最も嫌われている最凶の悪役に転生ー物語の主人公に殺されるエンドを回避するため善行を積みます!ー

灰色の鼠

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第19話 話し合いとドロップキック

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「おいおい、ヤベー奴のお出ましじゃねぇか……簡単な仕事だって思って来たのに、ラインハルでも苦戦する相手とか無謀すぎるっしょ」

 弱音を吐くジェイク。
 それもそうだ。
 ロベリア戦に何度も挑戦している精鋭なのだから。
 その恐ろしさも身に染みているのだ。

 しかし、ゾルデアの方は恐怖心で、いや武者震いをしていた。

「ひひひ……姫じゃなくても彼を殺してもいいのよね? ねぇ!」
「後方で援護射撃してるんで、頼みますぜ」
「ひゃははははっは!!!」

 棒立ちの俺に、ゾルデアは飛びついてきた。
 碧色の光が大鎌を包み込み、さらに身体を回転させ勢いをのせる。完璧な殺傷能力をもった大鎌を彼女は全力で振り下ろしてきた。

「ふん!」

 だが俺はそれを拳で弾いた。
 ゾルデアは生身で、自分の武器が弾かれたことに驚く。

 しかし、すぐに追撃。
 横なぎの重いやつが繰り出される。

 ガキン! と金属がぶつかり合う音。
 俺はそれも、手の甲で弾いていた。

 そして彼女の後方からの援護射撃。
【魔力障壁】で防御しつつゾルデアの連撃をすべて弾く。

 皮膚の表面を膜のように魔力で包み込み硬質化させたのだ。
 ゾルデアの大鎌を通さないほど強度なものに。

 それを察したのかゾルデアは一旦、後ろへと下がる。

「どうして反撃をしないのかしら?」

 こちらの様子を伺いながらゾルデアは訪ねてきた。

「話がしたい」

 それだけを告げるが、狂気染みた笑顔で返される。

「話って、貴方と私たちで何を話合うっていうの。姫の逃亡に協力した犯罪者さん、いや誘拐犯かしら~」

「違っ―――」

「ぎゃははっ!」

 否定をしようとした瞬間、目の前からゾルデアが消えた。
 大抵は背後に回られているパターンなのだが、彼女の特徴は空からの一刀両断だ。

 脳天めがけて大鎌を振り下ろすゾルデアを回避する。

「チッ」

 回避した瞬間を狙われ、ジェイクの放った矢を直に受けてしまう。
 硬質化した身体でも、神装の攻撃はやはり痛い。

 苦虫を噛んだような顔をしていると、ゾルデアがすでに斬りかかっていた。

 対応できず、身体の硬質化が破れる。
 幸い、横腹のかすり傷で済んだのだが、マズイ。

 ゾルデアの武器は『神装ゾルデア・デス・サイズ』と呼ばれる強力な武器だ。
 切り裂けばするほど、相手を徐々に弱体化していく厄介なやつである。

「待て、貴様の狂気自慢は理解できたから武器を下せ……!」

「なんですって~!?」

 大鎌が振り下ろされ、ギリギリで避ける。
 逆に、達者な口のせいで彼女を挑発してしまった。

「おい、ゾルデア姉さん! ちょいストップ!」

 彼女の猛進を、背後から声を発した人物が止める。

 ジェイクだ、何故止めたのか、いや都合がいい。
 彼は矢を番えていない。

「なに? 殺すわよ?」

「まあまあ。話ぐらい聞きましょうよ。コイツが姫を逃がすには理由があるかもしれませんし」

「ああ、ある」

 俺は答えた。
 それと重ねて告げる。

「貴様らと敵対する意思もない、このまま通してもらいたい」

「へー。で、それを証明できる証拠は?」

「いつでも貴様らを殺せるからだ」

 なんて言っているとゾルデアがやる気満々にこちらを睨みつけてきた。
 俺に対してつけた掠り傷程度では満足できていないのだろう。

「確かに、それは納得できるな。けど、姫様の逃亡に協力するってことは相応の理由も必要だ。傲慢の魔術師ロベリア、お前の目的はなんだ?」

「……友に逢わせるためだ」

「「は?」」

 二人の声が重なる。
 俺らしくない発言だっただろうか。
 言った俺も、ちょっと恥ずかしい。

 それでも英傑の騎士団は、そんな悪い奴らではない。
 話をすれば案外、納得して通してくれるかもしれない。

「嘘だろ」
「嘘ね」

 くっ、やっぱり駄目か。
 英傑の騎士団どもは頭の固い奴らばかりだな。

 いや、今までのロベリアの行いのせいか。
 だけど、こちとら本気をだせないのだ。
 二人の攻撃を受け流し続けるにも限界がある。

 リーデアが森を抜けるまで時間を稼がなければ。
 俺はふたたび魔力で身体を硬質化させる。
 それを感じ取ったのか、二人は構えた。

 死ぬかもしれない、それでも、それでも守りきってやる。



「にゃにゃ~!!」

 と思っていたら馬鹿猫の登場。
 ジェイクの顔面にドロップキックをかましやがった。
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