に言われてしまった。
「ラインハルト様あ、僕う、怖かったですう……」
レヒナー男爵令息は、魔獣から逃げて来てからわたしにすがりついたままだ。現場では、怖い思いをしたのだろうと考えて、なだめたり慰めたりしていた。彼は、合同演習のときも疑似魔獣が凶暴化した場面に出くわしている不運な少年だ。多少のことは大目に見ても仕方ないと判断したのだ。
しかし、レヒナー男爵令息は、本部へ到着してもわたしから離れようとはしない。
「本部へ帰って来たからもう大丈夫だ。もう離れなさい」
「あちらの看護場所へ行きましょう。さあ、殿下の腕を放して……」
「僕う、怖いんですう!」
「怖かったのならなおさら、学校の医務官に診てもらいなさい」
「……」
わたしが、離れるように促したり、アルブレヒトやディートフリートが手を放すようにと注意をしたりしても、レヒナー男爵令息はまったく無視している状況だ。まだ怖がっているのであれば、強硬に引き離すのも良くないことだろうと考えたのが裏目に出た。
先生がたも、救援部隊を出さなければならない事態になって混乱している。彼は、特に私を害そうとしているわけではないのだから、この程度のことで注意をするよう求めるわけにもいかない。
体をこすりつけるような動作は、この少年の性的に放埓な行動を思い出させる。
この馴れ馴れしい態度はどうしたものか。
かなりうんざりしていたところへ、ラファエルとマルティンが本部に帰還したという連絡が入った。
「ラファエルが帰って来たか」
わたしは、本部から飛び出してラファエルを迎えた。わたしの横にはディートフリートが、そして、腕にはレヒナー男爵令息がぶら下がったままだ。アルブレヒトは、わたしたちの後ろにいる。
こちらに歩いてくるラファエルとマルティンの後ろには、牛ほどもあるヘルハウンドが氷漬けにされて運ばれてきていた。
今回討伐した魔獣の後片付け等については、当初の予定を変更して、すべて魔法騎士団が行うことになってしまったので学校の生徒は手を出せない。なぜ、そうしたのかがよくわかる。
あのヘルハウンドの大きさは異常だ。
ヘルハウンドはそれほど大きくなる魔獣ではなかったはずだ。このようなものが出て来てしまっては、今後の魔獣への対応を変更するのは必然だろう。
そして、二年生が担架で運ばれてきていた。彼が、最初にヘルハウンドの群れに出会ったのだろう。状態が酷くなければいいのだが。
ラファエルとマルティンは、見たところ、けがなどはしていないようだ。しかし、明らかに疲れた様子のラファエルに、わたしは声をかけた。
「ラファエル、無事か?」
「ラインハルトでん……」
「ラインハルト様ああ、怖いいい。あのおっきいのが凍っちゃってるよお!」
わたしの声に答えようとしたラファエルの言葉を遮って、レヒナー男爵令息が甲高い叫び声を上げた。ヘルハウンドに遭遇した時の恐怖が蘇ったのではないだろう。なぜならば、彼の声がとても楽しげだったからだ。
他者の会話を邪魔するというのは、非常に無礼な行動である。しかも、王族とその婚約者の会話である。いいかげん、この図々しい少年をどうにかしなければならないだろう。
礼儀作法も、シュテルン魔法学校の学習内容に含まれているはずだ。
それは、わたしがレヒナー男爵令息の腕を振り払うのと同時だった。
「レヒナー男爵令息、そのように王族に触れているのは無礼なことです。すぐにラインハルト様から離れなさい」
ラファエルは、周囲を凍らせるような冷たく美しい声で、レヒナー男爵令息に注意を与えたのだ。
そう、ラファエルは、自分の言葉が遮られたという無礼より、わたしに対する無礼を優先する。戦闘の後で、疲れているだろうし、興奮状態であるだろう。そうであっても、わたしを優先するのだ。
ああ、なんと愛しいのだろう。
ラファエルの正しい言葉に、周囲の空気が凍りついていくのがわかる。氷の貴公子と呼ばれているのは、わたしも知っている。それは、ラファエルを称賛する言葉なのだ。
王族の婚約者にふさわしい態度と言葉に、誰もが黙るしかないと思える状況だと思っていたのだが。
「ひっひどいっ! ラファエルって、どうしてっ、どうして僕にそんな意地悪を言うんですかあああ! うわあああああんっ!」
レヒナー男爵令息が、叫び声を上げて泣き出した。その尋常でない様子に、周りの生徒も騎士も、魔法騎士も、とにかく全員がひどく驚いている。
まるで、幼児のようだ。
とても魔法学校の生徒の行動とは思えないその姿に、周囲に呆れが広がっていく。
そもそも、ラファエルを呼び捨てにするとは、なんと無礼なのだろうか。
ラファエルは、美しい氷河の瞳でわたしを見つめた。これ以上、ラファエルが注意を与えてもレヒナー男爵令息は騒ぎ立てるだけであると判断して、わたしの言葉を求めているのだろう。しかし、わたしが何らかの指示を与えるまでもなく、わたしと同様に不快な気持ちになったのであろう三人が、声を上げた。
「帰ってきた途端に怖いと騒がれるなどとは、心外だな。ましてや、君たちを助けたラファエルを悪く言うなど言語道断だ」
「ふえ?」
「人前でそのように泣くなどと、貴族として恥ずかしくないのか?」
「うえ?」
「何度か、ラインハルト殿下に対しているとは思えない、図々しいふるまいを注意したが、耳を貸さなかったではないか。それと同じことを、ラファエルに注意されたら騒ぎ出すとは何事であるか」
「くえええええ?」
まず、魔獣を討伐したばかりで気が立っているマルティンが、レヒナー男爵令息の言葉に不快を示した。そして、アルブレヒトとディートフリートが、先ほどより厳しい言葉で注意を与えている。
それに対して、レヒナー男爵令息は奇妙な声を上げている。それだけを取り上げても、貴族としてどころか、平民であっても魔法学校へ来る人物としての素養がまったくないだろう。
しかし、いつまでもレヒナー男爵令息に関わっている場合ではない。
「ラファエル、疲れたであろう。早くわたしに、無事な顔を見せておくれ」
不快な空気を入れ替えるには、ラファエルに触れるのがもっとも効果的だ。わたしは、大きな歩幅でラファエルに近づいて、今度こそ労うための声をかけた。
「はい、ラファエル、婚約者としてラインハルト殿下のお名を汚すことのないよう、魔獣を討伐してまいりました」
「よくやった、ラファエル。無事でよかった……」
わたしは、美しい礼を取ったラファエルに近づき、その顔を両手で包んで額にキスをしてから、腕を回して体を抱きしめた。
わたしは、戦闘後で少し体温の上がっているラファエルを堪能する。
「相変わらずの溺愛ぶりで」「お二人の邪魔をしたら馬に蹴られてしまいますわね」「ああ、眼福……」
周囲の空気が柔らかなものに変わっていくのを感じる。この学校の生徒たちは、わたしとラファエルをいつも祝福してくれているのだ。
わたしはラファエルの首筋に顔を埋めて、ブルーローズのようなラファエルの香りを堪能する。
「ラインハルト殿下、そろそろ、後片付けに取り掛からねばならないのですが」
「ああ、ラファエルが後片付けをする必要はない。調査の必要があるので、騎士団と魔法騎士団で魔獣の遺体は処理するそうだ、それより、本部のテントに入って休憩をしよう。わたしとしたことが、ラファエルをすぐに休ませてあげることができなかったね」
「いえ、僕はまだ体力も魔力も残っております。休憩につきましては、どうぞ、ラインハルト様のお心のままに」
「では、中に入ろうか」
ラファエルを抱きしめるのに夢中になっていた。ラファエルは疲れているのだろうから休憩をさせなければならなかったのだ。わたしとしたことが。
わたしは、まだ動く気であったラファエルの腰を抱いてテントに入り、生徒会メンバーがいるベンチまで連れて行った。大人しくわたしに連れられるラファエルはひどく愛らしい。
ベンチでお茶を飲み、今日の実習について皆で語り合う。凶暴化した魔獣については、今後それぞれの立場で対応していかねばならないだろう。それは、わたしたち王族や高位貴族の責務でもある。
レヒナー男爵令息は、あの直後、副学長と作法の先生に腕をつかまれ、強制的にその場から連れていかれていたというのを、マルティンが鼻息荒く教えてくれた。本当に再教育をしてもらわなければ、わたしたちが注意をするだけでは追いつかない。
「貴族籍にあるというのに、あれほどの礼儀知らずでは、どうしようもないな」
マルティンはレヒナー男爵令息への怒りを隠すこともなく、そう吐き捨てた。魔獣の討伐は命がけである。命がけで自分が助けた相手が幼児のように騒ぎ立て、ともに戦った仲間を悪し様に言うのを聞いては、怒りを覚えるのは当然だろう。
ラファエルは疲れた様子で、わたしに身を預けてくる。また、何かを考えているようだ。疲れた頭では考えがまとまらないだろうに。
わたしは周囲の生温い視線を感じながら、わたしの愛しい氷の貴公子、ラファエルの髪にキスをした。
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