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私とホアン様
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私はライラ。元公爵令嬢でシルベン王子の元婚約者。シルベン王子の恋人(愛人)をいじめたと衆目のある場所で批難され、一方的に婚約を破棄されました。家にも既にシルベン王子の側近(王子の愛人の取り巻き)をしている兄から手が回っていて、公爵家から籍を抜かれ、家を追い出された私は娼館で暮らすことになったのです。
ですが、――
私のところに来て下さる方がそれはそれは恐ろしい方々で、私は怯える日々に精神をすり減らしております。
一人目は他国から留学されているミハエル王子の従者を務めるホアン様。ミハエル王子と同じ褐色の肌に黒髪黒眼をした偉丈夫です。
「ライラさん。あなたを苦しめたあの女にのぼせ上がってあなたを貶めている者に報いを受けさせてあげましょう」
従者というには体格の良いホアン様がそのようなことを口にされると、暗殺でもするのではないかと心配になります。ホアン様まらできるでしょう。
何故なら、本当にホアン様は従者にしておくには惜しい体格をしておられるからです。隣国の人間は褐色の肌に黒髪黒眼をしていて、この国よりも細身であることが多いのですが、ホアン様はそうではありません。私はホアン様が本来はミハエル王子の護衛をしていた騎士ではないかと思っております。
私の推測通り、ホアン様の本職が騎士なら、騎士でありながら従者の仕事もこなせるとなると、騎士よりも礼儀作法を心得ている必要があります。ミハエル王子と親しくはしておりませんでしたが、私はホアン様が従者らしくないと思ったことはありません。
あるとすれば、その体格しか思いつかないほど、ホアン様は礼儀正しい方です。
他国の王子の従者が暗殺をする。相手が誰であろうと国交に関わって来ます。何と言っても、王子の従者としてこの国に来ているホアン様も母国ではそれ相応の家の出。王子の愛人の取り巻きの誰もがこの国でそれ相応の家の出ですから、殺されたほうの家族もそれで罪を問われたホアン様のほうの家族も納得がいかず、小競り合いどころか戦争が起きてもおかしくはありません。
公爵令嬢だった私ですら怖いと思うことを毎日聞かされ、血の気は引きっぱなしです。今ではこの蒼白な顔色が当たり前になりました。
クラクラする頭でホアン様を止めます。
「ホアン様、どうか早まった真似はなさらないで。あなた様が罪に問われる姿は見たくありません」
ホアン様は猫のような捉えどころのない笑顔を浮かべました。隣国の方はほっそりとしていて猫のようなしなやかな動きをしますが、表情も同じようです。
「ありがとうございます、ライラさん。あなたに心配してもらえるとは、この状況もいいものかもしれませんね」
心配されて喜ばないで欲しいです。それよりも私に心安らかな日々を与えて欲しいです。
「あなたに心配されるのが嬉しくて、つい喜んでしまってすみません。一日でも早くあなたを自由にして迎えに来ますね」
「・・・」
笑顔でホアン様はおっしゃいますが、私はそうおっしゃっていただいても身請けされません。ホアン様が口だけなわけではなく、私の身請けは誰にもできないからです。
「では、行って来ます」
「行ってらっしゃいませ」
家から送り出される時の挨拶をするホアン様に合わせて、私も挨拶します。
また来て欲しいとは私の精神安定上、申し上げられません。
「このようなことを言っていると、結婚したような気がしますね。口付けをしても?」
部屋の隅に置かれた椅子に座っているコンパニオンが大袈裟な咳払いをしました。ホアン様もそれがいけないことだとわかったのか、残念そうな表情をします。
何故、ここにコンパニオンがいるかというと、家族でもない異性と二人きりで密室にいるようなはしたない真似はできませんから。
「お身体にお気をつけて」
怖いことをおっしゃられるので、できれば二度とお会いしたくありませんが社交辞令です。
ですが、――
私のところに来て下さる方がそれはそれは恐ろしい方々で、私は怯える日々に精神をすり減らしております。
一人目は他国から留学されているミハエル王子の従者を務めるホアン様。ミハエル王子と同じ褐色の肌に黒髪黒眼をした偉丈夫です。
「ライラさん。あなたを苦しめたあの女にのぼせ上がってあなたを貶めている者に報いを受けさせてあげましょう」
従者というには体格の良いホアン様がそのようなことを口にされると、暗殺でもするのではないかと心配になります。ホアン様まらできるでしょう。
何故なら、本当にホアン様は従者にしておくには惜しい体格をしておられるからです。隣国の人間は褐色の肌に黒髪黒眼をしていて、この国よりも細身であることが多いのですが、ホアン様はそうではありません。私はホアン様が本来はミハエル王子の護衛をしていた騎士ではないかと思っております。
私の推測通り、ホアン様の本職が騎士なら、騎士でありながら従者の仕事もこなせるとなると、騎士よりも礼儀作法を心得ている必要があります。ミハエル王子と親しくはしておりませんでしたが、私はホアン様が従者らしくないと思ったことはありません。
あるとすれば、その体格しか思いつかないほど、ホアン様は礼儀正しい方です。
他国の王子の従者が暗殺をする。相手が誰であろうと国交に関わって来ます。何と言っても、王子の従者としてこの国に来ているホアン様も母国ではそれ相応の家の出。王子の愛人の取り巻きの誰もがこの国でそれ相応の家の出ですから、殺されたほうの家族もそれで罪を問われたホアン様のほうの家族も納得がいかず、小競り合いどころか戦争が起きてもおかしくはありません。
公爵令嬢だった私ですら怖いと思うことを毎日聞かされ、血の気は引きっぱなしです。今ではこの蒼白な顔色が当たり前になりました。
クラクラする頭でホアン様を止めます。
「ホアン様、どうか早まった真似はなさらないで。あなた様が罪に問われる姿は見たくありません」
ホアン様は猫のような捉えどころのない笑顔を浮かべました。隣国の方はほっそりとしていて猫のようなしなやかな動きをしますが、表情も同じようです。
「ありがとうございます、ライラさん。あなたに心配してもらえるとは、この状況もいいものかもしれませんね」
心配されて喜ばないで欲しいです。それよりも私に心安らかな日々を与えて欲しいです。
「あなたに心配されるのが嬉しくて、つい喜んでしまってすみません。一日でも早くあなたを自由にして迎えに来ますね」
「・・・」
笑顔でホアン様はおっしゃいますが、私はそうおっしゃっていただいても身請けされません。ホアン様が口だけなわけではなく、私の身請けは誰にもできないからです。
「では、行って来ます」
「行ってらっしゃいませ」
家から送り出される時の挨拶をするホアン様に合わせて、私も挨拶します。
また来て欲しいとは私の精神安定上、申し上げられません。
「このようなことを言っていると、結婚したような気がしますね。口付けをしても?」
部屋の隅に置かれた椅子に座っているコンパニオンが大袈裟な咳払いをしました。ホアン様もそれがいけないことだとわかったのか、残念そうな表情をします。
何故、ここにコンパニオンがいるかというと、家族でもない異性と二人きりで密室にいるようなはしたない真似はできませんから。
「お身体にお気をつけて」
怖いことをおっしゃられるので、できれば二度とお会いしたくありませんが社交辞令です。
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