6 / 77
第6話 食事休憩
しおりを挟むリアン姫が無事に勇者たちと合流できることを祈りながら、俺はある領地を目指すことにした。
暴動が起きた王国には、もう用はない。
圧政に苦しんでいた国民たちが、より良い暮らしのために反旗を翻す。
国が滅ぶのは統治者の責任だ。過激とはいえ、国民に罪はない。
下手に介入して悪評が広がったら、堪ったもんじゃないしな。
新しい計画《プラン》へと移行しよう。
その名も『竜王の支配からの解放』だ。
ある国の領地を我が物顔で支配する竜の王様がいる。
遠い昔、魔王と人族の軍によって根絶やしにされた竜族の生き残りだ。
隠れて平穏に暮らせばいいものを、竜族の長『竜王』を名乗り、私欲のために人を支配している悪役だ。
そいつを倒せば、支配を受けていた人々が解放される。
ロベリアへの世間の印象も少しは変わるかもしれない。
ストーリーでは、英傑の騎士団の竜騎士ジークという男が竜王を倒すのが正規ルートとなっているのだが、一足先に俺がクリアしておこう。
その前に、次の町に到着したら休憩したい。
時間短縮のためとはいえ、魔術による移動を何日も休まずに続けていれば疲れるからな。
————
「ご、ご……ご注文は以上でよろしかったっ……でしょっ、ですか……?」
「ああ、頼む」
治安の悪そうな裏街で食事を取ることにした。表にある普通の飯屋に顔を出したら騒がれてしまうからな。
ただ、裏街とはいえ、注文を取ってくれていたウェイトレスが明らかに怯えていた。
ゴロツキが当たり前のように暴れる酒場でも怖がられるのかよ。
追い出されるよりはマシか。
「な……なあ、あんた。ちょっといいか?」
体格のいい大剣を背負った大男が隣に座ってきた。
冒険者ギルドを証明するギルドカードを首にぶら下げている。
「アンタ……傲慢の魔術師ロベリアさんなんだろ? ここで会えて光栄だぜ」
「……」
もし俺の人格がロベリアのままだったら、『気安く隣に座るな、害虫どもが』と魔術をぶっ放していたところだろう。
ここは平常心を保ち、無視しよう。
「アンタの悪名っぷりが全土に知れ渡っているから、知らない奴なんてほとんどいねぇだろうな。腕っぷしは本物なんだろ? そんなアンタに良い話を持ってきたんだが、協力してくれたら嬉しいな、なんて」
「……興味ない。他を当たれ」
余裕があったら手を貸してやってもよかったんだが、生憎と他に目的があるので承諾はできない。
「冷てぇな~。あそこにさ、英傑の騎士団がいるんだが、分かるか?」
男は壁際の席の方にこっそりと視線を向けた。白い鎧をまとった黒髪の少女が座っていた。
目を奪われるほどの可愛さだ。
英傑の騎士団のクラウディア。
正義感が強いため、ロベリアを最も嫌っている登場人物だ。
まさか、この町に来てから監視されていたのか?
そんなことを考えていると、男にグラスの水をぶっかけられた。
「……」
「人のため、世の中のために尽くしている冒険者の俺か、悪名高い魔術師さん、どっちのせいにされるんだろうなぁ?」
腹に蹴りを入れられそうになったが、難なく避ける。
(コイツら……初めからこれが狙いだったのか……)
苛立ちながら手のひらに魔力を込めるが、騒ぎに気づいたクラウディアに視線を向けられ、俺はとっさに攻撃魔術を中断した。
そのせいで、背後にいた男の仲間に羽交い締めされてしまう。
「そのまま押さえてろ!」
相手は屈強な冒険者だ。
実力からしてAクラスだろう。
生前の体で殴られたら痛いだろうが、最強の魔術師の肉体なら痛くも痒くもないかもしれない。
それでも何もせずに攻撃を受けるだけなのは癪だ。
羽交い締めをしてきている男との間に微量の風属性魔術【衝撃】を発生させ、吹き飛ばす。
そして、殴りかかろうとしている冒険者の背後へと瞬時に移動する。
恐ろしく速い手刀で気絶させる。
たった数秒。
喧嘩を起こした冒険者とその仲間が手足も出せずに倒れてしまったので、酒場は大騒ぎだ。
周りから見たら唐突に倒れたように見えるもんな。
休もうとしただけなのに、結局騒ぎを起こしてしまった。
絡んできたコイツらが百パーセント悪いけど、本当のことを言ったところで信じてくれる人は多分いないだろう。
面倒が増える前に逃げよう。そうしよう。
倒れた冒険者たちを介抱する客たちの間を抜けながら、こっそり店を後にする。
「あ、あれ、お客様! ご注文した料理は……」
皿を両手にカウンターへと戻ってきた店主に呼び止められたが、聞かなかったことにしよう。
37
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!
たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。
途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。
鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒!
素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。
裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる