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26.魔法騎士団長からのご褒美に大喜びです
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「ラインハルト殿下、ラファエル、久しぶりだね」
「叔父上……いえ、ここではロルバッハ魔法騎士団長ですね。お久しぶりです」
「エンゲルブレヒト公爵……魔法騎士団長、お久しぶりでございます」
「ラインハルト殿下とラファエルに会えるのを楽しみにしていたのだが、このようなことになってしまって残念だよ。迷惑をかけたな。
ビュッセル侯爵令息、ヴァネルハー辺境伯令息、フェストン伯爵令息、将来有望な君たちがせっかく訓練に来てくれたのに騒がせてしまったね」
アルノルト・ツヴァイ・フォン・シュテルン・ロルバッハ魔法騎士団長は、現国王陛下の弟君だ。すでに王位継承権を放棄して、臣籍降下をされ、エンゲルブレヒト公爵となられている。
この方の伴侶の兄が、我がシュテルン魔法学校のホフマン学長になる。ラインハルト様と僕が魔法学校へ入学する前には、よく王都郊外の森への『狩』にいつも同行してくださったものだ。
もともと、ロルバッハ魔法騎士団長とは、訓練が終ってからゆっくりとお話をするという打ち合わせができていた。だから、最初のご挨拶に行かなかったのだが、そのおかげで面倒なことになってしまったような……
これも、物語の強制力かもしれない。
そう、僕が悪役令息になってラインハルト様が幸せに過ごされるためならば、仕方ないだろう。
僕たちは、ロルバッハ魔法騎士団長に、僕がガウク分隊長と戦闘訓練をすることになった経緯をお話しした。ビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息の話の内容も、僕とほぼ同じだ。バウマン分隊長に確認した内容とも合致しているとロルバッハ魔法騎士団長はおっしゃっているのだが、ガウク分隊長からの聞き取りは芳しくないようだ。
「記憶がはっきりしないと?」
「そうなのだよ。誤魔化しているのかとも考えたのだが、治療魔術師の診断でもどうやら記憶に欠落があるというのは嘘ではないらしい」
僕たちより先に聞き取りを終えているガウク分隊長は、僕に詰め寄る前から医務室へ運び込まれるまでの記憶が曖昧になっていると、ロルバッハ魔法騎士団長はお話しされた。
シモンが僕のことを悪し様に言っているのは、他の魔法騎士も聞いていたらしい。しかし、訓練と称した暴力を使ってほしいというようなことは言っていなかったそうだ。いつもの「悪役令息ラファエルに虐められている」という話しかしていないと。
それについては、シモンとウーリヒ先生も同じように証言しているという。
したがって、僕に『制裁』を加えようとしたのはガウク分隊長の独断ということになるのだが、そのあたりのことを覚えていないというのでは……
「なぜウーリヒ先生は、レヒナー男爵令息を連れて魔法騎士団へいらっしゃったのでしょう」
「そうですね。レヒナー男爵令息がいなければ、このようなことは起きなかったと思われますが」
「ウーリヒは、わたしと魔法学校の同級生でね。ときどき、魔術師団に訓練に行く魔法学校の生徒に魔法騎士団の訓練風景を見学させてほしいと依頼してくるのだよ」
ビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息の疑問に、ロルバッハ魔法騎士団長は困ったような表情でそうお答えになった。いつもは、何人か連れてくるのに今日は一人だったことに驚いたそうだ。
今回、案内役になっていたのがガウク分隊長だったようで、シモンの話を聞くことになったのだろう。シモンは可愛らしいし、親切に対応しようと思ったのかもしれない。
ロルバッハ魔法騎士団長は、当分の間、ウーリヒ先生からの見学の申し入れは受け入れないことにしたという。このようなことになってしまったことは、ロルバッハ魔法騎士団長にもウーリヒ先生にも、重く受け止められているようだった。
「今、君たちからも聞き取りができて、状況は固まったといえる。記憶がなくても懲戒の対象にはなるだろう。魔法学校の生徒相手に言いがかりをつけて、訓練と称した制裁を加えようとしたわけだからね。
しかし、ラファエルの実力を知っていれば、あのように無茶な仕掛けはしなかっただろうな」
「いえ、実はあのときのガウク分隊長のことで気になることがあったのですが」
「気になること?」
「はい、僕と手合わせをしている最中の動きが、おかしいといいますか、鈍いような気がしていました」
「ふむ……」
僕は、ガウク分隊長の戦闘訓練中の動きが鈍いことが気になったとロルバッハ魔法騎士団長にお伝えした。
「ガウク分隊長は、動作に切れがおありではなく、体や剣に纏わせている魔力にも澱みが見られました。何より、たかが魔法学校の生徒の僕にあれほどあっさり負けるなどとは考えられないと思われます」
「いや、ラファエル、君に関しては、我が魔法騎士団の団員が敵わないことは考えられるので、それはおかしいとは言わない」
「いえ、そんなはずは」
ロルバッハ魔法騎士団長も、王宮管理の団員のことをご謙遜されることはないと思う。さらに僕が、対人戦を苦手としているのはご存じのはずだ。
しかし、その言葉を聞いたラインハルト様は僕の肩を抱き寄せて顔を見て微笑み、マルティン様は笑いを堪えるように肩を震わせ、ビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息は大きく頷いている。
皆の反応がおかしい。
「うむ。動きが鈍かったというのは、記憶が曖昧になっていることと関係があるかもしれない。ありがとう、ラファエル」
「お役に立てましたら、ようございました」
ロルバッハ魔法騎士団長は、魔法騎士団員の不品行を再度詫びるとともに、今後、訓練だけでなくこのメンバーで『狩』に行こうとお約束くださった。
これにはビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息が喜びを隠せない様子だ。魔法騎士団長と『狩』に行く機会など望んでも与えられることはないのだ。思わぬご褒美をいただいたというのが、僕たちの気持ちだと言って良いだろう。
僕たちは、少し気分を高揚させて魔法騎士団長室を辞した。
「叔父上……いえ、ここではロルバッハ魔法騎士団長ですね。お久しぶりです」
「エンゲルブレヒト公爵……魔法騎士団長、お久しぶりでございます」
「ラインハルト殿下とラファエルに会えるのを楽しみにしていたのだが、このようなことになってしまって残念だよ。迷惑をかけたな。
ビュッセル侯爵令息、ヴァネルハー辺境伯令息、フェストン伯爵令息、将来有望な君たちがせっかく訓練に来てくれたのに騒がせてしまったね」
アルノルト・ツヴァイ・フォン・シュテルン・ロルバッハ魔法騎士団長は、現国王陛下の弟君だ。すでに王位継承権を放棄して、臣籍降下をされ、エンゲルブレヒト公爵となられている。
この方の伴侶の兄が、我がシュテルン魔法学校のホフマン学長になる。ラインハルト様と僕が魔法学校へ入学する前には、よく王都郊外の森への『狩』にいつも同行してくださったものだ。
もともと、ロルバッハ魔法騎士団長とは、訓練が終ってからゆっくりとお話をするという打ち合わせができていた。だから、最初のご挨拶に行かなかったのだが、そのおかげで面倒なことになってしまったような……
これも、物語の強制力かもしれない。
そう、僕が悪役令息になってラインハルト様が幸せに過ごされるためならば、仕方ないだろう。
僕たちは、ロルバッハ魔法騎士団長に、僕がガウク分隊長と戦闘訓練をすることになった経緯をお話しした。ビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息の話の内容も、僕とほぼ同じだ。バウマン分隊長に確認した内容とも合致しているとロルバッハ魔法騎士団長はおっしゃっているのだが、ガウク分隊長からの聞き取りは芳しくないようだ。
「記憶がはっきりしないと?」
「そうなのだよ。誤魔化しているのかとも考えたのだが、治療魔術師の診断でもどうやら記憶に欠落があるというのは嘘ではないらしい」
僕たちより先に聞き取りを終えているガウク分隊長は、僕に詰め寄る前から医務室へ運び込まれるまでの記憶が曖昧になっていると、ロルバッハ魔法騎士団長はお話しされた。
シモンが僕のことを悪し様に言っているのは、他の魔法騎士も聞いていたらしい。しかし、訓練と称した暴力を使ってほしいというようなことは言っていなかったそうだ。いつもの「悪役令息ラファエルに虐められている」という話しかしていないと。
それについては、シモンとウーリヒ先生も同じように証言しているという。
したがって、僕に『制裁』を加えようとしたのはガウク分隊長の独断ということになるのだが、そのあたりのことを覚えていないというのでは……
「なぜウーリヒ先生は、レヒナー男爵令息を連れて魔法騎士団へいらっしゃったのでしょう」
「そうですね。レヒナー男爵令息がいなければ、このようなことは起きなかったと思われますが」
「ウーリヒは、わたしと魔法学校の同級生でね。ときどき、魔術師団に訓練に行く魔法学校の生徒に魔法騎士団の訓練風景を見学させてほしいと依頼してくるのだよ」
ビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息の疑問に、ロルバッハ魔法騎士団長は困ったような表情でそうお答えになった。いつもは、何人か連れてくるのに今日は一人だったことに驚いたそうだ。
今回、案内役になっていたのがガウク分隊長だったようで、シモンの話を聞くことになったのだろう。シモンは可愛らしいし、親切に対応しようと思ったのかもしれない。
ロルバッハ魔法騎士団長は、当分の間、ウーリヒ先生からの見学の申し入れは受け入れないことにしたという。このようなことになってしまったことは、ロルバッハ魔法騎士団長にもウーリヒ先生にも、重く受け止められているようだった。
「今、君たちからも聞き取りができて、状況は固まったといえる。記憶がなくても懲戒の対象にはなるだろう。魔法学校の生徒相手に言いがかりをつけて、訓練と称した制裁を加えようとしたわけだからね。
しかし、ラファエルの実力を知っていれば、あのように無茶な仕掛けはしなかっただろうな」
「いえ、実はあのときのガウク分隊長のことで気になることがあったのですが」
「気になること?」
「はい、僕と手合わせをしている最中の動きが、おかしいといいますか、鈍いような気がしていました」
「ふむ……」
僕は、ガウク分隊長の戦闘訓練中の動きが鈍いことが気になったとロルバッハ魔法騎士団長にお伝えした。
「ガウク分隊長は、動作に切れがおありではなく、体や剣に纏わせている魔力にも澱みが見られました。何より、たかが魔法学校の生徒の僕にあれほどあっさり負けるなどとは考えられないと思われます」
「いや、ラファエル、君に関しては、我が魔法騎士団の団員が敵わないことは考えられるので、それはおかしいとは言わない」
「いえ、そんなはずは」
ロルバッハ魔法騎士団長も、王宮管理の団員のことをご謙遜されることはないと思う。さらに僕が、対人戦を苦手としているのはご存じのはずだ。
しかし、その言葉を聞いたラインハルト様は僕の肩を抱き寄せて顔を見て微笑み、マルティン様は笑いを堪えるように肩を震わせ、ビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息は大きく頷いている。
皆の反応がおかしい。
「うむ。動きが鈍かったというのは、記憶が曖昧になっていることと関係があるかもしれない。ありがとう、ラファエル」
「お役に立てましたら、ようございました」
ロルバッハ魔法騎士団長は、魔法騎士団員の不品行を再度詫びるとともに、今後、訓練だけでなくこのメンバーで『狩』に行こうとお約束くださった。
これにはビュッセル侯爵令息とヴァネルハー辺境伯令息が喜びを隠せない様子だ。魔法騎士団長と『狩』に行く機会など望んでも与えられることはないのだ。思わぬご褒美をいただいたというのが、僕たちの気持ちだと言って良いだろう。
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