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30話 きっとわたしは①
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魔王さまが目をまん丸にする。今まで見てきた魔王さまの表情の中でも一番「ポカン」って感じのお顔だ。
「だって、わたし、魔王さまに触れられたこと何度かありますけど、一度も嫌でビリビリしたことなかったですし……」
「そ、それは、不躾な触り方はしてこなかったから……。…………だろう」
しどろもどろの魔王さまの沈黙は長かった。
眉を下げ、切れ長の眼を伏せながら視線を彷徨わせる魔王さまの姿がかわいらしく見えて、なんだか笑ってしまった。
そして不意に、ああそうかと自分の中で何かが腑に落ちた。
「……わたし、きっと、魔王さまのこと好きなんだと思います」
「……………………」
あ、さっきのお顔が一番「ポカン」だと思ったけど、記録更新だ。魔王さまは目を大きくしたまま固まってしまった。
「……メリア、その、君は」
魔王さまは困っていた。ああ、やっぱり、魔王さまはわたしをそういう目では見ていない。ただただ魔王さまは真面目でいい人だから、優しいんだ。そういうところが好きだなあと思ったんだけれど。
「……ごめんなさい、迷惑、ですよね……」
「違う、そうじゃない、君が……そう、感じてくれたことは、嬉しい」
肩を落とすわたしに、魔王さまは慌てた様子で、早口に言う。
「前に、魔力回路の話をしたろう」
「はい」
覚えている。まだ体力の回復し切らない両親を看ている時に隣にいて話してくださったことだ。
わたしの体の中にあった魔力が今は魔王さまのお体に戻っていったから、それで魔王さまに懐かしさなどを感じるのだろう、と。
「君を見ていると、俺はすごいドキドキしてしまうが、これは魔力回路の動きによるものだと思っている」
わたしは魔王さまの言葉の続きを待つ。魔王さまは、とても言葉を選んで話されているようだった。
「……君は、普通の女の子に戻って、いろんな経験をして、いろんな人に出会って、……いろんな恋をするべきだ」
「……はい」
魔王さまは優しい。でも、これは、「フラれた」ということだろう。
どこまでも、優しい言い方をしてくれているけれど。
魔王さまに「はい」と返事をして、それからわたしは俯いてしまった。魔王さまからも、同じ答えをもらえるとも思っていたわけではもちろんなかったけれど、それでも、いざ答えが返ってくると、落ち込むものなのねと初めての遅まきの春を、顔を俯かせたまま浅く笑った。
「──俺も、その、正直、君のことが、とてもかわいいと、思っている。けれど、それを……恋だとしてしまうのは、早計だと考えている」
ふと、魔王さまの声が降ってきて、驚いて顔をあげる。
パチパチと瞬きをしながら魔王さまのお顔を見つめれば、魔王さまは気恥ずかしそうに目線を逸らした。
「か、かわいい?」
「……君のことはすごい、かわいく見えている」
コホン、と誤魔化すように咳払いをしつつ、でも、魔王さまはハッキリとわたしのことを「かわいい」と言った。
これは、なんだろう。優しい言葉の「ごめんなさい」で終わったと思っていたら、何か続きがあるらしい。
「だって、わたし、魔王さまに触れられたこと何度かありますけど、一度も嫌でビリビリしたことなかったですし……」
「そ、それは、不躾な触り方はしてこなかったから……。…………だろう」
しどろもどろの魔王さまの沈黙は長かった。
眉を下げ、切れ長の眼を伏せながら視線を彷徨わせる魔王さまの姿がかわいらしく見えて、なんだか笑ってしまった。
そして不意に、ああそうかと自分の中で何かが腑に落ちた。
「……わたし、きっと、魔王さまのこと好きなんだと思います」
「……………………」
あ、さっきのお顔が一番「ポカン」だと思ったけど、記録更新だ。魔王さまは目を大きくしたまま固まってしまった。
「……メリア、その、君は」
魔王さまは困っていた。ああ、やっぱり、魔王さまはわたしをそういう目では見ていない。ただただ魔王さまは真面目でいい人だから、優しいんだ。そういうところが好きだなあと思ったんだけれど。
「……ごめんなさい、迷惑、ですよね……」
「違う、そうじゃない、君が……そう、感じてくれたことは、嬉しい」
肩を落とすわたしに、魔王さまは慌てた様子で、早口に言う。
「前に、魔力回路の話をしたろう」
「はい」
覚えている。まだ体力の回復し切らない両親を看ている時に隣にいて話してくださったことだ。
わたしの体の中にあった魔力が今は魔王さまのお体に戻っていったから、それで魔王さまに懐かしさなどを感じるのだろう、と。
「君を見ていると、俺はすごいドキドキしてしまうが、これは魔力回路の動きによるものだと思っている」
わたしは魔王さまの言葉の続きを待つ。魔王さまは、とても言葉を選んで話されているようだった。
「……君は、普通の女の子に戻って、いろんな経験をして、いろんな人に出会って、……いろんな恋をするべきだ」
「……はい」
魔王さまは優しい。でも、これは、「フラれた」ということだろう。
どこまでも、優しい言い方をしてくれているけれど。
魔王さまに「はい」と返事をして、それからわたしは俯いてしまった。魔王さまからも、同じ答えをもらえるとも思っていたわけではもちろんなかったけれど、それでも、いざ答えが返ってくると、落ち込むものなのねと初めての遅まきの春を、顔を俯かせたまま浅く笑った。
「──俺も、その、正直、君のことが、とてもかわいいと、思っている。けれど、それを……恋だとしてしまうのは、早計だと考えている」
ふと、魔王さまの声が降ってきて、驚いて顔をあげる。
パチパチと瞬きをしながら魔王さまのお顔を見つめれば、魔王さまは気恥ずかしそうに目線を逸らした。
「か、かわいい?」
「……君のことはすごい、かわいく見えている」
コホン、と誤魔化すように咳払いをしつつ、でも、魔王さまはハッキリとわたしのことを「かわいい」と言った。
これは、なんだろう。優しい言葉の「ごめんなさい」で終わったと思っていたら、何か続きがあるらしい。
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