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10話 ドキドキしちゃう
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「す、すすすす、すごいですね!?」
「……俺たちの所有している金銭を確認したい、ということだったな」
動揺して挙動不審になっているわたしは震えながらコクコクと頷いた。
そう、金とか宝石ももちろん金銭的な価値はめちゃくちゃあるけれど、換金しなければいけないのが難点だ。真っ当なお店で売ろうとすれば出どころを厳しく聞かれるだろうし、あくどい店なら何も聞かずに買い取ってはいれても、買い叩かれそうだ。
やっぱり、現金がいい。
魔王さまは棚の引き出しを開けた。そして、部屋の入り口で立ち尽くすわたしを手招きで呼ぶ。
(うっ、うう、ドキドキしてきちゃった……)
宝の山に足がすくんでいたのだ。けれど、フラフラと、なんとか歩いていく。
「あっ!」
「……!」
酔ってもないのに千鳥足のわたしは、こけた。そして、そのまま魔王さまにぶつかった。魔王さまは背が高くてシュッとしている印象があったけれど、飛び込んだ胸板はとても大きいし、ガッシリしていた。
(わあ~、手、でっかいなぁ)
魔王さまはわたしの肩を抱いて、抱き止めてくださった。肩を抱くその手が大きくて驚く。特別小柄なわけではないのに、すっぽりと魔王さまの手におさまってしまっている。
お宝の山に興奮してドキドキしてしまっていたこともあり、なんだか気持ちが落ち着かなくて惚けていると、魔王さまの胸からも心の臓の音が聞こえてきた。ドッドッドッと音を立てるそれは早い調子を刻んでいるから、それも少し意外だった。魔王さまは、どこかのんびりとしているから、鼓動もゆっくりとしているんじゃないかという気がしていたのだ。今のわたしと、同じくらい動悸が早い。
「す、すみません」
「…………いや、構わん。怪我はないか」
魔王さまの胸に手をつき、わたしは体勢を整えた。肩を抱いていた魔王さまの手がするりと離れていく。
魔王さまは、目を窄めてはいたけれど、不快そうな様子ではなくて、ホッとする。雇い主の気分を害すのは勤め人としては望ましくない。いや、かつて王宮勤めの時はさんざん王子には嫌われていたけれど。
(……あれ?)
ここで、わたしの中である疑問がわいた。
魔王さまと接触しても、魔王さまは感電しなかった。
今まで、魔物や王子に触られたら、絶対に感電していたのに。きっと、悪意や害意のあるものや、悪しき存在──魔物の類──に触れると、そうなるのだと思っていた。だから、魔族である魔王さまも、接触したら感電するのかしらと考えていたのだが、魔王さまにその様子はない。
(魔王さま、全然悪って感じじゃないから、そうなんだけど)
でも、『魔族』という種族には、無条件で電撃ビリビリになるかもしれないと思っていたのだ。しかし、そうはならなかった。
(うん、たまたま手が触れ合っても大丈夫なら、もうちょっと積極的にご奉仕できるかもしれない!)
少し、遠慮していたのだ。万が一、魔王さまに近づいて感電させたらどうしようと。しかし、その心配はいらなかったらしい。もちろん、雇い主に不必要なほど接近したり、接触するのは望ましいことではないが、近くでお世話をしていれば偶然の接触の機会が避けられないことはある。でも、それを必要以上に避けようとしなくてもいいのだ、と思うと少し気持ちが楽だ。
「……大丈夫か?」
「えっ、あっ、はい! すみません、ぼーっとしていました」
「…………そうか」
いつもよりも沈黙が長かった。心配してくださってるのかな。
ううん、まさかの魔王さまにダイブなんてやらかしたせいでつい惚けてしまって、心配までさせてしまうとは。しっかりしなくては。
「紙幣や硬貨はこの棚にある。確認してみてくれ」
「はい! 失礼しま……うわっ!」
大きな棚の引き出しいっぱいに溢れるほどの紙幣、そして硬貨が詰まっていた。
「え、ええと、確認……ですよねっ」
ますます心拍数が上がる。恐る恐る、わたしは一歩踏み出し引き出しを覗き込む。いっぱいに詰まったそれをひとつ、手に取った。
「……今の通貨と、同じです……」
「そうか。ならば、この棚のものは全ておまえにやろう」
「……えっ。こ、ここの引き出し……ってことですか?」
引き出し一個だけでも、十分多いが。
魔王さまは首を振る。そして、この棚全てをやる、と。
いや……いやいやいやいや!?!?
「わ、わたし、こんなにいただけません」
「なぜだ? お前はしきりに金が欲しいと言っていた。いらんのか?」
「この金銭に見合う労働をわたしはしていません! こんなにいただくわけには!」
「……別に構わんが」
魔王さまはひどく不思議そうに片眉を吊り上げ、首をわずかに傾げた。
そんなキョトンとされましても!!! かわいい仕草に対して突きつけられた金銭がどう見たって可愛くなさすぎる!!!
何考えてんだ、この人!? ゲロ甘か!? 世間知らずなのか!? 魔王さま、悪い人に騙されまくったりしない!? 大丈夫!?
「お、お金は欲しいです。欲しいですけど……わたし、両親の毎月の治療費が稼げればそれでいいんです」
「……両親。病気だと言っていたな」
頷く。魔王さまは、ふむ、と顎に手をやった。
「金銭は多いほど良いのではないか? 金を積んだ方が高度な治療も受けられるし、手厚い看護も受けられるだろう」
魔王さまがごもっともなことを仰る。うん、魔族と人間の間で金銭感覚に著しい違うがあるのかなって心配してしまっていたけど、意味もなく大金を突きつけようとしていたわけではないらしくてちょっと安心する。
でも、わたしはまとまった金銭を持つことに抵抗感もあるのだ。
「あはは……。実は、昔、国王陛下から特別にボーナスをいただいたことがあって。嬉しくってわたし、全部それまとめてお医者さまに渡してよろしくお願いしたんですけど、なんか、お金だけ騙し取られて全然何もしてもらえなかった……ってことがあったんですよね」
「……それは」
魔王さまが息を呑む。同情してくださっているのだろうか。わたしは苦笑した。
「多めにお金渡しても、いいことないんだな、って。だから、いつも毎月必要な分だけ仕送りして、治療費払って、ってしてるんです。一回騙し取られたら、手元にいっぱいお金がありすぎるのも怖くて……」
「……そうか」
いけない、なんだか暗い雰囲気になってしまった。それを取り繕うように、わたしは笑顔と共につとめて明るく言った。
「わたし、一生懸命働きます! だから、毎月働きに応じた金銭をいただけたら、それが一番ありがたいです!」
「わかった。そのようにしよう」
魔王さまは頷いてくださった。お話ができる方でよかった。わたしは胸を撫で下ろす。
ひとまず、両親に仕送りに必要なだけのお金をいただくことにした。ありがたい。今は都市に潜り込んでいるという魔族の人に預けて、届けてもらえるといいな……。うーん、いつ戻ってくるんだろうか。
「……わたし、あの、もう、なんでも仰っていただけたら、なんでもしますので!」
さすがに人類滅亡とかはできないけど……魔王さまはそんな野心はない、って仰っていたしね? そういうことでなければ、なんでも! という気持ちで胸をドンと張って宣言する。
わたしの言葉に魔王さまは真顔で静止していたけど、しばらくすると「そうか」と一言だけこぼして、わたしに背を向けて部屋を出ていかれてしまった。
(……外したかな……)
やる気を全面に押し出しすぎたかもしれない。反省だ。
なんでも、ってたしかに言われた方は困るよね。ご飯の献立決めたいから「何作る?」って聞いたのに「なんでもいいよ」は絶対アウトな返しっていうし……。次は気をつけよう。
「……俺たちの所有している金銭を確認したい、ということだったな」
動揺して挙動不審になっているわたしは震えながらコクコクと頷いた。
そう、金とか宝石ももちろん金銭的な価値はめちゃくちゃあるけれど、換金しなければいけないのが難点だ。真っ当なお店で売ろうとすれば出どころを厳しく聞かれるだろうし、あくどい店なら何も聞かずに買い取ってはいれても、買い叩かれそうだ。
やっぱり、現金がいい。
魔王さまは棚の引き出しを開けた。そして、部屋の入り口で立ち尽くすわたしを手招きで呼ぶ。
(うっ、うう、ドキドキしてきちゃった……)
宝の山に足がすくんでいたのだ。けれど、フラフラと、なんとか歩いていく。
「あっ!」
「……!」
酔ってもないのに千鳥足のわたしは、こけた。そして、そのまま魔王さまにぶつかった。魔王さまは背が高くてシュッとしている印象があったけれど、飛び込んだ胸板はとても大きいし、ガッシリしていた。
(わあ~、手、でっかいなぁ)
魔王さまはわたしの肩を抱いて、抱き止めてくださった。肩を抱くその手が大きくて驚く。特別小柄なわけではないのに、すっぽりと魔王さまの手におさまってしまっている。
お宝の山に興奮してドキドキしてしまっていたこともあり、なんだか気持ちが落ち着かなくて惚けていると、魔王さまの胸からも心の臓の音が聞こえてきた。ドッドッドッと音を立てるそれは早い調子を刻んでいるから、それも少し意外だった。魔王さまは、どこかのんびりとしているから、鼓動もゆっくりとしているんじゃないかという気がしていたのだ。今のわたしと、同じくらい動悸が早い。
「す、すみません」
「…………いや、構わん。怪我はないか」
魔王さまの胸に手をつき、わたしは体勢を整えた。肩を抱いていた魔王さまの手がするりと離れていく。
魔王さまは、目を窄めてはいたけれど、不快そうな様子ではなくて、ホッとする。雇い主の気分を害すのは勤め人としては望ましくない。いや、かつて王宮勤めの時はさんざん王子には嫌われていたけれど。
(……あれ?)
ここで、わたしの中である疑問がわいた。
魔王さまと接触しても、魔王さまは感電しなかった。
今まで、魔物や王子に触られたら、絶対に感電していたのに。きっと、悪意や害意のあるものや、悪しき存在──魔物の類──に触れると、そうなるのだと思っていた。だから、魔族である魔王さまも、接触したら感電するのかしらと考えていたのだが、魔王さまにその様子はない。
(魔王さま、全然悪って感じじゃないから、そうなんだけど)
でも、『魔族』という種族には、無条件で電撃ビリビリになるかもしれないと思っていたのだ。しかし、そうはならなかった。
(うん、たまたま手が触れ合っても大丈夫なら、もうちょっと積極的にご奉仕できるかもしれない!)
少し、遠慮していたのだ。万が一、魔王さまに近づいて感電させたらどうしようと。しかし、その心配はいらなかったらしい。もちろん、雇い主に不必要なほど接近したり、接触するのは望ましいことではないが、近くでお世話をしていれば偶然の接触の機会が避けられないことはある。でも、それを必要以上に避けようとしなくてもいいのだ、と思うと少し気持ちが楽だ。
「……大丈夫か?」
「えっ、あっ、はい! すみません、ぼーっとしていました」
「…………そうか」
いつもよりも沈黙が長かった。心配してくださってるのかな。
ううん、まさかの魔王さまにダイブなんてやらかしたせいでつい惚けてしまって、心配までさせてしまうとは。しっかりしなくては。
「紙幣や硬貨はこの棚にある。確認してみてくれ」
「はい! 失礼しま……うわっ!」
大きな棚の引き出しいっぱいに溢れるほどの紙幣、そして硬貨が詰まっていた。
「え、ええと、確認……ですよねっ」
ますます心拍数が上がる。恐る恐る、わたしは一歩踏み出し引き出しを覗き込む。いっぱいに詰まったそれをひとつ、手に取った。
「……今の通貨と、同じです……」
「そうか。ならば、この棚のものは全ておまえにやろう」
「……えっ。こ、ここの引き出し……ってことですか?」
引き出し一個だけでも、十分多いが。
魔王さまは首を振る。そして、この棚全てをやる、と。
いや……いやいやいやいや!?!?
「わ、わたし、こんなにいただけません」
「なぜだ? お前はしきりに金が欲しいと言っていた。いらんのか?」
「この金銭に見合う労働をわたしはしていません! こんなにいただくわけには!」
「……別に構わんが」
魔王さまはひどく不思議そうに片眉を吊り上げ、首をわずかに傾げた。
そんなキョトンとされましても!!! かわいい仕草に対して突きつけられた金銭がどう見たって可愛くなさすぎる!!!
何考えてんだ、この人!? ゲロ甘か!? 世間知らずなのか!? 魔王さま、悪い人に騙されまくったりしない!? 大丈夫!?
「お、お金は欲しいです。欲しいですけど……わたし、両親の毎月の治療費が稼げればそれでいいんです」
「……両親。病気だと言っていたな」
頷く。魔王さまは、ふむ、と顎に手をやった。
「金銭は多いほど良いのではないか? 金を積んだ方が高度な治療も受けられるし、手厚い看護も受けられるだろう」
魔王さまがごもっともなことを仰る。うん、魔族と人間の間で金銭感覚に著しい違うがあるのかなって心配してしまっていたけど、意味もなく大金を突きつけようとしていたわけではないらしくてちょっと安心する。
でも、わたしはまとまった金銭を持つことに抵抗感もあるのだ。
「あはは……。実は、昔、国王陛下から特別にボーナスをいただいたことがあって。嬉しくってわたし、全部それまとめてお医者さまに渡してよろしくお願いしたんですけど、なんか、お金だけ騙し取られて全然何もしてもらえなかった……ってことがあったんですよね」
「……それは」
魔王さまが息を呑む。同情してくださっているのだろうか。わたしは苦笑した。
「多めにお金渡しても、いいことないんだな、って。だから、いつも毎月必要な分だけ仕送りして、治療費払って、ってしてるんです。一回騙し取られたら、手元にいっぱいお金がありすぎるのも怖くて……」
「……そうか」
いけない、なんだか暗い雰囲気になってしまった。それを取り繕うように、わたしは笑顔と共につとめて明るく言った。
「わたし、一生懸命働きます! だから、毎月働きに応じた金銭をいただけたら、それが一番ありがたいです!」
「わかった。そのようにしよう」
魔王さまは頷いてくださった。お話ができる方でよかった。わたしは胸を撫で下ろす。
ひとまず、両親に仕送りに必要なだけのお金をいただくことにした。ありがたい。今は都市に潜り込んでいるという魔族の人に預けて、届けてもらえるといいな……。うーん、いつ戻ってくるんだろうか。
「……わたし、あの、もう、なんでも仰っていただけたら、なんでもしますので!」
さすがに人類滅亡とかはできないけど……魔王さまはそんな野心はない、って仰っていたしね? そういうことでなければ、なんでも! という気持ちで胸をドンと張って宣言する。
わたしの言葉に魔王さまは真顔で静止していたけど、しばらくすると「そうか」と一言だけこぼして、わたしに背を向けて部屋を出ていかれてしまった。
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