最も嫌われている最凶の悪役に転生ー物語の主人公に殺されるエンドを回避するため善行を積みます!ー

灰色の鼠

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第75話 五人目の住人

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 妖精王国フィンブル・ヘイム。
 中央区画、地下牢に四人仲良く幽閉されていた。

 牢屋に連れていかれると、そこには先に眠っているゴエディアとシャレムがいた。

「ロベリアも捕まっちゃったの! 大丈夫!? 怪我していないよね!?」

 エリーシャは過保護なお母さんのように俺の体の所々を確認した。
 牢屋の外にいる看守の目もあるので恥ずかしい。

「平気だ、問題ない」

「でも鼻から血の痕が……酷いことをされたの?」

「事故だ」

 カッコ悪く窓に激突したとは言えない。

「そういうエリーシャは無事そうで何よりだ」

「へっ!? う、うん、大丈夫だよ。この通り何もないからっ」

 ぶんぶんと腕を回していた。
 これぐらい元気なら心配するだけ野暮だな。
 守られるだけのヒロインじゃなくなったもんな。

 まあ、妖精どもが傷ものにしていたら殺していたところだけどな。

「私たち、何もしていないのに。急に牢屋に連れていかれたの」

「……」

「このままじゃ理想郷のみんなを困らせちゃうかもしれない。ねぇロベリア……私たちをどうすればいいのかな?」

 反対意思を持つ妖精達の独断なら、まだ可能性はある。
 しかし抵抗をしてしまったら自体が悪化するだけだ。

 この状況を穏便に済ませられる方法があればいいのだが、思いつかない。
 クソ、俺が不甲斐ないばかりに。

「ここでも、やはり魔術は使えないのか?」

「うん、魔力が抜かれる結界が張られているみたい」

「……そうか」

 俺は寝ているシャレムとゴエディアの元に行き、二人を起こす。
 ゴエディアの体を揺すり、シャレムの頭を叩く。

「ふんがっ! 痛って! 痛ってぇんだけど!?」

「あれ、ここどこ?」

 元気そうでなにより。
 とりあえず状況をイマイチ理解していない二人に現状を説明をする。

 シャレムは困った顔をして頬を掻いて、ゴエディアは少しだけ悲しそうな顔をした。

「妖精のみんな、なかよくできない?」

「いや、まだ決まったわけではない。悪いが……少し考えさせてくれ」

 牢屋の鉄格子に背中を合わせるようにして座り込む。
 しかし狭い牢屋だな、こんな大人数を閉じ込めるのならもっと広いところにして欲しいものだ。
 こちらは五人もいるんだぞ。
 ん、五人?

 奥の壁際、薄暗い位置に誰かが座っていた。
 小汚い女の子だ。
 こちらを見て、驚いているようだが何処かで見たような。

「や、や、やっと見つけることができたぞ!」

 そこにいたのは浮浪者のような、可哀そうな少女ラケルだった。
 なのに希望に満ちた表情をしていた。

「ノアの弟子、なのか?」

「そうだ! そうだとも! 覚えていてくれていたようで助かったよ」

 どうして此処にラケルがいるのか。
 まさかノアの元にいるのが嫌になって家出をしたのか。
 だとしても人魔大陸にいるのもおかしな話だ。

「師匠の魔術道具で何処かに飛ばされた君とエリーシャを、ずっと探していたんだ。もうどれぐらい経ったのかが分からないほど、ずっと前からね」

「……なぜだ?」

 普通に疑問だったので聞いてみた。

「君に渡された指輪は試作品のような物でね。それが原因で、飛ばされた先で君達が死んでしまったら師匠に責任がふりかかると思ったんだ」 

「それだけの事で無茶を……」

「あとリーデアの件だ。一年前、彼女は晴れて獣人族の長になったと聞いている。もう彼女と会う機会はないだろうけど、ロベリアさんは最後に会わせてくれた」

 その恩返しというわけか。
 だが俺もエリーシャもアズベル大陸に帰る気はない。

 信じられない話になるのだが、エリーシャと恋人関係になれたのは、ある意味ノアの指輪のおかげだ。
 それも兼ねてここまでの経緯を説明すると、

「……っ!!!」

 めっちゃ驚かれた。
 すごい顔芸だなノアの弟子。
 もっと大人びた印象だったけど、俺達を探し出す旅で性格でも変わったか?

「それは、うん、ありうる話だ。よかった、よかった」
 
 めでたしで締め括りたいところ申し訳ないが、現状何一つ良くない。
 牢屋の住人が一人増えただけで何も解決していない。

「しかし妖精と協力関係になるのは相当難しいと思うけど、ロベリアさんは何か計画でもあるのかい?」

「……ない」

「キッパリと言うんだね」

 だから困っているのだ。
 このまま本当に五人揃って処刑されたら何もかもゲームオーバーだ。

 かと言って、ここで妖精達を蹴散らしてしまったら他にアテなんかないぞ。

「人魔大陸での戦争から、もう五百年は経過するが、やはり彼等の心に残った傷はまだ癒えていないか」

 ああ、俺も歴史は知っているつもりだ。
 だからこそ、また同じことを重ねようとは思わない。

 何かをされたから、すぐにやり返すなど愚かな馬鹿がやることだ。
 大事な人間が傷つけられた場合は例外だがな。

「もし、私がここから逃げだす手段があると言ったら―――」

 ラケルが何かを言いかけた瞬間、

「うおっ! なんだ!?」

「ひぃぃぃ!」 

「……っ!」

 爆発音と共に、大きな揺れが起きた。
 鉄格子の外にいる看守たちが動揺をしながら、何が起きたのかを確認するために何処かに行ってしまった。

「……これは一体!」

「何処かの軍勢の攻撃やもしれん」 
 
 疑問するラケルに冷静に伝える。
 スナッチャーが解き放たれたということは、いずれ人族の軍勢も攻めてくるとは思っていた。

 だが、初っぱなから地震が起きるほどの一撃を撃ち込んでくるとは。

「魔術を使えないのでは、この鉄格子を破るのは難しいな……ゴエディア、頼む」

「わかった」

 ゴエディアが前に出て、拳を振り絞った。
 どこぞの格闘漫画のヤクザ総長さんの如くの重圧とともに、振り下ろされた拳が鉄格子を吹き飛ばした。

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