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エピローグ
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「わあ、魔王さま! 海ですよ!」
白い砂浜を、裸足の彼女が駆けて行く。太陽に照らされ輝く彼女の姿があまりにも眩しくて、目をきつく眇めてしまう。
メリアは今日もかわいかった。
旅に出て、共に多くの時間を過ごすようになって、だいぶ経ったが、それでも俺の魔力回路が落ち着きを見せることはなく、彼女を目に入れるたび、声を聞くたび、ザアアッと音を立てながら俺の心臓を囃し立てるのだった。
「わたし、海は初めて見ました! きれいですね……すごいなあ」
「ああ、俺も初めて見る。……きれいだな」
メリアはうっとりと、遠い水平線を眺めていた。その横顔、強い日差しに照らされクッキリと影を落とす長いまつ毛を見つめながら、彼女の背景として海を見る。煌めく波が確かに美しい。メリアがいつもにましてキラキラと輝いて見えていた。
(……俺が、彼女のそばにいて平静でいられるようになることは……あるんだろうか……)
ふと思う。いや、常日頃から、悩んでいた。
彼女からの告白を「今はまだお互い早計だ」と、保留するようなことを言って返してしまったことを、些か後悔していた。
いや、あの時にすんなりと「俺も好きだ」などと言ってしまわなかったこと自体には後悔はないのだが、問題は「いつ俺は彼女にドキドキしなくなるのか」ということが全く見通しがつかないことだった。
魔力回路が落ち着いても、変わらぬ気持ちを抱いていると確信できたら──と、そんなことを言ってしまったが、心底自分は馬鹿なのだと思う。
もうすでに、メリアから返してもらった魔力は体に馴染んでいる。今更、乾いた砂に水を注ぐような勢いで魔力回路が目まぐるしく動く必要もないというのに、彼女のそばにいるとダメだった。
「……やっぱり、魔王さまの瞳って、海みたいですね」
気がつくと、メリアが俺のことを見つめていた。蜂蜜色の瞳を細め、嬉しげにはにかんでいる。
これは気のせいではないと思うのだが、俺のことを好きだと自覚してからのメリアは一層かわいらしくなったと思う。目が、表情が、声が「好きです」という感情を孕んでいることは恋愛ごとに疎い俺にでも、存分にわかった。何しろ、ものすごいかわいい。彼女にこんなふうに見つめられて、笑いかけられて彼女の気持ちがわからないなど、無機物か何かだろう。
(……俺はいつになれば、この子に『好き』だと言うのが許されるんだろうか……)
『一目惚れ』と片付けてしまうのには、抵抗があった。だから、色々と考えたし、彼女のいろんな姿を見てきた。だが、結局のところ、馬鹿な頭はひたすら「かわいい」と「好き」しか処理ができずにどうしようもなかった。知れば知るほど好きになるし、何をしていてもかわいらしく見えてしまう。
メリアが自分の従者を志願した時に、一思いに不採用にしてしまえば。いや、しかし、彼女は従者として優秀だった。よく気が利いて、明るく真面目で、主人となる自分のことも、これから巡る他国のこともよく知っていた。むしろ、その彼女を落としてしまうことのほうが『公私混同』であるほどに。……と言っていたのは、実はディグレスなのだが。
しかし結局のところ、離れて過ごしていても同じだったかもしれない。ただ、彼女と会わずに過ごしていたほうが俺は『格好悪い自分』を自覚せずに過ごすことはできていたかもしれない。
(……かわいい……)
海に足を浸してはしゃぐ彼女を、少し遠くから眺めながら俺はしみじみとため息をついた。
◆
──それから、俺がとても情けない形で彼女に想いを告げるのはまだ少し、未来の話だ。
隣に彼女がいることが当たり前になってからも、俺の魔力回路が落ち着きを見せることはついぞなかった。
それを言うとメリアは笑って「ずっとドキドキしていてくれて嬉しいです」などとかわいらしいことを、かわいらしい声と表情で言うものだから、思わず抱き締めてしまう。俺の心臓の音を聞いてか、メリアは俺の胸元にほおを寄せながら「ふふ」と笑った。
「……これからも、そばにいてくれ。ずっと」
「はい! 喜んで、魔王さま!」
腕の中の彼女が明るい声で返事をする。
その声の軽やかさがまたかわいらしくて、俺の魔力回路はまた性懲りも無くゴポ、と聞こえないはずの音を立てた。
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かわいいかわいい!とたくさんのかわいいありがとうございます♡
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