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8話 一方その頃、王宮では
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「……貴様、自分が何をしたのかわかっているのか?」
「えっ、ど、ど、どうされたのですか。父上」
「いや、我が愚かであった。息子が愚かなれば父もまた愚かなり、か。まさに愚問であった。もしも己がしたことをわかっていようものなら、そもそも彼女を追い出すわけもなし……」
他国にて開催されていたサミットから帰国した父は、激昂していた。
王子アルフレドは父を出迎えるよりも前に父の使いの伝令によって王の間に呼び出され、そして跪かされていた。
「聖女メリアを追放するなど、何を考えているんだ。彼女を国の外に出したらどうなると思っている?」
父の声は、ひどく剣呑であった。思わずアルフレドの背筋が震える。
「せ、聖女なら真なる聖女、エミリーがおります!」
「この国の護りを憂いているのではない!」
アルフレドは目をパチクリとした。
国の護りを憂いているのではない? 父の言葉を頭の中で反芻する。
メリアは、聖女としては、まあ役に立っていた。一応は給料分の働きはしていた──と思う。ニセモノながら。
そのメリアを追い出したせいで魔族に対抗する国の力が衰えてしまったということに、父は腹を立てているのだとアルフレドは考えていたが、違うのか。
「どちらかを追い出すのなら、エミリーの方にすればまだ良いものを……」
「なっ!? 何を言い出すのですか、父上! エミリーが我が国の壁に結界を施してくれているおかげで、我が国の国民たちは魔族の脅威に怯えることなく暮らせているのですよ!?」
「聖女など、代わりがおるわい!」
「お、恐れながら父上! 聖女に代わりなどいません! 一つの世代において降臨する聖女は一人きりです!」
とんでもないことを言い出す父親にアルフレドは唖然とする。
すっかり白髪の増えた髪だが、まだまだご健在と思っていたのに。我が父は乱心されたのか。
聖女に代わりなどいない。聖女はこの世で一人きりの存在だ。
「……そう、そもそも聖女が二人いたということがおかしかったのです。今まで我々が金を払って登用していたメリアはニセモノだったのです。だから私は、今まで『聖女』だと我々を欺いていた彼女の罪を……」
断罪したのだ、と言おうとしたが、言葉の続きは父によって遮られた。
「何を言っている、聖女が二人いてなにか悪いことがあるか?」
恐ろしいほど低く、強い語気で父ミカエルが言い放つ。
アルフレドはたじろいだ。アルフレドはメリアを追放したことを正しいことと思っている。にもかかわらず、ふと「自分は、いけないことをしてしまったのか?」と思わせられるほど、父王の圧は強かった。
しかし、アルフレドもまたいずれかはこの国を背負いたつ身分の男子である。言われっぱなしでいいわけがあるか。父に言い返すために、アルフレドは震える唇を開いた。
「い……いえ、でも、今まで聖女が二人存在していたことなんて、歴史上ありえないことだったじゃないですか……」
自分で思っているよりも、ずっと弱々しい声が出る。父王は我が子を冷淡な目で見下ろしていた。
震えたアルフレドの声に反し、父の声には覇気があった。
「それがどうした。何がいけないのだ?」
「だ、だって。父上。エミリーが言ったのですよ。本物の聖女はわたしだけ。あの娘は偽物だと」
「……それで、なんだというのだ。ニセモノだろうがなんだろうが、メリアが我が国に貢献していたことは事実」
「しかし! エミリーこそが、間違いなく神に認められし聖女! あの女は……」
エミリーには神の御加護がある。この国を守る結界を張っているのはエミリーだ。メリアはそんなことできなかった。
王家である我々を欺き、高い給金をふんだくり続けていたのだ。罰は与えるべきだろう。
そも、彼女の力はエミリーとは違う意味で異質だった。アルフレドは彼女に護衛されているときに、その力を傍らで見て、肝が冷えた。
聖なる力。破邪の力。
いや、もっと、彼女の力は、むしろ、邪悪に感じられたのだ。
思い出しながらアルフレドはゾッとする。彼女に触れると感電するのだが、その時の感覚も一緒に思い出していた。アレは、聖女の力なんてものではなく。
「そんなことはどうでもよいのだ」
アルフレドの思考は父王の言葉で断ち切られた。ハッとアルフレドが顔を上げると、父はひどく鋭い眼でアルフレドを睨んでいるのだった。
「聖女が二人だろうが、うち一人は偽物だろうが、そんなことはどうだって良い。問題なのは……メリア。彼女を魔族に近づけてはいけない。それだけだ」
ごくり、とアルフレドは、いつのまにか口の中に溢れていた唾を飲み込んだ。
「なのに、よりにもよって、国外追放だと? この国の壁の外に放り出したのか」
「は……はい……」
「封印されているはずとはいえ、壁の外は魔族の世界と言っても過言ではない。それを貴様は……」
はあ、とため息が一つ。
アルフレドは額に汗が伝うのを感じながらも、それを拭う仕草など許されぬ緊迫感の中、父の言葉の続きを待った。
「貴様が行って、メリアを連れ戻せ! 使えるものは何でも使え、媚びよ、金もいくらでも渡していい!!!」
「ひえっ……」
王の間に響き渡る父の声。いや、王の怒声であった。
彼の息子であるアルフレドだが、自分などは彼の臣下の一人に過ぎないと分からされる。従わなければならぬ声であった。
「メリアを見つけ出すまで帰ってくるな! 次に貴様がこの国の門を潜るときには必ずやメリアを傍らに携えて来い!」
「わ、わかりました。父上。行ってまいります」
そうして、アルフレドは門の外に追い出された。
結界で守られた壁の中とは違い、外の世界は魔物が闊歩する無法地帯だ。
アルフレドはどうか聖女エミリーを同行させてくれと父に嘆願したが、その願いは聞き届けられなかった。聖女エミリーは忙しい。彼女には商人たちの輸送の護衛、他国へ出かける要人の護衛、結界の弱った部位の張り直し、数多の任務がある。アルフレドの護衛はそれらよりも優先順位は低いとされた。
父とともに帰国していたはずのエミリーはすでに商人一座の護衛に出発していた。アルフレドは密かに心寄せるエミリーの顔を一目見ることもなく、父に命令された兵士によって文字通り放り出された。
門の外に放り出されれば死ぬ。普通は。
(さすがのメリアももう死んでたりしてなあ)
途方もない気持ちで、アルフレドは夕焼けに染まる平原を見つめた。こんなにも広々として、空虚な景色をアルフレドは見たことが無かった。
「えっ、ど、ど、どうされたのですか。父上」
「いや、我が愚かであった。息子が愚かなれば父もまた愚かなり、か。まさに愚問であった。もしも己がしたことをわかっていようものなら、そもそも彼女を追い出すわけもなし……」
他国にて開催されていたサミットから帰国した父は、激昂していた。
王子アルフレドは父を出迎えるよりも前に父の使いの伝令によって王の間に呼び出され、そして跪かされていた。
「聖女メリアを追放するなど、何を考えているんだ。彼女を国の外に出したらどうなると思っている?」
父の声は、ひどく剣呑であった。思わずアルフレドの背筋が震える。
「せ、聖女なら真なる聖女、エミリーがおります!」
「この国の護りを憂いているのではない!」
アルフレドは目をパチクリとした。
国の護りを憂いているのではない? 父の言葉を頭の中で反芻する。
メリアは、聖女としては、まあ役に立っていた。一応は給料分の働きはしていた──と思う。ニセモノながら。
そのメリアを追い出したせいで魔族に対抗する国の力が衰えてしまったということに、父は腹を立てているのだとアルフレドは考えていたが、違うのか。
「どちらかを追い出すのなら、エミリーの方にすればまだ良いものを……」
「なっ!? 何を言い出すのですか、父上! エミリーが我が国の壁に結界を施してくれているおかげで、我が国の国民たちは魔族の脅威に怯えることなく暮らせているのですよ!?」
「聖女など、代わりがおるわい!」
「お、恐れながら父上! 聖女に代わりなどいません! 一つの世代において降臨する聖女は一人きりです!」
とんでもないことを言い出す父親にアルフレドは唖然とする。
すっかり白髪の増えた髪だが、まだまだご健在と思っていたのに。我が父は乱心されたのか。
聖女に代わりなどいない。聖女はこの世で一人きりの存在だ。
「……そう、そもそも聖女が二人いたということがおかしかったのです。今まで我々が金を払って登用していたメリアはニセモノだったのです。だから私は、今まで『聖女』だと我々を欺いていた彼女の罪を……」
断罪したのだ、と言おうとしたが、言葉の続きは父によって遮られた。
「何を言っている、聖女が二人いてなにか悪いことがあるか?」
恐ろしいほど低く、強い語気で父ミカエルが言い放つ。
アルフレドはたじろいだ。アルフレドはメリアを追放したことを正しいことと思っている。にもかかわらず、ふと「自分は、いけないことをしてしまったのか?」と思わせられるほど、父王の圧は強かった。
しかし、アルフレドもまたいずれかはこの国を背負いたつ身分の男子である。言われっぱなしでいいわけがあるか。父に言い返すために、アルフレドは震える唇を開いた。
「い……いえ、でも、今まで聖女が二人存在していたことなんて、歴史上ありえないことだったじゃないですか……」
自分で思っているよりも、ずっと弱々しい声が出る。父王は我が子を冷淡な目で見下ろしていた。
震えたアルフレドの声に反し、父の声には覇気があった。
「それがどうした。何がいけないのだ?」
「だ、だって。父上。エミリーが言ったのですよ。本物の聖女はわたしだけ。あの娘は偽物だと」
「……それで、なんだというのだ。ニセモノだろうがなんだろうが、メリアが我が国に貢献していたことは事実」
「しかし! エミリーこそが、間違いなく神に認められし聖女! あの女は……」
エミリーには神の御加護がある。この国を守る結界を張っているのはエミリーだ。メリアはそんなことできなかった。
王家である我々を欺き、高い給金をふんだくり続けていたのだ。罰は与えるべきだろう。
そも、彼女の力はエミリーとは違う意味で異質だった。アルフレドは彼女に護衛されているときに、その力を傍らで見て、肝が冷えた。
聖なる力。破邪の力。
いや、もっと、彼女の力は、むしろ、邪悪に感じられたのだ。
思い出しながらアルフレドはゾッとする。彼女に触れると感電するのだが、その時の感覚も一緒に思い出していた。アレは、聖女の力なんてものではなく。
「そんなことはどうでもよいのだ」
アルフレドの思考は父王の言葉で断ち切られた。ハッとアルフレドが顔を上げると、父はひどく鋭い眼でアルフレドを睨んでいるのだった。
「聖女が二人だろうが、うち一人は偽物だろうが、そんなことはどうだって良い。問題なのは……メリア。彼女を魔族に近づけてはいけない。それだけだ」
ごくり、とアルフレドは、いつのまにか口の中に溢れていた唾を飲み込んだ。
「なのに、よりにもよって、国外追放だと? この国の壁の外に放り出したのか」
「は……はい……」
「封印されているはずとはいえ、壁の外は魔族の世界と言っても過言ではない。それを貴様は……」
はあ、とため息が一つ。
アルフレドは額に汗が伝うのを感じながらも、それを拭う仕草など許されぬ緊迫感の中、父の言葉の続きを待った。
「貴様が行って、メリアを連れ戻せ! 使えるものは何でも使え、媚びよ、金もいくらでも渡していい!!!」
「ひえっ……」
王の間に響き渡る父の声。いや、王の怒声であった。
彼の息子であるアルフレドだが、自分などは彼の臣下の一人に過ぎないと分からされる。従わなければならぬ声であった。
「メリアを見つけ出すまで帰ってくるな! 次に貴様がこの国の門を潜るときには必ずやメリアを傍らに携えて来い!」
「わ、わかりました。父上。行ってまいります」
そうして、アルフレドは門の外に追い出された。
結界で守られた壁の中とは違い、外の世界は魔物が闊歩する無法地帯だ。
アルフレドはどうか聖女エミリーを同行させてくれと父に嘆願したが、その願いは聞き届けられなかった。聖女エミリーは忙しい。彼女には商人たちの輸送の護衛、他国へ出かける要人の護衛、結界の弱った部位の張り直し、数多の任務がある。アルフレドの護衛はそれらよりも優先順位は低いとされた。
父とともに帰国していたはずのエミリーはすでに商人一座の護衛に出発していた。アルフレドは密かに心寄せるエミリーの顔を一目見ることもなく、父に命令された兵士によって文字通り放り出された。
門の外に放り出されれば死ぬ。普通は。
(さすがのメリアももう死んでたりしてなあ)
途方もない気持ちで、アルフレドは夕焼けに染まる平原を見つめた。こんなにも広々として、空虚な景色をアルフレドは見たことが無かった。
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